イチゴサンデーが有ったか無かったかは別にして昼食を終えた祐一と名雪は再び○ンジャタウ○での遊びを再開した。
「ねえ祐一、あれは一体なんなの?」
『幸せの青い鳥』の際にも言われたような台詞ではあったが祐一は名雪に説明した。
「あれは『ナジャヴの大冒険』に使うヤツだな。」
「『ナジャヴの大冒険』?祐一、私やってみたいお〜。」
「よし分かった、次はあいつをやろう。」
祐一は名雪のリクエストに応え、次は『ナジャヴの大冒険』をすることにした。
いつものごとく始める前に係員に簡単な説明を受けた二人は隣の部屋に向かった。
そこではこのゲームの目的がナジャヴから明かされるのであった。
「ねえ祐一、ナジャヴ可愛いよね〜♪」
インディージョーンズ風のいかにも冒険家風の格好をしたナジャヴ(もちろん作り物)から冒険の目的を聞いた名雪と祐一の二人は冒険を開始した。
ちなみに二人の冒険コースは緑であった。
そして二人はナ○ジャ○ウンをさまよい歩く。
すなわちナンダーバード・マカロニ広場・もののけ番外地・ゴースト13番街・ナンジャコア。
これらすべてを歩き回って隠された財宝を探すのだ。
「ねえ祐一、いくら手に入れた?」
『ナジャヴの大冒険』を終え、冒険クラブハウスを出た名雪は祐一に尋ねてきた。
「俺か?俺はおおよそ65万と言ったところだな。」
祐一の言葉に名雪はちょっとがっかりした。
「残念、負けちゃったよ。それにしても祐一上手だね。」
「そうか?ただ単に名雪より二回多くやっている差だと思うがな。」
「それでも一は上手いと思うけどな。」
「しかし何度やっても上手くできないのがあるんだぞ。」
「へー、そんなのがあるんだね。」
名雪の言葉に祐一は頷いた。
「そうとも、ナンジ○タウンの道は長く険しいのだ。」
「ふぁいとっ、だね。ところでその難しいのって何?」
名雪の質問に祐一はきっぱり言い切った。
「それは『ナンダーバード秘密情報局』だ!!」
ナンダーバード秘密情報局。
それは2つの街をまたにかけた熾烈で過酷なスパイ試験だ。
その試験内容はいずれも(映画やドラマでの)スパイ活動には欠かすことの出来ない技能なのだ。
それらすべてを優秀な成績で突破、スパイになるのだ!
「まず最初は記憶力だ!!」
というわけで名雪と祐一の目の前には三台の電話?が置いてあった。
「・・・一体何するの?」
「何単純なことだ。受話器から流れてくる言葉を覚える、ただそれだけのことだ。」
「ふーん、簡単そうだね。」
名雪の言葉に祐一は笑い飛ばした。
「甘い!甘いぞ名雪。これはまだ始まりにすぎないのだ。」
「・・・祐一、なんか変・・・。」
「次は観察力だ!」
テスト二問目の場所には二台のモニターが置かれていた。
「・・・これは?」
「このモニターに表示される画面を一瞬に覚え、出される問題を解くんだ!!」
「うぅぅ・・・私、暗記は苦手だよ〜。」
「安心しろ、俺もだ。」
「次は反射神経だ!!」
テスト三問目の場所にはモニターとキーボードが三台置かれていた。
「・・・やっぱり?」
「名雪の想像通り。表示される順番にキーボードを打ち込むんだ!!」
「私ブラインドタッチ出来ないよ〜。」
「安心しろ。日本語109キーボードじゃないから関係無い。」
「今度は声だ!!」
テスト四問目の場所にはモニターと電話の受話器が置かれていた。
「・・・これは一体何をするの?」
「画面に表示されるのと同じ音域を出すんだ。けっこうアバウトだからそう難しく考えることはないぞ。」
「これなら私出来そうだよ。」
「うん、確かに。こいつに関しては女性の方が得意そうだしな。」
「今度は射撃だ!!」
テスト五問目の場所には銃と的が置いてあった。
「これなら私にも分かるよ。ただの射撃だね♪」
「その通り。ただし指示通りに撃たなければいけないんだがな。」
「うにゅ〜、それだけが不安だよ。」
「最後は早押しクイズだ!!」
それを聞いた名雪はへこんだ。
「私、早押しクイズは苦手だよ〜。」
「何をおっしゃる名雪さん、ナンチッチを助けるときはあんなに凄かったじゃありませんか。」
「う〜、あれはナンチッチだったからだよ。」
名雪の神業的早押しはネコがかかっていないと発揮されないようであった。
「う〜、成績悪いよ〜。」
危惧していた通り名雪の成績は酷い物であった。
その評価はD。
しかもかぎりなくEに近い、どうしようもない成績だ。
しかし祐一も似たような物だった。
「気にするな名雪。三度目の俺でもC評価なんだ。こいつは難しすぎるんだよ。」
「でもやっぱりくやしいよ。もっと良い成績取りたかったな。」
「やっぱそういうところ、名雪は体育会系だな。」
「それはそうだよ。だって私陸上部の部長さんなんだから。それより祐一、次はどこにしようか?」
名雪の言葉を聞いた祐一はまた考え込んだ。
