■ ハーバーフロント 違法タクシー問題 レポート

その1 その2 その3


ハーバーフロント 違法タクシー問題 レポート


< 概略 >


ハーバーフロント(セントーサ島へケーブルカーが出ている)で、違法タクシーが日本人旅行客を目当てに、法外な料金を請求しているという問題が、シンガポールの旅行に関するウェブサイトで、提起されました。 これからシンガポールにご旅行に行かれる方に、ぜひ注意をして欲しいと、この問題提起された方は、自らの体験をもとに警戒を呼びかけられています。

その投稿を見ていたので被害を避けられた、という方も実際に何人かおられましたが、残念なことに、被害報告も続いておりました。 その報告を受け、問題提起された方は日本のシンガポール政府観光局にレポートしたり、陸運省やタクシー会社にレポートしました。

しかしながら、いずれも証拠になるものがないので、取り締まる対象にはならないとの曖昧な返答に、私たちも行く手を塞がれた状態でした。 そんな折、証拠集めのためのオトリ作戦のご提案があり、その作戦を実行するために、今回渡航の運びとなりました。


< 過去の悪質ドライバーの手口 >

  • 「私はセントーサ専属タクシードライバーだ」と近寄ってきて、「どこまで乗っても20ドル」と言ってくる。
  • カタコトの日本語で話しかけてくる。
  • 「ほかにはタクシースタンドはない」とも言ってくる。
  • 中には30ドルや、50ドルと言われた被害報告もある(往路のシンガポール航空日本人クルーからの情報)。
  • タクシーのタイプは、普通のセダンタイプであり、黄色の車体に「セントーサ」とステッカーが貼ってある。


< 先行偵察した K さんの報告 >

K さんは、10月10日〜14日のシンガポール滞在中夜にかけて、ハーバーフロントを夕方7時30分頃と、さらに暗くなってからの2回偵察。 しかしながら、該当タクシーは1台も見なかったという報告を受ける。

ただ、7時30分頃、ワンボックスカーを数台確認しているとの K さんからのお話。 このとき往路であるため、声は掛けられず、また、パトカーはいなかったとの報告。 更にショーが終わってから 9時30分頃、再びその場所を通過した折、今度はワンボックスカーの姿は消え、 パトカーがケーブルカー乗り場と MRT 連絡通路寄りの場所に1台止っていたとの報告。


< 作戦実況1 >

10月17日SQ981便にて、チャンギ空港に午後4時頃到着、日本人旅行者になり切るために、衣装替え(バーバリーのポロシャツ、リーガルのトラッド、リュックサックには日本フラグを掲げ、 Sさんから大受け)をして、ハーバーフロントに到着したのは、 午後6時前だった。6時といっても、まだまだ日は高く、夕方という雰囲気でもない時間帯である。ハーバーフロントでは2箇所タクシースタンドがあるが、我々が目指したのは、 奥側のケーブルカー乗り場に近いタクシースタンド。問題になっていた場所である。

午後6時前には、ごく普通のタクシーが1台、あとは警察のパトカーが同じエリア内に2台駐車。各パトカーには3名の警察官が乗務していたが、もう一方のパトカーは、警官が外で待機しており、 MRT駅に通じる通路あたりを徘徊していた。この時点で怪しい車、ドライバーはおらず、声を掛けてくるドライバーもいなかった。

その後、時間差をおいてもう一度偵察に来ようということになり、セントーサ島にケーブルカーで移動。このとき、夕日が海に沈む時間とちょうど重なり、 シンガポールに来ていることを忘れさせるような風景だった。セントーサ島で1時間くらいブレイクタイムをとり、コーヒーショップを7時に追い出される。 その後お土産屋さんに数分立ち寄って、特に待つこともなくケーブルカーでハーバーフロントに戻る。

時間にして、7時10分頃。ケーブルカー乗り場から地上に降りたものの、うわさの黄色のタクシーは見当たらず。 そのかわり、ワンボックスバンのような車が4〜5台、待機していた。 色は白とシルバーで、運転席ドア下部分に、
どの車体も EXCURSION BUS というステッカーが貼ってあった。 しかしながら、とても小さいので、注意して見ないと見落としてしまう。

ステッカー


< 作戦実況2 >

すると、いきなり華人らしきふくよかな男性が近寄ってきた。年齢は30〜40代。

「この時間帯は、街は混んでいるので、タクシーが来ない。ドライバーは飯を食いに行っているので、タクシーは捕まらない。」

と言ってきた。

さらに「どこへ行くか」と聞かれたので、Sさんは打ち合わせ通り「DFS」と言った。 半ば強引に「乗っていけ」と言ってきた。「通常は 35ドル だが、近いから 22ドル でいい」と言ってきた。

この時点で我々は日本語で会話。「こいつ、怪しい?」「うーどうかな?でも高いよね?」「黄色じゃないし、合法としても高いね。」 Sさんは、このときどう思ったのか分からないが、 私としてはこのタクシーに乗っていくつもりは全くなかった。

