拍手文集2



 ※拍手に置いていた小話のログまとめです。


8.※原作設定リヴァエレ。


 切断された手足が生えてきた、と言ったらそれを信じる人はいるだろうか。きっと何の冗談なのだと笑い飛ばすに違いない。だが――実際にそれを目の当たりにしてしまったら、もう笑い飛ばすことはしないだろう。代わりに向けられるのはきっと、あいつは化け物なのだという巨人を見るときと同種の眼差し――。


「はい、今日の検査はこれで終わり」
「あ、はい、判りました」

 定期的に行われている検査を終えてエレンが思わず溜息を吐くと、それを耳で拾ったらしいハンジが、器具を片付けながら疲れちゃったかな?と少年に声をかけた。

「無理をさせる気はないから、疲れたら言ってね、エレン。まあ、こうも頻繁に検査とか実験に付き合ってたら疲れるよね」
「あ、いえ、別に疲れたわけじゃないんで――」

 困ったように笑う少年に、ハンジは何かあったのか、と続けて訊ねた。実験がストレスになっていないのならいいが、何か彼の精神面に問題があるのならそれを取り除いておく必要がある。先日の巨人化実験の失敗で、巨人化する際には自傷行為以外に目的意識の必要性があることが明らかになったし、エレンのメンタルな問題はそのまま巨人化の不具合に直結するかもしれないのだ。勿論、ハンジは少年自身のことも気に入っているので巨人化のことに関係なく心配でもあるのだが。
 エレンは言い渋っていたが、ハンジが引き下がる様子を見せないので、言うことに決めたようだ。大したことじゃないんですが、と前置きして話し出した。

「ここに来る途中で、落し物をした兵士がいたんで声をかけたんです。相手の肩を軽く叩いただけだったんですが――」

 振り返って、相手が自分だと判ったときの兵士のあの顔。

「物凄い勢いで振り払われてしまって――気安く触るなって怒鳴られました」

 そのままその兵士は駆けて行き、その反応に固まってしまったエレンは何も返せずにそれをただ見送るしかなかった。
 ――判ってはいたのだ。自分を化け物だと呼ぶものがいるということは。だが、同じ調査兵団の兵士にあからさまにそんな態度を取られたことは少年には衝撃だった。

「巨人化の実験の失敗のときの周りの人達の態度を見ていたから判ってはいたんですけど。ハンジさん、オレの検査結果は人と変わらなかったんでしょう?」
「ああ、君から採取した毛髪や組織成分は全く人と同じだったよ」
「でも、それでも、オレが人間であることの証明には出来ない。……難しいですね、自分が自分であることの証明って」
「…………」

 ハンジはそっとエレンに手を伸ばして、その頭をくしゃりと撫ぜた。

「エレン、人はね未知のものを怖がるんだ。判らないから怖い。なら、その対象を知ればいいんだ。巨人の存在がどういったものなのか判らないから怖い――だから、調査兵団に入って調べる、単純な理屈だよ。どんな猛獣でもその生態を詳しく知って対処法を知っていれば怖くはなくなる。まあ、外敵に対する本能的な恐怖っていうのは簡単には拭いされないものだけど」

 だから、君も知ってもらえばいいよ、とハンジは笑った。

「これからの君の行動でそれを知ってもらえばいい。そんなバカな奴は黙らせてやるくらいの気持ちで向かえばいい。――君が人類の敵じゃないって私は信じるって決めた。そういう人達が君の周りにはいるってことを忘れてはダメだよ、エレン」
「……はい」

 よし、いい子と笑いながらまた頭を撫ぜるハンジに、エレンは子供じゃないんですから、と抗議した後、小さく笑った。


 ハンジの実験の後は疲れを取るための休憩時間になっていたので、エレンは通路を歩いていた。休憩室に行ってお茶でも飲むかと思案していると、不意に耳に声が飛び込んできた。

「なあ、あいつ、リヴァイ班に配属されたんだって?」

 リヴァイ班との単語に思わず耳を傾けると、男性兵士が数人で話し合っている声が聞こえた。同期ではないからおそらくは先輩なのだろうが、休憩時間を利用して談笑しているようだった。

「陣形のどのあたりに配置されるんだ?」
「右翼後方じゃなかったか?」
「どうせなら、索敵班の先頭に立って欲しいよな。だって、あいつ死なないんだろう?」
「ああ、巨人に食われても生きてたって話だし、手足も生えてくるらしいぜ」
「なら、丁度いいじゃねぇか。そんな化け物なら、盾になってもらえば。それで死んだって化け物が一匹くたばるだけだろ?」

 どうやら彼らが話しているのは自分のことらしい。化け物と連呼されて、ああ、やはり、自分は人間として見られていないんだな、とエレンが自嘲めいた笑みを浮かべたとき――。