そしてすぐに決めた。
「次は『ファイヤーブルー』にしよう。すぐそこだし。」
というわけで名雪と祐一の二人は次のアトラクションへと向かった。
ファイヤーブルー。
それは戦闘ヘリに乗り込みゴーストと戦うバーチャルシューティングゲームだ。
頭につけたゴーグルに画面が表示され、座った筐体がぶんぶん動くのでまるで実機に乗っているかのような感覚を味わえるのだ。
それゆえに乗り物に弱い人には・・・あまり薦められなかった。
「うぅぅ〜気持ち悪いよ〜。」
どうやら名雪には合わなかったらしい、すっかり酔い気味だ。
「大丈夫か、名雪。」
とりあえず祐一は名雪の背中をさすってやった。
こんなところでピー(放送自粛用語)を吐かれてはたまらないからだ。
すると名雪は気持ちが悪いのが収まってきたらしい、十分後には何とか元の状態に戻った。
「あー、酷い目にあったよ。ねえ祐一、今度はああいう気持ち悪くなるのじゃないのがいいな。」
名雪が心底そう思っていかのように言ったので祐一は頷いた。
「大丈夫だ。もうああいう風に気持ち悪くなるようなのは無いぞ。」
それを聞いた名雪はほっとした表情を浮かべた。
「あー良かった。私ああいうのは苦手なんだよ〜。ところで祐一、次は?」
「それでは今度は福袋七丁目商店街に行こう。」
というわけでいままで3Fにいた二人は2Fへと下りていった。
福袋七丁目商店街。
そこは昭和30年代を再現した町並みである。
それゆえそこを訪れた人をノスタルジックな気分へと誘ってくれるのだ。
そこを訪れた二人は力士カートでやる押し合い相撲『福招き相撲大会』・殺人蚊を退治するシューティングゲーム『蚊取り大作戦』・早押しクイズの『銭湯クイズ・どんぶらこ』・名探偵ナジャヴと一緒に調査、窃盗犯をつかめる『新・のら猫ナジャヴの事件簿』。
この他にも福袋縁日現座を二人は存分に味わった。
「ねえ祐一・・・・」
祐一は名雪の声がトーンダウンしていることに気が付いた。
そこであわてて祐一が腕時計に目をやるとすでに午後8時30分すぎであった。
楽しい時間が過ぎるのはあっという間だ。
「眠いのか?」
祐一の問いかけに名雪はこくこくと頷いた。
「・・・私、眠い・・・。」
名雪はショボショボになった目をこすりこすりしている。
そんな名雪を見て祐一は苦笑した。
「しかたがないな。帰るとするか?」
「・・・うん・・・もう我慢の限界みたい・・・」
「おい!」
あわてて祐一は名雪の肩を揺すった。
ここでもし名雪に寝られてしまったら祐一は名雪を負ぶってホテルに帰らなければならない。
「・・・まだ何とか大丈夫・・・みたい・・・。」
全然大丈夫そうではない、今すぐにも夢の世界に行きそうだ。
そこで祐一は名雪の手を取って○ン○ャタウン、しいてはサンシャイン60を後にした。
すでにあたりは真っ暗、というわけではなくネオンや店先の明かりが瞬いている。
また高校生ぐらいのがきんちょ(ちなみに祐一も名雪もそうだ)がたむろしている。
その中を二人は通り過ぎて駅に入った。
ガタンゴトン ガタンゴトン
定期的にレールとレールのつなぎ目を通る音が鳴り響く。
窓の外からはまぶしい人工の光が射し込める。
そんな中、名雪は祐一の肩にもたれかかってすっかり寝入っていた。
池袋から祐一達が泊まっているホテルのある駅まではほんの十分たらず。
しかし夜に弱く、しかも今日一日はしゃぎ回って疲れ果てた名雪にはそのわずかな時間ですら寝ることを我慢できないようであった。
「仕方がないやつだな。」
祐一はそうは言ったものの顔は笑っていた。
ホテルのある駅に着いたため祐一は名雪を背負って改札口を出た。
それでも名雪は目を覚まそうとはしない。
完全に熟睡しているのだ。
祐一は重い(本人に言えば怒られるだろう)名雪を背負ってホテルへと足を進める。
その時、祐一の背中の名雪が小さな声で呟いた。
「うにゅ〜、祐一大好きだよ〜♪」
その言葉に驚いた祐一は慌てて背中の名雪に目をやった。
だが相変わらず可愛い寝顔で眠りこけている。
どうやら寝言であったらしい。
それを確認した祐一はやはり周りに聞こえないよう、小さな声で名雪にささやいた。
「俺もお前が好きだぞ、名雪。」
そんな若い二人の姿を見ているのは都会の光に負けることなく輝いている星星だけであった。
あとがき
はぁー、なんとか三編でまとめられたよ。
完結編などという情けない物を出さずにすんでほっとしましたね。
最後は無理矢理ほのラブもどきにしたてあげたし。
でも内容はいまいち、何を書きたかったのか皆目見当も付かない話になってしまいました。
この失敗を生かして次回以降の作品に反映したいですね。
ちなみにナンジャタウンでの名雪の反応は私、そして妹たちのものをミックスして描写しています。
2001.02.27