ドヴァーフ編

異彩の魔性


 魔法王国ドヴァーフの王都を護る結界が消失した、次の瞬間-----自分の身体に襲いかかった急激な負荷に、あたしは声にならない悲鳴を上げた。

 内臓が圧迫され、身体中の血管という血管が破裂するかのような衝撃。ぎしぎしと骨が軋み、激しい嘔吐感と共に意識が飛びそうになる。

 皮肉なことに、そんなあたしの意識を繋ぎ止めたのは、その元凶である黒衣の占い師の声だった。

「苦しいですか? もう少しするとこの状況に身体が慣れて、幾分楽になってきますよ」
「っ……、な……何、を……」

 何を、したの?

 苦痛の涙で頬を濡らすあたしに、淡々と彼女は告げた。

「魔法王国と呼ばれる国の王都ですから……。その力を存分に振るえぬように、仕掛けさせてもらったのです。貴女だけではなく、魔力を持つ全ての者達が、今頃は同じように苦しんでいることでしょう。もっとも、貴女の場合はそういった者達とは魔力の次元が違いますから、その苦しみは比べるべくもないですが……」

 ようするに、魔力の強い者ほど、その力の制約を受ける、っていうこと……?

 呼吸するのもままならないような状況の中で、あたしは震える顎を微かに上向け、赤紫色の被膜に覆われた空を仰いだ。不気味な色に染まった空が視線の先でぼんやりとかすみ、その光景が次第に薄暗く狭まっていく。

 肺が圧迫されて、息が、うまく出来ない。

 -----身体中の、力、が……。

 肉体を押し包む苦痛もさることながら、全身を絡め取る赤黒い光の糸が、着々とあたしの魔力を奪い続け、抵抗する力を加速度的に失わせていく。

 アキ……レウス……。

「無駄な魔力を空に放って浪費するよりは、私に向かってぶつけた方が得策だったのでは?」

 深淵に落ちかけたあたしの意識を再び引き戻したのは、やはり黒衣の占い師の声だった。

「無駄じゃ……ない……」

 かすれてはいるものの、思ったよりもしっかりとした声が出た。

 浅い呼吸を繰り返しながら、あたしは薄く目を開き、睫毛を震わせた。

 さっきの占い師の言葉通り身体がこの過酷な状況に順応し始めたのか、少しだけ呼吸が楽になったのを感じる。

「それに……ここまで、いやらしく、罠を仕掛けてくる人が……何の対策もなしに、出てくるとは……思えない、んだけど……」

 切れ切れにそう返したあたしの呟きに、彼女は少しだけ感心したようだった。

「この状況下にあって……思ったよりも冷静、なんですね……」

 その涼やかな声は、あたしの言葉を肯定していた。

 あたしは力なくうつむきながら、呪文のように同じ言葉を繰り返した。

「あれは……絶対に、無駄じゃ、ない……。絶対に、絶対に……来て、くれる……」

 痺れたように感覚のなくなり始めた指に、アキレウスから貰った指輪の存在を確認して、あたしはぎゅっと目をつぶった。

 肉体に加えられる不当な圧力と、絶え間なく奪われ続けていく魔力……脂汗が首筋を滴り落ち、五感が薄れていくのを感じながら、あたしはただそれだけを信じて、唇を結んだ。

 その時、ふと、占い師が宙空を見上げた。

 ……?