「それは面白い提案だな」

 男達にそう声をかけるものがあった。声をかけられた男達は突如現れた相手に驚き、それが誰であるか知ってまた驚いていた。少年も意外な人物の登場に目を見開いた。

「リヴァイ兵長……!」
「だが、その陣形はもう会議で決められたことだ。作戦立案に不服があるなら、そう申し立てろ。それが通るかは判らんがな」
「いえ、自分達は別に不服など――」
「さっきのはどう聞いても不服にしか聞こえなかったが? そんなに後方にいたいのなら、生産者になればいい。一応は内地で過ごせるぞ。除隊の手続きなら特別に取ってやろう」
「いえ、決して、そのようなことは望んでおりませんので!」
「以後、気を付けます!」
「――覚悟のないものは必要ない。覚えておけ」

 失礼します、と男達が慌てて走り去っていくのを見送って、リヴァイは振り返った。

「――で、お前はいつまで隠れている気なんだ? エレン」

 この人は後ろにも目があるんだろうか、とバカな考えを頭によぎらせながら、エレンは観念したように男の前に姿を現した。


「すみません……」
「別にお前のせいじゃねぇだろ」
「それはそうですが――あの人達の言いたいことも判るので」

 そう答えながら、エレンは自分の左手を眺めた。あのとき、確かに切断された自分の腕はいつの間にか元に戻っていた。以前の腕と全く変わらない、人間のものとされる組織細胞のそれは、けれど、自分が十五年間動かしてきた腕ではないのだ。巨人の身体の生成と同じくどうやって作られたものなのか判らないそれ。

「オレの腕、本当に生えてきたんです。兵長が言うトカゲみたいに。そんなの、人から見たら気持ち悪いだけですよね……」

 エレンの言葉に男は無言でその手を取って眺めた。確かめるみたいに握ってその形を確認している。

「あの、兵長?」

 突然の男の行動に少年の頭に疑問符が飛ぶ。というか、潔癖症はどうしたんですか、そんなにベタベタ触って大丈夫なんですか、と頭の中では色々と言葉が回っているのに、口からは言葉が中々出てこない。

「別に普通の腕だな」
「普通と言われましても……あの、それより、気持ち悪くないんですか?」
「別に気持ち悪くはないが」
「え、だって、トカゲみたいで気持ち悪いって……」
「そりゃ、目の前で切っても切っても生えてきたら気持ち悪いだろう」
「…………」
「だが、別にお前自身が気持ち悪いわけじゃない」

 そう言って手を離した男にエレンは黙って俯いた。何か言いたいのに声が出てこない。

「――人間の細胞ってのは毎日生まれ変わっているんだそうだ」

 唐突な言葉に少年が目を瞬かせていると、男は俺は医学には詳しくないからよくは知らねぇが、と言葉を続けた。

「それを繰り返してるんだから、何十年も経てば身体なんてもう別物ってことだろ。お前のそれと変わらない」
「――――」

 ひょっとして、今、自分は慰められているのだろうか。これは男なりの励ましなのだろうか。胸があたたかくなるのを感じて、エレンは俯いていた顔を上げた。

「あの、兵長、もう一度手を握ってもらってもいいですか?」

 その申し出に怪訝そうな顔をする男に、エレンは理由を告げた。

「オレの腕がまた生まれ変わっても、手を握ってもらったことは忘れないように覚えておきたいので」

 新しい腕になったとしても、きっとこの時間に触れてもらったことは忘れたくないから。
 男は頷いてエレンの手を握ったかと思うと、ぐいっとその手を引っ張った。

「――――っ!?」

 ちゅっという音とともにあたたかいものが唇に触れて。その次には何が何だか判らないうちに、湿ったものに口内を舐めまわされていた。

「ついでにこれも覚えておけ。忘れそうになったらまたしてやる」

 始めたときと同じように音を立てて自分の唇を離した男はにやりと笑うと、真っ白になっている少年を置いて歩いていった。
 残された少年は茫然としたまま男の触れていった唇に触れ、湿った感触にキスされたんだと理解するとその場にへたり込んだ。

(何だったんだ今の何だったんだ今の何だったんだ今の)

 そんな言葉がただぐるぐると回っている。確かなことは今のがキスと呼ばれるもので自分がしたのはこれが初めてだったということだ。

(どうしよう……ていうか、またするのか? え? 何で? 嫌じゃなかったけど……え? え?)

