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天体観測・星雲写真撮影を楽しむ熟年ウォッチャー
アンドロメダ銀河
    
 
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 星空散策  爺のモノローグ?                       2010.11 

観望のきっかけプロローグ思いつきひとひねり工 作観 望
対策編最終章の一歩前?新たな展開が遂に完成へエピローグ

観望のきっかけ
職場の後輩が、私がずいぶん昔に星を観ていた事を人づてに聞いて訊ねてきた事に触発され、もう一度やってみようかなという気持ちが湧いてきた。
秒読みに追われる仕事と対極の、悠久の時間の流れをまた体感したくなった。
孫たちが、帰省した時に土星の輪を観せてあげたいな。
定年後、時間はた~っぷりある。
などなど。

プロローグ
2010年11月。20数年ぶりに、望遠鏡を引っ張り出した。ハレー彗星大接近騒ぎの時に買ったものだ。
我が子たちにも星空を堪能させた、13cm反射望遠鏡とビクセン・スーパーポラリス赤道儀。当時の価格で、周辺装置を含めて給料の手取り額に近かった気がするな


箱から出してビックリ!。ニュートン式反射の主鏡を覗くと、カビがこびりついているようだ。
6cm屈折のガイドスコープや3cmファインダーも、カビでレンズが汚れている,
赤経モータードライブ用ギアクラッチも錆びついて動かない。何と言う事だ・・・。
とり急ぎ、主鏡メーカーのビクセンにメンテナンスが可能か問い合わせた。
約10,000円と数週間で、主鏡の再メッキと光軸合わせが完了。


星空を久しぶりに観望に出かける。しかし極軸の合わせ方など赤道儀の取り扱い方をすっかり忘れてしまっているどころか、肝心の北極星さえもどこにあるか分からなくなっている。
空白の歳月は非情ー。
少しは慣れてきた。星を観るだけでなく昔やりかけた、直焦点の星雲写真撮影にもそのうち再挑戦しよう。
オリオンの大星雲や、真っ赤なばら星雲を撮ってみたい。


13cm反射望遠鏡
VIXEN  R-130S望遠鏡
直焦点撮影用に、銀塩一眼レフを引っ張り出した。子供たちの成長記録を撮った愛用の名機「PENTAX SPF」は老朽で、時々シャッターが切れなかったりミラーが戻らない。
ショック!
ネットオークションで同型のPENTAXボディを探す。
直焦点撮影用「T-リング」がPENTAX用なのと、やはりPENTAXに愛着がある。
3,000円で見事落札!
一眼レフカメラ ペンタックス
落札したPENTAX SPF

さらに問題が・・。ガイドスコープに付ける暗視野ガイドアダプター「GA-1」(下写真左)用の水銀電池(2.7V)が環境問題でとっくの昔に製造中止。ガイド星を誘導するレチクルが見えなければガイド不能。
えらいこっちゃ。
ヨドバシカメラでLR-44ボタン電池(1.5V)2個を直列接続するパーツをゲットして代替品とする。
レチクルが浮かび上がった(下写真右)。探せばあるもんやな。
 
 暗視野ガイドアダプター
暗視野ガイドアダプター GA-1
ガイドアダプターレチクル
  ガイドアダプターレチクル

早速、星雲撮影に挑戦しようと思うが、12月の寒空での長時間撮影は高血圧の身に堪える。一枚撮るのに 30~40分かかるのはザラだ。
体を壊しては、元も子もない。
「年寄りの冷や水」と笑われても、決して同情はされないやろな。

思いつき
星の光を浴びながら野外での観望が本筋ではあるが、何とか暖かい環境で星の日周運動補正が出来ないかな。
そや、ノートPCが自動車内で使えれば何とかなるやろ。
撮影は長時間にわたるため、PCは内蔵のバッテリー運用では無理だ。
シガーソケットに繋げるインバーターを購入し、AC駆動にしよう。200Wのインバーターをネットショップで購入。3,000円なり。
パソコン70W以外に、飲み物用保温庫70Wも駆動したい。

