レンズの部屋                  華室 夷蔵  
ここはレンズに関する基本的な解説のコーナーです。
2014年9月26日再改定;インナーフォーカス方式の解説を追加
20140917:改定しました。テレセントリック方式の解説を追加
ご感想・ご意見
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1.レンズの基本 結像の基本式と基本的性質
2.組み合わせレンズ レトロフォーカス、テレフォト、ズームレンズと第1主点・第2主点、虹と色収差の補正インナーフォーカス
3.デジタル対応レンズ デジタル専用レンズテレセントリックレンズ
Z.レンズの雑学 レンズの歴史、語源、収差計算と国産第1号電子計算機(FUJIC)
 1.レンズの基本  

1.1:結像の基本式、主点
図1−1Aのように凸レンズに無限遠の距離から平行な光が入射すると出力した光は一点(A)に集まります。レンズからAまでの距離焦点距離といいます。
図1−1Bのように凹レンズに無限遠の距離から平行な光が入射すると出力した光は、一点(B)から広がったようになります。B点から凹レンズまでの距離を焦点距離といい凸レンズの焦点とは反対の位置にあるので負の値をとります。

 

図1−1A 凸レンズ
          
 
図1−1B 凹レンズ

 図1−1Cのように、レンズの前のA0点から出た光はレンズで集光されてB0点に集まります。
AとBとは焦点距離から計算できて


1  1  1
− +− =−                 (1)
0 B0 f

0:レンズから被写体までの距離
0:レンズから結像面(フィルム,CMOSやCCD)までの距離
f:レンズの焦点距離

となります。

またA
0とB0との比を撮影倍率(k)といいます。
  B
0
K=−                   (2)
  A
0

小さな被写体に近寄って、画面に大きく撮像することをマクロ撮影と言いますが、レンズから被写体までの距離(A)を近くすると、レンズから撮像面までの距離(B)が遠くなります。
 例えば、被写体の大きさをそのままのサイズで受光面に結像する等倍撮影では、A0とB0が共に焦点距離の2倍になります。

また焦点距離を絞りの直径で割った値をF値といい、F値が大きいほど絞りの直径は小さくなります。
  f
F=−
  D
D:絞りの直径

 
図1−1C:結像図
 図1−1Cのように左側の一点A0はB0に結像し、A0より遠いA1はB0よりレンズに近いB1に像を結び、A0より近いA2はB0より遠いB2に像を結びます。
 B0にフィルムや撮像素子を置くとA1やA2にある被写体は少しボケた画像になります。このボケ量(図1−1Cの許容錯乱円径)が十分に小さいと人の目にはピントの合った画像のように見えます。A1からA2の範囲を被写界深度と言い、絞り孔が小さいとピントが合って見える範囲が広くなり、被写界深度が深いといいます。B1からB2までは焦点深度と言います。
 絞りを絞った(数値を大きくした)方が被写界深度が深く
 レンズの焦点距離が短いほど被写界深度が深く
 被写体までの距離が遠いほど被写界深度は深くなります。

これを利用して前ボケや後ろボケを活かした写真や全体にピントの合った写真を撮ることができます。
 レンズの原理は通常1枚の凸レンズで解説されますこのレンズの中心を主点と言います。しかしカメラ用レンズは、収差の補正やズームレンズの採用により、実際のレンズは複数枚の凸レンズ、凹レンズで構成されているのでレンズの中心がどこか分かりません。そこでレンズの前から入射した平行光線が結像する焦点より、焦点距離分だけ戻った点第2主点、逆にレンズの後方から入射した光線が結像する点から戻った位置を第1主点と言い、第1主点と第2主点の間隔を主点間隔と言います。この主点位置は必ずしも実際にレンズがある位置ではなく、後述のように仮想的なレンズの位置であることがほとんどです。

1−2:レンズの基本的結像の性質
レンズの厚さを考えず、収差のない理想的なレンズは下記のルールで結像されます。

 
図1−2A:基本結像図
 被写体から出た光は以下の法則で結像します。
(1)光軸と平行に入力した光は後側焦点を通過する
(2)中心を通った光は直進するする。
(3)前側の焦点を通った光は光軸と平行に出力する。
上記の3本の光は一点に集まります。
レンズのその他の点を通った光は全てこの点に集まり、此処に被写体の上下・左右を反転させた実像ができます  
 2,組み合わせレンズ  ページトップへ
2.1:レトロフォーカスタイプ

