第一話 飛翔

2ページ/3ページ


そういえば、邪気って言っても、私からは実体の見えないモノなんだよね。
私の力では良いモノか悪いモノくらいかの見分けはつくけど、バリアとか張れる訳じゃないし…。
本当に中途半端な力だなぁ…。

「……あ、今日日直だった!やば…急がなきゃ!」

慌てて走るも、目の前の信号は、赤。

「あぁもう、急いでるのに〜!」

周りに人はおらず、アリアは歩道で足踏みをして信号が変わるを待っていた。



その時、事件は起きた。

鋭い鳴き声と共に、一匹の猫がアリアがいる歩道側へ飛んできたのだ。
恐らく、車に跳ね飛ばされたのだろう。
停まる車がないから、これは立派なひき逃げだ。

「なっ…大丈夫!?」

アリアは思わず鞄を投げ出して、その猫に駆け寄った。
だが、その体からは血が溢れ出し、周りを血の海へと変えつつあった。
鳴き声はすでになく、ぐったりとしている。

「うわぁ…もう助からないだろうな……。即死ってヤツだろなぁ、かわいそうに…」


すうっ…

猫の体から幽体が出てくるのが見える。
とは言っても、アリアには白いもやが浮かんでいるように見えるに過ぎない。

アリアは何回かこのような事に出くわした事があるので、だいぶ慣れていた。
でも、動物が死ぬところは、何回見てもかわいそうだ。
だからと言って、何か対処してあげる事もできないのだけれど。

「…まぁ、上手く成仏しなよー」

そう言って、鞄を拾い上げようと、猫に背を向けた時だった。