真実の彼 6

「洋、洋・・・」


俺の名前を呼ぶ声に瞼を開け、真っ先に飛び込んできた男の顔に「ぅわあぁ」と変な声を出しながら身体を起こそうとした。

”した”ってだけでそれはできなかった。

「ぃっ・・・てぇえ」

俺は起きあがろうとして、襲ってきた痛みに身体をくの字に曲げる。

身体のあらぬ所が悲鳴をあげてる。


やばい、涙が出そうだ。


「洋、そんな急に動くから。もう洋の身体は、洋だけの身体じゃないんだから」

「ぅう・・・」

「でも、洋の身体は想像以上に良かった。

初めて男を、いや俺を受け入れるっていうのに、すんなりとそして俺のペニスを美味しそうに頬張って・・・

別に俺のペニスがサイズが小さいわけではないし・・・これはやっぱり運命で、愛がなせる技としか言いようがない。

これからは、最低1日3回・・・いや、毎日限界まで洋を愛し続けることを俺は誓う」


こいつは何を考えているのか、目の前で痛みに悶えている俺を無視しながら自分の世界に浸っている。

もう俺は怒っていいのか分からないまま、ひたすら痛みが和らぐのをジッと待っているしかないわけだ。

確かにこの男、赤城とか言ったか・・・こいつのサイズは控え目に言ったとしても小さいとは言えなかった。

だからって、俺よりもっていうのは男のプライドとして言いたくない。

まあそんなのが、排泄器官でしかないあそこに何回も出入りしたわけだ。
今、冷静になって考えればあ・り・え・な・い。

ムショの中、俺が相手した奴らを思い出してみれば、そいつらのアソコは何カ所も切れ、血がダラダラとしばらく止まらなかった。

きっと俺のもあんな風になってるんだと想像する。
だって、こんなに痛いんだから切れてないわけがない。

確かめるのも怖くてできないし、これから用を足しに行く時にまともにできるのかも不安になる。


「洋、どうして泣いてるんです」

「ぅ・・・」

「・・・そうか、分かりました。
俺と結ばれたことがそんなに嬉しいんですね。

それとも、俺がヤリ逃げするとでも思ってショックで泣いてるとか」


俺は見当違いにも程がある男の発言に更に泣けてきた。


「洋、そろそろ着替えて俺達の愛の巣に帰りましょう」

「愛・・・巣・・・」

「変な心配しなくていいんですよ。
運命の恋人達である俺達はもう離れることは決してありません。

洋は名前だけ前中さんの会社に勤めていることにして、愛の巣で専業主婦をしてくれてもいいですけど・・・そして仕事から帰ってきた俺を裸エプロンでお出迎え」

「おい・・・」

「『先にお風呂にする、食事にする、それとも俺か』

そのまま玄関で犯したくなるじゃないですか。

玄関で軽く1発した後は食事。
それも、俺を洋にはめたままでっていうのがいいですね。

最後にお風呂。
お風呂では洋の身体にボディソープをつけて、お互いを・・・」

「おい」

「なんですか、洋。
愛の日々を想像しただけでもう1度したくなったとか。

それは愛の巣に戻ってからゆっくりと・・・」


もうどこから突っ込んでいけばいいのか分からないまま、
俺の口からようやく出た言葉は


「痛い」


だった。


「そうだ洋、後ろを向いて」

「え・・や・・・」

「大切なアフターケアを忘れてた。

洋の可憐なアナルが切れていないか確かめておかないと・・・」

「や、やめ・・・やめろぉ」


抵抗しようにも、身体が強ばってしまってダメだった。
さっきの痛みを身体が覚えてしまったみたいだ。

赤城はそんな俺を無造作にひっくり返してしまう。


「ひぃ・・・」


俺は殺されそうなぐらいの気持ちで、変な声を出してしまう。

「ちゃんと見せて」

「ぅわあぁ・・・」

もう涙を見られるのが恥ずかしいとか、そんなことを考えてる余裕なんてなくなってしまった。

俺の尻は今、男の目の前に晒されている。

それだけじゃない。

尻肉を横に広げられ、あんな排泄器官をマジマジと見られている。


「赤くなっているけど、切れてはないみたい」

「ぅ、うそだぁ」


男の言葉に俺は信じられない気持ちだった。

ちょっと動いただけで泣きたくなるぐらいの痛さ。
絶対に切れてる。裂けてる。流血しているはずだ。


「嘘じゃない、嘘じゃない」

「だって・・・めちゃくちゃ痛いんだぞ」

「普段使ってない所を使ったんだから、筋肉痛みたいなもんでしょ」

「そん・・・あるわけないだろぉ」


俺は信じないぞって気持ちで赤城のヤローを振り向きながら睨む。

でも、


「洋・・・その眼、ヤバいぐらいに可愛い」

「な・・・」

「涙に濡れてウルウルで、俺のペニスが・・・」

「もう、お前は何も言うな」


口を開けば下ネタばっかりで、俺はうんざりしていた。


「そんなに気になるなら、自分で見てみる」

「自分って・・・」

「写メでも撮れば、自分でも見れるでしょ」


俺は男のあまりにもバカみたいな提案に大きく口を開けるだけだった。

何が嬉しくて自分の肛門を写メで眺めたいっていうんだ。
恥ずかしさに憤死してしまう。


「もう、いい」

「そう。じゃ、クリームだけ塗っておく」

「え、え・・・」

「アフターケアは大切だから」


