それまで雑誌に気を取られていた密だったが、突然現れた虎城に驚くこともなく、
「こじょ」
名前を呼びながら微笑んだ。
虎城の苦労を全く知らないような密の態度に思わず笑みを浮かべながらも、
「お前、なんかいつもより・・・」
部屋中に充満している密の香り。
虎城はそれがいつもよりも濃厚な甘さを含んでいるのに気づいた。
気づくと同時に虎城以外の誰かによってそれが引き出されたのではないかと思わず部屋の中を見渡してしまった虎城だった。
しかし、その部屋には誰もいなかった。
虎城の気配に逃げ出したとも考えにくかった。
そうしている間にも密の発している香りは益々濃くなっているようだった。
「どういうことだ?」
虎城は訳が分かかるぐらいには機嫌が良かった。
そんな虎城と反対に、八嶋は何度も虎城の後ろでため息をついていた。
「まさか勇生さんにそんな趣味があったなんて」
「バーカ、そんな趣味もこんな趣味もねぇ」
「だったら、どういうことなんですか?」
「密だからだろ?」
「はぁ、理由になってませんが」
「俺もそんなつもりじゃなかったんだぜ、でも、密がな・・・」
「これっきりにしてくださいね」
「分かってる」
八嶋は最後にもう一度ため息をつき、話は終わった。
しかし、虎城と密の行為はその時だけで終わらなかった。
虎城はあの後、
「密、今度からは自分でするんだぞ」
と言ってみたものの、密には虎城の言ってる意味が理解できなかった。さらに若い密の身体は今までの軽いボディタッチでも簡単に兆すようになっていた。
「まあ、俺もオナニーを覚えてすぐは猿みたいにやってた経験はある。だからってなぁ」
密はことある度に虎城に身体を擦り寄せてくるようになり、虎城が渋るとまずは唸り声を上げ少し機嫌が悪くなり、
それでも虎城が応えようとしなければ誘うように顔にキスの雨を降らす手に変えてくる。
さらにそんな時の密はいつもより濃厚な香りを放ち虎城を誘うのだから、虎城自身も
「据え膳食わぬは男の恥だな」
とついつい手を出していた。
八嶋も呆れていたが、だからといって二人を引き離すことはしなかった。
ただ、
「くれぐれもマスターベーションの範囲にしてくださいよ。虎城組組長が年端もいかない子供ととなれば、格好の餌食ですからね」
「分かってる」
「噂だけなら笑っていられますが、真実ともなれば話は違うんですよ」
「分かってるって。俺もさすがに本番まではしねぇよ」
八嶋の冷たい視線に虎城は苦笑するしかなかった。
密は二人のやり取りを知るはずもなかったが、覚えた快感に対して蜜は忠実だった。
そのうち時間や場所を選ばず、虎城から与えられる刺激を求めるようになった。
ある時は遊びに行ってる先だったり、またパーティーに出席している時だったり、その度に虎城は人目を避けるようにして密の欲望を解消してやった。
一方で虎城は欲求不満を解消するため、前以上に女遊びが激しくなっていった。
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