力を基本単位に(2)  

(2017年8月6日)
(追加:2017年8月17日)


6月のブログ「力を基本単位に」で、質量でなく力を基本単位にすべきであることを説明した。これは独創的な見解ではなかった。

岩波基礎工学15固体力学I、山本義之、堀幸夫、1968年

(P.8)

力の単位[N]が国際単位系(SI)として採用されたのは1948年のことであるから、この本は1968年出版であるところをみると、完全にSI単位を無視していることになる。

現在は[質量]の単位が[kg]で基本単位とされ、[力]の単位が[N] で、組立単位として定められている。

                       [力]=[質量][長さ]/[時間]^2    ・・・    (1)

「固体力学 I 」では何が書かれているか、目次を紹介しておく。
第 I 編 構造設計の個体力学
第1章 個体力学と構造物
第2章 構造物のうける荷重
第3章 応力とひずみ
第4章 構造物の強さと機能
第5章 構造物の力学的性質(I)

この「固体力学 I 」の例でわかるように固体力学、材料力学、構造力学、等に類する他の教科書でも力の概念に(1)式は全く出て来ない。もっぱら応力・ひずみの関係で表現されている。

これに反して、単に力学と表示された教科書では、軌道解析、天体力学など、運動解析に関して力の作用が説かれている。いわゆるニュートン力学である。従って、力の定義はニュートンの運動の第2法則でもある(1)式であり、現行の[N] =[kg][m]/[s]^2 とされている。力が作用した物体に生ずる応力・ひずみの説明はまず出てこない。

国際単位系を決める会議のメンバーは力に関しては運動に関心のある物理学者が支配的で応力・ひずみに関心がある工学者は誰もいなかったのであろう。

ニュートンの運動の第2法則でもある(1)式は質量の定義に使うべきであり、力の定義はフックの法則によるべきである。ニュートン秤とは目盛りを[N]で表したバネ秤である。この秤を精度良くしたものが力原器であると想定するだけで済む。

(追加)
これまで「力とは何か」を考えると力は線や点で作用することは出来ず、必ず面で作用するものであると説明してきました。これは力よりも圧力が基本的な量であることを示しているのです。

現在のニュートン力学では、圧力は[圧力]=[力]/[面積]と定義されていますから、圧力の単位[Pa]は組立単位です。

この関係は[圧力]と[力]が対等の関係にあることも示しています。従って、[力]=[圧力]・[面積]であり、[圧力]を基本単位とすれば[力]は組立単位に下がります。

現在、質量の単位がキログラム原器から見直される途中にありますが、もっぱら再現性のある高精度の実測方法があることで決められようとしています。

しかし、7種ある基本単位のうち電流の基本単位、アンペア[A] の定義は物理的な意味での定義であって、実測方法から定義されているのでないことは明らかです。

基本単位とは物理的な意味で決め、別に高精度で実測できる方法を技術の進歩に応じて変更することが一番良いように思われます。

(了)


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