一般相対性理論との関係  

(2011年11月30日)


  物理学を学ばれたという方から友人を介してコメントを頂いた。「重力は力でない」という主張はある意味で常識であるとのことである。他に「間違いだろう」とのコメントもあったが、その部分は再検討し説明しなおすこととする。この一連のブログで一般相対性理論に反することを言っている積もりは全くないので安心して貰って良い。ではその安心のために、ここで一般相対性理論との関係を説明しておく。

 この一連のブログで主張していることは一般相対性理論を学ばなくても、現行のニュートン力学の一部を修正できるということである。力はニュートン力学でもベクトルとして議論されているが、この一連のブログでは簡単にするためにスカラー表示で記載している。適宜ベクトルで考えられても構わない。

 一般相対性理論によると物体の質量が周囲に重力場を作るということで、重力場に置かれた別の物体は重力場の中心に向かって引きつけられるというものである。重力場とは空間の歪であり、質量が空間の歪みをもたらすとし、アインシュタインは1915年にこれらの関係を表す一つの方程式を発表した。一つに式と言っても多くの式を凝縮したものであるから、この式を理解するには多くの式を頭に入れなければならない。

 この式はアインシュタインの方程式と呼ばれていて、左辺が空間の曲率を示し、右辺が空間にある質量分布を示すもので、無次元量の式になっている。なお、ニュートンの万有引力の式では力の次元で表されている。

 ガリレオ・ガリレイは重力を研究するために斜面を利用した。このアイデアを引き継いで理想的な斜面を想定する。緩やかな丘から下っている道路があって、この道に水を巻いては凍らしツルツルに凍った斜面が出来ているとする。この斜面にアイスホッケーで使うパックを置けば、このパックは自然に滑り出すであろう。丘の上でこの道が平らであれば、いくら凍った面でもその上に置かれたパックは、止まっていれば何時までも止まっているであろうし、スティックでパックを打ち、スピードを与えてやればいつまでも滑っていくであろう。もちろん永久に滑っていくことは考えにくいが、ニュートンは理想状態としてそのような状況を考えた。

 つまり、抵抗のない平らな部分でのパックの運動はニュートンの運動の第一法則(慣性の法則)を示唆するものである。そしてツルツルの斜面が重力を示唆するものである。つまり重力は斜面であってスティックではないのだ。スティックでパックを押してやらなくても斜面はパックを加速させる。これが重力は力でないという意味である。

 斜面で動き出そうとしている、または動き出した、パックを止めるためには力がいる。ここで丘の上の平らな面に置かれたパックが動き出さないのは地面からの反力を受けているからであることに気がつくであろう。重力加速度の動きに抵抗すると力が必要になる。これが時に反力であり、外力である。

 ニュートンは万有引力の式を導出 するにあたって、「重力が斜面であるのに気がつかず、スティックで押し続けている」と考えてしまった。 「重力は構造力学で念頭におくような力ではない」と言えば、理論物理学者も異論はないかもしれないが迫力に欠ける。

ただ、スティックがパックに働く力は外力であるが、重力は内力であり慣性力も内力なのである、という説明はあるだろう。そして内力と内力の釣り合いは分子レベルでミクロに釣り合うので理論的に検知できないというものである。しかし、実際に検知できないものは想定するだけの「見かけの力」である。

 重力が見かけの力である証拠は座標の取り方によって消えてしまうことである。座標の取り方によって現れたり消えたりするコリオリ力が見かけの力であることはニュートン力学でも学ぶことである。アインシュタインが1907年に発見して喜んだことは自由落下をしているエレベータの中では重力が消えているということであった。

 自由落下しているエレベータは実際には想定しにくいが、国際宇宙ステーションは地球を周回する速度があるが自由落下していることに変わりはない。宇宙ステーションの中では重力は消えているが、実際の力は宇宙ステーションの中でも消えたりしない。古川宇宙飛行士は宇宙ステーションの中でヨーヨーを実験して見せてくれたが、もし紐を伸ばして振り回したら地上と同じように手に引き張り力を感じた筈である。質量も座標の取り方で消えたりしないように、実際の力は座標の取り方で消えたりしない。

(「見かけの力」という用語も、「外力でない力」という意味で使われている場合が多いので注意が必要。)

(了)


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