ある稲荷神の形
 この様な形になるまでには沢山のドラマが展開されましたが、それは何処でもよく有る事ですのでその始終は省き、ある稲荷神の形がはっきりするまでの過程を登載したいと思います。

 結果的には、この方の家には2回、祈祷に行った事になりましたが、稲荷神が関わった事象では稀な事です。

 今年の春、ある方から連絡が有り、福島県の母方の実家に古くから(100年以上前)祀られている伏見稲荷様(伏見稲荷大社で勧請を受けた)が居られるが、この度の震災で付近は立ち入り禁止になって近寄れなかったが、3月には一時的に立ち入りが許可される、その時、この稲荷様をこの方の職場に移動してお祀りしたいが、その様な事が可能かという問いでした。

 そしてこの方の家には、今年の1月に京都伏見稲荷大社で勧請を受けた稲荷様もお祀りされています。

 早速此方の神霊に頼み、福島県に祀られているという伏見稲荷様を御呼びしてみました。

 妻、「男の人が、お盆に稲荷様を乗せているのが見える」、と言います。

 私、「若い人か?」。

 妻、「若い人で蝶ネクタイをしている」、」「稲荷さんは年寄りで、目はあるんだけど、無い様な・・・、」。



 妻、「男の人がひざまずいて、お盆に乗せた稲荷さんを置こう?・・・・としている」、と言います。

 私、「目がないんか?、その稲荷さん」。

 妻、「目はあるけど、白い目」、と言います。

 私、「貴方は〜さんの言われる、福島県の稲荷様ですか?」。

 妻、「そらしいわ。でも大分年寄りに見えるわ。元気が無いみたい」。

 私、「稲荷様、〜さんが貴方を〜さんの職場の方でお祀りしたいと言われていますが、お祀りさせて頂いて宜しいでしょうか」、と聞いてみました。

 妻、「祀って欲しいみたいやけど、ボ〜と此方を見てるわ」、「意味が解からないみたい」。

 私、「福島の稲荷様、〜さんが貴方を祀りたいと言われているが、祀って欲しいですか?」、と同じ事を聞いてみました。

 妻、「首を下に向けたけど・・・・」。

 私、「地神さん、この稲荷さん、〜さんが祀る事は良い事ですか」。

 妻、「頭を下に向けたわ」。

 大分年齢が行っている御神霊で、長年に渡り祀っていないのが解かります。

 しかし、蝶ネクタイを結んだ男の人のお盆の上に乗って出て来られたというのは、祀って欲しいという意味と、〜さんがこの稲荷様をお祀りするお役が有るという事です。

 早速、〜さんには、お祀りされた方が良いという事をお伝えしました。

 しかし、もう一つ気になる事が有ります。

 今年の1月に伏見稲荷大社で勧請を受けた神霊(稲荷様)の御姿が、全く出ない(見えない)という事です。

 伏見稲荷様なら先ず御姿が出ます。

 出ない方がおかしい。

 まあ・・・、それは横に置いて・・・。

 その後、この方は福島県から稲荷様をお連れして職場に祀られました。

 1月に勧請を受けた伏見稲荷様、今回福島県から来られた稲荷様のお祀りの仕方は写真を送られて来ましたので分かりましたが、完璧に祀られています。

 完璧に祀られていますが、稲荷様の御姿が出ません。

 私達としても、福島県から来られた稲荷様が、どの様な態度をされるのか、楽しみにしていましたが、全く御姿が出ません。

 〜さんが、どの様な御姿が見えますかと聞かれるのですが・・・・、嘘を言うわけにも行きませんので、正直に現状を話ました。

 大体の察しはつくのですが・・・・、この方の様に神仏を大事にされる方は、他にもお祀りされているものが有るのが解かります。

 場所は違うのですが、同じ屋根の下に近い所でお祀りされているものがあります。

 思い入れが有ってお祀りされているのですから、私としてもどうこう言う事もないだろうと思い、余りその事には触れずにおきました。

 数ヵ月後、久しぶりに〜さんから連絡が有り、福島から来られた稲荷様の事をお尋ねになります。

 此方の巳神様頼み、福島から来られた稲荷様を御呼びしましたが、全く御姿が見えません。

 家の方に祀られている伏見稲荷様も御呼びしましたが、此方も全く何も出ません。

 職場の方には、福島から来られた稲荷様の他にもう一つ御社があり、其処に祀られているものもあります。

 大体察しはつくのですが・・・・。

 もう一つの御社には不動明王様の御札と、もう一つ、祀られているものがあります。

 この不動明王の御札を霊視してみますと、不動明王のお札の向かって左の角から、二本の線がカーブして上に上がっています。



 そして私の左の耳が鳴り出しました。

 此方の巳神様は「行け」と言います。

 この方も、此方へ来て福島県から来られた稲荷様の御姿が出る様に、祈祷をして欲しいと言われます。