星空観望中
  -1℃ 寒すぎる・・・

ガイドスコープを覗く代わりにビデオカメラをつけて、その星像を車内のパソコンでモニターしながら赤経コントローラーで手動追尾すれば良い。
ケンコーから「デジアイピース」の呼称でガイド用CMOSカメラがある事を知り即購入。約8,000円也。
撮影可能照度は3Lux。CCDカメラに較べると感度は3桁ほど低いが、4等星が見えれば佳しとしょう。
      (2011/5  Qcam s7500に変更)
デジアイピース
  デジアイピース

赤経モーターコントローラー「MD-6」から赤道儀への接続は6芯ケーブルで、 コネクターはDIN8ピン。車内と望遠鏡の距離は5m程度だと思われるので延長コードを作成。
ガイドカメラ用のUSB延長コードは3mを購入。

ガイドスコープにCMOSカメラを取り付けるが、星像がディスプレーに出ない。
アイピースとカメラを交互に取り替えてピント位置もその都度変えてやっと導入成功。
Webカメラの写野は結構狭い。ピント位置をメモっておこう。
ナディアの車内から「MD-6」による恒星時追尾に手動補正を加えて暖かい環境での半自動ガイドが、ついに可能となった。
ひとまず目標達成。ホッ!

MD-6 赤経コントローラー 
赤経コントローラー MD-6
 
ひとひねり
しかし半自動ガイドで、極軸のズレだけでなくシンチレーションやピリオディックモーションまで補正するのはパソコン画面から目が離せず、30~40分のガイドは結構たいへん。何とかこれを自動化できないものか、欲が出てきた。
オートガイダーはメーカー製だと20万円ぐらいとかなり値が張るので自作できないかな。
持ち前の好奇心が芽を出してくる。


天文系のサイトでは、マニアがオートガイドについてハード・ソフトとも色々と考案され公開されている。今回はフリーソフトの中から、説明がていねいな「GAGP1」を使わせていただく事とした。
開発者の「天文我楽苦多工房」さんに感謝!
ハードウェアは、オートガイドソフト「GAGP1」が検出したガイド補正信号を、USB-IOを経由して赤経モーターコントローラー「MD-6」に送る制御回路を自作しよう。

構想は完璧!
 
 制御回路
制御回路図
USB-I/Oボード
  USB-IO 回路図


工 作

USB-IOはテクノキット社から1,500円のキットを購入。
デバイスドライバー不要のHID。PICマイコン搭載だが、ファームウエアは今のところブラックボックスだ。
そのうち解明したいな。キットは、数点のパーツを半田付けすれば完成品となる。
その他のフォトカップラー、抵抗やプリント基板・収納ケースなどはマルツパーツ館の通販でゲット。
ICのピン間隔は2.54mmなので、半田付けに老眼鏡は必須アイテム。
その昔、インテルの8080CPUを使った8ビットマイコンを自作してスタジオの調光装置を作った頃を思い出す。
技術力は未だ残っているだろうか。
組み上げた基板をケースに取り付けてハードは完成。
いよいよパソコンとの接続テストとなる。

晴れた夜、装備をセッティング。PCのUSBポートに自作インターフェースをセットして「GAGP1」を起動。
赤経軸はうまく自動追尾しているようだ。
3つのパラメーターを変化させながらオートガイドの精度を高める。
最適な数値を見つけた。これなら1時間のガイドもOKだ。為せば成る。 しかし・・

オリオン大星雲のテスト撮影を試みる。赤経軸はうまくガイドしてくれているが、残念ながら赤緯方向はノータッチなので、精密な極軸合わせが出来ていないのか、徐々にずれて来ている。
撮影は失敗。東天と南天の星を交互に導入し精密な極軸あわせを試みる。
しかし赤緯軸がノーガイドだと5分が限界かな・・。目標ガイド時間は40分。ギャップが大きい。
えーい!。赤緯方向もオートガイドしちゃえー。