 混乱状態に陥った少年はただぐるぐると考え続け、休憩時間が終わっても戻らない彼を探しに来たペトラに発見されるまでその場にへたり込み続けたのだった。



2013.12.4up



 前にも似たような話を書いた気がしますがそこは突っ込まないお約束で(笑)。進撃世界の医学がどこまで発達しているか判りませんので、その辺もスルーでお願いします(汗)。





9・※現代パラレル設定リヴァエレ。


 何気なく流していたテレビでタレントが自分の前世が誰だったのか占ってもらったときのことを話していた。一昔前に前世占いというのが流行ったらしいのだが、エレンはそれを聞いて嘘だ、と思わず呟いていた。タレントが話していたのは有名な戦国武将だったのだが、エレンの瞳にはただの一般市民――おそらくは農民だと思われる姿の男が映っていた。
 エレンは子供の頃から人の前世の姿が見えるという不思議な能力を持っていた。意識して相手の姿を見つめると、現在の姿と二重写しのように重なって別の姿が見えるのだ。更に相手に触れて集中すると、その人間の前世の映像を眺めることが出来た。勿論、それが前世の姿なのだと最初から判っていた訳ではない。子供の頃は何故そんなものが見えるのか判らず、周りの人間にはそれが見えないのだと知った時の衝撃は大きかった。幸いにしてエレンの両親は子供の話を受け入れ、それが普通の人間には見えないことと、それを話したら他の人間は子供を阻害するだろうという話をした。
 人に信じてもらえないことは哀しかったが、エレンは自分の力を受け入れ、数年かけてきちんと制御して付き合えるようになっていた。


「いっそ、それを商売にしてみたらどうかな? 意外に売れるかもよ?」
「無理だろ、本当のことを話したら嫌がられるだけだって」

 放課後、高校からの帰宅途中で中学からの親友のアルミンがそんなことを言ったが、エレンは首を横に振った。

「前世が禿げてでっぷり肥ったおっさんで周りから嫌われてたようです、なんてこと女子に言えるか?」

 前世が見える、と言えば面白そうだと思われるかもしれないが、いいことはないとエレンは思っている。クラスで一番可愛いと言われている女子の前世が筋肉ムキムキで毛深い男だったのを見てしまったときに、世の中には知らないでいた方が幸せなことがあるのだというのをひしひしと感じたエレンだった。前世というのは人それぞれで、現在男性の人が昔は女性だったり、またはその逆もあったりする。全く見えない人もいるし、昔の容姿とは全く違うのが当たり前だった。
 ――だから、中学校の入学式でアルミンを見たときにエレンは心から驚いたのだ。その頃になるとエレンは自分の力を制御できるようになっていたし、むやみに人の前世を見たりはしていなかったのだが、どういうわけかうっかりとアルミンの姿を見てしまったのだ。そして、アルミンの姿が前世とほぼ変わってないのを知って思わず声をかけてしまった。
 エレンの知る中では前世と姿が変わらないのはアルミンだけだ。悪いとは思ったが、どうしても興味を抑え切れず、エレンはアルミンの前世の映像を見て――更に驚いた。彼の隣には自分とそっくりな少年がいたからだ。
 エレンは自分の前世を見ることが出来ない。前世が見えない人間はいるが――おそらくは生まれ変わったことがないのだと推察される――、そういう人間とは違って、前世がないのではなく、あったのかどうかすら全く判らないのだ。占い師は自分のことは占わない、見えないというものが多いと聞くから自分の力もそういうものなのかもしれない。
 エレンは信じてもらえるか判らなかったが、笑われるのを覚悟して正直に自分の能力のことをアルミンに打ち明けた。彼はエレンの言葉を疑わず――むしろ、その話に興味を持ったようだ。それがきっかけで一緒に行動するようになり、今では一番の親友なのだから、世の中はどう転ぶのか判らない。

「そういや、前世の僕ってどうなったのかな? 兵士になったんだよね?」
「ああ。オレと一緒にいた。どうなったのかは判らないけど」
「音声がついてればもっとよく判るのに残念だね」
「バカ言うなよ、あれに音までついてたら、吐くぞ」

 エレンが嫌そうに眉を顰めたのを見てごめん、とアルミンは謝罪した。エレンが見るその人の前世の映像には音がない。いわばサイレントムービーを見ている感じなのだが、アルミンの前世を見てエレンはそれに感謝した。彼の前世には人を食べる巨大な人の姿の化け物――巨人がいたのだ。どうやら人類はその巨人と戦うために軍隊のような組織を作っていて、自分達はそこに入隊したようだ。
 前世の映像はランダムで見たいところが見られるわけではないから、巨人が人間を食っている映像を見てしまったときはエレンは本当に吐きそうになった。あれに音声がついていて、人の絶叫と咀嚼する音が聞こえていたら確実にその場で吐いていただろう。

「そんな世界じゃ生き残るのって大変そうだけど、他にも生まれ変わってる人っているのかな?」
「さあな。お前しか見たことねぇしな」

 映像の中には自分の両親らしき人もいたが、二人とも現在のエレンの両親ではなかった。エレンは両親の前世の姿も知っているので違うと断言できる。アルミンの両親も違うようだし、あの世界の人間で生まれ変わっているのが自分達だけであるのか――自分がアルミンの前世に登場する人物だと仮定しての話だが――、ただ出会っていないだけなのかは判らないが。