 本当を言えば、この家、職場には、今回の祈祷の主旨以外に祓うべきものがあるのですが、今回は稲荷様に関した事だけの祈祷にして、行かせて頂く事になりました。

 稲荷様に関する事以外の、線香の護摩の始終は省きます。

 先ず、釜を焚く前に、職場に祀られている福島県から来られた伏見稲荷様の御霊を台の上に置きます。

 その上には、今年の1月に伏見稲荷大社で勧請された稲荷様が祀られています。

 どちらの稲荷様を御呼びしても、御姿は出ません。

 話は前後しますが、この前の段階、線香の護摩の時に、御不動様のお札の対処も終わっています。

 福島から来られた稲荷様の御姿が出ないという事と関係が無いとは言われませんので、この対処の始終を少し書いてみます。

 この不動明王のお札は、ある拝み屋さんからいただいた不動明王のお札です。

 この御札を手に取ってみると、「邪」から発せられるものは感じません。

 感じませんが、もうこの方に取って、この様なものに頼る時期は過ぎています。

 ある時期は必要だったかも知れませんが、もう必要の無いものです。

 このお札に入っているものを出してみました。

 妻、「男の人が横(私の)に来てるわ」、と言います。

 この不動明王のお札に正念を入れた拝み屋さんの念です。

 この拝み屋さん(存命)の念には、長い間〜さんを御守りくださいまして有り難う御座いますというお礼の言葉と、もう〜さんはこの類のものに頼ることなく、しっかりと生きて行ける。そして今日、私が今までのお礼の気持ちで釜を焚かせて頂く、何も追い祓う訳ではないので、そこは理解して欲しい。今までこのお札の守護が有って無事に今日までに至ったという旨を伝え、このお札を廃棄する許しを請いました。

 少し時間がかかりましたが、

 妻、「解かった、と言ってるわ」、「御姿が消えたわ」、と言います。

 この不動明王のお札に正念を入れた拝み屋さんは、正統な拝み屋さんと思います。

 正統な神霊がつく拝み屋さんと観ます。

 普通はこんな事を言えば・・・、90%以上は・・、えらい展開になるものですが・・・。

 釜を焚く前に、再度、今年の1月に伏見から来られた稲荷様を呼んでみますが、御姿が出ません

 此方の巳神様には、何故御姿が出ないのかと聞くのですが、何も教えてはくれません。

 兎に角、福島から来られた稲荷様、1月に勧請を受けて祀られている稲荷様の御姿を請う為に、釜を焚きました。

 釜は普通の音で鳴り始めました。

 私、「何か、変化は?」。

 妻、「何も」。

 そうこうする内に釜の音は消えて行きます。

 私、「何か?」。

 妻、「何も」。

 私、「稲荷様は?」。

 妻、「何も」。

 何故、稲荷様の御姿が出ないのかを何回も聞いていますと、

 妻、「地神さんが耳の横に行って、何か言ってるよ」、と言います。

 何か言ってるよと言われても、何も解かりません。

 何も聞こえませんので(聞こえたら駄目ですが)、困ってしまっていると、

 妻、「稲荷さん(1月に勧請を受けた)の御社から、女の人の足が出て、下の・・・もの?・・・・、を踏んづけているわ」、「ヒールをはいてるわ」、と言います。



 これで解明しました。

 何故、福島から来られた稲荷様の御姿が出ないのか、解かりました。

 この方は1月に京都の伏見稲荷大社に行き、稲荷勧請を受けて帰って来ましたが、多分、東京までの道中、何処かで「邪」が入り、お正念は抜けたと観ます。それを大事に家で祀っていた。その後、場所は違うが(職場)、福島から来られた稲荷様を祀ったが、この「邪」が邪魔をして福島から来られた稲荷様の御姿が出なかったと観ます。

 この時点ではこう解釈していました・・・。

 大筋では間違ってはいないのですが・・・・。

 上記した解釈をして、二回目の釜を焚きました。

 目の前には、1月に勧請された稲荷様を祀る御社から女の人の足が出て、何かを踏んづけています。

 コンロに火をつけます。

 湯が沸騰して来ます。

 米を入れます。

 釜は普通の音で鳴り出します。

 私、「どや?」。

 妻、「直に消えてしまったけど・・・。別に特別なものも見えないよ」、と言います。

 直に、福島から来られた伏見稲荷様の御姿を請います。

 妻、「出て来てあったわ」、「目はちゃんと有るわ」、「前よりは少し若く見えるけど、やっぱり、歳が行ってるわ」、と言います。



 私、「福島から来られた稲荷様、すみませんでした。しんどかったでしょう?。すみませんでした」、「これから〜さんがこの場所で祀らせて頂きます。どうかこの家族、商売、守ってやってください」、と伝えました。

