「あ・・・やぁ・・・」
一度達した良隆の全身はとても敏感になっていた。
前中は良隆の衣服を全て脱がしてしまうと、ベッドに仰向けに寝かせる。
下着も全て脱ぎ、良隆は身体を隠すものがなくなった。
「前中・・・さ・・・」
「良隆さん、この下着では帰れませんね」
「ちょっ・・・」
前中は言いながら、精液が吐き出された下着を窓の方に照らし出す。
月の光に反射し、時々ピカピカ光るのが良隆には恥ずかしくて仕方がない。
なんとなく匂いも漂ってきそうな気がしてならない。
「も、やめ・・・」
「良隆さん・・・また、勃ってきてます」
「えぇっ」
「ほら」
良隆は驚きながら、少し頭を浮かせる。
確かに軽く前中に添えられた手の中で、良隆の分身はその硬さを取り戻そうとしていた。
さっき不意打ちにだったが射精したばかりで、良隆は自分の身体の変化についていけていない状態だった。
「良隆さん、さっきココから出したばかりなのに・・・もしかして溜まってたんですか」
「た、溜まって・・・」
「ほら、少し張ってる感じがするんですけど」
「あ、ちょっ・・・そこは・・・」
前中は言いながら、良隆の精液が溜まっている袋部分をその感触を確かめるように揉み始める。
最初は少し柔らかい印象だったのが、次第にピンと張りつめたような感じに変化していく。
「ひぁ・・あ、も・・・ムリ・・・」
前中の言うとおり、良隆の身体は本人の意思とは関係なく欲求不満の状態だった。
誘拐・監禁される前、前中と会った時にしたのが最後だった。
前中と会わなかった1週間も、本やインターネットを駆使し、今まで知らなかった事を調べることに夢中で自慰すらしていなかった。
今までも淡泊な方で、1週間しないことも多かった。
ただ、それも前中と出会う前のこと。
前中と身体の関係を持つことになり、快感を知った身体は本人が考えているよりも快楽に対して貪欲だ。
「良隆さん、これだけで出そうなんですか」
「あ・・も、出る・・・でも、」
良隆は前中にしがみつき、足先に力が籠もる。
身体はもう絶頂を極めようとしているのが自分でも分かるが、
「前中さ、・・・と、一緒に・・・」
「良隆さん」
前中は少し驚いた様子の声だった。
と同時に、前中の手も動きを止めた。
「は、は、はぁ・・・」
良隆の身体から少し力が抜けていくが、前中にしがみついている手はそのまま。
「あの、私・・・あんまり体力、ないので」
前中はなんとなく良隆が言おうとしていることが分かった。
良隆の体力では2回も続けて絶頂を迎えれば、その後は疲労のために行為を続けられないのではないかと言いたいのだった。
たしかに、事務系の良隆には1日に何度も挑めないだろう。
それは前中も分かっていた。
だから、本音を言えばこのまま良隆を絶頂に押し上げてやる予定はなかった。
しかし、前中はそれよりも目元を赤らめ、うっすら快感のために涙を浮かべた目で訴えてくる良隆の姿にグッと迫るものを感じていた。
「良隆さん、うつ伏せになりましょうか」
もっとじっくりと良隆の身体を堪能するはずだった前中だったが、予定通りにはいかない。
良隆への声が性急な感じがしても否めない。
前中は良隆の腕を取ると、一度上体を起こさせた。
「前中さ・・・んん」
そんな前中の変化に気づいているのか、気づいていないのか、良隆はなすがままだ。
前中は自分の変化を誤魔化すように唇を重ねる。
首の角度を変えながら口づけを深くし、空いている手で胸の突起を軽く弄る。
「ふっ・・ぁ」
「さ、良隆さん」
唇を離すと、前中は唾液で濡れている良隆の唇を指で拭う。
自分の唇は舌でペロッと嘗め取る。
「ぁっ」
「なんですか」
そんな前中の仕草を見ていた良隆は小さく声を上げると、さっきから赤くなっていた顔をさらに赤らめ、
「なんでもないです」
と言いながら、慌てた様子で身体をうつ伏せにする。
顔の下には枕を抱え込み、前中に顔を見られないようにする。
前中はそんな良隆の変化を笑いを噛み殺しながら見ていたが、ゆっくりと残りの衣服を脱ぎ捨てた。
良隆にも衣擦れの音などで前中の行動が予想でき、枕を抱えている腕にさらに力が籠もっていく。
「良隆さん、もう少し腰を上げてください」
