宮仕えはつらいよ〜プリムの細腕奉公記

 

第3話.プリム 新人教育を申しつけられる。

 

 

 私がドルファン城でメイドとして奉公するようになって一年以上が経ちました。

 

 あの女・・・、いえ王女様にやれケーキ・アイスを買ってこいだの、誰それに渡りをつけて来い

だの、厨房からギンバエしてこいだの何だのとこき使われた悲惨な、そして先輩達の誰もが

同情してくれ、しかし決して代ってはくれなかった地獄の日々。

その地獄のような一年・・・・、それも既に過去の物になりつつあります。

どうやら私に飽きたらしく近頃はあの女に用事を言いつけられることが無くなったからです。

 

 

 「ふー、ピカピカです。」

私は袖で額の汗を拭きつつ自分が磨き上げた廊下を見ながらそう呟きました。

今朝から半日かけて磨いただけのことはあってまるで鏡のようです。

するとそこへメイド頭のマウリィさんが素早く、それでいて優雅にその場を通りかかりました。

「ご苦労様です。」

私が声をそうかけるとメイド頭は頷きながらこう言いました。

「見事な出来映えね、プリム。この調子で頑張るのよ。」

その時とんでもないアクシデントが発生しました。

あまりにもきれいに磨き込みすぎた廊下でマウリィさんが足を滑らせたのです。

そのまま180度回転したマウリィさんは頭から廊下に転がり落ちました。

 

 「・・・・・・・・。」

そのあまりの出来事に私は初め言葉もありませんでした。

しかし事態を飲み込んだ私は腹を抱えて笑い出してしまったのです。

それが不幸の始まりでした・・・・。

ふと気が付くと起きあがったマウリィさんが私をジッと凝視していたのです。

まるで死に神のごとく・・・。

「・・・す、すみません!!大丈夫ですか?」

しかしいまさら手遅れでした。

マウリィさんはにやりと、まるで悪魔のような表情で私にこう言いました。

「貴方に新人教育を任せますよ。」

と・・・。

蛇に睨まれた蛙のごとし、の状況にあったあった私はただ頷くしかありませんでした。

 

 

  そういうわけで数日後。

私の目の前にはつい最近までウェイトレスをやっていたというフリーターが立っていました。

ポニーテールをした明るく元気な女性です。

いちおう私よりも年増、いえ年上なのですが育ちのせいかメイドとしての心構えや教育など

一切受けていません。

すべてを私が教え込むのです。

その責任の重さをひしひしと感じていると女性は私にこう言い放ちました。

「ねえプリムちゃん、私いつまでこうしていればいいのかな?」

「・・・私は貴方の先輩です。プリムちゃんなどと気安く呼ばないで下さい。」

なんて常識の欠片もない、礼儀知らずな女なのでしょう。

私は怒りを堪えてそう言いました。常識のない馬鹿女なんて私、嫌いです。

しかし馬鹿女(キャロルと名乗った)は続けざまにこう言いました。

「えー!だってプリムちゃんはプリムちゃんだよ。私よりも年下なんだしー。」

 

 プチプチプチ

私の頭の中で何が切れる音が聞こえました。もう我慢の限界です。

思わず私はキャロルさんを思いっきり怒鳴りつけていました。

「いい加減にして下さい!!!貴方には目上の人間を敬うという当たり前のことも出来ないのですか!!!」

その時、私とキャロルさんの前をマウリィさんが通りかかってしまったのです。

 

 「何をしているんですか、プリムさん!!貴方は新人に怒鳴りつけるような指導しかできないのですか!!!」

 

 

 そのまま私はマウリィさんに説教されてしまいました。

私は何一つ悪いことなどしていないのに・・・。

これというのもすべてあの馬鹿女のせいです。

神様・・・私が一体何をしたというのでしょう?

そんな罰を与えられるような悪いことを私はしたのでしょうか?

あまりにも試練にしては過酷すぎますよ・・・。

 

 

 

あとがき

プリム受難物語(笑)第三弾完成です。

もう初めのプロットは無視です。

全然違う話になってしまっています。

ですからこの路線で行くことにしました。

なおメイド頭だとあまりなのでマウリィという名前を付けてあげました。

 

それでは続きをお楽しみに。

 

 

平成13年1月17日


第2話へ   第4話へ   読み物部屋へ   TOPへ