(2011年6月7日) 以下は重力と見かけの力で説明したことの見かけの力についての追加説明である。 力とは何かと問われることがある。そのぐらい力とは定義しづらい概念なのであろう。国語の辞書を見れば、何かを動かす作用のもととなるもの、ということが書かれている。辞書に書かれた説明は何となく我々の頭に染み付いているように思われる。実は力とは何かの理解には、動いているものを止めるのに必要な作用という見方も必要なのだ。 もちろん物理学では、力も明確に定義されていてニュートン[N]という単位が決められている。[N]は複合単位であって、基本単位で表すと力は[Kg・m/s^2]であり、力が質量[m]と加速度[m/s^2]の積で定義されていることが分かる。 (注1) 物理の教科書において、見かけの力であると説明されている力がある。例えばコリオリの力である。見かけの力とは、座標の取り方によっては数式上で力の項として出てくる量であり、実際に作用している力ではないと説明されている。しかし、みかけの力も単位は同じ[N]であることに変わりはない。みかけの力でなく実際に作用している力のことを実際の力と呼ぶと、見かけの力と実際の力にどのような違いがあるのであろうか。 質量mの物体に実際の力Fを加えたらどのような変化をするのか見てみよう。まずその物体は加速度aで動き出す。t秒間同じ大きさの力Fが加わったとすると、その物体は1/2・a・t^2 の距離を動き、最初は静止していたとすると速さV=a・tになっていることなどがニュートン力学の教えるところである。 物体に実際の力が加わると、その物体はどのような変化が起こるであろうか。力は物体の表面から加わり、物質を構成する分子に作用しその分子が隣の分子に作用する、という経過を取る。従って、物体内部には圧縮、引き張り等の応力が生じている。応力が生じると物質は必ず歪を伴う。つまり物質内部に変化を伴うということである。物体に見かけの力が加わっても、物体内部に変化はない。従って、物体に加わった力が見かけの力であるか、実際の力であるかはその物体にひずみを生じているか否かで分かる。ただし、逆は必ずしも真でない。歪を生じても応力は発生していない場合がある。 (注1) 通常、ニュートンの運動の第2法則からF=m・aとされているが、この式は一つの式で力と質量を同時に定義しているとの批判がある。実際、力と質量の比が加速度に等しいとした、この比を定義したF/m=aと見るのが正しい。 (了)
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