そういう我々の会話が分からず、「何を迷ってるんだ?どの車も中はみんな同じだ!さあ乗った乗った」とせかしてきた。 「ほかにはタクシーが捕まらないから、これでいくしかない」とまで言ってきた。さらに 「DFS には MRT で行けない」とまで言ってきた。この時点で、Sさんは、おかしいと気づいていたらしい。

私はまだこのタクシーが悪質かどうか分からないが、乗る気はなかったので、Sさんに合図して、やめよう、ということになった。 その場を立ち去る我々を背に、日本語で、「だったら 20ドル でいいよ!」 このひとことで大体見当がついた。完全に日本人旅行者を標的にしているし、 引け際に、言い値を下げるなんてことは、いかに法外な料金を言ってくるかお分かり頂けると思う。

彼らは英語とカタコトの日本語で話しかけてくる。それはこちらには理解できる。 しかしながら、我々の会話(日本語)は、彼らに全く理解されてない。 それが、今回私たちが優位に立った大きなポイントであった。



< 作戦実況3 >

ただ、このやり方が合法かどうか、この時点では分からなかったが、この車から去るように歩きながら、 Sさんにも気がつかれないくらいの距離からズームで駐車中の車のナンバーを、ここですでに撮影。この撮影には、当然相手にも気がつかれていないし、相手が不信に思うような行為も起こす前に、 大事な物的証拠は get していた。

その後、彼らから少し離れたところで、私たちは目の前の状況がどういうことか、探り始める。機転のきくSさんは即座に陸運省に実況報告、 その場で、 彼らの行為は違法だということを知らされた。我々とドライバーとの距離は 50m くらい。さらに次ぎの同様のタクシーが来た。 さすがに、もうその場から立ち去ってしまっているので、 車のナンバーを撮影するのはあまりに不自然と思い、スボンからペンと紙切れを取り、遠巻きから今入ったばかりのタクシーのナンバーを記憶、そのままセントーサのケーブル乗り場にいき、 営業時間をメモするような素振りで、さきほどのタクシーナンバーをメモ。背後には数十メートル離れたドライバーの視線を感じた。 これ以上はできないと思ったが、走り去るのもまずいので、ゆっくりSさんのところに戻る。その後、別の車が私たちの前まで来て、「ほら、乗らんか?」と言われたが、手で断った。 この間 Sさんは、私が撮影したナンバーの報告を携帯でしていた。時間にして、10分強といったところ。

しかしながら MRT で行くと断った私たちが、その場を離れず、 何かをコソコソとやっている行動に不信を抱き始め、2人のドライバーがロータリーを渡って、我々の方に明らかに近寄ってきた。 2人を見れば、力では勝つとも思えたが、 そこらじゅうのドライバーが集結する可能性も十分あり得る状況を察知したので、これもSさんに合図して、意識的に、 いかにも自然な様子でなんとなくその場を離れた。 この場を離れて1分くらいは緊張していた。後で聞いたら、Sさんも足が速いそうで、もう少し相手の出方をギリギリまで待ってみても良かったのだが、 やはりあの撤退は安全圏内だったと判断。


< Kさんと私たちの時間的推移 >

18:00 頃  一般タクシー1台  パトカー2台  ワンボックスカー0台
19:15 頃  一般タクシー0台  パトカー0台  ワンボックスカー5台
19:30 頃  一般タクシー0台  パトカー0台  ワンボックスカー4〜5台
21:30 頃  一般タクシー0台  パトカー1台  ワンボックスカー0台

このデータから、パトカーのいる時間帯には、ワンボックスカーは姿を現さないということが分かります。 また、ワンボックスカーの出没時間は、19時前あたりから20時頃(推定)という予測はつきます。


< Sさんからの報告内容、受信メールの添付 >

調査班を送って、実況調査に当たるとのことで、担当者の方から改めて状況の再確認を受けました。陸運省でも、今回のことは深刻に受け止めている、とのことでしたので、 調査の経過次第では jun さんが撮影したナンバープレートの写真なども提供することになるかもしれません。そこで、もし先方からリクエストがあった場合に備えて、 jun さんのレポートを英訳しておこうと思うのですが、宜しいでしょうか?

今回のことをきっかけに、この問題が根本から解決されるよう陸運省ならびに観光局やタクシー会社が本気で動いてくれるようになることを祈るばかりです。 明日にでも、観光局のほうにも連絡を入れておこうと思っています。


< 今後の課題 >

今回入手した情報と証拠写真をシンガポールの関係機関に提出します。取り締まり、そして撲滅へと、問題解決に関係機関がどのように動くか、その後の経過をみて、結果報告をします。 また、日本国内で、旅行社や各ウェブサイトを通して、旅行者に注意喚起を促します。みなさまのご協力をお願いします。


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