KanonSS「なゆなゆ、ナ○ジャタ○ンに行く(前編)」

 

 

 

 『つぎはいけぶくろー、いけぶくろー。』

車内に流れたアナウンスに相沢祐一は隣の席で眠りこけていた水瀬名雪の肩を揺すった。

「おい名雪、もうすぐつくぞ。起きろ」

いつもならこの程度では絶対に起きない名雪のはずだが今日は様子が異なっていた。

「うにゅ〜、ゆういち、もうついたのぉ〜?」

まだ寝ぼけてはいるようではあったが名雪はそれだけで目を覚ました。

そんな名雪の様子を見て祐一は

「これは奇跡だ!!!名雪がすぐに目を覚ますなんて・・・、信じられん!!!」

などとは言わずにため息をついた。

「・・・いっつもこんな風に起きてくれれば俺は朝からマラソンなんかしなくて済むのになぁ・・・。」

「むっぅ〜、祐一ひどいこといってるでしょ〜。」

どうやら寝ぼけていたのも収まったらしい、言語明瞭な言葉で名雪はむくれた。

それに対して祐一は何でもないことであるかのような顔のまま言った。

「気にするな名雪。少なくとも俺は気にしてないぞ。」

「うぅぅ〜、祐一いじめっ子だよ〜。」

そんな名雪を無視して祐一は立ち上がった。

「ほれ、降りるぞ。荷物忘れるなよ。」

「あっ、うん・・・。」

 

 こんなやりとりがあったものの二人は無事池袋の駅に到着した。

 

 

 「うわ〜、すごい人混みだねぇ〜。」

名雪は駅のホームから階段を下りていくサラリーマン達の群を見てそう驚きの言葉を上げた。

それに対して祐一は無感動な面もちでそれに応えた。

「そんなにすごいか?いつもより空いているぐらいだと思うが。」

「えぇ〜!!これでいつもよりも空いているの?わたしんちのほうじゃあこんなに人はいないよ〜。」

それを聞いた祐一はため息をついた。

「あのなぁ名雪。地方と東京、それも殺人的に混む所を一緒にするなよ。」

「うにゅ〜、そういうもんなのかな?」

「そういうもんなんだよ。それよりこんなところでぼやっとしているわけにもいくまい。さっさと行くぞ。」

「うん、そうだね。でも・・・離ればなれになるとイヤだから手をつないでいこうね。」

そう言って名雪は祐一を見上げた。

その子犬チックな視線と来たら・・・、照れくさかったが祐一は名雪の申し入れを断ることはできず仲良く手をつないで人混みの中へ分け入った。

 

 

 駅を出た二人はそのまま目的地へと向かった。

駅から続く地下道を歩き、そして階段を上がる。

すると目の前にはティシュ・チラシ等を配る人間であふれかえっていた。

「すごいね祐一・・・。」

名雪は驚いたように言うが祐一にとっては当たり前の光景だった。

故にそのまま歩き始める。

 

 とたんに次々と何かが差し出される。

しかし祐一はそれらをすべて無視した。

そしてすぐそばにある交差点を信号待ちしているとき、隣にいる名雪に目をやるとその手はティシュやらチラシやらでいっぱいだった。

「・・・お前はなにをしているんだ?」

祐一の言葉に名雪は不思議そうな顔をした。

「何って何が?」

「・・・その手にいっぱいのごみの山だが。」

「ゴミじゃないよ祐一、ティシュとかチラシだよ。」

「ティシュは使うからゴミという言葉を撤回しよう、しかしそのチラシ・・・お前は利用する気があるのか?」

祐一の言葉に名雪は笑顔で首を横に振った。

「うんん、私にはこんなの必要ないよ。」

「だったら受け取るんじゃない。受け取ればゴミになり、しいては地球にもよくないんだ。」

その言葉を聞いた名雪は尊敬の表情を浮かべた。

「祐一すごいね。そんなこと考えていたなんて・・・見直したよ。」

「ははは、おそれいったか。」

祐一はそう言うと高らかに笑ったが心の中では別のことを考えていた。

(ただ単に受け取るのがめんどくさいだけなんだなんて今更言えないよな。)

と。

 

 

 二人は人混みの多いサンシャイン60通りをすぎると東急ハンズ脇のエスカレーターを下った。

そしてそのまま動く歩道のある通路を突っ切るとサンシャインシティーに入った。

そしてワールドインポータントに入ると再びエスカレーターを使って2Fにあがった。

そしてそのまま突き当たりの所にあるあるテーマパーク?の前に立った。

すると壁やポスターに描かれているキャラクターを見て、名雪は目を潤ませた。

「うぅぅぅ〜、ナジャヴかわいいよ〜。」

そう、祐一と名雪がやって来たのはナ○コ・○ンジャ○ウンだったのである!!

 

 さて!!

