「MUSIC FOR ATOM AGE」SPECIAL INTERVIEW VOL.2 |
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-今回、初めて音楽の仕事をされて大変ではなかったですか?
ウィーンの音楽大学でフルートを専攻していましたが、音楽製作に係わった事もなければ、特に音楽の仕事をしたこともないんですね。今回は別に何にもしなくていいから、できることをやってくれればいいからとおっしゃっていただいて。
-アシスタント・プロデューサーとしてお仕事をされてみていかがでしたか?
私は別の分野である程度仕事してきているので、やっぱり社会人のお約束として、できないことは引き受けられないというのがありますから、最初はちょっと「どうなのかなぁ、それは」と思ったんですが、まあ、プロの皆さんに支えられてっていう感じで。特に何をしたというわけではないんですが…
-レコーディングあるいはプロジェクト全般のサポートをされたといったた感じでしょうか?
今回、人数が少なすぎもしないんですけれど多くもないと思うんですね。樋口さんが新しい人を起用したということがあって、樋口さんが何役もこなされたという側面があって。寺田さんは音に関してのみ、濱田さんは企画と人のお世話ですね。結構、3人が3人ともいっぱいいっぱいで仕事をしてるんですよ。間の些細な事務作業をフォローするっていうところまで手が回らないっていうところ…まあ、雑用です(笑)。
-樋口さんの音楽をお聴きになったことは?
聴いたこともないし、お会いしたこともないし、どんな人かっていうのも知りませんでした。
-アルバムの完成を間近に控えた今の感想は?
素晴らしいプロジェクトだと思います、客観的に見ても。樋口さんがおっしゃってたことがとっても正しくて、それを実際に進んでいくプロセスの中で実感しながら「ああ、あのときおっしゃってたことはこういうことなんだな」と。
-さっき、寺田さんも同じことをおっしゃってましたよ。
ああ、そうですか!今回、一番素晴らしいと思うのは、寺田さんも濱田さんも初めてに近いんですよね。まあ、もし大きな仕事をするとしたら結構テンパっちゃって、はったりで仕事しなくちゃならないと思うんですよ。でも、樋口さんは洞察力がある人だと思うんですよね。初めてののカップリングだったんですけど、変に追い込んだりしなかったし、樋口さん自身も上から何かを言うってこともしなかったし、完全にパートナーとして3人が集まりましたっていう状況を作ってくださってたんですね。そのおかげで、ふたりは一番いいものを出せたと思うんですよ。変なしがらみがあって「音楽業界初めてだ」とかいうみたいのも無く。すごくプロっぽい完成度の高い、なおかつ、変なところに変なエネルギーを消費しないで、それぞれが持ってる良いエネルギーをすべてうまく自分の作業に投入して、そのエネルギーを高めあって。で、出来上がったもののクオリティーがすごくいいじゃないですか。だから、ものすごくプロジェクトのチームとしても素晴らしかったし、出来上がったものも素晴らしいと思います。
-今回、スタッフ一新という話を聞いて、期待もあったけれど実はすごく不安だったんです。ファンにしてみれば久々のアルバムにものすごく期待する一方、「これでコケたら危ないぞ」みたいな(笑)
よかった、それを最後に聞いて(笑)
-世代感覚の違いみたいなものってありますよね。そういった点も心配だったんですが。
今回のメンバーは絶対的な一貫性があると思うんですよ、センスのうえに於いて。一過性の、いわゆるマーケティング重視の、売れるもの、人の心を一時的に掴むものに対しての評価が高いという人ではないんですね。本当にいいものを作りたいっていう…野心の向いてる方向が一貫してるんじゃないかと思うんです。変なもの作るんだったら作らないほうがいいとか。濱田さんも寺田さんも一番ベースになるのは、ものすごく樋口さんを尊敬してますし、樋口さんもふたりのそこをすごく買って大事にしてると思うんですよね。そこでひとつの方向性があるんじゃないでしょうかね、同じ方向を向いてる人たちっていう。
-岩田さんがお聴きになって今回のCDはどうですか?