てな訳で、赤道儀をよくよく見る。赤緯ガイドモーターをどう取り付けるか。スパーポラリス赤道儀は元々赤経モーターのみで2軸ガイド用ではないので、モーターを取り付ける場所がない。
なにぶん,育ちが電気科なので電子回路はおはこだが、機械工作には腰が引ける。
しかしここでもお助けマンが。世の中には似通った考えの人はいるもので自作サイトをいくつか見つけた。
ネット情報も参考にしながら、取り付け方法を決めた。

 
モーターの選択に入る。精密な制御の出来るステッピングモーターが良いのか、普通のDCモーターにするか?。
今回は駆動回路のシンプルなDCモーターとした。TAMIYAのDCモーターで減速比をいくらにしようか。
えいやー!と気合で1/75減速の50rpmとする。
少し減速が足りないような気がするが、不具合が起きればその時に対策を考える楽天的な性格だ。
モーター駆動ICは東芝TA7291P。少しの周辺部品でDCモーターが制御できる。

 DCモーター
  1/75ギアードモーター
 動力伝達のギアの選定は未知の領域である。 
モーター軸と赤緯駆動ウォーム軸間が35mmのため、48歯と45歯の平歯車2枚を購入。その後、赤緯軸にクラッチを付ける事を失念していたため、クラッチをネットオークションで落札。
クラッチ付属の40歯ギアを使う必要があり、先に購入した歯車が一枚ムダになった。 考え不足で残念
購入したギアと、クラッチ付属のギアのモジュール値が0.75と同じであったのはラッキーであった。
軸間距離も微妙に変わったが、取り付け位置の微調整で吸収できそう。
赤経ギアクラッチの錆びつきは、CRC-556を根気良くスプレーし、ギアに弱い振動を与えていたら錆び部分が溶け出して滑らかな動きが復活。やれやれ。
CRC-556の威力を再認識。

モーター取り付けは、まず加工の簡単なアクリル板で台座を試作し、鏡筒バンドに共締めとした。
アクリル板で不備な点を微修正して、本来の2mmアルミ板で取り付け金具を製作。
万力がないので金ノコ作業は疲れる。
ハンドドリルとリーマーでビス穴をいくつも開けるのにも、ずいぶん骨が折れた。
モーター軸と赤緯軸にギアを取り付け、ついに完成。ここまで約4ヶ月。フー。
ようやったなー。
 モーター駆動IC
  モーター駆動ICと周辺回路
 赤緯モーター
赤道儀に取り付けた
赤緯モーター

 
室内でソフトを立ち上げ、ガイドの擬似テスト。パソコンのカーソルを操作して 赤経・赤緯とも動く事を確認。
赤緯軸が少し敏感に反応し過ぎるきらいがある。
オーバーランでハンチングするかも。あとは、実際の星空でディスプレー上に ガイド星がピタッと止まるか。
楽しみだ!。あした天気になーれ。


目的はあくまできれいな星雲写真を撮ることと星の観望。喜ぶのはまだ早い。
バラ星雲が画面いっぱいに赤い光を放っている写真を早く撮りたい。
ISO1600フィルムの在庫がなくなるまでは、銀塩カメラで撮りまくるつもり。
FUJI FILMさん頑張ってな。
フィルムがなくなった後は、デジカメでの星雲撮影に挑戦しよう。別の困難が待ち構えていそう。
天体の自動導入装置の自作にもトライ出来ればセッティングの時間が短縮され、撮影に時間をつぎ込める。
まだまだ端緒に着いたばかり。道半ばにも届かない!

