6.すべてを失くして
ショーはまだ終わってはいなかった。
ただ、それは今の時任には関係ないみたいだ。
「か、帰る」
「ふーん、彼女を置いたまま帰るんだ」
俺が言った言葉に思わずといった風に時任がステージに視線を向ける。
迷っているのが手に取るように分かる。
それが面白く見えた。
ステージにいる女はもう時任が知っている女とは違うのに・・・
「それでも帰るって言うなら先に・・・」
「な、何だ」
「それをどうにかした方がいかなって」
俺がそう言って時任の下半身を指す。
ずい分下着の上からも弄ったんだから、そこが濡れていないわけがない。
「濡らしたまま帰りたいんだったら俺は止めないけど」
時任は何も言わず、俯いてしまった。
「おいで、簡単な着替えぐらいならあるから」
俺が手を引いてやると、唇を噛み締めながら
「悪いな・・・」
時任が呟く声が聞こえた。
”そんな簡単に人を信じて言うもんじゃないよ”
そう時任に忠告してやればいいかもしれないけれど、そこまで俺は親切じゃない。
時任の手を取り奥の部屋へと向かう。
ショーに夢中の人間には俺達に注目する奴はいない。
でも、中には何人かは気づいただろう。
時任は全くそんなことに気づいてはなかったけれど・・・
時任を伴って入った部屋はかつて従業員の休憩場所だったらしい。
今じゃ簡易のソファが備え付けられ、当時よりはよっぽどいいロッカーがいくつか置かれている。
「ここは?」
部屋の中は明るいオフホワイトの壁紙で、店内の薄暗い雰囲気に比べれば全く違う。
「そんなことより、着替えるんだよね」
「あ、ああ」
「着替え、持って来てあげるからソファに座ってて」
いったん俺だけ部屋の外に移動すると、すぐに近づいてくる気配を感じる。
その気配が何なのか分かっている俺は
「下着と、ローション」
端的に、そして必要な言葉だけを告げる。
「ローションは・・」
「普通でいい。たぶん、何も入っていなくてもあれはイケる」
「分かりました」
いくらも待たず、俺が言った物が手にできた。
ローションは隠し、下着類だけを手に再び部屋へと入る。
時任は大人しく待っていた。
俺が出て行った時と同じ、ソファに座っていた。
”一体何を考えながら待っていたんだか・・・”
「これ」
「あ、ああ」
時任は俺から着替えを受け取ったが、だからといって動く気配はない。
「着替えないの?」
「いや、着替える」
「じゃあ、早く着替えれば?」
「分かってる」
俺は内心ほくそ笑みながら、決して部屋から出て行こうとはしなかった。
ちらちらと時任が俺を見ているのは知っていた。
その意図も分かってる。
だからといって親切に声を掛けることはしてやらない。
「ほら、早く着替えなよ」
「わ、分かってる」
「じゃあど うして着替えないの?」
「それは・・・」
「もしかして、俺に見られるのが恥ずかしいとか・・・」
「ば・・・バカ言うなよ。そんなこと・・・」
慌てて否定しようとする時任、それはそれで見ていて滑稽だ。
「そんなこと、あるの?それともない?」
時任の顔は明らかに羞恥で赤く染まっている。
きっと時任自身も顔が熱いと感じているはずだ。
「あるわけ・・・ない」
「じゃあ着替えられないってことはないよね」
ここまで言えば時任は俺の目の前で着替えるしかなくなる。
また唇を噛み締めながら、ようやく時任はゆっくりとズボンを脱ぎ始めた。
ズボンを下ろし終わると、時任は上に着ていたシャツで下半身を隠してしまう。
「どうしてそんなことするの?」
「別に意味なんて・・・」
「意味がないならその手を離せば?」
「は・・・?」
「だから、手を離して俺に見せるんだよ」
「見せるって、お前・・・そんな・・・」
時任は俺と目を合わせたまま、動かなくなってしまった。
顔には困ったって感じの笑顔を浮かべているけれど、それは完全に作り笑いだというのが分かる。
俺は大きく、そしてゆっくりと息を吐き出す。
それは時任に聞かせる意味もあった。
