第二十二章.SUMMER VACTION

 

 

 「あ、暑い・・・。」

傭兵たちはぎらぎらと照りつける真夏の太陽の下を走っていた。

すでに全身は汗まみれなうえに埃まみれ。

完全武装したその身体は重さと疲労に耐えかねて悲鳴をあげている。

また音を立てないように隙間に布がつめられ、目立たないように暗色で染められた鎧は夏の

日差しによって熱を持ち、熱くて触れないほどであった。

 

 「小休止!」

誰もが待ち望んでいた号令が下ると傭兵たちは一人残らず木陰に入るとバタバタとまるで死体

のように横たわった。

誰もが皆、息をあらくついている。

しかし五分もすると傭兵たちは元気を取り戻し、親しい者同士ペラペラとお喋りを始め、訓練所

は喧噪に包まれた。

 

 「おい、ユキマサ。」

為政が日陰で水を飲んでいると汗をダラダラ流したグイズノーが声を掛けてきた。

「何だ?」

為政が問いただすとグイズノーは隣に腰を下ろし尋ねてきた。

「今年は夏休みないのか?」

去年、傭兵隊は訓練所・兵舎の増改築のために約40日もの夏休みがあった。

そのことを知っていた傭兵たちは夏休みを今か今かと待ち望んでいたのだ。

しかし・・・

「あるわけないだろ。」

為政がそう答えると周囲で聞き耳を立てていた十数人の男たちからため息が漏れた。

「おいおい、本当かよー。」

「嘘でしょ、隊長。」

「俺の青春返せー!!」

傭兵たちの口々に発する言葉に為政は詳しく説明することにした。

「仕方がないだろうが。契約書にはちゃんと休日は週一日日曜日、およびその他祭日、および

年末・年始に約二週間と書かれていただろうが。去年は例外なんだよ。」

それを聞いた傭兵たちは世にも情けない表情を浮かべた。

「くそー、こんなことなら契約書に目をしっかりと通しておくんだった。

そうすれば夏休みのことを条件に付け加えたのに・・・。」

グイズノーは諦めきれないのかそんなことを言ったが為政はあっさりと言った。

「諦めろ、諦めろ。」

為政の言葉にグイズノー+その他十数名の傭兵たちは黙り込んでしまった。

 

 しかしグイズノーはただ黙り込んでいたわけではなかった。

さらに暫く考え込んでいた後、再び口を開いたのである。

「なあ、ユキマサ。」

「何だ?」

「マデューカス少佐に頼めば夏休みもらえるんじゃないか?」

グイズノーの一言で傭兵たちは一斉に沸いた。

「隊長!頼みます、少佐にお願いして下さい!!」

「夏休み欲しいんです!隊長。」

「お願いします!夏休み下さい!!」

むさい、そして汗臭い男どもに取り囲まれた為政は怒鳴った。

「えーい、近寄るな、暑苦しいだろうが!!少佐に頼んでみるから近寄るな!!!」

そんな訳で結局、為政はマデューカス少佐に夏休みを頼み込む事になってしまった。

 

 「少佐、夏休み下さい。」

執務室へとやって来た為政はマデューカス少佐の顔を見るなり単刀直入に切り出した。

「「何だ、急に・・・」

少佐は驚きながらもペンをぺん立てに戻しながら話を聞いてくれた。

「実はかくがくしかしかこういうわけで・・・。」

為政は先ほどの傭兵たちの事を話した。

「成る程な・・・。」

少佐は考えながらも肯いた。

「確かに今日のような天候の最中、訓練を続けるのは酷なことかもしれんな。

しかしだからといって夏休みというのは・・・。」

「そこを曲げてお願いしますよ。このままでは連中、何か引き起こしそうで・・・。」

為政の言葉に少佐も少しは考えを改めたらしい、何やら検討し始めた。

 

 そして数分後。

「よし、良いだろう。来週の一週間、夏休みにしておいてやる。」

マデューカス少佐は手をポンと叩きながら言った。

「本当ですか。」

為政が聞き返すと少佐は肯いた。

「ああ。そのかわり休み明け以降はみっちりとしごくんだぞ。」

「はっ、分かりました。連中もきっと喜びますよ。」

 

 マデューカス少佐の元を辞した為政は数百人の傭兵たちが待ちわびているグランドへと向

かった。

「あっ!?隊長だ!」

為政をいち早く見付けた誰かの一声に、一部の冷めた人間を除いて為政の元に駆け寄った。

皆、首尾が気になるのであろう。

だが為政には良い迷惑であった。

十数人でも暑苦しいのにそれが数百人とは!