 
観 望
久し振りの晴れた夜。
いよいよオートガイドの実践だ。赤道儀のセッティングは、極軸を敢えて正確に合わせずにオートガイドの補正効果を試そう。
オリオンの小三ツ星のひとつをガイドスコープに導入。すべての接続を確認してガイド GO!。
あれ? 赤緯が大きく動いてしまった。恐れていた事が起こっている。赤緯モーターのギアダウン比が小さすぎるのだ。やはり1/75減速では足らなかったか・・・。いきなり挫折。

と言う訳で1/300減速のギアードモーターを購入するはめとなった。これはTAMIYAモーターの中では最大減速比だ。行き当たりバッタリでAboutな購入をすると出費がかさむ痛い教訓。仕事では、けっこう緻密やのにな~。4,800円は痛い。
不要になったモーターは、ネットオークションにでも出品して、無駄な出費を少しでも回収したいな。

1週間後、待望の1/300減速モーターが到着。取り付けて気持ちははやるが、天気が晴れない。
自然が相手だとは分かっていても、恨めしい。
待望の星夜。早速トライ。今度はうまくいっているようだ。パソコン上の星像が一点に静止しているではないか。
補正のモーター音が遠くから聞こえてくるのが心地よい。
遂に完成。
オリオン大星雲の直焦点撮影を始める。5分、10分、快調に追尾している。ところが・・・
あらら?。またまた突然赤緯が暴走してしまった。あと少しの時間だったのに撮影は失敗。
Why?
考えられるのは、モーター駆動用乾電池の消耗による電圧の低下で駆動回路が誤動作したことぐらいだと思われるが、安定した動作を求めるにはギアの減速比ももう少し足りない感じかな。
オートガイドとしては8割がたの完成を見たが、安心して星雲の撮影が出来るよう、追尾システムの完璧を求める旅はまだ続きそうだ。


 対策編

考える事、数日。先日のエラーの原因に迫る。
まずは、モーター駆動電源の安定化だ。基本的には電源の無いの場所での観測なので元々乾電池仕様ではあるが、電池の消耗を気にしながらの観測は心もとないしコストやエコの面でもよろしくない。
幸いパソコン用にインバーターがあるので、制御回路やモーター電源にACアダプターを使えば電源の心配をしないで済む。なおかつ安定化するために3端子レギュレーターを挿入する事にしよう。


あとひとつはギアダウン。たぶんあと1/4ぐらい落とせばゆるやかな動きになるだろう。合計で1/1200減速になって3rpmぐらいだろうか。
問題は歯車の組み合わせと取り付け方法だ。メカは苦手。しばらく悪戦苦闘することだろう。
一つひとつ解決していくしかない。チャレンジからしか何も生まれないと信じよう。
 
1/4減速を実現するために、20歯/48歯 x 20歯/40歯で1/4.8とする計算。
取り付け方法についての妙案はまだ見つかっていない。が・・
歯車を購入しないと何も始まらない。それを手にして答えを見つけて行こう。
「オリジナルマインド」に20歯の歯車2枚とシャフト、軸受けを発注した。
  ギア組み合わせ
ギア組み合わせ案



 電源は、9V500mAのACアダプターで充分と判断して購入したが、モーターの電力消費が予想外に大きくレギュレーションの悪いACアダプターでは不安定な動作になる恐れが生じた。
電圧安定化のために、可変3端子Regを6Vぐらいで動作させよう。
NJM317Fは1.25V~37Vまで可変できる。電流は1.5Aまで可能だ。


大阪・日本橋をひさびさに歩く。電気店が少なくなってずいぶん様変わりしている。
昔よく通ったパーツ屋「共立電子」でレギュレーターを購入した。ついでにいろんなパーツも見て行こう。
興味は尽きない。若者に混じって同世代もいる。若い頃から5球スーパーラジオや真空管アンプを作ったりしていた根っからの電気工作マニアだろう。「いよ!、ご同輩」
 

ギアとベアリングが到着した。さっそく赤緯軸への取り付け方法の確認と検討に入る。
ミリ単位の寸法とりが必要だが、ギアの取付金具さえ出来れば殆ど完成なので慎重に。
2ミリ厚のアルミ板の加工は少し難しいかもしれないな。
穴あけは、天板加工の際にハンドドリルで骨が折れたので、アヤハDIOのレンタル電動ドリルを借用しよう。
ポイントカードがあれば無料だ。ホームセンターもDIYに便宜を図ってくれる。