 私、「稲荷様、貴方をお祀りさせていただく場所ですが、さっきまで貴方を踏んづけていた輩の御社があった場所で、宜しいですか?。汚れを祓い、綺麗に清めますので、この場所で宜しいですか」、と聞いてみました。

 妻、「良いと言ってる・・・、余り解かってない様な感じもするけど・・・・」、と言います。

 此方の巳神様に聞くと、「それで良い」、と言いますので、この家の方には、もったいないですが、今までの御社など、、全て廃棄して、職場でお祀りされていた御社を此処に持って来る様に伝えました。

 近くなら、もっと話をして帰って来るのですが、何しろ東京ですので、直に東名に乗って帰って来ても午後10時頃になってしまいます。

 祈祷から帰って来て、、何回か福島の稲荷様の様子を見せて頂きましたが、機嫌よく居られるのが見えます。

 その2か月位後、〜さんが福島から来られた稲荷様の状態を尋ねられますので御姿を請いますと、全く御姿が出ません。

 数日後、再度稲荷様を御呼びしますが、御姿が出ません。

 困ったものですが・・・、やはり、はっきりとお伝えしなければ・・・、とは思うのですが・・・。

 余り例のない事なので・・・。

 私、「小さい龍神さん、あんた、東京都・・・・・・、此処へ行って、何で稲荷さんの御姿が出ないんか、見ておいで」。

 妻、「何時もの上っ張りを着て、頭の毛を後にくくって、棒の様なものを持って、子供になって飛んで行ったわ」、と言います。

 人間の子供と同じで、「行け」と言っても行かない時も有るし、「行くな」と言っても行ってしまう時も有るし、勝手なものです。



 少し危険を感じましたので、この時は直に呼び戻しました。(これはチビが行方不明になる前の時点です)

 そして、此方の巳神様に、何故、また、福島から来られた稲荷様の御姿が出ないのか、聞いてみました。

 妻、「地神さんが、紙をくわえて、そっち(私に)に持って行ったよ」、「何か書いてあるけど解からないわ」。

 私、「地神さん、解からんわ、分かり易く教えてください」。

 妻、「こんなん出てるわ」、と言って、絵に書きました。

 妻、「金属で出来た、釣り針の様なものも見える」、「耳が・・・、耳の先に毛が・・・」、「前足をこんな格好にして・・・、犬の散歩の時に体につける様なものも・・・、それでつながれているみたいに見える・・・、目の形が・・・、口の形が・・・」。



 妻、「大きな人間の足の様なものが出てるわ」、「どん〜と重くて、硬い様な・・・」、「チビが刀を持って斬ってるけど、全く関係ないわ」、と言います。



 職場の方(直近くです)の土地、建物を観てみました。

 妻、「何か・・・、全体に・・・、わぁ〜とした場面に、吊り上がった目が沢山出てるわ」、と言います。



 これは、この方の職場(自営)の土地、建物に在る念です。

 それは、この方が長年お祀りされて来たお札に入っていたものや、この方がその地で自営をされる前に、其処で自営されていた方が祀っていたものの中に入っていた「邪」の念です

 「邪」の取る形です。(こんな動物が居るわけではなく、程度の低いものの取る形です)

