航空機に働く4つの力  

(2018年5月18日)


 航空機に関する専門雑誌である「航空技術」には2003年1月号から「空を飛ぶしくみ」が連載されています。この記事はアンダーソン博士とエバーハート博士による「Understanding Flight」を中井祐輔氏が翻訳されたものです。

 「航空技術」には2003年1月号の40頁には航空機が定常飛行をしているときに航空機に作用している4つの力の説明があります。雑誌の複写は厳禁されていますが、一部分だけですので許容していただくとして、次のように図も入れて書かれています。

 定常飛行中は推力は抗力と釣り合っているので、進行速度が同じです。そして、上下方向は揚力が重力と釣り合っているので飛行機は同じ高度を飛んでいるという説明です。上の記事では「正味の揚力は重力と等しくなっています。」と書かれています。

 英語の原文では揚力(Lift)に釣り合っているのはWeightであると書かれているようですが、Weightを重量と訳さずに重力としています。重力に対する英語はGravityですから、訳者の中井氏は重力と重量を同じとしていることになります。

 日本でも長らくというより今だに重力と重量は混同されて使われています。しかし、これは区別しなければならない二つの概念なのです。

 重さ(又は重量)と質量も長らく同じようなものとされてきましたが、現在は理科の教科書で明確に重さは力で単位はニュートン[N] 、質量の単位はキログラム[kg]と区別されています。重さと重量は同じで、単位はニュートンです。

 重力と重量を混同することは質量と重さを混同するようなものです。これを詳細に説明したのが次の講演原稿です。
3L12「重力は力でなく加速度である

 重量が重力に起因する力には違いありませんが、重力自体は力ではないのです。重力は物が落ちる性質のことでアインシュタインによればこのような性質があるのは時空のひずみであり、現在の物理学では全く異論がありません。

 物が落ちることに抵抗するとその物体には慣性力が働きます。この力が重量です。航空機の例では機体が落下するすることに抵抗している力が揚力です。揚力は翼の断面形状と迎え角により生じる空気力の上向き成分です。

(追加)
 同誌5月号の68頁には重力でなく重量と書かれています。

(了)

(参考)
「飛行機設計論」山名正夫、中口博、共著、1968年、養賢堂、では「揚力」に釣り合う力として「機体重量」と書かれています。


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