第一話 飛翔

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――また、この夢だ。

また、あの子が泣いている。

誰なんだろう。
白い世界に
銀色の涙を落とす
長い髪の女の子―――



ピピピピピピピピ
「うわぁっ!」

目覚まし時計の音に驚いて、アリアは跳び起きた。

「アリアー、起きなさいよー」
「は、はーい」

目覚まし時計と母親の声で目覚め、セミロングの髪をとりあえず手でとき、目をこすりながら顔を洗いに行く。
アリアの普段通りの朝だった。

「おはよー、お母さん」
「おはよう。朝から大きな声出して、何か変な夢でも見たの?」
「う、うん。ちょっとね…」
「ふぅん。霊感があると、大変ねぇ。ま、お母さんとお父さんには無いから、よくは分からないけど?」
「もう、人事だと思ってー」

そう。私にはどうやら“霊感”というものがあるらしいのです。
とは言っても、テレビに出ているような人と比べたら、ゼロに等しいくらいしか無いんだけど。

「そういえば、お父さんは?」
「もう出かけたわよー」

でも、おかげでたまに見たくないモノも見える時があるし、私としては迷惑なくらいなのに。

「急げ、学校遅刻するわよ」
「はいはい」

家族の中でも霊感があるのは、なぜか私だけ。
お父さんもお母さんも、「いいな」なんて言うけれど、こんな能力、無い方がいいのよ。

「あ、お母さん、裏口の辺りに塩撒いといて。また邪気がついてるから」
「また?分かった、撒いておくわよ、我が家の霊媒師さん?」
「そんなんじゃないってば〜!じゃあ、行ってきまーす!」

制服に身を包み、鞄を肩に掛けて、アリアは学校へ出かけていった。


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