それからどれだけの時間そうしていたのか分からない。

再び俺は男に肛門を弄くりまわされたわけだ。
しかも、それだけでなく・・・俺は悲しいかな弄られた上に射精してしまった。


「さあ洋、帰りましょう」


俺に抵抗する力は残されていなかった。

赤城は俺の手首に残った縄の跡に舌を這わせると、キュッと吸いつく。

「これでよし」

鬱血した跡を指で擦ると、ぐったりしている俺を引きずりながら店を後にした。





それからの俺は・・・赤城が住んでいるとかいうマンションに連れていかれ、ハメヌーンだとか訳のわからない言葉のまま1週間、本当にはめられっぱなだった。

アソコが痛いと泣いていたのは最初の1日だけだった。

もうそれ以降は痛みはほとんど分からない。

感覚がなくなっているようだった。

目が覚めれば、


「ひぅ・・・くっ」

「あ、洋。おはよう」

「ぁ・・やぁ・・・なん、でぇ」


すでに後ろには赤城のペニスが刺さっている。

そして、寝る前も


「ぁ、ぁあ、もう・・寝かせて・・・」

「いいよ。洋は寝てて」

「じゃ、ぁ・・抜け・・・よぉ」

「それは聞けないな。

俺はまだしていたいから、寝るなら洋だけ寝ていればいいよ」


そう言って俺は気絶する形で睡眠を貪る。

会話らしい会話は唯一、食事をしている時ぐらいしかない。
いや、食事の時ですら・・・


「洋、おいしい」

「ん・・・わか・・るか・・・」


常に俺の肛門は開きっぱなし。
背面座位で突っ込まれたまま、かろうじて食事をする感じ。


「お前、仕事・・・は・・・ぁあ」

「今は新婚なんだから、休みを貰ってる」

「新・・・ぁ、ぁ、」

「そう、でも、この休みも後1日っていうのが悲しい」


いや、俺はむしろ嬉しい。
やっと俺の身体が休憩できるということだろう。

俺は喘ぎ声しか出せないまま、心の中で安堵のため息をついていた。


「だからね、あと1日ヤりまくろう」

「・・・・ぃ、いやぁ・・・だぁああ」


次に俺がまともに身体を動かせるようになったのは、赤城のヤローが仕事復帰して2日経ってからだった。


「洋と離れたくない」

「さっさと行け。行ってしまえ」


いつまでも俺から離れようとしないのを、俺はベッドの中から悪態をついて引き剥がす。

俺としては酷使されまくった身体をひたすら休めたかった。

それにはこの男が邪魔なだけだった。

俺だってバカじゃない。
1週間近く一緒にいることで、少しは男の操作術を掴んでいる。


「早く行って、食い扶持を稼いでこい。旦那様」


旦那様という部分を強調してやる。

それだけで


「そうだ、俺はもう洋という伴侶を得たんだから」

「ああ、ああ、バリバリ働いてくれ」


男はベッドから離れてくれる。

俺は犬を追い払う仕草をしながら、部屋から追い出す。


「洋。帰ってきたら、裸エプロン」

「・・・・バカか」


奴は部屋を出ていく間際、そんな捨て台詞を吐いていった。

俺はすぐに出ていってやるつもりだった。
このままいたら、ヤリ殺される。


「でも、動けねぇ」


1週間酷使されていた身体は睡眠と休息を欲していた。
それに逆らうことはできない。

俺が次に目が覚めたのは、朝だった。

すでに赤城の奴はいなかった。

ようやく少し身体が動けるようになり、枕元を見れば長文のメッセージが置かれている。

要約すれば、『仕事に行ってきます』ということだ。

俺はまだ違和感が残る身体を無理に動かすとベッドから久しぶりに離れた。

立ってみて初めて分かる、筋力の衰え。

俺は上手く立てないまま、床に座り込んでしまう。


「なんだ、これ」


1週間近く、ほとんど歩くこともなかった俺の足は立つことを忘れてしまったかのようになっていた。

俺は生まれたてのガキのように床を這う。

そして、ベッド近くにあるクローゼットの扉を開く。
赤城の奴が

『洋の服は揃えているから。好きに着てくれて構わない』

と言っていたからだ。

クローゼットの扉にしがみつきながら、なんとか立ち上がる。

服だけではなく、下着までも揃っていた。
そこから適当に選ぶと、また崩れ落ちるように床に座り込む。

着替えながら、俺はこれからのことを考える。


「逃げるって・・・どこに」


逃げてやると思っていたのに、その逃げ場所が俺にはない。


「だからってここにいるわけにはいかない」


何もなければ数分で着替えられるというのに、今の俺は3倍もの時間がかかってしまう。

そこから玄関らしい場所にたどり着くにも時間がかかった。

壁にしがみつくようにしながらマンションを出ると、待っていたかのような絶妙なタイミングでもって俺の前に黒塗りの車が止まった。


「これはデジャブってやつか」


俺は出所してきた日のことを思い出していた。

車の窓が音もなく下がる。


「乗ってください」


そこには知らない人間がいた。

悪魔でなかったことにホッとしたのも、次の言葉で打ち砕かれた。


「前中さんがお待ちです」


俺に否と言える体力も気力も残されていなかった。




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