 ぼんやりとその視線の先を追ったあたしは、次の刹那、その場に突如出現した光に網膜を焼かれ、小さく悲鳴を上げた。



「よくやったわね、シェスナ。“元”人間にしてはやるじゃないーっ」



 キンキン高い、耳障りなくらい頭に響く、まだ年若い女の子の声。

 同時に、その場に生まれた圧倒的な力の気配。


 ドクンッ。


 心臓が慄いた鼓動を立てる。身体中の血の気が引き、まるで凍りついていくかのような錯覚に囚われながら、あたしは全身を強張らせた。鋭利な刃物を胸に突き立てられたかのような衝撃に貫かれ、息が出来ない。

 細くて冷たい、小さいけれど力に溢れた指が自分の顎を捉えた時、身体の奥底からせり上がってくる恐怖に耐え切れず、あたしはガタガタと全身を震わせた。


「うふふっ……怯えているの? 心配しなくてもいいわよ。とりあえず今のトコは、殺す気はないからっ」


 ズクンッ。


 背中の古傷が何故かそれに反応して、鈍い痛みを訴えた。


 それが何なのか、何故なのかは、分からない。

 言葉に出来ない恐怖に囚われ、あたしはただ無力に震えることしか出来なかった。

 一時的に視覚を奪われたあたしの目に映るのは、そのおぼろげなシルエットだけ……けれど、これだけはハッキリと分かった。

 この存在は-----怖い……!

「これから、とぉっても楽しくなるわよ? さぁーて、獲物は罠にかかったことだし、いい男だって評判の国王サマにでも会いに行ってこよーっと。シェスナ、予定通り頼んだわよ? お前の望みは叶えてあげるんだから」

 一方的にそう言い渡して、その存在は唐突に姿を消した。

 現れてから消えるまでの、そのほんのわずかな時間の中で、あたしが強いられた恐怖と緊張は大変なものだった。

 そして、そこから解放された瞬間、あたしはまるで糸が切れた操り人形のように崩れ落ち、意識を闇に手放していた。

 未だ視力の戻らない白濁した世界の中で、耳障りに響く甲高い笑い声の残響が、どこまでも追いかけてくる気配を感じながら-----。



*



 王都を護る結界が失われ、代わりに禍々しい光を放つ赤紫色の被膜に包み込まれたその瞬間-----魔法王国ドヴァーフの中枢は混乱に陥った。

 実に国民の四割弱が魔力を有するというこの国の首脳部には現在、魔力を有しない者がほとんどいなかった。

 それが、仇になった。

 魔力を持つ者だけに降りかかる災いは、その効果をいかんなく発揮した。

「くっ……!」

 錫杖(しゃくじょう)を手にどうにか立ち上がった国王レイドリックは、呼吸を整えながら、現状を把握しようと辺りを見渡した。

 騎士団長オルティスやその部下、宰相ら文官はようやく立ち上がり始めていたが、魔導士団長エレーンやその部下達は未だ床に膝をつき、立ち上がれそうにない。

 いったい、何が……!?

 凄まじい衝撃だった。全身を押し潰すかのような急激な負荷に、最初は呼吸することすらままならなかった。

 身体が鉛のように重い。目に見えない力に、肉体の内部まで抑えつけられているかのようだった。

 このような事態に見舞われたのは中枢部(ここ)だけではないだろう。おそらくは、王都全体がこういった事態に陥っているに違いなかった。

 王都を包み込む禍々しい赤紫色の被膜と、抵抗らしい抵抗も起きないまま、防壁を次々と突破していく無数の黒い影を城壁の向こうに捉え、レイドリックは表情を険しくした。

 防壁の守備に当たっていた兵士達が、魔物(モンスター)の群れにほとんど抗うことも出来ないまま殺されたことは、想像に難(かた)くなかった。

「陛下……! ご無事ですか!?」

 厳しい表情でオルティスが歩み寄ってくる。

 一刻の猶予もならなかった。全ての作戦を仕切り直し、早急に対策を立て直さねばならない。

 -----だが、どうすればいい!?

 自らに問いかけ、レイドリックは模索する。

 この局面を乗り切るにはどうしたら……!?