金具の図面ができた。万力も買った。
モーターとギアを固定する金具の加工の開始だ。
アルミの折り曲げは、2mm厚の角を鋭角にするために曲げる部分の内側に金ノコで切り込みを入れて曲げよう。
穴あけはドリルの刃が最大6mmφしかないので、15mmφ穴までリーマーで拡げるのがたいへん、たいへん。手首が疲れる。
ベアリング穴は、大きくし過ぎたらおしまいなので慎重に進める。
ヤスリもかける。ひさびさに技術家庭の実習みたいやな。


出来た。ベアリングを木槌で打ち込んでセット。モーターを取り付けてみた。
 金具製作中
 万力を使ったリーマ作業
シャフトとギアもセットしてみる。なかなかの出来。機械工作もけっこうおもしろいし楽しいものだ。
赤道儀にセットして苦労の末にメカは完成 !!。次は得意の電気回路だ~。

 
 ギアボックス
ギアボックスができた
 ギアードDCモーター
  赤道儀に取り付けたギアードモーター


可変3端子レギュレーター回路の製作に取り掛かる。
出来るかぎりモーターの回転数を低くするために、12VのACアダプターから9Vぐらいに落としたい。
ドライブICにも回転制御回路があるので、ギアダウンと併せて電気回路でも回転を落とす工夫をしたい。
回路はすこぶる簡単。Ref端子に抵抗とVRを取り付けるだけだ。


 自作赤緯コントローラー
完成した?赤緯コントローラー
回路は完成した。早速駆動テストだ。3端子Regの電圧を9VにセットしドライブICのリファレンス電圧も調整して、モーターの回転数を制御してみる。かなり低速まで制御できている。よしよしと。
低速状態でいったん回転を止めてみる。今度は逆回転のテストだ。
あれれ?、モーターが回らない。何故?やむなくリファレンス電圧をあげて回るようにした。回転数とトルクの関係で電圧にヒステリシスが生じているようだ。
そのうち何やら焦げ臭いにおいがしてきた。?! こりゃ大変。
プリント基板が熱を持ってきた臭いだ。電気回路に付きもので何回となく体験したにおいだ。
赤経モータードライブICのTD62103Pがチンチンになっている。60~70℃ぐらいか・・
手で触れていられない。
ICの規格内ではあるが、あまり気持ちの良いものではない。
赤緯モーターの駆動回路の調整なのになぜ赤経モーターの回路が?。
 

必死のパッチで原因を考え始めた。
どうやら、モーターを正逆反転を繰り返した時に生じる逆起電力が、悪さをしているようだ。
誘導負荷の一番やっかいなところだ。回路とにらめっこで対策を考える。
こういうシチュエーションも割りと楽しいもの。難問を解決した時の快感がたまらない。

モーターにスパイクキラーは入っているので、電源系からの逆流防止のためにダイオードを挿入することにした。
これでもだめならICの熱損失を下げるために、モーターに直列に電圧ドロップ用抵抗負荷を入れ、ICにヒートシンクも貼り付けよう。
ACアダプターも9V2.5Aのものに替えて、対策のおかげで発熱は止まった。,
動きも正常のようだ。製作の後半に、得意の電気回路でこんなにてこずるとは思わなかったなあ。
油断大敵や。
でも失敗をしたからこそ学ぶ事も多いので、すんなり行くより良かったのかも知れないと思う事にする。


 最終章の一歩まえ?
ついにここまで来た。かなりの確率でシステムの完成度は高いと思う。
根拠は特にない。
 GAGP1ガイド画面 
  GAGP1オートガイド画面          
 
オートガイドソフト「GAGP1」を使って、我が赤道儀と自動追尾システムの相性調整のため、3つのパラメーターを探る作業に入ろう。
パラメーターは「ズレ許容量」、「修正時間」、「連続補正」の3つだ。それぞれに相関関係があるので一筋縄ではいかない。
組み合わせは何通りぐらいあるのかな。数学が得意ならたぶん気が遠くなると思うが、幸い数学は苦手なのでたどり着くまで地道にやって行こう。

