宮仕えはつらいよ〜プリムの細腕奉公記

 第4話.プリム 利用される。

 

 

 「いいですか、こうやってお掃除するんですよ。」

私は腰に力を入れながらモップで床を磨いています。

そんな私をキャロルさんはポケーッと眺めています。

 

(本当にわかっているのでしょうか?)

一抹の不安を覚えつつも私はキャロルさんに向かって言いました。

「それではキャロルさん、ここからここまでのモップがけ、やっておいてくださいね。」

そう指示すると私は自分の仕事を成すためにその場を後にしました。

 

 自分の仕事に戻った私は手早くベッドメーキングや着替えの準備等を見事なまでに

こなしました。

これでこそ完璧なメイドですよね♪

そういうわけで一仕事終えた私はキャロルさんの様子を見に行きました。

するとどうでしょう。

そこにはキャロルさんの姿はなく、ただモップとバケツが置かれたままでした。

「こ、これは一体・・・・?」

キャロルさんが仕事をさぼった、という発想が沸かない私は呆然としてしまいました。

そしてそのままうつろな瞳で廊下を見続けるだけ。

 

 そんな時、メイド頭のマウリィさんが通りかかりました。

「ちょっとプリム。ちゃんと仕事しなくちゃ駄目じゃないの!」

マウリィさんの言葉に私は我に返りました。

そこで慌ててマウリィさんに私は反論しようとしました。

「こ、これはキャロルさんが・・・・。」

「お黙りなさい!!!」

マウリィさんの一喝が私の言葉を遮りました。

「このごろの貴方はどうかしていますよ!人に責任を押しつけてばかりで・・・・。」

マウリィさんの叱咤の言葉は延々2時間以上掛かりました。

私は何一つ悪いことなどしていないのに・・・。

 

 

 マウリィさんのお小言から解放された私は廊下のお掃除をし始めました。

ゴシ  ゴシ  ゴシ

私の操るモップが通り過ぎた場所はどんどんピカピカになっていきます。

そしてようやく私が廊下を磨き上げたとき、ひょっこりとキャロルさんが顔を見せました。

「あれ?やっていてくれたんだー。」

「なななな・・・・・。」

私はキャロルさんの言いぐさに呆れて言葉も出ませんでした。

自分はさぼっていたのに・・・。

それでもここでは怒りを爆発させませんでした。

どうせタイミング良くというか悪くというか・・・、とにかくマウリィさんが登場して私を怒るに決まっ

ていいるからです。

私は怒りを堪えながらも、それでもやっぱり震えてしまう声を気にしつつも笑顔で言いました。

「それでは今度は別のお仕事を教えますね。」

「はーい、よろしくね。」

小憎たらしい返事をキャロルさんは返してくれました。

 

 

 「いいですか。こうやってピシッとシーツを敷いて、そして毛布をこうやって畳むんです。」

私はさっきと同じようにキャロルさんに見本を見せていました。

ここはメイドたちの寝室です。

ここには二段ベッドが数十置いてあり、メイド達は基本的にここで寝泊まりします。

ちなみに私の敷いたシーツにはしわ一つありませんし、畳んだ毛布はまるで箱のようにきちん

と重なっています。

「さあ、分かりましたか。それではやってみて下さい。」

私がそういうとキャロルさんは慣れない手つきでベッドメーキングを始めました。

その様子を私はジッと見ています。

その時、廊下から私を呼ぶ声が聞こえます。

何かと思って廊下に出ると久しぶりというのでしょうか。

あの女・・・、いえ王女様の呼び出しだったのです。

そこで私は

「キャロルさん、しっかりやっておいてくださいね。」

そう言い残して王女様の部屋へと向かったのでした。

 

 

 「うっー、重たかったです・・・。」

私は筋肉痛で痛くなった手をさすりながら呟きました。

今日、私が買ってきたのは本30冊でした。

しかもすべてハードカバーの重たい物・・・・。

こんなのはお城に出入りしている御用商人に注文すればすぐに入荷されるというのに・・・、

酷いです。

それでもまだ仕事は残っています。

さすがにもうキャロルさんでも頼んだ仕事は終わっていることでしょう。

私はメイド部屋のドアを開けると中を覗き込み、そして絶句しました。

部屋の中身は私が出ていったままの状態・・・、いえ私がセットしたベッドにキャロルさんが

横になって気持ちよさげに寝ていました。

 

 「あうぅ・・・。」

私はそのまま冷たい床の上にペチャンと座り込んでしまいました。

「なぜ私はこうも不幸なのですか・・・?」

しかし私の問いかけに応えてくれる人は誰一人としていませんでした・・・・。

 

 

あとがき

プリムの受難物語(笑)第四弾のお届けです。

本当は昨日のうちに仕上げる予定だったんですがメイドのお仕事が分からなくて。

結局は今日完成です。

 

ところで素朴な疑問なんですがメイド萌え萌えの方。

メイドのお仕事って何なんでしょう?

ご主人様の忠実な奴隷・・・なんて無しですよ、こいつは18禁ではないんですから。

とりあえず掃除等は分かります、ただ料理は専門の人間が雇われているはずだし。

洗濯もそれ専用の人間が雇われているはずだし。

やっぱ分からないなー。

 

 

平成13年1月18日


第3話へ   第5話へ   読み物部屋へ   TOPへ