 場違いなくらい楽しそうな声が響き渡ったのは、その時だった。

「あ〜あ、魔法王国と謳われたドヴァーフが、憐れなものねー」

 きゃはっ、という形容がぴったりの、まだ幼さを残す、甲高い少女の声。

 しかし、その姿はどこにも見当たらない。

 居合わせた者達の間に緊張の色が走った。

「何者だ!?」

 オルティスが鋭い誰何(すいか)の声を上げる。

 その声に応えるように-----室内の空間に淡いピンクの閃光が弾けると、そこに音もなく一人の少女が出現した。

 ぱっちりとした大きなピンク色の瞳に、くるんとカールした長い睫毛。雪のように真っ白な肌、愛らしい、柔らかなカーブを描く、ピンク色の頬。緩やかなクセのある、ふわふわのピンクの髪を両サイドの高い位置で結い上げ、そのまま垂らしている。

 外見的な年齢としては15歳前後といったところだろうか。パフスリーブが愛らしい、甘口なピンクの短衣(チュニック)をさらりと着こなした、まるで綿菓子のようなふんわりとした印象の、とてもとても美しい少女。

 だが、彼女の纏う色彩は、人にはあらざるもの。何より、可愛らしいパールピンクの唇から放たれる言葉の数々が、彼女の外見を見事に裏切っていた。

「初めまして、ドヴァーフの御偉方の皆さん。新しい“結界”は、気に入ってもらえたかしら? うふふっ……素敵でしょー? これね、あなた達の魔力に作用して、その力を抑えこんでくれるスグレものなのよー。しかもあたし達には、ノーダメージ! 最っ高、でしょ?」

 きゃはっ、とこの上なく無邪気な表情でそう言って、少女は華やかな笑みを浮かべた。

 それを耳にした者達は、その言葉の意味するところに戦慄した。

「我々の魔力に作用し、力を抑えこむ、だと……!?」

 誰かの口からもれた絶望にも似た呻きが、周囲にさざ波のようにして広がっていく。主君をかばうようにしてその前に立ちはだかったオルティスが、それを遮るようにして叫んだ。

「これは……貴様の仕業なのか!?」

 オルティスを目にした少女はその瞬間、大きな瞳を輝かせ、腰をくねらせて喜びを露わにした。

「わ〜、いい男ー! 早速出会っちゃったっ! これこれっ、これがシャルーフにはなかったのよ〜っっ! 精気といい、見た目といい、申し分ないわ! 合格よっっ!」

 少女の言葉に眉をひそめるオルティスの背後で、レイドリックが灰色(グレイ)の瞳をかすかに見開いた。

「シャルーフ、だと?」

 オルティスやエレーンを始め、何人かの者達はハッと息を飲んだ。シャルーフの生存者達が語っていた四名の襲撃者の話を思い出したのだ。

 一人はこの世のものとは思えないほど美しい、エルフのような耳をした、長い黒髪の女。
 一人は音もなく大剣を振るう、黒衣の剣士。
 一人は鳥のような翼と猛禽(もうきん)の足を持つ、異形の戦士。
 一人は愛らしい少女の姿をした、人にあらざる色彩を持つ魔性。

「愛らしい少女の姿をした、人にあらざる色彩を持つ魔性……」

 呟きながら気力で立ち上がったエレーンが、やはり主君を背にかばうようにしてオルティスの隣に進み出た。

「貴様……シャルーフを襲った輩の、一人か」

 絞り出すような声で問いかけた美女に冷然と微笑み、ピンク色の魔性が瞳を細める。

「あら? ご名答。何だ……あたし達のこと、知っていたみたいな口ぶりね。つまんな〜いっっ! これからとくと説明して、怖がらせてやろうと思ったのにっ!」

 広間の片隅でそのやりとりを耳にしていたアルベルトは、心の底から震え上がった。シャルーフをたった四名で壊滅へと追いやった恐るべき襲撃者達の話は、彼も聞き及んでいた。

 そのうちの一人が、あろうことか、今、目の前にいる。

 もともと被膜の影響で膝をついたまま立ち上がれないでいた彼は、今や無様に尻餅をつき、喘ぐような呼吸を繰り返しながら、少しでもその存在から遠のこうと必死に上体を反らしているのだが、いかんせん恐怖で腰が砕けてしまっている為、意思に反して全く距離を取ることが出来ていないという有様だ。

