現代連歌のトップへ

現代連歌入門



 これらのページにおいて、私は、私たちの行っている言語ゲームを、「連句」とも呼び、「連歌」とも呼んでいます。こうした名称のことよりも共同製作の文芸であることを重視したいと思い、意図的に拘らないで来ました。

 今までの印象としては、俳句作者は「連句」と呼びたいようで、短歌作者は「連歌」と呼びたいようです。この「連句」という呼び方は、高浜虚子の創り出したもので、そこには正岡子規の俳句革新運動につながるマニフェストが込められています。

 五年ちかくこの言語ゲームで遊びながら、どうも「連句」という言葉が、私たちのスタイルにそぐわないように思われ始めました。また、「俳諧」という言葉の現代における印象とも違うようです。以後、「現代連歌」という呼び方をしたいと思います。2004,3,3。

 なお、「現代連歌」という呼び方は、1993年初版発行
『現代連歌集』(野間亜太子編・砂子屋書房)に、すでに見られます。野間亜太子さんは、1969年頃、私の立命短歌時代の数少ない旧知のかたです。懐かしさをこめて借用する次第です。むろん、野間亜太子さんが「現代連歌」と呼ぶ場合の「連歌」と、私が連句という言葉を廃して「現代連歌」という呼称を、原義とは別に復興させようとしていることとは、まったく、その意図を異にするものです。

 現代連歌と呼びながら、私たちがモデルにしているのは、松尾芭蕉グループの「蕉風誹諧」に近いものです。

以下に、ひとつの典型として、『冬の日』から引用しておきます。

はつ雪の巻『冬の日』
はつ雪の巻(『冬の日』)



初折

表    冬   はつ雪のことしも袴きてかへる

     冬    霜にまた観る蕣(あさがほ)の食

     秋   野菊までたづぬる蝶の羽おれて

     秋    うづらふけれとくるまひきけり

    秋   磨呂が月袖に鞨鼓をならすらん

     春    桃花をたをる貞徳の冨



裏    春   雨こゆる浅香の田螺ほりうゑて

     春    奥のきさらぎを只なきになく

     雑   床ふけて語ればいとこなる男

     雑    緑さまたげの恨のこりし

     雑   口おしと瘤(ふすべ)をちぎるちからなき

     雑    明日はかたきにくび迭りせん

     雑   小三太に盃とらせひとつうたひ

    夏    月は遅かれ牡丹ぬす人

     雑   縄あみのかゞりはやぶれ壁落て

     雑    こつこつとのみ地蔵切町

    春   初はなの世とや嫁(よめり)のいかめしく

     春    かぶろいくらの春ぞかはゆき



名残折

表    春   櫛ばこに餅すうるねやほのかなる

     春    うぐひす起よ紙燭とぼして

     雑   篠ふかく梢は柿の蔕さびし

     雑    三線からん不破のせき人

     雑   道すがら美濃で打ける碁を忘る

     雑    ねざめねざめのさても七十

     雑   奉加めす御堂に金(こがね)うちになひ

     雑    ひとつの傘下拳(こぞ)りさす

     夏   蓮池に鷺の子遊ぶ夕ま暮

     雑    まどに手づから薄様(うすやう)をさす

    秋   月にたてる唐輪(からわ)の髪の赤枯て

     秋    恋せぬきぬた臨済をまつ



裏    秋   秋蝉の虚(から)に声きくしづかさは

     秋    藤の実つたふ雫ほつちり

     雑   袂より硯をひらき山かげに

     雑    ひとりは典侍の局か内侍か

    春   三ケの花鸚鵡尾ながの鳥いくさ

     春    しらかみいさむ越の独活苅

連歌・誹諧・現代連歌のスタイル

■百韻 100句・四折 四花七月
表8句(7句目月)裏14句(9句目月、13句目花)
二の折表14句(13句目月)二の折裏14句(9句目月、13句目花)
三の折表14句(13句目月)三の折裏14句(9句目月、13句目花)
名残の折表14句(13句目月)名残の折裏8句(7句目花)