一眼レフの部屋で触れたように一眼レフカメラでは、クイックリターンミラーがあるために焦点距離の短いレンズを使うことができないので2枚のレンズを組み合わせ等価的に焦点距離の短いレンズを構成しています。
これをレトロフォーカスタイプと言い、図2−1のように原理的には入射面側の凹レンズ(L1)と出力面側の凸(L2)レンズで構成されています。

 

図2−1:レトロフォーカスタイプのレンズの概念図
L1の凹レンズとL2の凸レンズが実際のレンズです。
図の左側からの平行光線は、最初の凹レンズ(L1)で広げられ2枚目凸レンズ(L2)で結像されます。
L1に入射した平行光線をそのまま延ばした直線とL2で結像される直線の交点に仮想的な凸レンズができます。この仮想的凸レンズのある位置を第2主点・像側主点と言います。
実際には何も無い空間ですから此処にクイックリターンミラーがあっても差し支えなく、一眼レフのレンズはこのようにして、広角レンズを実現しています。この第2主点から、結像面(素子面)までの距離がレンズの焦点距離です。
 逆に撮像面(図2の右側)から入射した平行光はL2の凸レンズで集光され、更にL1の凹レンズで若干広げられて図のA点に結像します。A点から伸ばした直線と右側からのからの平行線との交点にもう一枚仮想的なレンズがレンズができます。このレンズのある位置を第1主点・被写体側主点と言います。第1主点と第2主点間の距離を主点間隔と言います。
 被写界深度を計算する時などの被写体までの距離は、第1主点から測ることが必要ですが、特にズームレンズではこの値が変化することが多く通常は公開されていないことが問題です。
 単焦点のレンズでは、主点間距離が短いので第1主点=第2主点としても、通常の撮影ではあまり問題ありません。

2.2.テレフォトタイプ
 
望遠レンズを使うときは、クイックリターンミラーの問題はありませんが、レンズの形状を小型にするためにテレフォトタイプが使われます。
テレフォトタイプの原理は、図2−2のように、レトロフォーカスとは逆に始めに凸レンズ、次に凹レンズが使われます。

 
 
図2−2:テレフォトタイプの概念図
 L1の凸レンズとL2の凹レンズが実際のレンズです。凸レンズの後ろに凹レンズを入れると、等価的に焦点距離が長くできます。この原理を応用したのがテレコンバーターです。
 図2−2の左側からの平行光線は最初の凸レンズL1で図のA点に結像されますが、途中にL2の凹レンズがあるためここで広げられて、少し後ろのB点に結像されます。
 レトロフォーカスの時と同じように結像点Bから延ばした直線と左からの平行光の交点に1枚の仮想的な凸レンズができます。同様に右側からの平行光線を考慮すると第2主点ができます。
 逆に、図の右側からの平行光線は、L2で広げられ、L1で結像されます。焦点位置は図からはみ出していますが同様に仮想的な凸レンズと第1主点が形成されます。
 このように実際のレンズより先に仮想的なレンズを作って望遠レンズを小型化しています。

 
 2.3:ズームレンズ

 最近のズームレンズは、ズーム比の拡大やレンズの小型化のため複雑な構成になっていますが、ここでは基本的な原理を解説します。
 ズームレンズは極めて簡単に説明すればレトロフォーカスタイプとテレフォトタイプテレフォトタイプの組み合わせで構成されています。
 原理的には図2−3A、図2−3Bのように3枚以上のレンズを使います。
此処では、1枚目が凸レンズ、2枚目が凹レンズ、3枚目が凸レンズの場合で説明します。

 
図2−3A:ズームレンズの広角側の概念図
 1枚目の凸レンズL1と2枚目の凹レンズL2を近づけてセットとして組み合わせ、凹レンズの焦点距離の絶対値を凸レンズの焦点距離より短くして、合成したレンズが結果的に凹レンズになるようにすると前方の仮想的凹レンズと後方の凸レンズL3の組み合わせとなってレトロフォーカスタイプの広角レンズになります。 
 第2主点はレンズ実体より後ろ(右側)にできます。
  
