ナ○ジャタ○ンに入った祐一と名雪の二人はとりあえず手荷物をコインロッカーへしまい込んだ。
手荷物ははっきり言って邪魔だからである。
「ねえ祐一、祐一はここに何度か来たことがあるの?」
名雪の言葉に祐一は頷いた。
「ああ、二回ほど来たことがある。」
「それじゃあ祐一のお薦めは何なのかな?」
名雪の言葉に祐一は考え込んだ。
(お薦めか・・・、う〜ん何だろう?)
しかし上手く思いつくことが出来なかった祐一は名雪にこう言った。
「とくにこれが一番と言うのはないな、っていうか1日あれば全部出来るし片っ端からやってみれば良いんじゃないか。」
「そうなの?」
「そうとも。だから名雪、最初は何が良い?」
「分からないから祐一に聞いたんだよ〜。」
「そうか、それなら最初はナイトイーグルの砦にするか。」
「分かったよ。でも祐一、なんでその何とかイーグルなの?」
「ただ単に入り口に一番近いからだ。」
祐一の言葉に名雪は笑った。
「やっぱり祐一は祐一だよね。」
「・・・ちょっと気にかかるが見逃してやろう。さっさと行くぞ。」
「うん♪」
というわけで二人は入ってすぐの吹き抜けを左折し、ナイトイーグルの砦に向かった。
「ここは一体何をするの?」
順番待ちの最中、名雪は祐一に尋ねてきたので祐一は簡潔に答えた。
「いわゆるガンシューティングってやつだな。出てくるゴーストを銃で撃つわけだ。」
「ふ〜ん、そうなんだ。ところで祐一、難しい?」
「まあ難しいといえば難しいし簡単と言えば簡単だな。」
「・・・つまりやってみてのお楽しみって言うことだね。」
「まあそういうことだな。」
祐一の言葉を聞いた名雪はため息をついた。
「・・・祐一は相変わらずだよね。」
程なくして祐一と名雪の順番になった。
すると二人の前に係員が現れ、尋ねてきた。
「どなたか初めての方はいらっしゃいませんか?」
それを聞いた祐一は名雪を指さして言った。
「こいつが初めてなんで説明、お願いします。」
「分かりました。」
係員は手早く丁寧に(マニュアル通り)説明したのだった。
「うにゅ〜、これでいいのかな・・・?」
不安そうに尋ねてくるので祐一は名雪の様子をチェックした。
「ちゃんとスリングを肩掛けしているし向きもあっている、OKだ。」
それを聞いた名雪はほっとした表情を浮かべた。
「良かった〜。ところで撃つのってこれでいいんだよね?」
名雪はショットガンのスライドを引いてからトリガーを引き絞った。
「あれ?」
「違うぞ名雪、こうやるんだ。」
祐一はトリガーを引きっぱなしのままスライドをガシャガシャ引いた。
すると暗い壁に赤いポイントが映す出されたのが目に見えた。
「そっか・・・引き金を引きっぱなしなんだね。」
そういうと名雪は祐一に教わった通りにやってみた、すると今度はうまくいった。
「これで大丈夫だね。」
その時、壁に掛かっていたランプがレッドからグリーンにかわった。
「よし、行くぞ。名雪、紋章を撃て。」
「わかったよ。」
名雪はきちんと銃を操作すると緑色に点滅している紋章を撃った。
そしてゲームが始まった。
二人はとにかく無言のまま銃を操作し続けた。
次々と物陰から現れるゴーストを発見すると同時に銃を発射する。
二人は次々と任務をこなしていった。
「はぁ、疲れたよ。」
名雪はそんなことは言っていたが顔はご機嫌だった。
見事一発でナイトイーグルの砦を成功させ、ネコの印刷されたシールをもらったからであろう。
「次はどこへ行きたい?」
祐一の言葉に名雪は言った。
「今日は祐一に任せるよ。だから祐一が選んで。」
「わかった、それならもののけ番外地に行こう。」
そういうわけで二人はもののけ番外地に向かった。
「もののけ番外地なんて名前が付いているからすっごく怖そうなイメージがあったけど・・・そうでもないね。」
名雪は目の前にある『もののけたま』の像の頭をなでながらそう呟いた。
それにたいして祐一は当たり前だろという顔で答えた。
