真実の彼 5

「そんなに驚くことじゃないと思いますけど」


俺の叫び声はあっさりとそんな言葉で流されてしまった。


「そ、そこは・・・」

「ここは俺のペニスを受け止めてくれる、洋の可愛いアナルですけど」

「いや、そうじゃないだろ」

「じゃあどういうことですか。

まさか、やっぱりココは俺と出会う前の、仮の恋人のアナルだとでも言いたいんですか」


さっきまで柔らかくなっていた声がまた厳しいものに変わっているのが分かった。

また勝手に勘違いした上に、怒っているらしい。


「そこは、そもそも入れる場所じゃないだろ」


俺はムショで自分がしてきたことを棚に上げ、つい常識的なことを言ってしまった。

きっと俺に掘られた奴らは同じことを思ってたんだろう。

でも、俺に逆らうことができずに犯られるしかなかったんだと分かる。

ムショにいる時には”しょうがないこと”と言えたことだった。

それだって自分が犯る方だったから言えるだけで、いざ俺が・・・となっている今は、”しょうがない”で片づけられることではない。


「大丈夫です。これから入れられる器官に変わっていきますから」

「いや、変えなくていい」

「・・・・やっぱり、それは」

「だから、俺には変な相手はいない。

今までそこをイジられることも、イジることもなかった」


俺はそこまで言い切ると、肩で大きく息をした。

さっき射精したばかりで体力が回復しないまま、色々叫んだために疲労感が増した。

ただ、次の言葉で俺の疲労感はマックスまでいくことに・・・


「じゃあ、バージンなんですね」

「は・・・」

「洋のアナルは俺のことを待っていてくれたんですね」

「おい」

「大丈夫です。

俺が優しく、花開かせてあげますから」


さっきまでの硬い声音は一切消え失せ、甘い声が俺のあらぬ所を撫でながら聞こえてきた。


「さあ、俺に洋のバージンアナルを見せてください」

「ぃ・・・やめ・・・やめてくれ・・・」


奴は俺の足を無理に開かせようとしたが、片手ではやっぱ
り俺の力が勝っていた。


「洋、力を抜いてください」

「無理だし、嫌だ」


俺はさらに足に力を入れてやる。

もし奴が拘束している腕を解放するというのなら、その時こそが逃げるチャンスだと思った。

ここからは俺の足が強い、それとも奴の片手が強いかだろう。


「しょうがないですね」


奴は俺がなかなか足を開かないのを知ると、腕の拘束はそのままに少しだけ身体を離した。

しかし、そこから俺の予想に反した展開が待っていた。


「な、何だそれは」

「せっかくの初夜にこんな無粋な物を使いたくはなかったんですが」

「使うな。使ってくれなくていい」

「でも、洋が大人しくしてくれないので仕方ないですが活用させてもらいます」

「おい、やめろって・・・この変態ヤロー」


奴が赤い麻縄を手にしているのを見てしまうと、俺はどうやっても逃げられないんだと思ってしまう。

どこから出してきたのか、そしてなぜそれがここに存在しているのか。

聞きたいようで聞きたくない。


「布団が白なら赤いこれがいいだろうって、前中さんがプレゼントしてくれたんです。