あいにくの梅雨空で、星空での調整が不可能なため室内で擬似観測としよう。
ガイド用カメラの感度をいっぱい上げて、画面ノイズを星に見立てる事とする。
夏にはきれいな星雲が撮れるようにしておきたい。
何回かの調整でパラメーターの値をひとまず決めた。

          ズレ許容量 : 2 ピクセル
          修正時間  : 3x10 ms
          連続補正  : 6 ピクセル 

実際の星空で確認だ。
梅雨の晴れ間、ひさびさの観望日和。
望遠鏡を出すのは暫くぶりだが、極軸合わせなど組み立て手順は、すでに体に染み付いている。習うより慣れろだな。
なにごとも経験は大事な要素である。
今日は、星の観望よりガイドシステムの完成度の確認が主だ。
既に、「夏の大三角」が東天に昇って来ている。はくちょう座β星アルビレオのきれいな二重星を観たいが後にしよう。


しばらく、南の星でオートガイドを試みる。順調にガイドしているが、時々ピリオディックモーションを補正しきれないのか赤経方向にズレがでてきた。このままでは写真撮影は難しい。
室内の模擬観測で求めたパラメーターに、少し手を加える必要がありそうだ。
少しずつ値を変化させては暫くガイドをしつつ、最適パラメーターを求めていく。ようやく直焦点撮影に必要な精度を保てる値が決まった。実際の星で求めた値なのできっとOKだと思う 

               
 ズレ許容量 : 0 ピクセル
                修正時間  : 7 x10 ms
                連続補正  : 5  ピクセル


次の晴天の日には、自信を持って夏の代表的な星雲のM8とM20の撮影にトライしよう。
きっと素晴らしい写真が取れることだろう。
これからは星図の読解力もUPしなければ・・・。


今日はアルビレオを観ておしまいにする。「天上の宝石」とも呼ばれる、青と黄色の二重星の美しさと25年ぶりの再会だ。至福のひとときー。


 新たな展開が・・
梅雨の間にオートガイド自作のサイトなどの研究で、我が装置の完成度を客観的に見る時間を持てた。
これまでDCモーターで赤緯軸を制御する道を進んで来たが、システムの勉強が進むうちにもっとシンプルで確実な方法があるのではないかと思えるようになってきた。
速度制御は確実だが制御回路が複雑だと思って敬遠していたステッピングモーターが、実は駆動にあまり手間がかからない事が判ってきた。
正直なところ、これまでの方法でのオートガイドに一抹の不安がない訳ではなかった。

ステッピングモーターの制御にPICマイコンを使うところまではなかなか到達出来ないとは思うが、パソコンのプログラムで駆動パルスを作って「GAGP1」でコントロールする方法の可能性は見えてきた。
これまでのDCモーターでの制御に傾注した時間や情熱を否定するする事になるかも知れないが、その時間は楽しくもあったし新しい発見もあり、満たされた時間であった。
回り道から見えてくる事もある。
9割がた完成した段階でのリスタートはもったいないが、より確実性を求めた決断だと納得しよう。
究極は安定した星雲写真が撮れるガイドシステムの構築だ。
この道を歩み出してみよう。その先にはきっと新しい地平が見えてくるだろう。


まずは手始めに、4個のLEDが順次点滅するプログラムをHSP言語(Hot Soup Processor)でプログラミングする事から勉強だ。
HSP言語は、命令の構文が30年ぐらい前に主流であったBASIC言語に類似しているので、親近感を持って臨める。
BASICは若かりし頃、TV中継計画書のデータベース化の時にかなり勉強した言語だ。
ボツボツ思い出しながらHSPに臨もう。HSPを開発され、フリー言語として提供された「おにたま」さんに頭が下がる。

