/ポストカード音楽会  /GAKKIの特選画家

 

 

 

絵筆のパガニーニ  マニャスコ

 

    

4234

4234   Pulcinella Singing with His Many Children and a Lute Player
Alessandro Magnasco  Samuel H. Kress Collection 54 37 42
Columbia Museums of Art and Science  2006・12・29入手   
民族リュート

 

 

のカデンツ

 

「これ そうとうマイナーでしょ。 まさか持ってないよね」 

と言いながら 提供してもらったカード。

それもそのはず

アメリカはサウス・キャロライナ州にある コロンビア美術館からのもの。

こんな画家は はじめてです。 

現地出身の人? ちょっと ヴェニスのカーニバルみたいな雰囲気もするけど・・・

と質問してみましたが さあね と つれない返事でした。

暗い絵のなかに 白い伸びて尖った衣装や肢体が 

なんだか ちょっぴり不気味。

アレッサンドロ・マニャスコ

はてさて この人は一体 いつの時代の どんな画家なのでしょう。

 

 

小学館 発行の 世界美術大事典 5 でやっと調べがつきました。

この本にたどり着くまでに

図書室の係りの方に すっかりお世話になってしまいました。

 

マニャスコ(アレッサンドロ) 1667−1749  ジェノヴァ生まれ

画家の父を早く亡くし、ごく若い時にミラノに移る。

熱心に絵を学び、

モラッツイーネに影響を受けた初期の代表作 『聖フランチェスコの法悦』 を描く。

きわめて独創的で、反アカデミックな特徴は、ほどなく風俗画を専門とするようになる。

1703〜10年、メディチ家のコジモ3世の庇護をうけ、フィレンツェに滞在。

同地には、ある種の風俗画家による呵責のない風刺に対しても 

好意的に対処する伝統があった。

そうした環境の中で、人物画家として名をなし、

風景あるいは廃墟を専門とする画家とも共作している。

彼独特の作風が決まるのも この頃で

修道士、ジプシー、曲芸師 などの 細長い姿を 広大な暗い背景に描いた。

『修道士のいる風景』  『小音楽会』 など。

(小音楽会ですって?! 楽器ありそう・・・これはワルシャワ国立美術館にあるらしい)

ふたたびミラノに戻り

ヴィスコンティ家のお城のフレスコ画などの注文を受ける。

余生を送るため、ジェノヴァに1735年に帰国

晩年 きわめて質の高い作品を制作したが、理解も共鳴も得ることはできなかった。

彼の活動は、18世紀ヨーロッパにおいて比類がなく

その源であるバンポッチアンテ(チャーテ) や 

性格描写画として有名な風刺や叙述の最新の傾向と

同一視するわけにはいかない。

(バンボチアンテとは、1630〜40年にローマやオランダなどで活動していた風俗画派)

なぜなら、彼はその両者を共有しているが

頑固なほどに非妥協的で その固有の特性をおおげさに強調している。

悪漢や物乞いに対する共感とともに

公然たる鋭い風俗風刺(とくに最晩年)の意図がみられる。

宗教界は格好の標的で

その狂信を風刺した初期の 『クエーカー教徒への説教』 や

 行き過ぎた通俗趣味を描いた 『修道女の音楽会』 などがある。

(えっ! 修道女の音楽会? これは どこにあるのかな?)

一方 貴族社会に想をえたものには

名作 『アルバーロ庭園での園遊会』 があり

繰り広げられる虚栄のさまを静かに見つめている。 黙想といってもよいほどである。

だが、こうしたことは彼の真の気質を理解するには重要ではあるが

不十分な手がかりにすぎない。

というのは、彼は哲学者というよりは物語作家であり

観察者というよりは劇作家であるからである。

見るものを惹きつけるため 

あえて荒々しく誇張した効果を 時として用いることを厭わず

荒れ模様の風景の背景や、闇につつまれた修道院の風景などにそれがみられる。

『魔女』 や 『監獄での尋問』 では

やや人を愚弄する調子にもかかわらず

いずれの作品にもゴシック的な情念の先取りがみられ

これは2〜3年後には文学と美術の分野において最新の流行となる。

激しく踊るような筆触は、その意図するところを完璧に表しており

修道士の軽快なシルエットを瞬時に形あるものに変え

背景の風景は大氣を深く感じさせる。

他にスケッチや素描類も数多く残されており

その素早い描線には注目すべきものがある。

 

う〜〜ん、第一印象どおり やや強烈で個性派な画家みたいです。

でも彼は 楽器好き〜〜♪   

暗い作品だけど がぜん好感度アップ。 

こうして たった一枚のカードをきっかけに マニャスコ追っかけ大作戦 が始まりました。

 

 


 

<追記>

その後 わかったのですが、 2006年の大エルミタージュ美術館展に 

このマニャスコの絵が来日していました。

その展覧会に行った  も  それなら マニャスコを鑑賞したはず。 

出品リストを調べたら 確かに

U部 人と自然の共生  NO.27 

アレッサンドロ・マニャスコ  『盗賊たちの休息』 とあります。

  でも・・・ とほほ・・・

 まったく記憶にありません。 

案外 彼はメジャーな画家なのでしょうか?

 

 

また ある日 我が家で

日本放送出版協会 NHK エルミタージュ美術館 2  を 見ていたら

マニャスコの 『海辺の風景』  『バッカナール』 という 二作を発見。  

灯台下暗しです。

その解説を抜粋すると、

ミラノを中心に活躍したマニャスコは 表現力に富んだ奔放な技術を駆使し

『絵筆のパガニーニ』 とまで呼ばれた。

(おお、パガニーニですか! まさに この特選画家コーナーにふさわしい!!)