 

図2−3B: ズームレンズの望遠側の概念図
  
  2枚目の凹レンズL2と3枚目の凸レンズL3を近づけてセットとして組み合わせた仮想的レンズが凹レンズなるようにすると前方の凸レンズL1と後方の仮想的凹レンズの組み合わせなので、テレフォトタイプの望遠レンズになります。  
 ズームレンズの第1主点は示していませんが、単焦点レンズに比べると主点間距離が長く、焦点距離である第2主点から離れた位置にあるのが普通です。それでも初期のズームレンズは第1主点の変動が少なく素直な動きをしていたので絞りとボケの写真B−3のように被写界深度目盛りが刻まれていました。
 特に最近の高倍率ズームレンズやインナーフォーカスレンズはもっと複雑な組み合わせになって、主点の位置の移動が大きいのできれいな曲線が描けず、被写界深度目盛りが無くなってしまいました。被写界深度目盛りは常に使うものでは有りませんが時に必要になるので
被写界深度グラフを作りました。絞りとボケよりアクセスしてご利用ください。被写界深度グラフは被写体までの位置は、カメラからではなく第1主点から測ることで目安として使うように作っています。

ボケの効果を活かす時や、パンフォーカスで撮影するときは絞りを開くか思い切って絞るので気にすることは有りませんが、回折効果を気にして絞りを8あるいは11で使うときに便利です。

 ズームレンズのもうひとつの問題は、レンズによって第1主点の位置が異なると、カメラと被写体までの距離は同じでも、第1主点から被写体までの距離が異なるので撮像倍率・画角が異なって、見える・写る画像が異なることです。レンズの、焦点距離が同じでも、二つのレンズとでは写る画像が微妙に異なることがあります。普通は気になりませんが、定点観察のように同じ物を日・時刻を変えて撮影する場合、レンズやカメラを換えると写る画像が微妙に異なります。同じ画像にするためにはカメラ・三脚の位置を調整することが必要です。
 以前ある研究者が植物の成長記録を撮影していて、途中でレンズを換えたら公称表示の焦点距離を同じにしても突然対象の植物の大きさが不連続に変化したと書かれた文献を読んだことがあります。

2.4 虹と色収差の補正
雨上がりの空に浮かぶ虹は一遍の風物詩です。
虹ができる原因は、光の波長による屈折率の違いです。
詳しくは
虹はどうしてできるの
二重虹
をご参照ください。
 
 
図2−4A:アラスカ・アンカレッジの二重虹
 アラスカアンカレッジの二重虹です。
虹は水滴の反射光ですから偏光フィルタで強めたり弱めたりできます。写真は二重虹の外側を強調するため偏光フィルタで最大に強めています。なお外側の虹と内側の虹は色の配列が逆になります。 
  
 水滴だけでなく、あらゆる物質は程度の差がありますが、光の波長(色)によって屈折率が異なります。したがってそのままガラスやプラスチックで写真用のレンズを製作すると撮影した像の周りに虹のようなにじみみがでてレンズの大敵です。これを色収差と言います。
これを補正するために図2−4Bのように2枚のレンズを組み合わせて打ち消しています。
 
 
図2−4B:色収差の打ち消し
 屈折率とアッベ数の異なる素材のレンズの組み合わせを使って色収差の影響を少なくできる。例えば、屈折率が小さくアッベ数の大きいクラウンガラス(ソーダ石灰ガラス:窓ガラスに使われる)の凸レンズと屈折率が大きくアッベ数の小さいフリントガラス(鉛ガラス:カットグラスに使われる)の凹レンズのレンズ同士を張り合わせて一つのレンズのようにすることで色収差の小さい色消しレンズを作れる。
なお、レンズのカタログにN群M枚と書いてあるが張り合わせて個々に分離できないものを群という。左図は1群2枚 
また最近はデジタルカメラになって補正しきれずに残ってしまった色収差をソフト的に補正しているものも出始めている