■米字  88句・四折 四花七月
表8句(7句目月)裏12句(7句目月、11句目花)
二の折表12句(11句目月)二の折裏12句(7句目月、11句目花)
三の折表12句(11句目月)三の折裏12句(7句目月、11句目花)
名残の折表12句(11句目月)名残の折裏8句(7句目花)

■七十二候 72句・三折 三花五月
表8句(7句目月)裏14句(9句目月、13句目花)
二の折表14句(13句目月)二の折裏14句(9句目月、13句目花)
名残の折表14句(13句目月)名残の折裏8句(7句目花)

■易 64句・三折・三花五月
表8句(7句目月)裏12句(7句目月、11句目花)
二の折表12句(11句目月)二の折裏12句(7句目月、11句目花)
名残の折表12句(11句目月)名残の折裏8句(7句目花)

■源氏 60句・三折 三花五月
表6句(5句目月)裏12句(7句目月、11句目花)
名残の折表12句(11句目月)名残の折裏6句(5句目花)

■五十韻 50句・二折 二花三月
表8句(7句目月)裏14句(9句目月、13句目花)
二の折表14句(13句目月)二の折裏14句(9句目月、13句目花)

■長歌行 48句・二折 二花三月
表8句(7句目月)裏16句(11句目月、15句目花)
名残の折表16句(15句目月)名残の折裏8句(7句目花)

■世吉 44句・二折 二花三月
表8句(7句目月)裏14句(9句目月、13句目花)
名残の折表14句(13句目月)名残の折裏8句(7句目花)

■歌仙 36句・二折 二花三月
表6句(5句目月)裏12句(8句目月、11句目花)
名残の折表12句(11句目月)名残の折裏6句(5句目花)

■二十八宿 28句・二折 二花三月
表6句(5句目月)裏8句(7句目花)
名残の折表8句(7句目月)名残の折裏6句(5句目花)

■蜉蝣 28句・二折 二花三月 (窪田薫案)
表6句(3句・3句で分ける)(5句目に月or花)
裏8句(4句・4句で分ける)(7句目に月or花)
名残の折表8句(4句・4句で分ける)(7句目に月or花)
名残の折裏6句(3句・3句で分ける)(5句目に月or花)

■源心 28句・二折 二花二月 (東明雅案)
表4句、裏10句(折立月、9句目花)
名残の折表10句(9句目月)名残の折裏4句(3句目花)

■箙(えびら)24句・二折 二花三月
表6句(5句目月)裏6句(5句目花)
名残の折表6句(5句目月)名残の折裏6句(5句目花)

■短歌行 24句・二折 二花三月
表4句、裏8句(折立月、7句目花)
名残の折表8句(7句目月)名残の折裏4句(3句目花)

■二十四節 24句・二折 月花不明
表6句、裏6句
名残の折表6句名残の折裏6句

■胡蝶 24句・三折 一花二月 (林空花案)
表6句(5句目月)中12句(11句目月)裏6句(5句目花)

■オン座六句24句 一花一月 (浅沼璞案)
1連6句(5句目に月)2連6句・3連6句(2連3連のどちらかに
自由律)4連6句(5句目に月)
http://mypage.odn.ne.jp/home/renkupower
■二十韻 20句・二折 一花二月 (東明雅案)
表4句、裏6句(折立月)
名残の折表6句(5句目月)名残の折裏4句(3句目花)

■半歌仙 18句  一花二月
表6句(5句目月)裏12句(8句目月、11句目花)

■十八韻 18句 一花二月 (宇咲冬男案)
表6句(5句目月)中6句(5句目月)名残6句(5句目花)

http://www.ashitano-kai.gr.jp/

■十八公 18句 月花不明
表8句 裏10句

■獅子 16句 一花二月(窪田薫案)
表8句(4句目で分ける)(7句目に月or花)
裏8句(4句目で分ける)(7句目に月or花)

■居待=出花 18句 一花二月 (岡本春人案)
発句・脇・第三のほかは制限なしの自由な連句。

■非懐紙 18句〜24句 (橋間石案)
懐紙の約束に囚われず、月花も自由。

■首尾 16〜12句・一折 一花一月
歌仙の初折の表と名残の裏

裏白 8〜6句・一折 一月
表8句・表6句(懐紙の初折の表のみ)