でも、俺としてはこんなのいらないって思ってたんですよ」


聞きたくなくても、奴の方がペラペラ喋ってくれると俺はどうしようもない。

喋りながら、俺の腕をその麻縄で固定していく。

緩くもなく、だからといって痛い程じゃない。


「あぁ、いいですね。
なんだか更に卑猥な感じが増したようですね。

こんな姿、他の男に見せたらどうなるんでしょうか」

「どうもならないだろ」

「いいえ、こんな扇情的な姿。

見せられた男の方はきっと、洋のことを犯したくてたまらなくなるはずですよ」

「何言ってるんだ、そんなこと」

「絶対あります」


あまりに奴が言い切るから、俺はもう反論も面倒くさくなって

「もういいよ」

と投げやりな返事をした。

でも、奴には俺の言葉なんてどうでもいい様子。


「さあ、見せてください。洋のバージンアナル」

「くっ」


俺は腕を頭の上で拘束されたまま、またひっくり返されることになった。

奴の視線が一体どこに集中しているのか、嫌でも分かってしまう。


「こんなところにまで毛が生えてるんですね」

「・・・っあ」

「こうして掻き分けないと目の前に現れてくれないなんて。

恥ずかしがり屋な洋のアナルですね。

それに、キュッと窄んで誰からの侵入も拒んでいる感じが奥ゆかしさを感じさせます。

この未開の地をこれから俺が、とそう思うと優しく開拓してあげたくなります」


俺だってほとんど見ることなんてない所。
そんな場所をこれだけ観察されたことなんてない。

確かに俺の下半身の発毛率は高いかもしれない。

それだけ俺の身体はそこを隠したがっているということにもなるが、奴は指でその窄まりを軽く叩き始める。

そして俺がそのタイミングで力を込めるのを楽しんでいる節が大いにあった。


「バージンらしい、バージンですね。

でも、これから洋のアナルはついにバージンを捨てることになるんですよ。

私が洋のバージンを奪う、最初で最後の男ですから」

「ひっ・・・」


俺はつい悲鳴を飲み込んでしまう。

奴の指がさっきからのタイミングを敢えてずらし、ツプっと一瞬だけだったが中へと侵入してきた。

指はすぐにまた出て行ってしまったが、俺の身体はさらに緊張で固くなる。


「大丈夫ですよ」

「な、何がだよ」

「痛くさせませんから」


俺の頭の中にあるのは俺が今まで犯してきた相手のことだった。

涙を流しながら
『痛い・・・やめてくれ・・・痛い・・・』
と”痛い”を連発していた。

締まりは確かに良かったと言える。

ただ、本当にソコは入れるような器官じゃないから、入れるまでがきつかった。

女とは違い、あまり濡れるということもない。

だからって俺が舐めてやることは決してなく、そして潤滑油なんてあるわけない。

俺は突っ込んで、気持ちよくなればいいだけ。

無理に突っ込んでいくため、流血沙汰になることもしばしばあった。

終わった後も、下半身から血を流し泣いている人間を
『いつまでも泣いてんじゃねぇよ』
と足蹴にしたこともある。

足蹴にされた方は、泣きながら”痛い”と訴え続けていた。

”俺もそんな風になるんじゃないか”