生意気なことを言うと、ぶっちゃけた話、樋口さん的には多分100%は出してないんじゃないかなと。かなり抜いて作ってる部分もあると思うんですよね。ただ、ある意味、樋口さん的なプロトタイプとして作ってるのがすごくあったと思いますよ。「樋口康雄全集」みたいなべったりとしたコンセプトで作ったのではなくて、もっとプラクティカルに「寺田さんにこういうことをさせてみよう」とか、「自分もこういうことをしてみたい」とか、「自分が勉強するのに肥やしになる要素を身に付けておこう」というのが結構あったんじゃないかなあと。そういう意味で、後に繋がっていく要素が大きいし、魅力があるのかなという気はします。あとは、すごく巡り合わせがよかったと思うんです。いい曲が何曲も入っていると思いますし。
-スタッフの立場を離れ、一音楽ファンとしてはこのCDにどんな感想をお持ちですか?
個人的にもいいCDだと思いますよね。すごい贅沢だし。実質的に「こういう曲があったら聴きたいよね」っていうタイプ曲が入ってると思うんですよ。私は制作過程を見ちゃってるので難しいですけど、相当に素晴らしい価値のあるCDであることは間違いないと思います。
【主な通訳・翻訳実績】クリスチャン・エッシェンバッハ氏(指揮者)へのインタビュー通訳、イングリット・ヘブラー女史(ピアニスト)へのインタビュー通訳、ヨハン・セバスティアン・バッハの作品の演奏に付いての考察(楽譜の前文用)翻訳、クラシカ・ジャパン(クラシック専門チャンネル)通訳及びテロップ作成、「音楽の速度と脳波への影響に関するレクチャーコンサート」通訳・翻訳 他多数
-今回のプロジェクトにエンジニアとして参加されたいきさつを教えてください。
2年位前までこのスタジオにいて、佐々木さんからエンジニアを頼まれまして「こんな企画あるんだけど、どお?」ということで。佐々木さんとは10年位前から知り合いで、樋口さんとの面識はアシスタントの頃はあったんですけどね、樋口さんもそう何回もはやってないんで、はっきりは覚えてないんですが「顔くらいは」って感じで。ま、今回、初めて樋口さんとやらせていただいたって感じですね。
-今回のレコーディングはいかがでしたか?
結構、スケジュールがタイトで皆さん大変だから、俺なんかは言われたことやるだけしかないんで、そんなには大変じゃないっていうか。まあ、大変は大変でしたが・・・
-特に普段の他のレコーディングと変わらないという感じですか?
そうですね。同じですね。それより皆さんが世話を焼いてくれるし、樋口さんも優しいし、曲のヴァリエーションもいっぱいあるし、やってて面白かったですね。いっぱい勉強になったし。
-樋口さんから特別な注文はありましたか?
今回、「アトム」っていう企画があるじゃないですか。そういう面で、普通の曲なんだけれど、少しレトロな感じがしたりとか、そこに新しいものが入ってきたりとかっていう、ジャンル的にもボサならボサでも、ちょっと違う感じに聴こえたり、クラシックでもちょっと違う感じにしたりとかで厭きなかったですね。
-素人だからよくわかんないんですけど、「こういうふうにやって」って注文がくるじゃないですか。そのあたりは言われた通りに注文に忠実にやるんですか?
基本はそうですね。イメージって樋口さんの中に入ってるものだし、そのイメージがこっちはまだわからないところがいっぱいあるじゃないですか。正直言って僕はひとつひとつしかこなしてないから、全体像はまだ見えてないとこもあるし。だから樋口さんが言ったイメージを膨らまして解釈してやっていくって感じですね。
-エンジニアのかたのお仕事って、見てるとすごく細かい作業でたいへんじゃないですか。イヤになったりしませんか?