「あ、じゃあね、エレン。また明日」

 今日は用があるからという親友と途中で別れたエレンは何となく真っ直ぐ家に帰る気にはなれず、ふと、買おうと思っていた雑誌があったのを思い出して書店に向かった。近くのコンビニエンスストアで買ってもいいが、ついでに揃えているコミックスの新刊が出ていないか見てこようと思ったのだ。
 少し大きな書店に行こうと、普段は歩かない通りを歩いているとき――何気なく向けた視線の先にいた人物を見てエレンは眼を瞠った。その人物はスーツ姿で、おそらくはどこかの会社員なのだろうが、二重写しになった姿が全く変わらなかったのだ。いや、服装は違うから全く変わらないというのは間違っているが、どうして前世を見てしまったのかエレンにも判らない。何かに引き寄せられるようにその姿を捉えてしまったのだ。

(この人、アルミンと同じ……?)

 あの緑の制服には覚えがあった――軍服のようなもので、アルミンの前世に登場する軍隊のような組織が着ていたものだ。エレンは男から視線を外せず見つめていると、相手は視線に気付いたようでエレンの方を振り向き、その姿を認めて両の眼を見開いた。

「お前――」

 何を思ったのか、男はずんずんとエレンの方に近付いてきてその腕をがっしりと掴んだ。
 途端、流れ込んでくる映像――それは今までと違って何故か音声がついていた。

「え……うえぇえええええええええええええええええっ!?」

 思わず、エレンは悲鳴とも驚愕ともつかない声を上げてしまい、男にバカ、騒ぐな、と怒られた。
 エレンの声を聞いた人達が何事かと視線をやり、男は舌打ちしてエレンの手を引いて足早に歩き出した。

「チッ、仕方ないな、話せる場所に移動するぞ」
「あ、あの、判りました! 判りましたから、手を離してください!」
「イヤ、離さねぇ。逃げられる気がするからな」
「逃げませんから! 逃げませんから離してください!」

 だが、男はエレンの腕を離さない。エレンはどうしてこの人は冷静でいられるのか、と思った。この映像が見えていないのだろうか――いや、男の様子からすると彼にも同じものが見えている気がする。音声付きの前世の映像を共有するなど初めての出来事だが、それがこれであることにエレンは泣きたくなった。何故ならば――。

『あ、あっ、そこ、ダメです、へ、ちょう』
『エレン……』

 先程からベッドの上で男と自分がAV顔負けの濡れ場を繰り広げている。自分が突っ込まれる側だとか喘ぎまくって自分から男にねだってるとかもう消えてなくなりたい、とエレンは男に引きずられながら思った。


「……落ち着いたか?」
「はい」

 連れてこられた喫茶店で話を聞いてみると、男も自分と同じ『見える』人らしい。自分と同じく音声は聞こえないそうで、音付きの映像を共有したのは先程のものが初めてだそうだ。おそらくは同じ能力を持つ者同士が触れ合ったことによって更に鮮明なものが見られたのではないか、という推察を男は述べた。
 男の推察が当たっているとして、何であんな映像にぶち当たるのか。巨人が人を食う場面も見たくはないが、自分が男に組み敷かれて喘いでいる姿など見たくはなかった。

(……ってことは、前世ではオレとこの人ってそういう関係だったってことだよな? この人全然平気そうに見えるんだけど、ショック受けたりしてないのか?)

 リヴァイと名乗った男はエレンのそんな考えに気付いているのかいないのか、説明を続けた。男は少年と同じように自分の前世を見ることは出来ず、また人の前世に興味もなかったそうだが、大学に入学したときに前世と姿が変わらないものと出会ったのだそうだ。しかも数人いたらしい。更に彼らの記憶の中には自分とそっくりの人物がいて、エレンがアルミンと出会ったときと同様に男も驚いたそうだ。
 男は驚きはしたが、自分の前世に興味がなかったので放っておくつもりだったが、同期の女性がそれに興味を持ったようでしつこくその話を聞きたがったのだそうだ。男は渋々付き合ううちに――見たい映像を引き出せるようになったのだという。

「え……じゃあ、さっきのって……」
「ああ、意図的に引き出した。俺とお前が本当にそういう関係だったのか知りたかったからな」
「――――」

 驚愕やら羞恥やら怒りやら困惑やらいっぱいの感情でエレンが口をぱくぱくさせていると、男はお前を探していたんだ、と告げた。

「映像の中で俺と一緒にいるお前を見た。俺は他の人間とは違う眼でお前を見ていた。おそらくは恋人同士なんだと思ったんだが、音はないから会話は聞こえないし、他人の側から見た記憶だからな、本当のことは判らねぇ。実際に会って確かめるのが一番だと思った」
「……確かめてどうする気だったんですか?」
「口説こうかと思ってな」