「あんまり怖いと小さなお子さんが入れないからな、まあこんなもんだろうさ。それより『進め!霊界三輪車』に行くぞ。」
「ねえ祐一、その霊界三輪車ってなんなの?」
名雪の質問に祐一は先ほどと同じく簡潔に答えた。
「ナンチッチという子猫を三輪車を使って安全なところまで運ぶというゲームだ。
ただしこの子は臆病でな、スピードの出し過ぎや振動で死んでしまうんだ。」
それを聞いた名雪はギュッと力を入れると祐一に言った。
「祐一!がんばってナンチッチを助けようね!!」
相変わらずイチゴとネコが絡むと性格が変わる名雪を半分呆れつつも祐一も
「おう、がんばろうぜ。」
と頷いたのであった。
「ねえどうだった祐一?」
先に終わって待っていた祐一の元へ笑顔の名雪が飛びついてきた。
「その様子だとうまくいったみたいだな。」
「うん♪それで祐一は?」
「あと少しの所だったんだがダメだった。」
「えっ!!」
名雪は目を見開いて驚愕した。
「祐一・・・ナンチッチを殺しちゃったの!?、ひ、酷いよ。」
「おいおい。」
「私、もう笑えないよ・・・笑えなくなっちゃったよ・・・。」
本気で泣き出しそうな雰囲気に祐一は慌てた。
「だ、大丈夫だぞ名雪。ナンチッチの魂はまだ助けられるぞ。」
「本当?」
「ああ本当だとも。だから『もののけ探検隊』でナンチッチを一緒に助けよう。」
「嘘ついてないよね祐一?」
「ああ、うそなんかついていない。」
その言葉を聞いた名雪は目に浮かべた涙を拭くと頷いた。
「いやぁ〜ん、もののけたま可愛いよ〜♪」
名雪は『もののけ探検隊』ナビゲーターのもののけたまを抱いてご機嫌だった。
ちなみにもののけたまというのは足がない幽霊の黒猫である。
『もののけ探検隊』というのはこのもののけたまと共に七匹のとんち妖怪と勝負、6勝以上すれば閻魔大王と対決、勝てばナンチッチと魂を返してもらえる、そういうアトラクションであった。
「何とかここまで来たね、祐一。」
名雪はふぁいとっ、とばかりガッツポーズを取りながら祐一に言った。
ここまで対戦した6匹のとんち妖怪のすべてに勝利を収めた名雪はついにナンチッチの魂を賭けて閻魔大王と対戦する権利を得ていたのである。
「それにしても・・・名雪、大丈夫なのか?」
祐一は尋ねた。
最後の閻魔大王とのクイズ対決は早押しクイズで20問以上正解しなければいけないのだ。
しかしそれを成功させるのはかなりの至難の業であったからだ。
しかし名雪はやる気満々の様子で閻魔大王と対決したのであった。
「ナンチッチー♪ナンチッチー♪」
名雪はご機嫌な様子でもののけ探検隊のスペースを後にした。
頭の中で何かを飼っているんじゃないかというぐらいののんびり屋さんの名雪からは考えられない素早い手つきで二択のボタンを押し続け、名雪は閻魔大王とのクイズ対決に勝てたのだ。
そしてナンチッチの魂を奪還する事に成功したため名雪はご機嫌だったのである。
「さて今度は『地獄旅館』に行くか。」
祐一の言葉に名雪はビックと反応した。
「地獄旅館?・・・それって一体どんなの?」
「まあお化け屋敷みたいなもんかな?」
祐一の言葉に名雪はブルッと震えた。
「私・・・そういうのは苦手なんだけど・・・。」
そんな名雪の言葉に祐一は笑った。
「大丈夫、大丈夫。全然怖くないって。」
「うにゅ?そうなの?」
「ああ、ただびっくりさせるだけ。あとは入るときに脈拍を計って出るときに照合、入った人間の度胸をチェックするぐらいだな。」
「なんだかおもしろそうだね。」
祐一の言葉に名雪は笑った。
「ああ、おもしろいとも。前に俺がやったときは『子犬の心臓』って評価されたぐらいだからな。」
「へー、祐一が子犬の心臓の持ち主なんだー。」
「どうだ?おもしろそうだろ。」
「うん、そうだね。」
名雪がようやく賛意を表してくれたので祐一は名雪を連れて地獄旅館へと入った。
「なんかこれ可愛くないね。」
名雪は自分が手にした何かを見てそう言った。