大変というかこれが仕事というか、そんなもんですね。別にイヤになったりはしないけど大変は大変ですね(笑)
通常は、今はこういうスタイルが流行ってきたんですけれど、エンジニアサイドから感じると、日本だとアシスタントとミキサーとこうふたつセットで、例えばAスタでやったスタイルってありますよね。あのスタイルが昔から多かったんですが、今はコンピューター・ベースになってきたんで、ひとりでやる作業になってきたんですよ。ふたりでやる作業だとあれが分担になります。今はひとりが多いんで、そういう意味ではやることが増えましたね。
-すごい大変ですよね〜。
うん(笑)。大変というか、ずっとやってなきゃいけなくなったっていう。昔はアシスタントやってる時はこっちはお休みとか、両方一緒にやって、ひとつの仕事も半分半分で動いてた。
-毎日、深夜までのお仕事で体力的にも精神的にもハードじゃないかと思うんですが。
そうですねぇ、慣れもありますけどね。まあ、このプロジェクトの人たちはすごく人がいいんで、すごくいいですよ。やり易いっていうか。単純に言ったら優しい方たちなんで、少し甘えることも出来るし。だから非常にやり易い。雰囲気としてはいいんじゃないんですか。こういうタイトで厳しい仕事だと、もっともっと厳しい仕事の場合もあるんですが、寺田さんも聞けば教えてくれるし、岩田さんも世話してくれるし・・・
-特に苦労した場面はありましたか?
うーん。歌が多かったことですかね。あと、ここ(Cスタジオ)が狭かったりするのが辛かったですね。
-レコーディングを終えて、中澤さんとしては自分として納得できるものができましたか?
ええ、いいんじゃないんですか。このあとマスタリング作業が残っているんで、そこでもう一回、音が変わるんで。そこでもうちょっと派手にしてもらって。あと、通しで聴いてみないとわかんないな。このアルバムの企画の全体像っていうのがあるじゃないですか。ナレーション入ってるとか、その辺の意味が実は僕はまだ読めてないので。それで、それを聴くのが楽しみですね。そこで初めてどうだったかという判断ができる。まだ、断片的にしか世界が見えていないところがあるんで。
-約1ヶ月間、長時間一緒にお仕事をされて、樋口さんってどんなかたでしたか?
樋口さんですか。非常にクリエイティブなかたです。非常に頭が切れるかただし、だから逆に言ったら、そこについていくのが結構大変っちゃ大変なんですけどね。思いつくことパッと思いついて「ん?なんでこの音入れるんだろ?」って、こっちはわかんなくなっちゃう。で、「ああ、そういうことか」みたいな。だからそのへんはすごいなと思いますよ。曲のヴァリエーションにしても。
-エンジニアのかたからみて樋口さんの音楽の特徴といったものは感じられましたか?
どうなんでしょう?今回、実際樋口さんがベースでやられた、樋口さんが主体でやられた・・・曲はそうかもしれませんが、間にアレンジャーのかたが入っているじゃないですか。そういう意味から言ったら、樋口さんとまた違うのかな、樋口さんが主体で動くとまた違うのかなっていうのがひとつあるんで、ちょっとなんとも言えないんですが、曲的には面白いですよね。聴いてて厭きない。あと、樋口さんが好きなのはロックじゃないけど、リズム持った曲、グルーヴ感というのを大切にするんだなと。
-エンジニアの中澤さんとしては、リスナーにこのアルバムのどういうところを聴いてほしいですか?
えーと、やっぱトータル的なところですよね。一枚のアルバムとしてのトータル的な曲の感じ、全体の音ですね。でも、実際、エンジニアって音を作るけど、音を聴いて欲しいっていうよりは音楽を聴いて欲しい。曲にのめりこめる音が出来るかが勝負。
-それは樋口さんなら樋口さんの作品がどれだけ音としてちゃんと伝わるかっていうことですか?
そうです、そうです。そこがうまくいけば、みんなが「いい音楽だよ」って言ってくれたらこっちもいいんです。「いい音だよ」とかはいらない。ま、「いい音だよ」って言われれば嬉しいですけど、「いい音楽だったよ」「おもしろかった」って言ってもらえれば十分。
-エンジニアとしては「いい音楽だったよ」と言ってもらえれば成功?
うん。成功だと思いますよ。
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次回はゲイリー芦屋氏 |
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