 思いもよらない男の台詞に少年はぽかんとしてしまった。

「俺は基本、他人に興味がねぇ。だが、お前には会いたいと思った。今までお前以上に興味を抱いた人間はいない」
「あの、でもそれって、前世のオレでしょう? オレとは違いますよ?」

 今までに会った人間で前世の記憶を持っているという人間はいなかったし、エレンも記憶はない。前世の映像は映画かドラマでも見ているような感覚でそれに自分が出ていたとしても自分だという実感はない。男にも記憶はないようだし、もはや全くの別人だろう。親友の映像を見る限り、基本的な性格はよく似ているように感じられたが、現在の自分と前世の自分を混同されては困るのだ。

「勿論、それは判っている。だからこそ会って確かめたかった。現在のお前にも興味を抱けるか」

 男はにやりと笑った。

「お前に興味が湧いた。これから口説くから覚悟しておけ」

 不敵に笑う男にエレンは返事を返すことが出来なかった。同性同士であるとか前世に引き摺られているだけではないかとか、そんなことは言っても無駄なような気がした。

「前世で恋人同士だったものが再び出会うなんて、これは運命と言うしかないだろう?」
「……あなたは運命論者には見えませんが」
「まあな。でも、その方が面白そうだ」

 まあ、じっくりやるさ、と男は笑ってまずはこれから、と少年の手に口づけを落としたのだった。



2013.12.21up



 転生ネタ。続きがあるように見えますがありません。きっと、そのうちにエレンは食われると思います(笑)。





10・※原作設定リヴァエレ。くっつく前の二人。


 烏の濡れ羽色とは女性の美しい黒髪を指す言葉なのだという。エレンの母親はその言葉の示す通りの美しい黒髪の持ち主だった。彼女自身にとってもその髪は自信の持てるものだったらしく、幼少時から髪を短くしたことは一度もなかったらしい。エレンにしてみれば髪を長く伸ばすことは動くときに邪魔になるだけでいいことがないように思えたが、それを正直に母に告げたらあんたはそんなんじゃ女の子には絶対にもてないわよ、と呆れられてしまった。
 そんなエレンの髪を切るのは決まって母親の役目だった。理髪店は存在していたが、そこを利用するのは比較的裕福な市民層で、一般家庭では――特に子供のうちは家族に整えてもらうのがごく当たり前のことだった。エレンの家はどちらかというと裕福な方であったし、父は理髪店を利用していたが、子供の髪を整えるのを母親は楽しんでいたようだからエレンは好きにさせていた。ミカサが自家に引き取られてからは、母親は彼女の髪を整えるのも楽しそうにしていて、エレンは父親が黒髪だったから結婚したのではないかと密かに疑ったくらいだった。

 ――そんな母親が亡くなり、エレンの髪を整えるのは幼馴染みの少年に代わった。彼は手先が器用であったし気安く頼める相手でもあったから、訓練兵時代は邪魔になってくると彼に髪を切ってもらっていた。
 その後、調査兵団に入った少年は、施設の説明を聞いたのだが、何と理髪店が併設されているのだという。確かにいちいち髪を切ってもらいに街まで出かけるのも面倒であるし、兵団は大所帯であるため、それは納得出来る話ではあった。憲兵団などは身だしなみに気を使うものも多く、調査兵団のものよりももっと広いのだと聞かされた。入団して間もないエレンはそこを利用したことはなかったが、髪が邪魔になったら切りに行くか、とそう思っていた矢先にその出来事は起きた。


「ねぇ、エレン、ちょっとお願いがあるんだけど」
「はい、何でしょうか? ハンジさん」

 ハンジの実験に付き合った後、彼女にそう切り出されたエレンが何を頼まれるのだろうと思っていると、彼女は実験に使うためのサンプルが欲しいのだと告げた。

「だから、髪少し切らせてくれない? あ、何なら、整えてあげようか。ちょっと髪伸びてきているみたいだし、私は結構髪切るの上手いんだよ?」

 ハンジの頼みごとにエレンは咄嗟に首を横に振っていた。

「あの、すみません、それはちょっと……」
「え? 何で? 髪もらうだけだよ? 指切り落とせとかそういう話じゃないし。あ、爪は切ったら欲しいけど」
「あの、そうじゃなくて、髪を切るのは構わないのですが、その、出来ればハンジさんじゃない人に切ってもらいたいんです」
「えー、私の腕が不安なわけかい? 本当に上手いんだよ?」
「いえ、そういうことではなくて――」

 別にハンジの腕が心配だとかそういうわけではないのだ。ただ――女性に髪を切ってもらうのが嫌なだけだ。幼馴染みの少女の申し出も断ったし、母親が亡くなってからは女性に髪を切ってもらったことはない。女性の手で切ってもらうと――どうしても死んだ母の手を思い出してしまうから。
 どう説明したものか、とエレンが悩んでいると、どうしたんだ、何騒いでやがる、という声とともに実験室の扉が開かれた。