アッベ数:波長による屈折率の変化。大きいほど色による屈折率の違いが少ない。分散の逆数  
 2.5 インナーフォーカス、リアフォーカス方式
 ズームレンズの焦点合わせは、ズームレンズ全体(鏡胴)を移動させることによって、レンズの主点間隔を変えずに行うことができます。この方式を全群繰り出し方式と言い、原理的には容易であり、初期のズームレンズに採用されていました。被写界深度が簡単に計算できるので、レンズの鏡胴に被写界レンズ目盛が描かれておりました。(被写界深度(1)の写真B−3)
 ただしこの方式はレンズ全体を移動させる必要があり、大きくて重くかつAFの時間が長くなる欠点があります。
 そこで、考え出されたのがインナーフォーカス方式です。図2−3(A),(B)のズームレンズ構成図の一部、例えばL2の凹レンズを2枚のレンズで構成し2枚のレンズの位置と間隔を変えられるようにすると、合成してできた仮想的なレンズの位置と焦点距離を変えることができます。これによって先端のL1と後端のL3を動かさずに、L2の2枚だけを移動させることによって、第1主点と第2主点の位置を変えることができます。すなわち一部の軽いレンズだけを移動させるだけで、全体を移動させるのと代替の機能を持たせ、焦点合わせができるようになります。実際にはL2を2枚に分けるのではなく、新たにレンズ群を追加しています。
インターフォーカス方式の長所は
@動かす必要のあるレンズが小さく、軽くなるのでAFの高速化が可能
Aレンズの全長が変わらない。
B重心の移動が少ない。
Cレンズの前玉が回転しないのでPLフィルターの操作が容易になる。
短所は
@焦点合わせによって、若干ではあるがレンズの焦点距離・画角が変化する。
 構成によって焦点距離が長くなるレンズと短くなるレンズがあります。
Aそのため被写界深度目盛が描けなくなった。
があげられます。
 メーカーもインナーフォーカス方式レンズにおいては、焦点距離・画角は無限大位置のみ保証しており焦点合わせによってどのように変化するかは公表していません。
 なお絞りより前にフォーカス用移動レンズ群がある方式をインナーフォーカス、絞りより後ろにフォーカス用移動レンズ群がある方式をリアフォーカスと言います。
 ここでは、原理のみを説明しています。現実のレンズは遥かに複雑な構成になっています。
 下記のhpを参照してください。
 日本の代表的カメラメーカーであるニコンキャノンの例を挙げておきます。
ニコンは焦点合わせによって、焦点距離が短くなることを記述し、キャノンは無限大と近距離でレンズがどのように動くか図示しています。
 3.デジタル対応レンズ・デジタル専用レンズ  ページトップへ
3−1:裏面からの反射防止

 
一眼レフの交換レンズでデジタル専用レンズとデジタル対応レンズがあります。もっとも現在新発売されるレンズはデジタル対応と言わなくても殆どはデジタル対応になっています。
 デジタル専用レンズとは、デジタルカメラの撮像素子に合わせてイメージサークルがAPS−Cサイズやフォーサーズ(4/3インチ)と小さいレンズす。デジタルカメラであっても35mmフルサイズにはつかえません。マウントはできても周辺部が暗くなります。
 フィルムと比較すると撮像素子表面のローパスフィルタの光反射率が高くなっているので撮像素子で反射した光がレンズに戻ります。従来のレンズはこの戻り光に対して対策が施していない場合があります。このようなレンズでもフィルムで使用する場合は問題はありません。ただし、デジタルカメラに使用すると撮像素子で反射してレンズに当たった光が、レンズで再反射して撮像素子に戻り、ゴーストを発生したり、あるいはレンズの背面から入射して鏡筒内で多重反射してフレアやハレーションを発生することがあります。
 ファインダーで見ているときは、図3−1Aのように撮像素子には光が当たっていないので反射がありませんから、ファインダーでは気がつかず、撮像後にゴーストやフレアに気がつく場合があります。
 デジタル対応レンズは、この対策のため図3−1Dのように最後部のレンズの裏面に反射防止膜を設けたものです。これによって撮像素子からの反射によるゴーストは軽減されます。
 レンズ独特の「味」を求めて、敢て古いレンズを使うときには注意が必要です。
 