慌てて為政はまだ遠くにいる傭兵たちに向かって叫んだ。

「野郎ども!一週間の夏休みだぞ!!」

それを聞いた傭兵たちは歓喜の声を上げ、騒いだのであった。

 

 

 青く澄んだ空、輝く太陽、延々とうち寄せる波、辺りを包み込む優しい潮風、それに砂浜の上

を歩く水着姿の美女たち。

「ここは天国だ・・・。」

ポッツリとグイズノーが呟くとそれに賛同するかのようにギュンター爺さんも肯いた。

そしてそんな二人を呆れたように見る為政とホーンであった。

 

 「こうして4人そろって何かをするというのは久しぶりだな。」

ビーチパラソルの下で為政はそう言った。

「まったくじゃ。」

「確かにその通りだよな。」

ギュンター爺さんとグイズノーは為政の言葉に肯いた。

それに対してホーン一人は相変わらずのマイペースのままである。

「おい、ホーン。お主のことじゃぞ。」

ギュンター爺さんはそう言うとホーンの髪の毛をくしゃくしゃにした。

「ハハハハ。爺さんよ、ホーンがそんなこと気にするわけないだろ。」

「ああ、俺もそう思うぞ。」

グイズノーと為政がそう言うとギュンター爺さんは

「それもそうかの。」

と言ってホーンの頭から手を離したのであった。

 

 「オレ、ちょっと出かけてくるわ。」

海岸へやって来て一時間ぐらいたったころであろうか、グイズノーはそう言って立ち上がった。

それを聞いたギュンター爺さんは色めき立って叫いた。

「お主一人で抜け駆けとはずるいぞ。」

「爺さんと一緒に女が引っかけられるわけないだろうが!」

「うるさい!ワシを年寄り扱いするんではないわ。こう見えても女の一人や二人ぐらい・・・」

こうしてグイズノーとギュンター爺さんの二人はナンパに連れて行け、連れていかないという下ら

ないことで議論を始めたのであった。

 

 数分後。

「二人とも言いたいことは全部言ったか?」

息も絶え絶えになった二人に為政はそう声を掛けた。

「おう・・・」

「ああ・・・」

「・・・、まあ仲良く行ってこいよ。」

為政の言葉に疲れ切っていたグイズノーは頷いた。

これ以上拒否しても無駄な努力であると悟ったのであろう。

「爺さん、来いよ。」

グイズノーのその言葉にギュンター爺さんは満面の笑みを浮かべた。

「おう、そうかそうか。やっと分かってくれたかの。うんうん、それでは出発じゃ!」

爺さんは元気良く歩き始めた。

「ホーン、お前も来い。」

ギュンター爺さんの様子を呆れ顔で見ていたグイズノーは気を取り直したかのようにホーンを無

理矢理立ち上がらせた。

「ユキマサ、お前さんはどうする?」

せっかくのお誘いではあったが為政は断った。

「部下の前で醜態をさらすわけにはいかないからな。ここで甲羅干しさせて貰うことにしよう。」

それを聞いたグイズノーは憐憫の表情を浮かべた。

「隊長も大変だなー。まあいいさ、ホーン行くぞ。」

そう言うとグイズノーは気乗りしていなそうなホーンを引きずりながらギュンター爺さんの後を

追いかけたのであった。

(よくやるよ、あの二人。)

そのまま為政は目をつぶると浅い眠りについた。

 

 