■暦 12句 月花不明
表6句
裏6句


■ソネット 14句 一月一花? 珍田弥一郎案
4句4句3句3句の4章に分け、各章にそれぞれの季を入れる。

連句における脚韻の踏み方には
ペトラルカ様式 abba/abba/cde/cde
ペトラルカ様式の変容 abba/cddc/eff/egg
イギリス式ソネット abab/cdcd/efef/gg
などいろいろな形が用いられている。
さらに、
aabb/ccdd/eef/fgg
という形式も用いられている。
ただし、
abab cdcd efef gg
という交互韻(交叉韻)は形態的には打越になる。
(現代連歌便覧を参照)

■表合せ 8句
百韻の表のみ。表8句のタブーなし。

■三つ物 3句
発句・脇・第三の三句で出来上がるもの。
(石川淳『夷斎俚言』の「首尾」を参照せよ。面白い。)


以下、入門書のいくつかを引用しておきます。
これらの書をお書きのかたは「連句」派ですが

連句の諸形式
百韻の進め方
百韻と歌仙 
窪田薫の式目


連句の諸形式   『連句読本』(井本農一・今泉準一)大修館書店から引用。

一巻百句で完成となるものが百韻と呼ばれ、三十六句のものが歌仙。百韻が正式で
歌仙は略式のものであるが、元禄ごろを境に歌仙が一般形式となる。百韻は初の折
表八句.裏十四句、二・三の折表裏十四句、名残の折十四句・裏八句であるが、こ
のうち二・三の折を省いたものを世吉(四十四とも書く)という。また百韻の前半
で完了としたものを五十韻という。また発句・脇・第三で完成としたものを三物と
呼び、三句の中に花・月また神祇・釈教・恋等何でも詠んでよいとされる(『篇突』
『俳稽古今抄』)。その他特殊の形式として、諸書の記載に従えば、六十句一巻の
源氏(6・12、12・12、12・6、歌仙に、二の折12・12が中間にはいるもの)、十二
句一巻の首尾(表6壷6、一折、表五句目、月。裏五句目花『京羽二重』)、二十四
句一巻の箙(6・6、6・6)(『俳語独稽古』)、七十二句一巻の七十二候(8・12、
12・12、12・8)(『俳諧古今抄』)、八十八句に成る米字(8・12、12・12、12・12、
12・8)、六十四句に成る易(8・12、12・12、12・8)、十八句から成る一八公(10
・8の一折、表に月、裏に花『谷の小橋』)がある。月・花は百韻・歌仙と同じく、
すべて定座は表では月は最後から二句目の長句、裏は同所が花で、その前三句目(ま
た四句目)が月とされる。また支考の発案に成るとされる長歌行(8・16、16・8)・
短歌行(4・8、8・4『俳諧独稽古』)、表合(表八句だけで終わる)、本式十句(十
句で完結、表一枚に書く(『西華集』『うやむやのせき』)と言われるものもあった
ようである。
 百韻十巻を十百韻といい、これと似たものに千句がある。十百韻は単に百韻を十巻
巻いただけのものであるが、千句は百韻を十巻一座で巻くもので、したがって一座一
句の規定あるいほ花の句の配分等が千句に及ぶ点で、十百韻と異なる。また千句十巻
を目的として行われるものに万句がある。また歌仙半分の十八句でやめたものを半歌
仙という。同じく百韻の表八句だけで終わったものを表八句というが、これらは時間
の関係等で途中でやめたものである。半歌仙は連歌時代から五十韻の名で行われてい
た固定形式とは異なる。歌仙を途中で止めたものを例えば、名残の折表六句までで、
あるいは同十二句までのものを二十四句、あるいは三十句とことわって発表したりす
るに似ている。これらはいわば未完成品で、その点で上述の表合・本式十句と異なる。
表合・本式十句は三物と同じくこれで完成の作品で従って歌仙なり百韻の規定とは異
なり、表で嫌われる神・釈・恋・無常等すべてがこの間に詠まれる。以上に述べたも
のの外にも特殊なものはあるが、実際に行われるものは蕉風俳詣では歌仙が普通で、
人数(連衆)がきわめて多数の場合などで、しかもそれが慶弔の日などのとき等に百
韻、その他では三物を除くと、世吉がまれに行われる程度である。なお、百韻等で、
余興と称して表数句を一巻完了後行うこともある。


