時空を曲げるブラックホール


Last Update: 11/14/2012

 前のページではブラックホールを「マル」として表しました。しかしこれはあまり適切ではありません。ブラックホールの強い重力により、時空自体が大きく曲がります。ブラックホールとはこの時空の曲がり自体のことです。

 この点については詳しく説明しませんが、ブラックホールが時空を曲げる様子だけを見てみましょう。

 まず物体がない時、時空は単純で「たいら」です。

 

平面上が空間です。(我々が住むのは3次元空間ですが、視覚化する都合上2次元の平面で表しています)。

 物体があると、時空は曲がります。しかしふつう時空の曲がりはごくわずかです。たとえば太陽が時空を曲げる様子をまじめに描いても「平ら」と見分けがつきません。そこで太陽が時空を曲げる様子を200倍に拡大してみましょう:

 

(すきまの部分が太陽の表面をあらわしています)200倍に拡大しても、時空の曲がりの効果はごくわずかであることがわかります。

 太陽と比べると、ブラックホールは重力が強く、時空を大きく曲げてしまいます(ここでは曲がりの効果を誇張していません):

 

図の中心方向が、ブラックホールの中心です。また、ラッパのような形が下でとぎれています。この場所はホライズンと呼ばれます(あるいは事象の地平線地平面などとも呼ばれる)。前のページで「ブラックホールの直径は約6 km」と書きましたが、これはホライズンの直径のことです。ホライズンの外から出た光は、私たちに届きます。しかし、ホライズンやホライズンの内側から出た光は、けっして私たちに届くことはありません。

 図はホライズンでとぎれていますが、時空は実際にはブラックホールの中心まで続いています。とぎれているのは、絵を描けないからです。ホライズンの内側では時空があまりに大きく曲げられるので、もはやこのような図では描けないのです。

 これから先は簡単化のため、またブラックホールを「マル」として描くことにします。

より詳しいコメント:
  これはシュワルツシルト解の「埋め込みダイヤグラム」です。面は、ブラックホールの赤道面上で切った空間を表しています。(ブラックホール時空の周りで、適当に取った2つの点の距離は、この曲面上で対応する2点間の距離に等しくなっています。)このようなダイヤグラムでは、ブラックホールが空間をどう曲げているかを
表すことはできますが、時間をどう曲げているかを表すことはできません。
 
太陽の場合は、内部が一定密度という単純な場合で描いてあります。一定密度というのは、あまり現実的ではありません。
 
ホライズンの内側に対して図を描けない一つの理由は、ホライズンの内側では空間がむしろ時間の役割を果たすからです。

 


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