 さあ〜、困りました。

 前回お伺いした時に、職場の方ももう少し詳しく調べて対処すれば良かったのですが・・・・、それは内容的、時間的に、同時に二箇所は無理です。

 近くなら何時間かかっても、何箇所も移動して対処する事は良くありますが、この場合はやはり無理でした。

 しばらくして、この方はもう一回祈祷をしてくださいと言われます。

 確かに祈祷の必要は感じますが、私としてはこの方に気の毒で・・・。

 しかし今回、新たに問題解明しなければならない事も有りましたので、行かせて頂く事にしました。

 新たに解明しなければならない件の祈祷内容は省きます。

 福島県から来られた稲荷様の御姿が出るまでの始終を書かせて頂きます。

 前回の祈祷の後、伏見稲荷から勧請を受けて祀っていた御社や御霊は全て処分し、その後に福島から来られた稲荷様が祀られています。

 祈祷の準備が終り、福島から来られた稲荷様の御姿を請うのですが、やはり、何も見えて来ません。

 余分ですが、此方の小さい巳神(チビ)は、黒い赤ちゃんの格好に、薄緑の上っ張りを着ています。

 私、「地神さん、ちょっと、チビ、出んようにしといてください」。

 釜の準備が終わった時点で、今回の祓い消す対象を出してもらったのですが、何の動物か分からないものの姿は出ません。

 只、鋭く切れ上がった、冷たい目(目だけをとれば、蛇とも取れますが?)、それと職場に漂う沢山の目がが出ています。

 此方の巳神様の表情も、そんなに鋭くはありません。

 はっきり言って、少し拍子抜けの感は否めません。

 当然、この時点に到る前に、新たに解明しなければならない件で、既に祓い消しているものが有りますので、当然と言えば当然なのですが。

 福島から来られた稲荷様の御姿が出るように、その旨の表白と、祓い消すものに対しての表白を述べます。

 コンロに火をつけます。

 湯が沸騰して来ます。

 米を入れます。

 釜は大きな音で鳴り出しました。

 私、「チビは?」。

 妻、「見えない」。

 私、「どうなってる?」。

 妻、「今見てるから、ちょっと待って」。

 ある真言と印を結びます。(これをうかつに書くと、とんでもない間違いをする方も居られますので、書きません)

 妻、「御社の周りが朱色に輝いて、真ん中が白く光っているわ」、「丸い・・、白い・・、玉・・、が・・」、「全体が赤い色に輝いて・・・」、「あれ、神主さんが並んで出て来て・・・、す〜と通り過ぎた・・・?」、「稲荷さんが二つ出て来て、手に何か・・・、鈴みたいな物を鳴らして踊ってるわ」、と言います。

 私、「稲荷さんが踊ってるって?」。

 妻、「踊ってる」。

 私、「御社の周りが朱色に輝いてるんか?」。

 妻、「丸い玉みたいのも出てる」。

 私、「宝珠やろ?」。

 妻、「解からない」。



 そうこうする内に、音が小さくなって行きました。

 私、「稲荷さんの御姿は?」。

 妻、「見えない」。

 私、「見えない?、何も見えないんか?」。

 妻、「見えない」。

 さあ〜、また困ってしまいました。

 困ってしまいましたが、上記した事から観ると、私の方から観れば、もうこれで十分ですが、素人の方から見れば・・・・、少し物足りないかな、とも思います。

 再度、福島から来られた稲荷様を御呼びしますが、御姿は出ません。

 私、「稲荷様、御姿は出ないが、此処に稲荷様が居て、この方、この方の商売、家族を守って頂いているなら、光を出してください」。

 妻、「御社の下辺りから、光が扇形に上に上がってるわ」、「青い光やわ」、と言います。

 私、「有り難う御座います」。

 何故、福島から来られた稲荷様の御姿が出ないのかは解かりませんが、この方の家に居られて、守って頂くのは確かです。

 そして、稲荷様が二体出て、両手に鈴を持って巫女さんが踊るように踊る姿を見せてくださったというのは、稲荷様の感謝の気持ち、嬉しさ(祝い)を現したものと取ります

 宝珠を見せて、扇形(末広がりで縁起が良い)を見せて、稲荷様の守護の気持ちをこの方に見せたと観ます

 稀ですが、この様な稲荷の形もあるのでしょう

 私、「地神様、これで良しですか」。

 妻、「良し、と言ってるわ」。

 後日、祈祷から帰って来てから、再度稲荷様を御呼びしてみますと、

 妻、「神主さんが居てるわ」、と言います。

 この家は、この形なのでしょう

 そして後日、この方が言われます。

 「祈祷の途中から、朱色の光る存在が見えていた」、と言われます。

 余程嬉しかったのか、この方には稲荷様の存在を見せたのでしょう

 以後この家は、稲荷様だけをお祀りされたら、良い方向に進んで行くでしょう。


 尚、今回登載した稲荷様の始終ですが、東京から帰りに渋滞に巻き込まれ、11時間以上の道中、祈祷の詳細は半分以上忘れています。

 しかし、こういう稲荷様の形もある、という事を知っていただきたいと思い、書かせて頂きました。

 又、最初の祈祷で、勧請を受けた御霊を伏見から持って帰る途中に「邪」が入ったものと思われると記していますが、全てが終わってから考えると、この家に持って帰り、祀り始めてから、この家や職場に漂うものの作用で御霊が抜けたとも考えられるし、最初からこの家には、福島から来られる稲荷様が祀られる事になっていたので「邪」を消しても、伏見稲荷で勧請を受けた稲荷様の御姿が出なかったとも考えられます。













 
 
鳴釜神事の実際と考察
巷の神の本音