百韻の進め方  『連句読本』(井本農一・今泉準一)大修館書店から引用。

百韻の場合 なおここで簡単に百韻の場合の五句目以降について述べておこう。百
韻では五句目は「第三の句を形どり、長高く、らんどまりか、けらしどまり」(『連
歌教訓』以下同じ)、これを『俳諧無言抄』では、第三、て留り、五句目らん留り、
「みてごらん」というのだ、と述べている。六句目は、四句目とともに「脇のやうに
打ち添えて」(同)とある。四句目を第三との関連でみれば、脇のように打ち添える
ことにもなる。六句目もその要領の意である。七句目は俳諧百韻では月の定座である。
『俳諧無言抄』ではこれを「座中の老分にゆづるべきなり」とある。月の定座の規定
のない連歌時代は、七句目は「五句目より句柄をやすやすと風景・風情ばかりにてあ
るべきなり」(同)とする。八句目は、ここで百韻の表は終わり、裏へ移るところで、
「詞つまりぬる故に、たゞ何となくかろがろと其体をもてやり侯を八句目ぶりといふ
なり」(同)とある。「詞つまり」とは、ここまで一句一句それぞれに詞が規制され
て詠まれてくるので、種々の文体が詠みつくされた、の意である。 九句目(裏一句
目、折立)は「ことに詞つまり行くものにて、前句のてにをはに、そとあたりてある
べし。さりながら、紙うつり(懐紙うつりとも、また裏移りとも)の事にて候間、た
けを引き立てられ侯やう」(同)とあり、また十一句目(裏三句目)は、これより
「心を廻らし、思案専用」「風姿をつゞけ、詞を飾り、風体をたしなむべし」(同)
とある。九句目は裏移り最初の句で、発句・第三・五句目・七句目とは別に「たけ高
く」が要求される。十一句目以降は、いよいよ裏の本領を発揮して、千変万化の場と
なる。

 
百韻と歌仙   『連句入門』安東次男 筑摩書房から引用。

連俳の正式を百韻と言い、横二ッ折にした懐紙四枚を以てする(句は紙の折目を下に、
表裏に分ち書きし、初折表と名残ノ折(四ノ折)裏のみ八句、あとはいずれも十四句ず
つである。歌仙はその二と三の折を略したものと思えばよい。すなわち、初折の表六句
・裏十二句、名残ノ折の表十二句・裏六句、合せて二折三十六句とする。彼を真とすれ
ば、此は行草の工夫である。花月のつとめは、その連俳の眉目とされる。四花七月(百
韻)、二花三月(歌仙)と呼び、各折の表に月を、裏に月・花(ただし名残ノ折の裏は
花のみ)を詠みこむことを約束とする。それぞれに一往定座と目されるものがあり、初
折表の月は折端の一句前つまり百韻では七旬日、歌仙なら五句日の長句がこれに当るが、
動しても差支ない。一巻の行様、連衆間の譲合、興行の季節などにもよることだ。

百韻
初折  表八句 (七句目月)
    裏十四句(十句目月、十三句目花)
二折  表十四句(十三句日月)
    裏十四句(十句目月、十三句目花)
三折  表十四句(十三句目月)
    裏十四句(十句目月、十三句目花)
名残折 表十四句(十三句目月)
    裏八句 (七句目花)

歌仙
初折  表六句(五句目月)
    裏十二句(八句目月、十一句目花)
名残折 表十二句(十一句目月)

連俳で発句・脇・第三と挙句(一巻終の句)を除いたものを平句と言い、これは句体に
制約を設けない所謂地句のことだが、席入の心得はいずれのばあいも同じだから、正客
・亭主・相伴(第三)の位が見定められたあと初折の表から裏入早々までは、思案にわ
たらず尋常に付け運んだ方がよく、神祇・釈教・恋・無常の句などはこの間みだりにせ
ぬものだ。