「オイ、エレン、何してやがる。実験終わったら掃除を手伝えと言ってあっただろうが」
「あ、リヴァイ、聞いてよ。エレンがね――」

 現れた少年の上司は同僚の話を聞いた後、お前に切ってもらうんじゃ俺だって断るぞ、と告げた。

「酷いな、リヴァイまで。私、本当に上手なんだよ?」
「話は判った。なら、俺が切ってやろう。髪が入手出来れば別に文句はないんだろうが」

 まあ、それはそうなんだけど、とハンジが続けるのを聞き流し、男は少年を引っ張って部屋を後にしたのだった。


「あの、いいんですか? 兵長」
「何がだ?」
「イヤ、髪切るんですよ? 嫌じゃないんですか?」

 リヴァイの潔癖は有名な話だし、人の髪を切るなんて嫌ではないのだろうか、と思ったのだが、男に平然とした顔でハンジに任せて耳まで切られるのとどっちがいい?と訊ねられ、エレンは彼に任せることを選択せざるを得なくなったのだった。

 部屋で髪を切るのは毛が散るし道具を用意するのも面倒だという理由で、理髪店の一角を借りて散髪をすることになり、そこに連れてこられた少年は黙っているのも何なので、男に質問を投げかけてみた。

「あの、兵長はどこで髪を切られているのですか? やはり、ここで?」
「自分で切っているに決まっているだろう」

 きっぱりはっきりと告げられた言葉にエレンは目を丸くした。

「え? 自分で切るんですか? それだと切りにくくないですか?」
「他人に頭をいじくりまわされるよりもマシだろうが」
「…………」

 エレンとしては自分で切るよりも人に切ってもらった方が楽だと思うのだが、男にとっては違うらしい。

「大体、刃物を持った人間に無防備な姿をさらすなんて真似はご免だな。金持ちはいくら腕が良いと評判でも身元のはっきりしないものは専用の理容師には雇わないというしな」

 確かに男性はひげや顔をそってもらったりするというから、咽喉元に刃物を当てられるのは信頼しているものでないと嫌なのかもしれない。後ろ暗いことがないものなら普通に理髪店に行けるだろうが、有力者と呼ばれるものには色々とあるのだろう。

「お前はどうしてたんだ?」
「子供の頃は母に切ってもらってましたが、母が他界してからはアルミンに――あ、同期の幼馴染みなんですが、彼に切ってもらってました。アルミンとは配属が違うので自由時間が合わないだろうから、これからはここで切ってもらおうかと思ってますが」

 でも、色々と忙しくて来れる時間が作れるか判りませんが、と続ける少年に、なら、次もまた俺が切ってやると男が言い出したので、エレンはぽかんと口を開けてしまった。

「何だ、てめぇ。俺じゃ不満だとでも言うのか」

 低く響く声にエレンは慌てて首を横に振って、男にバカか動くんじゃねぇ、と頭を叩かれた。

「すみません。ただ、手間かかるんじゃないかと思って」
「別に自分の髪を切るついでだ」
「あ、じゃあ、オレが兵長の髪を切りましょうか?」

 言ってから、エレンはしまった、と思った。他人に頭をいじくりまわされるのが嫌で自分で髪を切っているという男がそんな申し出を承諾するわけがない。
 だが、男はエレンにとって意外に思える返事をした。

「そうだな、お前に切ってもらうのは悪くない」

 再びぽかんとしてしまった少年にまたバカ面しやがって、と言われ、エレンは正気に返った。これは信頼されているという解釈でいいのだろうか。尊敬する上官にそう思ってもらえるなら嬉しいのだが。

「その代わり、他の奴に切らせるなよ。俺は自分のものを勝手に他人にいじくりまわされるのは嫌だからな」
「はい、判りました」

 深く考えずに答えた少年がその言葉の意味に気付くのはしばらく先の出来事――。



2014.1.7up



 きっとこの後、髪を切るときになって「手付きがなってねぇ!」とか言われて、しごかれることになるのだと思います(笑)。理髪店事情は判らないので勝手に書いてしまいましたが、そこはスルーで(汗)。





11・※パラレル設定リヴァエレ。ファンタジー風味。


 あの屋敷には化け物がいて侵入者から守っているから、入り込むのは難しいって噂だよ、との話を耳にしたとき、リヴァイは鼻で笑った。化け物などこの世にいるわけがない、本当に怖いのは人間の方だと、常々彼は思っている。――リヴァイは盗賊だ。貧民街で生まれ捨てられた彼は両親を知らないし、どぶの底のような悪環境でよくぞ一人で生き残ったものだと思っている。ろくな教育も受けられなかったリヴァイだが、彼はずば抜けて頭が良かった。勉学という意味だけではなく、人の力量の見定め方、状況判断、情報分析、人の使い方の上手さ――そのどれをとっても彼に匹敵するものはそうはいないと言われている。