「あ、・・・はい」
服をすべて脱ぎ終えた前中は、良隆の腰の部分に軽く手を添えながら、ベッドサイドに置いているチェストから潤滑油を取り出した。
瓶型になっているそれの蓋を開けると、部屋中に仄かな香りが漂ってくる。
その香りは甘いフルーツを思い起こさせるもので、もし人間が舐めたとしても人体にはまったく影響がないものだった。
この潤滑油を前中はわざわざ取り寄せていた。
”良隆さんの身体に使うものだから、ちゃんとした物を”
というのが前中の主張で、あくまでも国内産を厳選していた。
瓶からトロリとした液体を手に出すと、手でこねるようにして人肌に温める。
そして、良隆の丸く突き出たお尻の奥、いつもは人目に晒されることのない蕾にそっと沿わせる。
「んん・・・」
前中の手である程度温められていた液体は良隆に過剰な刺激は与えなかった。
”チュプ”
という音と共に、指が挿入されていく。
音は当然ながら良隆の耳にも届き、キュッと前中の指を締め付けた。
その締め付けに逆らうように、前中は中で指を折り曲げる。
「ふっ・・・」
前中の指は当然のように良隆の中を動き回り、寝室内には潤滑油の湿った音が響いていた。
良隆はといえば枕に顔を沈めているため、どんな表情をしているのかは分からない。
しかし、前中の指が蠢く度に良隆の身体は反応を示すように震えている。
前中はそんな良隆の背中に唇を寄せていく。
「あっ・・・」
「良隆さん」
「は・・・はい」
「すみません、今日は余裕がないです」
「え・・・」
前中は唇を背中に付けながらそう言うと、中に入れる指を2本、3本といつもより性急に入れる。
そして、少し乱暴な位に中を弄り始めた。
いつもであれば良隆の快楽を引き出すような指の動き。
それが今日は中を解すという目的で動いている。
「良隆さん、お詫びにココで気持ち良くなってください」
「え、ひぁ・・・」
前中は言いながら、空いている手を良隆の胸に伸ばしてきた。
さっきからの刺激でピンと立っている乳首に指を這わせ、まるで性器にするように、親指と人差し指で扱くような動きを始めた。
さらに指が何かで濡れていて、ヌルッとした感触が良隆を戸惑わせる。
普通であれば気持ち悪いと感じる感触なのに、今や良隆の脳は全ての感触を快楽へと繋げていくらしい。
身体の中を気持ちいいという電気が一気に駆け巡る。
当然ながら触られていない性器も起ち上がり、先端からは先走りの雫が溢れ出していた。
しかし、あくまでも前中の目的は前中自身を受け入れる場所を解すこと。
「あ・・・」
ある程度まで指で中を解すと、一気に前中は指を抜き出した。
良隆のソコは埋め込まれていたものが無くなってしまった空虚感からか、何度も開閉を繰り返している。
前中は1本の指を先だけ、入り口に当てる。
「良隆さんのココは早く欲しいとねだってますよ」
「ふ・・・」
前中の言うとおり、良隆のソコは奥へと指を引き込もうとするように蠢き始める。
良隆にもそんな自分の身体の変化は分かっているだろうが、どうしようもない。
だからといって認めることもできず、だからといって否定しようと声を出せば嬌声と変わりそうだった。
仕方なく、首を横に振ることで自分の意思を表現するのに止まった。
「良隆さんは私が思っているよりも欲張りですから」
「っ・・・」
「こっちの方が好みですよね」
言いながら、前中は指とは比べ物にならない太さのモノを押し当てる。
それにもたっぷりと潤滑油が塗されているため、良隆にはほとんど苦痛を与えることはない。
しかし、圧迫感は大きい。
「ふ、ふぅ・・・ふぅ・・」
良隆はそれまでに何度も前中に教えてもらった息の仕方を実践しながら、前中の全てをその内に受け入れていく。
前中もこの時ばかりは無理強いすることなく、良隆の呼吸を確かめながらタイミングを見計らって押し入れる。
「も、全部・・・はいった」
「これで・・・全部です」
良隆の言葉に前中は答えながら、腰を一気に進めていく。
「ぅ・・・はぁあ」
「ふぅ・・・」
そして、2人同時に大きく息を吐き出した。
前中は良隆が落ち着くまでは動かないつもりでいたが、良隆の身体はそれを許さない。