遠く北の雪国に住んでいる祐一と名雪の二人が帝都東京、それも退廃と悪徳の町・池袋にあるナンジ○タウ○にやってきたのか。

それには深くて大きい理由があるかもしれなかった。

 

 

 それはつい先日、夕食を終えてくつろいでいた時間でのことだった。

「なあ名雪。」

祐一はリビングでテレビを見ていた名雪に声をかけた。

「何なのかな祐一?」

そんな名雪を見た祐一は小首を傾げて聞くその様子が何ともかわいらしいと心の中で思った。もちろん口には全く出さないが。

「・・・実は今度東京に戻ることになったんだ。」

「えっ!?」

名雪は目を見開いて驚いた。

そして顔をうつむかせ、そしてつぶやいた。

「・・・そっか・・・祐一東京に帰っちゃうんだ・・・。」

そんな名雪のを見て祐一は笑い飛ばした。

「勘違いするな名雪。俺はお前のそばにいつでもいてやるって約束しただろ。」

「で、でも・・・」

「親父とお袋が一週間ばかり日本に帰国するから久しぶりに顔を見せろっていうことだよ。」

それを聞いた名雪はほっとした表情を浮かべた。

「何だ・・・驚いちゃったよ。てっきり祐一、実家に帰ちゃうもんだと・・・。」

「約束しただろ、俺を信用しろって。」

「うん♪」

名雪の笑顔を見た祐一は急にそっぽを向き、そして照れくさそうに言った。

「それで話は本題に入るんだが・・・一緒に来ないか?」

「えっ!?」

名雪は思わず耳を疑い、そして顔を真っ赤に染め上げた。

それを見て取った祐一も顔を赤らめた。

「で、でも祐一・・・久しぶりの親子水入らずなんだよ。私が邪魔するわけには・・・」

「いいんだよ。親父とお袋も久しぶりに名雪の顔が見たいって言ってたしな。」

「う、嬉しいけどお母さんにも聞かないと・・・。」

「了承です。」

「「えっ!?」」

突然の「了承」に祐一と名雪が振り返ると台所から秋子さんが顔をのぞかせていた。

 

 「秋子さん・・・」

「おかあさん・・・」

二人の言葉に秋子さんは微笑んだ。

「姉さんから話はきいていますからね。名雪、行ってらっしゃい。」

「良いの?お母さん。」

名雪の言葉に秋子さんはうなずいた。

「ええ、構いませんよ。ついでだから祐一さんと遊んできたらどうかしら。名雪は東京に行ったことがないでしょ。」

 

 

 こんなやりとりがあって名雪は祐一と一緒に東京に上京、祐一の両親に会ったのであった。

 

 「まあまあ名雪ちゃん、こんなにきれいになって。祐一にはもったいないわね。」

「うむ、もっともだ。祐一にはもったいなさすぎる。」

両親の言葉に祐一はむくれ、名雪は顔を赤らめた。

「本当は私、娘が欲しかったのに生まれたのは祐一でがっかりしていたんだけど・・・、名雪ちゃんが娘になるんならそれも良いわね。」

「そんな・・・私なんて・・・。」

名雪の反応に祐一の親父は萌えた。

「ああ!!かわいい娘が欲しかった!!!!そして『娘はお前なんかにはやらん!!!』ってやりたかったのに・・・。」

やはり祐一の父親は祐一の父親だった。

 

 

 まあこんなやりとりの後、祐一の両親は再び海外の勤務先へと戻っていった。

そんな二人を見送った祐一と名雪はせっかくの東京、遊んで過ごすことし、名雪に要望を聞いたのであった。

すると名雪はいくつか名前を挙げた。

その中に。

今、祐一と名雪の目の前にあるナム○・○ンジャタウ○があったのであった。

 

 

 

 「ねこー、ねこー。」

名雪は入場する前からもう目はうるうるである。

なぜならばここナンジ○タウンのマスコットキャラは皆ネコだからであった。

そんな名雪を呆れ加減半分、ほほえましさ半分で祐一はふと気を取り直し、名雪に声をかけた。

「おい名雪、さっさと入るぞ。」

それを聞いた名雪は力強く元気いっぱいにうなずいた。

「それじゃあナンジャタウンの冒険にレッツゴー!!」

祐一は恥ずかしさで顔を真っ赤にしながらもナンジャパスート(1日フリーパス券)を二枚購入するとナ○ジャタウ○へと入っていった。

 

 

後編(もしかしたら中編)へ続く

 

 

あとがき

 つい昨日、ナンジャタウンに行って来て思いついたネタです。

帰り道の電車内で思いつきました。

というわけで話の細部は私が実際に体験したことだと思っていただいて結構です。

 今回は思いついたことをだらだら書き、オミットはしていません。

たまにはこういうのも良いかなと思いまして。

そういうわけで長くなってしまい、結果前後二編(もしかしたら三編)になってしまったのでした。

 続きはできるだけ早く上げたいと思っています。

 

 

2001.02.24

 

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