 そんな彼が目を付けたのは、訪れた街で一番だと言われている有力者の屋敷だった。あくどい商売をして稼ぎ、かなりの財を貯め込んでいるという情報を掴んだが、それと同時に屋敷には恐ろしい化け物もいるという噂もついていた。リヴァイはそれを一笑に付した。化け物などいるはずもない――いたとしても、この目で見なければ信じられるものではない。噂はあるものの実際に化け物を見たと言う目撃者は誰もいないし、リヴァイは相当に腕が立った。豹や虎が出てきても仕留められる自信があったし、リヴァイは仕事をともにしたことのある仲間を集め、その有力者の屋敷へと侵入することにした。

 基本、リヴァイは人殺しはしない。それは人を殺すことに罪悪感を感じるからというよりも、面倒な事態に陥るからだ。財産を奪われたものの恨みも強いが、自分にとって大事だと思う人間を奪われた恨みはそれの比ではない。執念深く復讐を果たそうとする人間は始末に負えないと男は思っている。殺人というものは連鎖だ。一人殺せば復讐者が現れ、その復讐者を殺せば、その復讐者の身内がまた復讐者となる。
 だから、今回もリヴァイは入念に計画を立て、屋敷の見取り図を手に入れ、警備の見回りの時間の情報を得、住人を薬で眠らし――勿論、死ぬようなものではない――屋敷に乗り込んだのだ。更に言うと、リヴァイが狙うのは悪徳で有名な嫌われ者ばかりなので義賊だと勘違いしているものも多い。義賊などでは決してないが、そういったものは何かを目撃してもリヴァイに不利な証言はしないので、リヴァイは否定せず放置している。

 首尾よく金品を奪い、後は引き上げるだけとなったが、リヴァイにはどうしても気になっているところがあった。屋敷の見取り図によるとこの屋敷には地下室があるのだという。その存在を知るものはごく僅かで実際にその地下室に行ったというものは見つからなかったのだが、リヴァイはここが気になって仕方なかった。本当に存在するかどうかだけでも確かめてみるか――そう思ったリヴァイは隠されているらしい地下室の入口へと足を向けた。



 果たして、件の地下室は存在した。入口を開け中に侵入したところ、中の空気は澱んでいなかった――ということは、この地下室は利用されているということだ。灯りを絞ったランプで照らした通路は清掃もされているようだったし、いったい何に使われているのかと足を進めていくと、そこには一つの部屋――いや、地下牢があった。

「誰だ? アルミン、じゃないな。足音が違う」

 そう声をかけられ、リヴァイが地下牢の中を照らすと、中には一人の少年がいた。粗末な寝台と小さなテーブルと椅子などの僅かな家具だけしかないその部屋にいた少年がベッドの上から下りると、じゃら、という金属音がした。
 その少年の姿は異様であった。黒髪に背格好から言って十歳前後だと思われるのだが、足は鎖につながれ、眼には目隠しがされていた。

「この屋敷の者はここには近付かないはずだし。あんたは誰なんだ?」

 目隠しがされているから見えてはいないはずだが、子供は僅かな足音と微かな気配で誰かが来たのを察知したらしい。リヴァイはこの子供に興味を抱き、鉄格子の向こうに声をかけてみた。

「俺の名前はリヴァイだ。お前こそ誰なんだ? 何故こんなところに閉じ込められている? 悪いことでもしたのか」
「別に何もしていない。ただ、生まれてきただけだ」

 子供はきっぱりとそう告げた。確かに罪人なら国の警備隊にでも捕まって公の牢に入れられるだろう。こんな個人の屋敷の地下牢に閉じ込めておくわけがない。

「お前、名前は?」
「エレン」
「その眼は見えないのか?」
「見える。……見せないように言われているが」
「そうか」

 そう言うと、リヴァイはピンを取り出し、鮮やかな手つきでいとも簡単に牢の鍵を開けた。そのまま中に侵入してきた男に子供は息を呑んだ。音と気配で入って来たのが判ったのだろう。