 「ここにしようよ、お姉ちゃんたい!」

「そうね、じゃあここにしましょうか。」

ウトウトと寝入っていた為政はすぐ近くから聞こえる声で目を覚ました。

よくよく聞いてみるとそれは聞き覚えのある声である。

そこで声のした方向に目をやるとそこにはソフィア・ハンナ・レズリー・ロリィの四人がいた。

こんなところで会うとはと驚いたものの為政はとりあえず挨拶することにした。

「やあ、お久しぶり。」

為政が声を掛けると四人の少女はびっくりした顔を見せたものの、すぐに笑顔で話しかけてきた。

「こんにちわ、トダさん。お一人ですか?」

ソフィアがそう尋ねてきたので為政は素直に答えた。

「グイズノーなんかと一緒にきたんだけどね、ナンパしに出かけちゃったからな。

会わなかったかい?」

「ううん、会ってないよ。それよりもお兄ちゃん、今一人ってこと?」

ロリィがそう聞いてきたので為政は苦笑いしながら肯いた。

「ああ、そうだ。」

するとロリィは元気良く言った。

「じゃあロリィたちと一緒に遊ぼうよ。」

それにはハンナも賛同した。

「うんうん、いいねぇ。そうしよう。」

「・・・・・・・・。」

ちょっとばかり考え込んでいると

「ほらほら遊んでやれよ。ロリィは言い出したら頑として譲らないんだから。

諦めて付き合えよ。」

レズリーにもそう言われてしまった為政は今日一日を少女たちとつき合うことにした。

 

 起きたばかりの時には気付かなかったが四人の少女たちの水着姿はなかなかのものであった。

ソフィアは髪をアップにしてワンピースタイプの水着を着ていた。

体つきとしては少女と大人の中間といったところであり、まだ熟し切っていない何とも言えない

色気がある。

ハンナはスポーツ少女らしく競泳用の水着を着ていた。

健康的で爽やかな感じであり、色気はまったく感じさせない。

そしてレズリーは白いビキニタイプの水着を着ていた。

出るところは出て、引っ込むべき所は引っ込んでいる大人びた身体にぴったりであり実に似合

っていた。

最後にロリィは子供らしいラブリーな水着を着ていた。

まだ胸もたいして出ておらず、寸胴の体型にぴったりである。

まだまだ子供であり色気もくそもないが、特殊な趣味の人間には堪らないのかもしれない。

そんなことを考えているとロリィが為政に話しかけてきた。

「お兄ちゃんー、ビーチバレーしよー!」

「わかった。」

為政はそう言うとビーチバレーをすべく、少女たちの元へと向かった。

 

 「そーれ。」

ソフィアたちとのビーチバレーはなかなかのものであった。

ビーチバレーといってもネットもなんにもない遊びみたいなものであるが、ハンナを始め

としてみんなそれなりに運動神経が良いせいかそれなりにエキサイトするものであったからだ。

だがしばらく遊んでいる内に緊張感もほぐれ、周りを見るゆとりが出てきた。

そこで為政はある事に気付いた。

それは健全な男子ならば決して見逃せない、いや見逃してはならないというものであった。

すなわち少女たちの胸のゆれである。

ハンナ・ロリィの二人はいまいちであったがソフィアとレズリー、とくにレズリーの胸のゆれっぷり

と来たらなかなかのものであった。

(うーん、いい眺めだ。)

そんなことを考え込んでいたのが失敗の原因であった。

「行きましたよ。」

その声に慌てて反応してボールを追いかけたものの邪念を抱いていたためであろう。

スタートが遅れた異政はボールに追い付けないどころか足がもつれてしまい、砂浜に顔面から

突っ込んでしまったのであった。

 

 「おいおい、大丈夫か?」

呆れた口調でレズリーにそう声を掛けられた為政は唾をぺっぺとはきながら言った。

「ああ大丈夫だ。もっとも少し疲れたようだな。」

そうは言ったものの為政は心の中では別のことを考えていた。

(邪なことを考えていたから罰が当たったのかな?)

「一旦、休憩にしませんか?」

そこへソフィアが気を利かせてそう提案した。

「そうするか。」

そこでみんなで休息する事にした。

 

 「さーて、飲むか。」

為政は海岸へ来る途中に買っておいたジュースを飲もうとした。

ところがジュースは一滴も出てこない。

すでに飲み干してしまっていたのである。

喉はすでにカラカラ、よって為政はジュースを買いに行くことにした。

「ちょくらジュースを買いに行ってくる。」

為政がそう言うとハンナも一緒に行くと言い出した。

「よし、みんなに奢ってやるよ。ちょっと待っていてくれ。」

そう言うと為政はハンナと共に売店へと向かった。

 