     
図3−1A: シャッターを押す前
ファインダーではゴーストは無い
  図3−1B:フィルムの場合
低反射なのでゴーストは発生し難い
    
 図3−1Cデジタル非対応レンズ
ゴーストが発生し易い。
    図3−1D デジタル対応レンズ
レンズの背面に反射防止膜があり、再反射が無くゴーストは発生し難い。  
 3−2:光の入射角への対応(テレセントリック方式)
 
撮像素子は光を電子に変換する受光素子の前に、カラーフィルタやマイクロレンズが設置され立体構造になっています。
そのため、特に広角レンズを使用した場合に撮像素子の周辺部は光が斜めから当たるので、入射光が受光素子に届き難くなって周辺部が暗くなることがあります。これをシェーディングといいます。
この現象を避けるためには光がなるべく垂直に撮像素子に当たるようにすることが望ましくなります。このためには絞りの位置を等価的な最後のレンズの前焦点に設ければ図3−2Aのように絞りを通った入射光は垂直に撮像素子に入射するようになります。
原理は1−2で説明したように、前焦点を通過した光は光軸に平行になるためです。
これを「テレセントリック」と言います。
ただし、厳密にこれを適用すると、有効径が少なくとも撮像素子と同じサイズ以上が必要でレンズが大きくなります。
 撮像素子の小さいフォーサーズでは比較的容易でもフルサイズは困難です。 
 
 
 図3−2A:テレセントリックレンズの概念図
 
 広角レンズの代表的方式であるレトロフォーカスで説明すると、最後の凸レンズの前側焦点の位置に絞りを設けます。レンズの前焦点にある絞りを通過した光は撮像素子に垂直に当たるようになります(1−2:レンズの基本的結像の性質)。
 望遠系のレンズは、離れた位置からイメージセンサーに入射するのでテレセントリックの必要性が軽減します。
 実際の例はフォーサーズ規格説明を参照してください。
  テレセントリック方式を使え難い、フルサイズデジタルカメラ等では、イメージセンサーの配線面の反対側から入射させて受光素子を入射面のなるべく近い位置に設けて斜め光の影響を軽減させる裏面入射方式イメージセンサーや、受光面にマイクロレンズを設けること等によって斜め入射光に対応する技術も開発・改良されています。
 Z.レンズの雑学     このページのトップ
 Z.1:レンズの歴史

 現存する世界最古のレンズ(lens)は、紀元前700年ごろのニネヴェ(現イラク北方)の遺跡から発見された水晶を磨いた直径約3.8cm、焦点距離約11.4cmのレンズ形状の水晶片とされています。
13世紀にロジャー・ベーコンが実験をして体系的にまとめ、日本へは16世紀にザビエルが大内義隆に献上した眼鏡が最初とされていますが現存せず、現存する眼鏡は、足利義晴が使用したものです。
13〜14世紀頃に北イタリアで透明ガラスが製造されるまでは、水晶やエメラルドなどの宝石を磨いたものが使われており現在のような、「物を見る」「太陽光を集める」よりは宝飾品や象嵌にに使われていたようです。
今でも高級なレンズには蛍石「フッ化カルシウム:アッベ数が大きく色分散が小さい」が使われています。

物を見るためのレンズは
 13世紀に凸レンズで拡大して見るようになり、
 15世紀に凹レンズを近眼用眼鏡として使用するようになり
 16〜17世紀にかけて、フックの顕微鏡が発明され微生物学・細胞学の礎が築かれ
 1609年にガリレオは望遠鏡を作って天体観測を行い、地球が太陽の周りを回っていることを確認してコペルニクスの地動説を支持しました。
 1611年に凸レンズを2枚組み合わせ更に倍率を上げたケプラー式、
 1668年に色収差を軽減させたニュートンの反射式望遠鏡が発明されましたがこの頃までは虚像を見る道具でした。
 18世紀に入ると、木箱に凸レンズ、反射鏡、すりガラスを使って外の景色を映し出す箱が、貴族の間で流行しました。これは実像をみています。すりガラスの上に紙を置いてトレースをするために使われていました。これをカメラオブスクラといい現代のカメラの原型です。
これを銀板に定着して写真術を発明したのが、フランスのダゲールで1839年のことでした。
日本へは1551年にF・ザビエルによって大内義隆に献上された眼鏡が最初とされていますが現存せず、これとは別物ですが徳川家康が使ったとされる眼鏡が静岡県久能山東照宮に残っています。1620年頃に国産の眼鏡が製造され初めました。
望遠鏡(遠眼鏡)が徳川家康に献上されたのが1613年ですから以外に早く日本に入ってきています。

