(2020年2月23日)
2枚の写真は二人のラグビー選手があるゲームで遊んでいる(又は練習の一環として)様子です。このゲームの名前は知らないので仮に両手押しバランスゲームとしておきましょう。誰でも一度はやったことがあるゲームでしょうから説明はしなくて良いでしょう。 片方が力持ちで押す力に個々には差があっても、作用反作用の法則から同じ大きさの力が作用することになりますから両者が同じ体質量でしたら両者が同時に後ろに動かされ引き分けになるでしょう。実際には腹筋の強さや、駆け引きでどちらかが先に足を動かしてしまい勝負がつきますが。 負けた方の人は相手の手から加わる力で押されて身体の重心が後ろに動かされたと思うでしょう。両者が同時に動かされた場合も同じように相手の力で動かされたと理解するでしょう。運動の法則F=mαが教えるとおりです。相手の力がFでその方向の加速度がαです。 もし、相手が大きな人で手は前に出しているだけでしたらどうでしょうか。負けるのは力いっぱい押した自分の方です。極端な例で考えると相手は壁だったとしましょう。壁は動きませんが押した自分が手に与えられる壁の反力で後ろに動かされてしまいます。 このことが一見ニュートンの運動法則F=mαに反しているように見えるのです。自分はFの力で押したらFと反対方向に加速度αで動かされてしまうのですから。しかし、壁が反力Rで自分を押したのだとすればR=mαで運動方程式どうりです。 同じ理由で、地面を走る選手は足で後に蹴る方向とは逆に前に進むことができるのは地上からの反力で動かされるからです。更に、同じく地上を走る車やレールの上を走る電車もすべて地上から反力で前方に動かされています。 これらのことは地面は動かないので納得しにくいことではあります。しかし、両手押しバランスゲームで相手が壁であったとしても、両手が壁に触れて押している短い時間だけ壁の方が押してきた状況と力関係は全く同じなのです。あるいは、もし地面からの抗力がなければ短距離走の選手の足も後ろに滑るだけで前に進めないことは容易に想像できるでしょう。 「『蜘蛛の糸』仕事をしたのはカンダタの筋力か」に関して、物理学者の面白い論争がありました。 蜘蛛の糸のように細いものではカンダタを引き上げているのが糸の方だと想像しにくにですが、運動方程式F=mαを念頭に置く限り上に動くための力は糸の張力でしかありません。このことからだけから考えると、後藤氏の方に分があるように思われます。仕事も力×距離ですから力を出して引き上げているのは糸の方だということになります。 下向きに力を出しているのはカンダタです。上に動くのは糸の反力(張力)です。この関係は、グラウンドを蹴って走る選手と同じです。力の方向と逆向きに動くのですからマイナスの仕事をグラウンドに与えた、言い換えるとグラウンドから仕事を与えられた、それが走る選手の運動エネルギーとなっているとでも解釈することになります。 常識的には、運動選手の足がグラウンドを蹴って走るので仕事をしたのは運動選手です。このことをニュートン力学の運動の第2法則(F=mα)と仕事の定義(W=Fs)だけで説明するのは意外に難しいということでしょうか。 (参考)氷上で選手は何故前方に進めるか (了) 戻る
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