そう考えれば身体の力を抜けと俺に言うのは間違いだと思う。

なんと言っても俺は痛いことが嫌いだ。

喧嘩はたくさんしてきたが、その時はアドレナリンが放出されていて感覚は麻痺してる。

それだって極力殴られないように必死で避けながらで、喧嘩が終わった後なんて正気に戻った俺はその痛みに耐えられず何度気を失ったか分からない。

喧嘩をしているわけじゃない今は、ちょっとした痛みにでも俺は耐えられないだろう。


「嫌だ・・・痛いのは嫌だ・・・」


俺は子供みたいに奴に頼むしかなかった。


「大丈夫ですよ。初めてだからって痛くないようにしてあげます。

快感だけを覚えていられるように、そして俺なしでは生きていけない、快感の虜になるようにしてあげます」


奴はそこでようやく笑った・・・ように見えた。

表情は変わらないように見える。
笑ったように見えたのも、ちょっと口角が上がったのを目にしただけだ。

これで笑ったことになるのか、それは分からない。

ただ、今まで表情筋一つ動かなかった奴が初めて口角を動かしたんだから笑ったのかと思ってしまう。


「それじゃあ、めくるめく快感への扉を開いていきましょう」

「何だそれ・・・」


奴がそう言ってから、本当に怒濤のような出来事だった。


「ぅあ・・・きもち・・・わる」

「大丈夫ですよ。ちゃんと洋のバージンアナルは俺の指をくわえこんでます。

こことか、どうです。気持ちいいでしょ」

「あっ・・・そこ、そこ・・・」

「やっぱり、俺は洋の運命の恋人。

だからすぐに洋の気持ちいいポイントを見つけることができるんです」

「あ、あ・・・もっと・・・そこ」


俺は悲しいかな、本当に快感の虜になってしまいそうだった。

奴が俺のアソコに何かを塗りたくったのは分かっていたが、それから奴は指らしいものを中へと突っ込んできた。

確かに痛くはなかった。

でも、まさかこんなに気持ちいいものだなんて思ってなかった。

たぶん俺の脳は痛みを拒否した結果、全てを快感だと刷り変えてしまったんだろう。


「やば・・・ぃ、も・・・」

「もうダメですか」

「ダメ」

「いいですよ。今日は初夜なんですし、好きなだけ射精してください」


そう言うと奴は俺のクル場所を指でこね回す。


「ぅわ・・・無理・・・むぃぃい・・・」

「ああ、洋のペニスからピュッて精液が出てきましたよ。
さっきも出したばっかりだからですね、さっきよりも薄い感じ」

「ぃや・・・もう、指・・・止めて・・・」

「出し切ってあげますから」


俺は休む間もなく、後ろをイジられまくりで泣きたくなってきた。

2回も射精した後で、俺はもう心身共に疲れていて休ませて欲しかった。
それなのに、更に奴は俺に刺激を与え続けてきた。


「ぃや・・・もう、だめ・・・だめだ・・・って」


「もう3本も俺の指をくわえられるようになりましたね。

ココの襞も大きく広がって皺がなくなるぐらいになってますよ。
でも、まだまだ洋のココはいけますよ。

ほら・・・」

「ひぁ・・・止めて・・・くれよぉ」


奴が俺のソコを広げたんだろう。
途端にヒヤッとした空気が中に入ってきた。

それからしばらく奴の声が聞こえなくなった。


「おい・・・何してるんだよ」


俺は不安で声を掛ければ


「ああ、ごめんなさい。洋の中を見てあまりの感動に言葉を失ってました」

「・・・・み、見るなぁああ」

「いや、綺麗ですよ。俺がさっきから擦っていたからか、真っ赤に色づいていて」


奴は恥ずかしげもなく、そんなことを言いやがる。


「それじゃあ・・・」

「な、何・・・」

「んっ・・・」


さっきの指とは全然違う何かが俺の中に入ろうとしていた。
ヌルッとしているのに、熱いそれ。


「お前・・・止め・・・止めろ・・・入れるな」


俺はそれが何かが分かった瞬間、顔から血の気が引いていくような感覚に襲われる。


「大丈夫。洋のアナルは俺を上手に呑み込んでくれてますよ」

「ぅそ・・・嘘だ・・・」


確かに身を裂かれるような痛みはない。
ただ下から内蔵を突き上げられるような圧迫感が押し寄せてくる。

身体の神秘をこんな所で実感したくはなかった。


「ぅぅうんん・・・はっ」


一番太いところが入ったのかもしれない。
そこからはズルズルと中に入ってくるのが分かる。

どこまで入ってくるつもりなのか・・・

このまま終わりがないんじゃないかとさえ思えてきた時だった。


「はあ、全部入りましたよ」

「・・・ぅそ」

「やっぱりそうだ。

このフィット感といい、締め付け感といい、洋は最高です。

やっぱり俺の運命の恋人で間違いないですね」

「ぅわ・・・ぐぅ・・・んん」

「ダメですよ、洋。

いくら俺に中から出て行かせないようにって・・・力を抜きましょうね」


”むしろ早く出ていってくれ”

俺はそう心の中で呟いたが、そんな俺の気持ちなんて奴に伝わるはずもない。


「あ・・・ぁあ・・・ソコ・・・」


ゆっくりと奴のモノが抜けていく。
その時、張り出た部分がイイ所を掠めた。

指で散々いじられ、気持ちいいんだと認識している俺の身体はその快感に飛びつくように反応した。


「やめ・・・抜け・・・」

「大丈夫、また入れてあげます」

「いっ・・・ソコ、ソコ・・・」

「ココですよね。ココをこうしてあげれば」


そう言って奴は俺を喘がせる目的なのか、集中的にソコを攻め始めた。

俺はそこからは正直、あまり覚えていない。

ひたすらイイ所を突かれ、擦られ、そして射精させられた。

奴は何かを言っていたけど、もう俺にそれを理解する力なんて残っていなかった。


「も・・・無理・・・出ねぇ・・・出ねぇよぉ」


俺は何度目かの射精の時にそう言った。

知りたくもないのに・・・快感も時には痛みと同じくらいの効果があるというのを初めて知った。


”めくるめく愛欲の日々”


奴はそんなこと言ったが、それが現実のものになるとはその時の俺は信じていなかった。




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