ステッピングモーターは4極の電磁石を順次切り替えて回転運動をつくるため、その延長線上に見えてくるハズだ。老年プログラマーの活躍に期待。
脳が活性されれば一挙両得。
 
ステッピングモーター構造図
ステッピングモーターの構造
  
HSPエディター
LED点滅テストプログラムの一部 
わずか数日の俄か勉強だが、作例も参考にしながら簡単な命令を与える事でLEDの点滅は実現できた。BASIC言語の経験が活きた。
無駄な経験はないもんやな。

実験回路は、変更が簡単にできるブレッドボードで作った。
LEDが心地よく点滅している。

HSPは、インタープリタ言語なのでC言語などのコンパイラー言語に比べて処理スピードは少し遅いようだが、今回の目的には充分。




 次のステップに進もう。LED点滅プログラムを少しづつ変更して、モーター制御用に改良していく。
モーターの駆動は2相励磁で、4層のパルスを時間をずらしてコイルに繰り返し与えていく方法で、ユニポーラ型ステッピングモーターの駆動では一番オーソドックスな方法だ。

 ユニポーラステッピングモーター結線
ステッピングモーター結線概念
 ニ相励磁パルス
2相励磁パルス
 ニ相励磁正転イメージ
2相励磁概念図





ハードウェアも併せて製作して行く。ステッピングモーターは、日本電産のユニポーラー型のUsedを購入。
1/60の減速ギア付きで1,900円也。DCモーター新品の半値以下だった。



ロジックICなどは日本橋の「シリコンハウス・共立」で調達する。
職場の昼休みに立ち寄れる距離なので便利。
こちらは50円~100円の単位だ。少々買っても知れている。
ユニポーラ型ステッピングモーター
ユニポーラ型
ステッピングモーター
  
新しい道を歩み始めるのは、ワクワク感があって楽しい。
未知の世界を知り得た充足感は何ものにも替えがたい自分だけの財産だ。

デジタル回路はロジックICを繋いで行く事が基本で、アナログ回路のような値の微調整の要素がないので、回路設計の狙いさえ外れていなければ上手く行く事が多い。
今回も少しの抵抗とコンデンサーが挿入されているだけで、IC間の配線さえ間違わなければ殆ど完成する筈だ。
いつも驚く事だが、デジタルICの仕事の価値と低価格のギャップには驚くばかりだ。
NAND論理が4回路も入ったICパッケージが、どうして50円で出来るのだろう。信じられない。
もっと値が張ったとしても誰しも買うだろうに。
高い給料を貰いながら、窓際で大した仕事をしていない人はいっぱいいるのにね。

ブレッドボードで回路を組む。IC間の配線はピンを刺すだけなので変更が素早くでき、カット &トライがし易い。
テストプログラムを起動する。ステッピングモーターが初めて廻った。
感動! 一歩前進。

2日間の半田付け三昧で、ハードウエアは完成した。これを元にプログラムの成熟度を高めよう。

  
 スイッチボード
スイッチボード
 USB-I/Oボード
USB-I/Oボード
 モーター駆動ボード
モータードライブボード
 ハードウェア完成
   ハードウェア完成
 ハードウェア完成
    3枚のボードがケースに収まった

今回のハードウェア設計上の若干の不安材料は、インターフェースのUSB-IOに「GAGP1」ソフトと「モータードライブ」ソフトの双方からアクセスする事だ。
互いに Free Run しているプログラムから同時にアクセスされるタイミングになったらUSB-IOが誤動作してしまうかな。少々横着な発想かも知れないが、別のソフトの例で良好な結果を得られた報告を見た記憶がある。,
「GAGP1」では使用していないPort 0 を「モータードライブ」で使うし、1/1000秒単位の命令なのでかち合う事は少ないし大丈夫とは思う。相変わらず楽観的。
2相励磁はモーターの隣り合わせたコイルをワンセットにして電流を流し、順次右なり左に磁界を移動させて、永久磁石の回転子を引き付けて回転していく。
ブレッドボードでの簡易テストではうまく回転してくれたが、プログラムは実用にあわせた改良を重ねている上に、
   ハードも追加回路が含まれている
モータードライブHSPプログラム
モータードライブ プログラムの一部