 そんな弟とは対照的に冷静な面持ちを崩さない国王レイドリックは、頬を膨らませる魔性の少女に静かな声をかけた。

「ぜひともその説明を聞かせてもらいたいものだ。我々が得ている情報というのはまだ微々たるもの……自己紹介も兼ねて説明してはくれまいか?」

 知的な面立ちの国王にそう乞われた少女は、途端に機嫌を取り戻し、満足そうに笑った。

「あなたが国王サマね? うふふっ、評判通りのいい男っ! わざわざドヴァーフに来た甲斐があったわ! しょーがない、話してあげちゃおっかなー」

 ころころと弾む口調でレイドリックに絡みつくような視線を送りながら、ピンクの魔性は子供のようにもったいぶった表情で話し始めた。

「お察しの通り、シャルーフを叩き潰したのはあたしとその仲間よ。赤子の手をひねるくらい、簡単な仕事だったわ。炎に包まれた街並み、吹き上がる黒煙……奇声を上げて逃げ惑う人間達の姿は見ていて滑稽で、ホンット可笑しかったわよ。自分達を救ってもくれない神の名を口々に叫んじゃって……ふふっ、呆れるくらい愚かで哀れで、無力な生き物! ここも間もなくそうなるんだけどね〜。それを考えるとワクワクしちゃうっ。弱っている獲物をじわじわと狩る……うふふっ、たぁっのし〜い!」

 これから起こる惨劇を克明に脳裏に思い描きながら、少女はこの上なく可愛らしい表情で、残酷に笑った。

「自己紹介してあげるわね。あたしはルシフェル様の配下、四翼天が一人、セルジュ。ふふっ、あなた達が心に刻む最後の名前になるわね。今回はこのあたしが一人でこの国を制圧してあ・げ・る。光栄に思いなさい」

 大きなピンクの瞳が残忍な色を帯び、本来の力を奪われた哀れな人間達をなぶるようにゆっくりと見渡す。

 魂が凍りつくようなその眼光に射竦(いすく)められ、何人かがその場にへなへなと座り込んでしまった。

 しかし、それとは逆にぶるりと全身が奮い立つのを感じた者達もいた。



 ルシフェル-----。



 自分達を脅かす存在の名が、分かったのだ。

 その名を胸に刻み込み、レイドリックはセルジュと名乗った魔性の少女に問いかけた。

「お前達の……ルシフェルという者の狙いは何だ。例の、血文字のメッセージか」
「そうよ」

 何でもないことのように、あっさりとセルジュは頷く。

「我々を滅ぼそうとする-----その理由は?」
「さぁ? 難しいことは分からないわ。あたしはただ、だ〜い好きなルシフェル様の為に行動するだけっ。だから-----」

 死んで?

 にっこりと天使のような顔で微笑まれても、「はい分かりました」などと頷けるはずがない。

「明確な理由すら知ろうともせず、お前はただその命を受けて我々を滅ぼそうというのか!」

 オルティスの怒号をやんわりと受け止め、セルジュは可愛らしい唇の端を上げた。

「安心して。とりあえず、あなたと国王サマはすぐには殺さないから。上等の精気を持つあなた達には、たっぷりと甘い夢を見させてから、眠るように逝かせてあ・げ・る。自慢していいわよ? このあたしを抱いて死ねる幸福な男なんて、そうそういないんだから〜っ」
「なッ……」

 思いもよらぬ魔性の言葉に目を見開いたオルティスは、次の瞬間、屈辱に顔を紅潮させながら叫んだ。

「私にはそのような趣味はない!」

 彼と共に名指しされた国王は淡々とこう応じた。

「都合のいい人形として扱われるのは御免だ」

 二人の男に拒絶の意を示されたセルジュは、意外そうに長い睫毛を瞬かせた。

「あら、こんなに可愛いのに……子供は嫌い? 何だったらもうちょっとセクシーに変身することも出来るけど?」

 -----では、これは本来の彼女の姿ではないということだ……。

 肉体を押し包む負荷と戦いながら、エレーンは頭を巡らせる。

 少女の姿を纏っているのは単に気に入っているからなのか、あるいは別の理由からなのか。それは分からなかったが、少女の姿をした魔性から感じられる力の波動は、半端なものではない。