 海岸沿いに売店へと歩いているとハンナが驚いたかのように立ちすくんだ。

何事かと思いハンナの視線に目をやるとそこには見覚えのある人物がいることに気付いた。

どうyら相手の方もハンナに気付いたらしい。

優雅に席を立つとすっと二人の前にやって来た。

「リ、リンダ・・・」

「あら、ハンナさん、お久しぶりですわね。それにそちらの東洋人の方も。

たしかトダさんとおっしゃったかしら。」

相変わらずの高慢な態度でリンダはハンナをからかうかのように言った。

それに対してハンナは

「な、何でこんな所にいるんだよ、リンダ。自慢のプライベートビーチはどうしたのさ。」

と言った。しかしリンダは余裕綽々といった態度で言った。

「おほほほほ、たまには庶民の方 と交わってみるのも一献というもにですわよ。

それにしてもトダさん、貴方のような方が何でこんな野猿とご一緒なのかしら?」

リンダの最後の一言にハンナは頭に来たらしい。

「行こう!」

為政の手をつかむとその場を駆け去った。

引きずられる為政が見たものは高らかに勝利の笑い声をあげるリンダの姿であった。

 

 途中、ハプニングがあったものの為政とハンナは無事売店へとたどり着いた。

さっそく為政は5人分のジュースを注文した。

ジュースが手渡されるのを待っているとハンナの様子がおかしいことに為政は気付いた。

何やらモジモジしている。

「どうしたんだ?」

為政が尋ねるとハンナは慌てて手をパタパタと振った。

「な、何でもないよ・・・。ちょ、ちょっと待ってて!」

そう言うとハンナは脱兎の勢いでその場を走り去った。

どうやらトイレらしい。

そこで為政はジュースを受け取ると売店の前に置かれていたベンチに座って待つことにした。

 

 ベンチに座ってハンナが帰ってくるのをボーと待っていると突然

「おやぁ?ユキマサじゃないの。」

「あれ?トダ君じゃないの。」

と声を掛けられた。

声の主は誰かと目をやるとそこには海水浴に来ていたのであろう、白いビキニを着たキャロルと

大人締めの水着を着たスーが立っていた。

キャロルとスー、お互いに為政の事知っているのが不思議らしく?という表情を浮かべている。

そこで為政はは二人に出会った経緯を話した。

 

 「なーんだ、共通の知人だったんだ。知らなかった。」

「そうそう、世間って以外と狭いものなのね。」

為政の説明を聞いた二人はそう反応し、続けざまに聞いてきた。

「ところでユキマサ。なんでこんなところに一人でいるのかな?」

「そうよ、気になるわな。彼女と一緒かしら。」

そこで為政はソフィアたちのことを話そうとした。

すると

「お待たせー!」

とタイミング良くというべきか悪くと言うべきかハンナが戻ってきた。

「へへー、ちょっとこんでいたんで・・・ってあれ!?キャロ姉じゃない!」

従姉妹であるキャロルに気付いたらしくハンナは驚いた。

それに対してキャロルはニヤニヤ笑いながら言った。

「隅におけないわねー、ハンナったら。男性と二人っきりで海なんて・・・。羨ましいでしょ、スー。」

「なんで私にふるのよ!」

キャロルの言葉にちょっとばかり怒ったようにスーは叫んだ。

そしてハンナも

「キャロ姉ってば違うって。友達と泳ぎに来たら偶然出会ったんだよ。」

と弁明するかのように言った。

キャロルとしてもこれ以上、二人をからかうつもりはなかったらしい。

「なーんだ、詰まらないの。スー、もう行こう!」

「うん、それじゃあバイバイ。お友達によろしくね。」

そう言ってキャロルとスーは為政とハンナの前を立ち去った。

「よし、俺らも帰るとするか。」

ハンナも戻ってきたことだし為政とハンナはソフィアたちの待つ方へと向かった。

 