さあ、エディターをデバッグモードで起動してみよう。問題が発生しても直ぐ修正ができるので解決が早い。
動いたよ。逆転もしてみよう。OKだ。
熟年プログラマー万歳!。
プログラムに関しては、ソースコードを.exeファイルに変換して完成だ。





モーターの取り付け工作も始まっている。DCモーターの時に苦労した経験が生きてくるだろう。
今回はギア減速は一段なので、金具の工作はシンプルだ。
ハンドドリルによる穴開けやリーマ作業も手馴れて来た。今までの半分の時間で仕上がった。,

モーター駆動ソフト
ステッピングモーター駆動ソフト



歯車やモーターをカバーで覆わずに見えているほうが泥臭い手作り感が漂っていて好きだ。
バックラッシュが大きくならないよう、精密なギアの位置合わせで赤道儀に取り付ける。ハードウェアもソフトウェアも完成した。


あとは、「GAGP1」との相性のテストだ。
試行錯誤していたDCモーターの時と違い、今回はかなり全てが順調に進んだ。
HSPによるプログラムの習熟にもう少し時間がかかると思っていたが、思いのほかスムーズに学習が進んで実用化できた。
自分の技術力を再発見できたのは大きな収穫。
装備されたステッピングモーター
 赤道儀にセットされた
ステッピングモーター

 
 遂に完成へ

2011年8月某日。今年の夏もやはり暑い。
いよいよ最終テストだ。
東天のあまり明るくない星でガイドをしよう。ファインダーに入ったのは4等星ぐらいだろうか。
すべてのセッティングを済ませてガイドスタート。パラメーターを決めていこう。「GAGP1」の3種類と我が「赤緯モーター駆動」ソフトの「回転周期」の4種類だ。
10分単位でパラメーターを変えてガイドし、3時間ほどかけて最終値が決まった。




ズレ許容量 :  1 ピクセル
修正時間  :  5 x10 ms
連続補正  :  3 ピクセル
ノイズ    :  チェック
Dec回転周期: a = 6






GAGP1オートガイド中
GAGP1 赤経(Ra)  赤緯(Dec)エラー補正グラフ 


上記の設定値で約20分オートガイド。ガイド星がディスプレー上に静止しているように見える。 
グラフでも、ズレは1ピクセル以内に収まっている。,
はな
だ。手動補正では絶対できない技。大袈裟だけど地球の自転が止まったように感じられる。
今度こそ大丈夫だ。
これなら長時間の写真撮影にも充分耐えられる。
頑張っている我が装置を褒めてやりたい。

 エピローグ
星空への再チャレンジがスタートして約9ヶ月。こんなに早くこの日が来るとは思わなかった。
夢に見た構想が現実となった。道草とは思わない程度の回り道もしたけれど、きわめて順調ではなかったか。
電気工作や機械工作に夢中になり過ぎて、星雲撮影という最終目標を忘れていた時期もあったかも・・・。
それくらい楽しい時間であったし、苦しみが喜びに変わる瞬間も味わえた。
この歳で夢中になれる事が見つかったのは幸せだ。
これからは時間もたっぷりあるからあわてず騒がず、じっくりとメシエ天体を中心に撮影して行く事にする。
観測テクニックも鍛えなおそう。

 1500年前にオリオン星雲から放たれた「ひかり」が今、地球に降り注いでいる。「大化の改新」前の光だ。
230万年前にアンドロメダ座を旅立った銀河の光も21世紀の今、私の瞳で輝いている。不思議な感覚だ。
チマチマした日常とは異次元の138億光年という悠久の時間差の中に身を置くのは、最高の贅沢かもね。

 完成したオートガイド装置 
赤経コントローラーMD-6(左)と完成した自作赤緯コントローラー(右)
                 
                  
                                

 
   















   





















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