良隆自身はそういうつもりはないだろうが、前中を受け入れている内部は動こうとしない前中に絡みつき、根本から味わうように収縮を繰り返している。
「良隆さん」
「・・・ぃ」
「すみません」
「な、なに・・・ぁあぁああ」
いつもの前中であれば、良隆の中をじっくりと攻めていき、快感で訳が分からない状態へと持っていく。
しかし今日の前中にはそんな余裕もなく、先に一言謝りの言葉を吐くと、良隆の腰を片手で固定し最初から乱暴に良隆の中を蹂躙し始めた。
「や、や・・・そ、それ・・・」
「ふ・・・ふ・・・」
前中は言葉少なに、ただ自分の欲望のままに腰を振っていたが、良隆の中はそれを喜びとして受け入れつつあった。
良隆の襞が前中に絡みつこうと蠢く中、前中はそれに逆らうように奥を付いていく。
そして、その衝撃に良隆の身体が震えている間に、入り口の近くまで腰を引いてしまう。
「も、ちょっ・・・ゆっく、り・・・」
良隆は前中の運動に付いていけず、泣き声混じりに声を上げる。
ただ、良隆にはそれが前中の欲望を更に煽る結果になっているとは想像できていなかった。
「良隆さん・・・顔、見せてください」
前中は良隆の泣き顔を無性に見たくなり、中に自身を入れたままで良隆を仰向けにさせた。
「なぁ・・・ぃやあ・・・」
「手で隠さないで」
「見な・・・ぃで・・・」
良隆の身体は大きくビクンビクンと震えながら、衝撃に耐えられず絶頂を極めてしまった。
そんな顔を見られたくなく、両手で顔を隠すが、腹部を白濁で汚したまま涙で濡れた良隆に
「それは、反則ですよ」
「え・・・」
「くっ・・」
「うそ・・・ぁ、あつ・・・」
前中は欲望をあっさりと解き放った。
ドクドクと良隆の中に欲望を吐き出しながらも、前中はさらに腰を振り続ける。
「良隆さん」
「な、なに・・・」
「これはノーカウントで」
「え・・・」
良隆は自身の身体で感じていた。
前中のモノが欲望を放った筈なのに、まだ衰えていないことを。
「だから、これからが本番ということで」
「そ、・・・な・・・ぁ、あぁあ」
さらに、1度欲望を放った前中は冷静さを取り戻したようでさっきの乱暴な動きとは逆に、中をゆっくりとなぶるような動きを見せ、
「ん、も・・・そこば・・・やめ・・・ひぅ・・・」
良隆が暗闇のことを考える余裕がない程に攻めたて、それは意識を飛ばしてしまうまで続いた。
「良隆さん、これから私を全部受け止めてくださいね」
意識がほとんど残っていない良隆にキスの雨を降り注ぎながら、前中は良隆の耳に甘く囁いた。
「んぅ・・・」
良隆は全身の気怠さと、反対にすっきりとした気分で朝を迎えた。
ベッドの中、寝返りを打てば
「おはようございます」
と甘いテノールの声が良隆の耳を擽る。
良隆はその声の持ち主の顔を見ようにも、起き抜けでぼんやりとしていて輪郭しか見えない。
「おはよう・・・ございます」
返事をしながら、眼を擦ることで早く目を覚まそうとする。
しかし、
「良隆さん、お風呂に入りましょう」
そんな良隆の努力を知っていながら、前中は良隆の頭が完全に目を覚ます前に良隆の手を取る。
「え・・・」
良隆は初めての出来事に、思考が追い付かずにいた。
何度か身体を重ねた中でも「お風呂を使ってください」と言われたことはあったが、「お風呂に入りましょう」とは言われたことはなかった。
「あの、それって」
「背中、流させてくださいね」
前中は当然とばかりに良隆に笑顔で話したが、聞かされた良隆は呆然としていた。
”一緒にお風呂・・・お風呂って・・・”
良隆の頭の中には、自分が読んだことのある本のシチュエーションが瞬時に展開され、
”洗うだけじゃ、絶対終わらないよな。ぜ、全部・・・洗われるんだ”
真っ赤な顔を前中に晒すことで、良隆がどんなことを想像しているのか簡単に教えた。
「昨日は私も慌ててしまって、避妊具をうっかり忘れていたんです」
「あ・・・」
「だから、中に出したものをきちんと処理させてください」
前中はそんな良隆の期待を裏切るはずもなく、耳元で甘く囁くと足元が覚束ない良隆を支えるようにして、寝室を後にした。
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