「あんた、何を……」
「見るなと言われると見たくなる性質なんでな」

 それで、子供には男がしたいことを察したらしい。咄嗟に押さえようとした手を捕まえて、その目隠しをむしり取った。

「眼を閉じるな」

 強い口調で子供に男は告げ、観念したのか子供は恐る恐ると言った風に瞳を開けた――現れたのは鮮やかに輝く金色。

「ハッ! そうか、それでか!」

 金色の瞳――それはこの地方では不吉の象徴だ。昔、この地には人を襲う金色の眼の化け物がいて、人々は恐怖に慄いていたという。化け物を倒そうと何人もの勇敢な若者が赴き死んでいき、それでも戦い続け最後の一匹になるまで化け物を追い詰めたのだ。結局、最後の化け物は倒すことが出来なかったのだが、地下深くに封じ込める事には成功した。そして、封じ込めたものは化け物を逃がさないためにその上に屋敷を立てた――そして、それ以降化け物を封じ込める代償かのようにその一族は繁栄を続けたという。
 バカな話だと男は思う。金色の瞳は確かにごく稀にしか見ない珍しいものではあるが、この地方以外では不吉だとされてはいないし、化け物でも何でもない子供を捕まえて閉じ込めたところでその家が繁栄するわけでもない。そんな伝承を信じる方が間違っているのだ。だが、ここに子供を閉じ込めたものはそれを信じたのだろう。更に実際に商売が上手くいってしまったのが、この少年にとっては不幸だった。商売人というのは意外にゲン担ぎをするものが多い。おそらく一生、この少年を外に出す気は屋敷の主にはないのだろう。

「……あんたは怖くないのか?」
「何がだ」
「オレの眼。不吉の象徴なんだろう?」
「何故? 今までに見た宝石より一番綺麗なものだ」

 それはリヴァイの素直な感想だった。こんなにキラキラした美しいものを男は今までに見たことがない。どんな金銀財宝よりもこの子供の瞳は美しいと思う。

「そう言ったのはあんたで二人目だ」
「二人目?」
「ああ、友達――アルミンだけが綺麗だって言ってくれた」

 子供の話を聞くところによると、アルミンというのはこの屋敷の下働きの少年で主にこの子供の世話をしているらしい。少年がこの地下牢に閉じ込められて落ちた視力を回復させるように努めたり、中で運動させて筋力がなくならないように色々としてくれた、たった一人の友達らしい。

「地下牢に友達を閉じ込めたままにしておく奴が友達と言えるのか?」
「それは――仕方ないんだ。アルミンのじいさんは病気で、アルミンが働かないと食っていけない。オレを逃がしたりしたら、どうなるか判らない」

 そう言って唇を噛む少年の足枷をまたピンで開けて外すと、男はひょいっとその身体を抱き上げた。わわっと声を上げる少年は戸惑ったように男を見詰めた。

「あんた、オレをどうする気だ?」
「盗む」
「は?」

 ぽかんとする子供に男はにやりと笑って見せた。

「俺は盗賊だ。欲しいものは盗む。だから、お前も盗んでいく」
「欲しいって、オレは……」
「俺はお前のその金色が気に入った。お前は一生ここにいたいのか?」

 男の言葉に子供は逡巡していたが、やがてぽつりと呟くように男に言った。

「塩水で出来てるっていう海、炎の水、砂の雪原、氷の大地……そんなものがあるってオレは聞いた。オレは小さい頃にここに連れてこられて外の世界を殆ど知らないんだ。ここから、出たら……それが見られるのか?」

 少年の言葉に男は当たり前だと笑った。

「自分の足で確かめてみろ。その足は何のための足だ。その瞳は何のためにある? その耳は何に使う? ――全部、お前次第だ」
「――行きたい。オレは、あんたと一緒に行きたい」
「上等だ」

 楽しそうな声を上げた男は子供を抱え、その場から消え去った。



 その後、あの有力者は悪事がばれて失脚したらしい――らしい、というかそう仕向けたのはリヴァイなのだが、勿論、それがばれるようなヘマはしていない。子供の友達だという少年は善良な雇い主に拾われて今では元気になった祖父と一緒に働きながら勉強しているそうだ。

「リヴァイさん、次の仕事の情報が入りましたよ」
「ああ、判った」

 ――少年を攫って五年の月日が流れていた。痩せて小さかった子供はすくすくと成長してしまい、今では自分より背が高いのだから癪に障る。

「人殺しはダメですよ?」
「ああ、判った」
「もう、そればっかりじゃないですか」

 むうと尖らせた少年の唇をリヴァイはにやりと笑って塞いでやった。舌を絡めた激しい口づけを与えると、慣れない少年は苦しそうにする。解放してやると、少年は荒く息を吐いた。

「――そういう誤魔化し方はずるいです」
「慣れないお前が悪い」
「オレはリヴァイさんみたく経験豊富じゃないんです!」
「さすがにガキに突っ込むのは可哀相だと思って五年も待ってやった人間に言う台詞か?」
「―――――!?」

 あからさまなことを言われて絶句する少年にリヴァイが少年との初めての夜の話をし出したので、エレンはうわーと叫んだ。

「リヴァイさんのバカー!」

 そう言って去っていく少年にバカと言ったお仕置きは何にしようかと男はほくそ笑んだ。
 ――あの日見つけた金色。
 自分が手に入れた財宝の中で一番の宝を手放すことは一生ない。
 それに、盗まれることを望んだのはお前なのだから、と男は去って行った少年を思ってまた楽しげに笑った。



2014.1.7up



 思い付いたので書いておこう作品。盗賊兵長を書きたかったのですが、何だか王道BLにありがちなネタになった気が……(汗)。





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