彼の風俗画や宗教画には、身振りで感情を誇張した人物が

時に印象派を予告するような力強くすばやいタッチで描かれている。

だいたいにおいて暗い色調で描かれており、昼なお暗い 得たいの知れない不気味な世界を

覗き込んでいるかのような感に打たれる。

荒れ狂う大自然とそれを前にした人間の矮小さであり 

すでにロマン派のターナーを先取りしている。

彼の芸術の本質をなす幻想性は後継者をもつことはなかった。

人体の誇張されたプロポーションと強いコントラストを持つ明暗法が

画面全体に激しい躍動感を与えている。

ヴェネチア派や後期マニエリストたちの影響をこうむりながらも

彼自身の内的ヴィジョンを常に前面に押し出した

美術史上特異な位置を占める画家である。

彼の劇的で躍動感ある作品は、

18世紀ヴェネチア派のグアルディや、スペインのゴヤへと連なり

さらにロマン派を予告している。 

 

 おぼろげながら 画家マニャスコ像が 浮かび上がってきました。

で はた と気がついたのです。

最初に  が受けた印象です。

ヴェニスの道化師・・・ そう あのコメディア・デラルテの ストックキャラクターのこと!

参照 → コメディア・デラルテ

マニャスコのカードに書いてあった  

Pulcinella Singing with His Many Children and a Lute Player 

Pulcinella・・・   英語の辞書で調べても出てこなかったけど、

 これって もしかして人名?

さっそく調べてみると、おお、まさしくこのプルチネッラは

コメディア・デラルテ出身の ナポリ生まれの道化師の名前。

白い大きめの服に身をつつみ、とんがり帽子をかぶった

黒い仮面をつけた 道化です。

やった〜〜!! なんて うれしい発見でしょう。

冒頭のカード マニャスコ流の風刺がきいてるとすれば、

プルチネッラは子沢山ということなのか?  (これは未解明事項)

こんな風に 一枚のカードから

お粗末な  の知識回路がつながって 

だんだんコレクションカードの関連性がみえてくるのですから  

ほんと カードコレクションって楽しい!

と 自画自賛したところで もう一つ 新たな発見をしました。

永年 謎だったカード ↓ この奇妙で不気味な仮面のピエロたち 

 これも 道化師 プルチネッラ だったのですよね。

プルチネッラは ナポリ出身。

その後 ナポリの街角で この姿のプルチネッラが 

おみやげ用のお人形として 店先にたくさん並んでいるのを目にし

こんなにメジャーなピエロだったのね 知らなくてごめんね、と そっと謝りました。

そして 初めて サウス・キャロライナのカードを入手したときの不気味さを 

なつかしく思い出したことでした。

 

 

 263    264

263 Gino Severini (1883-1966) Two Pierrots  1924  Haags Gemeentemuseum、Gravenhage
VG. Bild-Kunst, Bonn 1995  Printed By Prestel−Verlag, Munchen・New York 
1999・10・25入手  
アンサンブル

264 Gino Severini (1883-1966) The Musical Pierrot  Museum Boymans-van Beuningen, Rotterdam
VG. Bild-Kunst, Bonn 1995  Printed By Prestel−Verlag, Munchen・New York
1999・10・25入手  
ギター

 

 


 

<追・追記> 

 

さらに 灯台下暗し

久しぶりに訪れた 上野の国立西洋美術館 常設展会場で 

マニャスコの絵を 2点、みーっけ!

  『嵐の海の風景』 『羊飼いのいる風景』

ようやくマニャスコという画家を しっかり認識したうえで 

初めて 彼の作品と 直に対面したのです。 

絵の前に立っただけで あっ! これは・・・とすぐわかりましたから

やはり強烈な個性の持ち主。  

 暗い色調に 白い鋭い線がとても印象的。

こんなところで 待っていてくれたなんて

自称 マニャスコ追っかけ としては ちょっと感動的な日になりました。

 


 

 

<追・追・追記>

 

その後  ルーヴル美術館で

 イタリア美術の片隅の薄暗い小部屋に

数点まとめて 彼の作品が展示されているのを発見しました。

マニャスコ コーナーと言っても いいほどです。 

さすが絵筆のパガニーニ  

こんなに有名な人だったんだと 再認識。

といっても グランドギャラリーを最後の最後まで歩いた先の 

大きな スペイン・イタリア絵画 展示室脇の 奥の奥の小部屋なので

観光客などは ほとんど スルーする場所。

ルーヴル美術館は ノーフラッシュなら撮影可なので 

記念に 楽器もの 写してきました。 

部屋が暗く ライトが反射して なかなか思うように撮れなかったのですが

代表して 色が一番綺麗に写った一枚です。

 

 

 

 

まったく知らなかった画家の たった一枚のカードから

   の絵画の世界が広がっていく過程を記してみたのですが

コレクション開始から13年 7000枚を突破した今

パソコンの画像検索機能の充実にともない

これまでには考えられないほどの知識量を 

パソコンから瞬時に得ることができる時代になりました。

コレクション開始の頃は 図書館で探したり 係りの人に聞いたりして

やっと手にすることができた情報だったのに

今の時代は 問えば なんでもすぐ答えてくれる ドラえもんポケットのような 

強い味方のパソコンがあります。

Alessandro Magnasco  と打ち込めば 

簡単に 彼のものすごい数の絵と 出会えるはず。

 そんな今 振り返って この展示室を読み返してみると 

すべてが なつかしく蘇ります。 

 ただ

この長大な マニャスコ追っかけ大作戦のわりには

いまだに マニャスコのカードは たった一枚だけ というのが 

なんだかなぁ・・・ですが(笑)

 

 


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