 Z.2レンズの語源
 レンズの語源は、凸レンズがレンズマメの種子の形に似ていることからレンズと呼ばれるようになったとされています。レンズ豆は日本ではなじみがありませんが地中海地方が原産地で、栽培の歴史は古く紀元前から合ったそうです。直径5〜7mmで平面は円形で断面は中央が膨れた両凸レンズ形状です。インド・地中海地方では良く食べられているそうです。日本でも「ネット」で購入可能で、レシピも公開されています。

 
出典はhttp://www.megane-joa.or.jp/column/lens_and_lens.htm
 レンズは「レンズ」と呼ばれ和名(漢字)はめったに使われませんが、「透鏡」といわれ透き通った鏡が当てられています。眼鏡、望遠鏡、顕微鏡などレンズを使った光学機器に「鏡」が使われており、カメラのレンズなどのレンズが入った筒状の部分は鏡筒と言います。
 カメラも今は写真機ですが、初現期のフィルムを使っておらず記録・保存ができない時代にはカメラオブスクラ、、ダンケルカワムル、和名では「写真鏡」と呼ばれていました。
 レンズではないですが、一眼レフのクイックリターンミラーに使用されているハーフミラーの和名は半透鏡、ファインダーに使われているプリズムは稜鏡です。
 なお目の水晶体も英語で「lens」と言います。

 鏡は英語でミラー(mirror)ですが、mir-には「驚いて見る」という意味で「驚く、
不思議に思う、見る」という意味をもつラテン語のmirareに由来し、miracle(奇跡、不思議なこと)やmirage(蜃気楼)などの単語も同じ語幹mir−をもっています。mirareをローマ字読みすると「みられ=見られ」となって偶然とは言え不思議な感じがします。
蜃気楼は空気の屈折率が温度によって異なることによって発生する自然現象で、地上にあるものが上空に見えたり、遠くの地平線や水平線より下にあるものが地上や海の上にあるように見える現象です。もっと規模の小さい蜃気楼が逃げ水です。

 Z.3 レンズの収差計算と国産第1号の電子計算機
 一点から出た光がレンズを透過して一点へ焦点を結ぶのが理想的ですが現実にはレンズの真ん中を通った光と周辺を通った光が別の点に結像したり、あるいは波長の短い青い光と長い赤い光が別の点に結像したり、さまざまな要因で、ズレたり歪んだりします。
これをレンズの収差と言います。さまざまな原因があり収差を打ち消して理想的な画像を得るために一点から出た光がどのように結像するか計算するために「光線追跡」といわれる方法が使われます。
 
 
図Z−3光線追跡法のシミュレーションの例
 図はAの一点から出た光が4つのルートを通ってB点に結像している例を赤と青の2波長のみ示していますが実際には多数の点,多数のルート、多数の波長でシミュレーションされるのでその組み合わせは膨大な計算量が必要になります。
 屈折率n1の媒質1から、屈折率n2の媒質2へ角度Θ度で入射・・・・・・・・・を繰り返す。 

 図は2枚のレンズで4本の光線のみ作図しているが、実際には5・6枚以上のレンズで色による屈折率の違い、焦点合わせを考慮した被写体位置・結像位置を変えたシミュレーション等で当時のレンズでも数千本の光線追跡を5桁以上の精度で計算することが必要であったそうです。

このためには膨大な計算が必要です。今はコンピューターで計算されますが昔は多くの女性社員が手回し計算機を使って計算していてレンズの設計で長い場合には半年という長期間が費やされていました。ニコンやキャノンなどの精密光学メーカーは、いち早く「電子計算機」を導入しており計算機を使用し始めた最初の産業界のひとつです。更に自社開発に踏み切ったのが今の富士写真フィルム(現在の富士フィルム)で、実は国産第1号の電子計算機を開発したのは、NECや富士通などではなく富士写真フィルムです。真空管を使用したFUJICで1956年のことでした。