第5話.プリム 立ち上がる。
私がキャロルさんの新人教育を委されてから一年近くが経ちました。
さすがのキャロルさんも今ではすっかりメイドとして板がついてきました。
なによりメイド頭のマウリィさんを始めとしてメイド達一同がキャロルさんの本性を知ったので
私に責任を押しつけられなくなったのがもっとも嬉しいんですけどね。
「はぁー。のんびり出来ますねー。」
久しぶりの休日を私は堪能していました。
場所は喫茶店。
女一人というのは結構空しいものがありますが仕方がないです。
ここ二年間は仕事に追われていてゆとりなど全くありませんでしたからね。
とにかく何も考えずにがむしゃらに働いてきましたからね。
そんなことを思いながら空を見上げると空は真っ青でした。
「良いお天気です。今日は良いことがあるかな?」
そう呟くと私はテーブルに肘を付きふと考え込みました。
何か大切なことを忘れているのではないか。
そんな気がしたのです。
(何だったんでしょう?)
いくら考え込んでも思い出せません。
かなり大事な事だったはず何ですがね。
今の私の存在の根底に関わるような・・・・。
しかし結局思い出せなかった私はそのまま久しぶりの休日を堪能したのでした。
「ただいまーお母さん!」
「あらプリム、お帰りなさい。」
その日の夕方、私はドルファン首都城塞から一時間ほど離れた実家に帰ってきました。
お城のメイドとして働き始めてから二年ぶりの里帰りです。
「へへー、驚いた?」
私が聞くとお母さんは笑いながら言いました。
「はいはい、驚きましたよ。
それよりプリム、久しぶりなのだからおばあさまにも挨拶してらっしゃい。」
その言葉を聞いた瞬間、私は全てを思い出しました。
私が何のためにメイドになったのかを。
(そういえば私がお城のメイドになったのは王家への復讐だった・・・。)
すっかり忘れていて今更復讐もへったくりも無いような気もしましたが私はようやく忘れていたこと
を思い出したのです。
(お仕事が忙しかったからな・・・・、ゆとりが無かったし・・・。)
久しぶりの実家での夕食をとった私は二年ぶりの自分のベッドに潜り込むと天井を見ながら考え
始めました。
あの方の・・・、いえおばあさまの復讐についてを・・・。
(私は一体どうしたいいんだろう?)
そこで私はお城での様々な出来事について思いをはせてみました。
楽しかったこと・・・つらかったこと・・・悲しかったことなど。
(やっぱり実行しましょう。)
私はすぐにそう結論づけました。
はっきり言えばお城でのメイド生活、楽しいことも多少は有りましたが腹立たしいことのほうが
圧倒的に多かったからです。
あの女・・・プリシラ王女に使いっ走りさせられたつらい日々・・・・。
馬鹿女・・・キャロルさんに良いように使われていた情けない日々・・・。
迷ったのが不思議なぐらいです。
というよりおばあさま云々よりも私個人としてあの二人にはギャフンと言わせてやりたい気持ち
です。
私は心の奥底からわき上がるこの衝動を抑えることは出来そうにありませんでした。
「キャァー!!!」
それはとある夜勤の日の出来事でした。
突然、辺りをキーンとかん高い悲鳴が包み込みました。
あの声はあの女・・・いえ、王女様に間違い有りません。
私はギャフンと言わせてやったという快感に胸を震わせながら王女様のもとへと急いだのでした。
プリムちゃん、WIN!?
あとがき
これで「宮仕えはつらいよ〜プリムの細腕奉公記」は完結です。
この後はゲームと同じく幽霊騒動へとシフトしていきます。
もしくは私の書いた長編SS「Condottiere〜傭兵隊奮戦記」にですね。
当初の計画ではお笑いを目指していたのですが素質ないんですかね?
結局、受難物になってしまった・・・。
これからも精進してそっちの系統のお話も書けるようにしたいです。
平成13年1月19日