「優真」
俺の言葉に時任の身体がいち早く反応を示す。
「優真、シャツを握ってる手を離すんだ。
そして俺に全部を見せるんだ」
俺の言葉にまだ思考能力がある時任は顔を強張らせる。
「そんな・・・バカなこと・・・」
「嫌だとか、出来ないなんて言葉は受け付けない」
時任の視線は俺にだけに注がれ、他に助けを求めることはなかった。
「優真」
もう一度名前を呼ぶ。
さっきよりも語気を強めて。
すると、時任の身体が動いた。
ゆっくりとだが、ずっと握りしめていたシャツを離した。
それまで俺は扉の近くで立っていたけれど、一歩ずつ時任へ近づいて行く。
「優真、もしかして・・・」
「い、言うな」
時任はなかば叫ぶように言ったが、それに従う必要はない。
俺はそのまま見たままを伝える。
「俺に見られて興奮したんだ」
俺が言葉にしたように、時任の下半身は明らかに変化の兆しを見せていた。
時任の行動はそれを必死に隠そうとする意図があったわけだ。
「さっき一杯出したのにね」
俺の言葉に時任は何も答えず、俯いてしまう。
俺はすでに手を伸ばせば触れられる位置まできていた。
「また、触ってあげようか」
「そんなこと、そんなこと、生徒にさせられるわけないだろ」
時任の理性は俺の行為を頑なに拒否しようとしている。
しかし、
「ここをパンパンにして言うような台詞じゃないと思うんだけど」
俺はついに時任に触れた。
「やめろ・・・やめてくれ」
「さっきは後ろも触ってあげたけど、結構良かったよね?」
俺は時任を軽く抱くようにしながら、前だけではなく後ろにも手を伸ばす。
時任と俺との身長はだいたい5センチぐらい違うだろうか。
体型だって俺の方が小柄だ。
本気で時任が嫌だと思えば、簡単に俺を突き飛ばせることもできる。
それなのに、時任はそうしない。
「優真、またしてあげようか」
俺は隠していたローションを片手で取り出すと、直接時任の肌に垂らした。
「何、何したんだ」
時任は驚いたように身体を離そうとするけれど、それも本気じゃない。
俺が抑えられるぐらい。
俺はローションを床に落とすと、濡れそぼったアナルに指を伸ばす。
さっきの快感を時任の身体は覚えていたんだろう、俺の指をすんなりと咥え込んだ。
「くぅ・・・ぁ・・・」
時任の身体はピクンと反応を見せる。
同時に俺の身体に当たる時任の分身も更に大きくなったようだ。
「優真、まだダメだよ」
何がダメなのか、言わなくても理解できるだろう。
アナルに埋め込んだ指はそのままに、入り口を解すように掻き回す。
さっきの行為で時任の好きな所も分かっていた。
分かっていたが、そこは敢えて外す。
「ん・・・っ」
時任の身体がユラユラと揺れていた。
何を求めているのか分かるが、それとは反対に埋め込む指を増やしてやる。
「いっ・・・は・・・」
馴れるまで入り口付近を弄り、そのうち指の届く範囲ギリギリの奥まで突き入れてやる。
奥をかき混ぜるようにしていると、それに反応するように時任が身体を震わせる。
「ふ・・・ぅ・・・」
「もう少し広げてあげる」
「あ・・・?」
俺は再び指を入り口近くへと移動させると、2本の指を大きく広げる。
「ぅあ・・・ぁあ・・・」
「大きく広がってるのが分かる?」
俺はそこに3本目の指を添える。
「も、止めてくれ」
「何で止める必要があるの」
「何でって」
「ここは嫌がってないし、むしろ喜んでる」
俺は時任の身体を支えていた手を前にまわす。
そして、時任に自覚させる意味も込めて時任の分身に触れた。
「や・・・触るな・・・ゃっ・・くぅっ」
「え」
時任自身も驚いただろうが、俺も驚かされた。
「ちょっと触っただけだよ?」
「い、言うな」
時任は立っていられなくなったようで、俺にしがみついてきた。
俺も中に埋めていた指を抜こうとする、
「そんな締め付けて、よっぽど気持ちよかったんだ」
「そんなわけ」
「じゃ、文句ないよね」
俺は抵抗示す襞を無理に広げるようにして、指を抜き出す。