それは能のお面をかぶった蟹のような、まあ訳の分からない代物であったのだ。
「まあそういうなよ。こういうところまで可愛いキャラクターだと雰囲気が出ないし。
何よりこの形は持ちやすいだろ。」
「うにゅ〜、確かにそうなんだけど可愛いネコさんの方が良いよ〜。」
まあこんなのんびりした雰囲気で二人は地獄旅館を巡ったのだった。
「私も祐一と同じ子犬の心臓だったよ〜。今回の祐一は?」
その言葉に祐一は受け取った紙をペラペラと振りながら名雪に見せた。
「俺も前と同じく子犬の心臓だよ。」
「本当だ、私と一緒だね。なんだか祐一と一緒だと嬉しいな。」
「・・・お前言ってて恥ずかしくないか?」
祐一の言葉に名雪は顔を真っ赤にして頷いた。
「実はちょっと・・・。」
「照れるぐらいならそんなこと言うな。それより次はどこにするか・・・?」
祐一は腕を組んで考え込んだ。
すると名雪が珍しく希望を述べてきた。
「あのね祐一・・・上の階に行ってみたいんだけど・・・。」
「上の階?・・・なるほどそれもいいかもな。」
というわけで名雪の希望通りエスカレーターを使って二人は3Fへと上がっていった。
「ねえ祐一、あれは一体何なの?」
3Fに上がってすぐ、名雪は目の前を通り抜けた人が持っていた物体を指さした。
それはシルクハットをかぶった卵のような物体だった。
「あああれか、あれは『幸せの青い鳥』に使うやつだ。やってみるか?」
「うん、やってみたいな。」
「よし、それならやってみるか。」
そういうわけで祐一と名雪はマカロニ広場へと向かった。
「ところで祐一、これって何をすればいいの?」
名雪の質問に祐一は答えた。
「ようはこいつを育ててやればいいんだ。ご飯を与えたりトイレに連れていくことでな。
あとは他の人とエナジー何とかを交換したりするわけだな。」
「分かったような分からないような・・・、まあやってみるよ。」
というわけで二人は『幸せの青い鳥を楽しんだ。』
「ねえ祐一♪何歳まで成長した?」
『幸せの青い鳥』を出ると名雪がそう尋ねてきたので祐一は素直に答えた。
「俺は38歳まで育った。名雪は?」
「私はねぇ、12歳まで育ったんだよ。ところで祐一のは何でそんなに成長しているの?」
「前に来たときのデータがあるからな、その続きだったんだよ、俺のはね。」
「ふーん、そんなことできるんだね。知らなかったよ。」
「名雪だって次からは出来るさ。このパスポートを取っておけばな。」
「それじゃあ大切にしておくよ。でも・・・また来れるかな?」
名雪の言葉に祐一は首をひねった。
「うーん、難しいかもな。あの町からここまで来るのはむちゃくちゃ時間がかかるし。」「そうだよねー。」
名雪が若干がっかりしたようだったので祐一は励ました。
「なーに、俺がまた連れてきてやるさ。」
「ありがとう祐一♪だから祐一は大好きだよ♪」
そう言って名雪は祐一に抱きつき、全身で喜びを表現した。
そんな名雪を祐一は笑顔で見つめている、とふいに腕時計に視線を向けた。
そして祐一は口を開いた。
「そろそろ12時だ、昼食を食おうぜ。」
「えっ!?もうそんな時間なの?」
「おうとも。ほらな。」
そう言って祐一は名雪に腕を突き出した。
「ほんとだね、もうお昼だよ。この中にいると時間が分からなくなっちゃうね。屋内だし楽しいから。」
「そうだな。ところで名雪、何が食べたいんだ?」
祐一の問いかけに名雪は即答した。
「もちろんイチゴサンデーだよ!!」
「・・・イチゴサンデーはメニューにあったかな?」
祐一は首を傾げつつも名雪を連れて食事が食べられる所へと向かった。
後編に続く
あとがき
「なゆなゆ、ナ○ジャタ○ンに行く(中編)」を無事お届けいたしました。
前編で危惧したとおり中編です。
もしかすると次の後編で完結しないかも・・・。
はじめのプロットは吹っ飛んで先がさっぱり見えないし・・・、どう終わらせよう?
2001.02.26