 「ぷっはー。」

為政はシートの上にどかりと座り込むと買ってきたばかりのジュースをものすごい勢いで飲み

干した。

喉が乾いていたうえに真夏の炎天下の中、歩いてきたのだから無理もあるまい。

そうこうしている内に少女たちは海で泳ぐ相談をし始めた。

「ボク海で泳いでくる!」

とハンナが言えばソフィアも

「私も泳いでこようかな。」

と楽しそうに言う。

ロリィも

「お姉ちゃん、一緒に泳ごう!」

とレズリーを誘ったがレズリーは今ひとつ気が乗らないようだ。

「あ、あたいはいいよ。ここで肌焼いているからさ。」

と言ってロリィの誘いを断った。

それに対してロリィは別に気を悪くした様子もなく

「そお?じゃロリィ泳いでくるね。」

と言って浮き輪を持つとソフィア・ハンナと一緒に波打ち際へと歩いていった。

 

 「いいのか?」

為政が尋ねるとレズリーは手をぱたぱた振りながら言った。

「ああ、いいんだ。今日は泳ぐ気分じゃなくってね。」

そのままレズリーはシートの上に俯せになり、肌を焼き始めた。

一人で暇になった為政も泳ぐのは後回しにして肌を焼くことにして俯せになると目をつぶった。

 

 それから30分ほど経った頃であろうか。

突然、辺りにかん高い悲鳴があがった。

うとうととしていた為政がはっと目を覚まし、周囲を一瞥すると沖合へとロリィが流されていくのが

目に付いた。

浮き輪をしているので溺れる心配はなさそうであるが流れに乗ってしまったのかぐんぐん岸から

離れていく。

慌てた為政はロリィを助けるべく起きあがると波打ち際へと急いだ。

しかしその為政よりも素早く海へとたどり着いた者がいた。

レズリーである。

レズリーはそのまま躊躇無く海へと入っていくので為政も慌ててその後を追った。

 

 順調にロリィの元に近づきつつあった為政とレズリーではあったが海底まで大人の背丈の二倍

ぐらいある沖合まで来たとき

「あっ!?」

と声を上げるとレズリーはもがきながら海底へと沈み込んでしまった。

どうやら準備体操もしないで海に入って泳いだせいで足をつってしまったらしい。

驚いた為政はロリィの方は他の人に任せてレズリーを助けることにした。

為政はレズリーがもがいていた地点に達するとそのまま海底目指して潜った。

すると水の中でもがき苦しむレズリーの姿があった。

レズリーを発見した為政は抱きつかれないよう慎重に近づくと腕をつかみ、一気に海面まで

引き上げた。

「おい!大丈夫か!!」

為政は放心したように目つきのまま体を小刻みに振るわせながら激しく咳き込んでいるレズリー

にそう声を掛けた。

するとレズリーは心ここにあらずといいた状態のまま呟いた。

「また・・・誰も・・・誰も助けてくれないかと思った・・・あの時・・・父さんも・・・母さんも・・・慌てるだけ

で・・・手もさしのべてくれなかった・・・・」

「おい、しっかりしろ!」

どっか行ってしまっているレズリーを為政は怒鳴りつけると頬を二三度叩いた。

「あっ!?」

「落ち着いたか?」

為政はレズリーの瞳をじっと見つめながら言った。

「す、すまない。みっともない姿見せちまったな、・・・そうだロリィは?」

そこで為政は沖合の一点を指さしながら言った。

「大丈夫だ、あれを見ろ。」

そこにはソフィアとハンナと共に近づいてくるロリィの姿があった。

 

 

 とんだハプニングが起こったこともありソフィアたちは岸に上がるとさっさと帰ってしまった。

為政としても一緒に帰っても良かったのであるがグイズノーやギュンター爺さん・ホーンを置いて

帰るわけにもいかずそのまま夕方になるまでシートの上で眠りこけていたのであった。

 

 

あとがき

久しぶりに女の子が沢山出てきて楽しい章でした。

しかも夏のビーチですからね。

本当は明日ぐらいに打ち込み終えるかなぁと思っていたのですが一日で終わりました。

いやー、やればできるものですね。

なお、傭兵隊の夏休みはゲームとは設定を変えさせて貰いました。

学生じゃないんだから40日近いって言うのは変ですからね。

 

さて次回予告をば。

次回は第二十三章「家庭教師」です。

タイトルから分かるとおりあの子が登場します。

眼鏡っ子ファンの方は期待して待っていて下さいね。

 

平成12年11月23日

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