「ま・・・待て・・・ぁああ・・・」
時任の声は無視だ。
そして支えをなくした時任の身体はその場に崩れ落ちた。
「優真、そこのソファーに行ったら?」
時任は重なる刺激にぼんやりとしながらも、しっかりと俺の言葉が聞こえたようだ。
ノロノロとした動きで移動し始める。
俺はそれを見ながら、すでに勃起している自分自身を解放する。
「優真、マーキングの時間だよ」
「え・・・」
状況の分かっていない時任はそのままに、下着を脱がせる。
物欲しげに開閉を繰り返しているアナルに俺自身を擦り付けた。
「お、お前」
「シー、静かに。ゆっくり息を吐いてみて」
「そんなこと・・・でき・・・ひっ・・・」
時任が言葉を発したタイミングで、ツプッと先端を埋める。
「ぃあ・・・あっ・・・」
「案外すんなり入るね」
そう言いながら俺はゆっくりと、しかし確実に奥を目指し犯していく。
「ほら、全部入ったよ」
「やめ・・・あ、あつ・・・つぃ」
「俺も熱いよ」
指を軽く3本くわえ込めるまで解していたおかげで、時任のアナルは傷を作ることなかった。
しかも、俺の味や大きさを確かめるかのように、中がうねるように蠕動している。
「動いて欲しい?」
「そんなわけ・・・」
「でも、ここはそうじゃないみたいだよ」
そう言って俺は律動を開始する。
「くぁ・・・あぁ・・・ぬ・・・ぬい・・・」
「なに?」
「あ・・・そこ・・・やめ・・・」
「ここ?」
「ひぃ・・・や・・・ぃや・・ぅうあ」
時任はもう喘ぎ声しか出てこない様子だ。
俺はそんな時任を見下ろしながら、つい微笑んでしまう。
きっと時任の思考能力は今、ないに等しい。
ところが、ことが終わり冷静になったらどうだろう。
生徒と関係をもつ、それも男子生徒に犯されたわけだ。
そこで時任の精神が壊れる危険もある。
まあ、もしそうなったとしても俺は時任を飼ってやるつもりではいる。
むしろ、そうして俺だけを求めるようになればいいとさえ思う。
俺はポケットに入れていた携帯を取り出すと、背中越しに1枚写真をとる。
ちゃんと俺の分身が時任の中に収まっているのが分かるように。
そして、もう1枚。
「優真」
「え・・・はぁ・・・あぁ・・・」
「俺の方を見るんだよ」
「な・・・なに・・・」
俺の言葉にゆっくりと振り返る時任。
俺はその姿を写真に収める。
時任も自分が写真に撮られていることが分かっているんだろう。
さらにアナルの締め付けがきつくなる。
「ふ・・・ぅ・・・んん・・・ぁ・・・」
写真には時任が今まで培ってきたもの、すべてを失くした姿が映し出されている。
そう、この写真に写っている時任こそが本当の時任だと言える。
その後も何枚か写真を撮られる中、ついに時任は射精した。
俺もそのまま中に射精し、マーキング完了。
時任の中から出て行く。
「はっ・・・くふ・・・」
きっと腹を下すだろう。
それは分かっていたけれど、吐き出したものはそのままにしておく。
そして、ぐったりしている時任を着せ替える。
「ちょうどいいかな」
時計を見れば帰る時間に近い。
「先生、そろそろ帰る時間だけど」
俺も身支度を整えると、さっきまでの雰囲気を一掃するように声を掛ける。
「帰る」
「送っていこうか?」
「い、いい」
「そう」
それ以上は何も言わない。
自分で帰るというのだから止めはしない。
”帰る途中を見れれば最高なんだけどな”
家に帰るまで歩く距離はそんなに遠くはない。
ただ、セックスをした後で身体は辛いはずだ。
それに俺の精液が中に入ったままで、ちゃんとアナルを締めておかなければ漏れ出てくる。
いくら我慢をしていても、ふと力を抜いた時・・・
きっといい顔をするだろう。
俺は時任が帰るのを扉の前で見送る。
「先生、また明日」
時任が振り返ることはなかった。
そして、次の日。
時任は学校へ来なかった。
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