重力質量は不要の概念(その2)


(2015年9月18日)


 添付は小野周著「力学I」(岩波基礎工学)からの抜粋(p.37)である。この本で記載されているように物体の質量は重力の大きさから決める重力質量とニュートンの運動の方程式から決める慣性質量とがあるとされている。そして、この二つの質量が等しいと認めることを等価原理とする説明もある。

 多くの本でも重力質量(gravitational mass)と慣性質量(inertial mass)の概念は別のものとして扱われている。しかし、重力質量と言う概念は重力とは何かを考えると、もともと不要の概念であったのである。このことを述べているのは小野健一だけである。「アインシュタインの発想」、講談社、1981年、(p.182)

 重力を利用して物体の質量を計測することは日常行われていることである。例えば体重計であるが、これはバネばかりである。バネの変形量を計測することにより体重を測る装置である。物体に働く重力と言う力を測定していると考えられている。 

 ところが体重計が測定している力は、重力により人間が加速運動を行うことを体重計が阻害することにより、人間に働く慣性力を測定しているのである。体重計から人間の足に力が加えられるのでその力と慣性力が釣り合っているのである。

 重量または重さというのは、重力に従って加速度運動をしなければならない状態を力を加えて静止させたときに働く慣性力なのである。この慣性力はニュートンの運動の第2法則から決まる量と同じであることをアインシュタインが1907年に気がついたのである。つまり、慣性力を決める質量は慣性質量であって、わざわざ重力質量と言い換える必要はなかったのである。

 (注) 現在はSI単位を使うことになっている。重さは力であるから体重の単位は[N]で表さなければならない。体質量なら[kg]で表して良い。


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