 冷たい汗が肌を流れ落ちるのをエレーンは感じた。

 どうやらセルジュは他者の精気を糧としており、交わることによってそれを得ることが出来るらしい。運が悪いことに、主君と同僚はその眼鏡に適ってしまったようだ。

 そんなことは、させられない。

 絶対に、阻止せねばならない!

 ぎり、と奥歯をかみしめて、エレーンは自らの状態を探った。

 この“結界”は、魔力に作用してその力を抑えこむ、とセルジュは言っていた。つまりは、魔力の大きい者ほどその制約を受けるということだ-----それは、誰よりもエレーン自身が実感していた。

 レイドリックやオルティスが立ち上がった時、自分はとても立ち上がれるような状態ではなかったのだ。

 そして今、自分の状態を確かめてみて、改めて感じる-----おそらくは、通常の半分程度の魔力(チカラ)しか振るえぬであろう、現状を。

 だが、何としても目の前の強大な敵は倒さなくてはならない。

 主君を守る為にも-----この国を、守り抜く為にも!

「ルシフェルという者は……いったい何者なのだ」

 低い声で問いかけるエレーンに、セルジュはチラリと目を向けた。

「それは秘密。これから死んでいくお前達に言う必要はないわ」

 レイドリックやオルティスが問いかけた時とは扱いが雲泥の差だ。このセルジュという魔性は非常に分かりやすい性格であるらしい。

「それよりも、もう少し怯えたら? お前達、もうすぐ死んじゃうのよ?」

 うっすら笑うセルジュの唇からこぼれた言葉に、押し殺しきれない動揺が周囲に走る。それをおくびにも出さす瞳だけを険しくしたエレーンを見て、気に入らない、とセルジュは思った。

 気に入らないわ……この女、気に入らない……。

 それが何故なのか-----考えて、そこに思い至った瞬間、彼女は非常に不愉快になった。

 似ている、のだ。

 この女は、自分の大嫌いなあの女に似ている-----!

 造作が、ではない。タイプも、まるで違う。

 けれど、その身に纏う雰囲気-----存在が、あの女に酷似しているのだ。

 人間の中にありながら、輝かしいまでの、自分と並んでも遜色はないだろうその美貌。自分に対して物怖じしない、不遜なまでのその態度。主君たる者の近しい位置にあるだろう、その立場。結界の影響を受けながらも感じられる、その魔力。

 そして-----。

 この女の瞳に一瞬だけ走った、忠義という大義名分の裏に隠された、ある感情-----。

 セルジュは気が付いていた。

 そういうところまで、この女はあの女にそっくり……!

 身体の奥底から言いようのない残酷な気分が湧き上がってきた。その衝動に、セルジュは逆らえなかった。

「あ〜あ、本当は挨拶だけしていい男を手に入れたら、後は適当に任せてすぐ“本命”のところに向かおうと思っていたのに……」

 呟きながらパチンと指を鳴らすと、屈強な二体の魔物(モンスター)がその場に出現した。

「気が変わったわ……まずは徹底的に、ここであたしがこの子達と一緒に遊んであげる!」

 可愛らしい顔を歪めて戦闘の開始を告げるセルジュの手の中に、鋭利な棘のついた緑色のムチが現れた。

 周囲に冷たい緊張が走る。オルティスとエレーンを筆頭に、騎士団と魔導士団の精鋭達が国王を守る為の陣形を組んだ。

 ドヴァーフの歴史に深く刻まれることとなる、長い長い死闘が今、その幕を上げようとしていた。
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