稲荷勧請     4
 「こっちや、こっちや」、「こっちや、こっちや」。

 稲荷さんが向こうへ走って行きます。

 呼ぶと此方に走って来るのですが、直に向こうへ走って行ってしまいます。

 「こっちや、こっちや」、「こっちや、こっちや」。

 妻、「ハアハア言ってるわ」。

 この繰り返しです。

 まだ稲荷さんをお呼びする前の事です。

 私、「あんたは一昨日、〜さんの所に来られた稲荷様ですか」。

 妻、「頭を下に下げて、又向こうへ走って行ってしまったわ」。

 私、「地神さん、あの稲荷さん、此処に呼んで、じっとする様に言ってください」。

 妻、「来たわ」。

 私、「稲荷さん、あんた、私らの事を伏見の命婦専女神様に聞いてみ、伏見の方を向いて聞いてみ」。

 妻、「聞いてる」、と言ってるわ。

 私、「稲荷さん、あんた一人か、そんな事はないはずやで」。

 妻、「何も言わないけど、落ち着きの無い稲荷さんやわ」。

 私、「何でそんなにバタバタしてるんや」、「あんた、〜さんの家族、守ってやってな、頼むで」。

 妻、「稲荷さんの横に、扇を広げた様なものが、縦に重なって出て来たけど」。



 私、「色は」。

 妻、「真っ白」。

 妻、「それと、男の人が重そうな箱を持って出て来た」、「箱に紐の様なものが巻いてあって、そこを重そうに持ってる」。

 私、「稲荷さん、今日はもう帰り、明日呼ぶから、来てな」。

 妻、「飛んで帰ったわ」。

 2日前に、京都伏見稲荷大社からこの家に勧請された稲荷様です。

 命婦専女神様には、事前にこの家の事情を話し、この家族が幸せになる様に、その様な力の有る稲荷様と縁をつけてくださる様に頼んでいました。

 この家は、長年に渡る宗旨の乱れも有り、その事を今回稲荷勧請を受けられた方が、元に戻そうとされています。

 男の人が重そうな箱を持って出て来たのは、もう直この家に届く仏壇(小さい仏壇)と取ります。

 私が開眼供養をすれば良いのですが、地方の事ですから、又、後々の付き合いも有りますので、お寺さんに開眼供養をして頂くように私の方から伝えました。

 何故、この家に勧請されたばかりの稲荷様が、こんなに急がれているのか。

 何故、私達に、「早く来てくれ」、という態度を取られるのか。

 この家の御先祖様の仏壇の開眼前に来てくれと、「こっちや、こっちや」、と私達を導くのか。

 現地(この家に)に行けば全てが分かると思いますが・・・・。

 この後、此方の巳神様を通して、この家の稲荷様には、縁が有れば行かせてもらう旨、伝えておきました。

 あくる日、再度この家の稲荷様をお呼びしました。

 しかし、中々姿が出て来ません。

 私、「地神様、〜家の伏見稲荷様を御呼びください」。

 妻、「何か、花びらみたいなのが出て来たよ」。

 私、「色は」。

 妻、「白っぽい・・、少しピンクで・・、下の部分が緑で・・・・」。

 私、「蓮か?」。

 妻、「みたいにも見えるけど・・・・、そう言われると、・・・・、分からない」。

 妻、「花(?)の中に、丸い、透明な・・、青白い・・・、銀色・・・、金色・・・、水晶・・・、?、の様な玉が見えるけど」。

 私、「宝珠か?」。

 この時点では、この家の御先祖様と伏見稲荷様が、この家族を守ると取っていましたが・・・」。



 妻、「向こうから、丸い輪(はっきりとした輪郭はない)(フラフープ)の様なものが見えて来て、それに稲荷さんが乗って来た・・・・?、しがみついて来た・・・・?」、「何か、しがみついて乗って来たとも見えたけど」、と言います。

 私、「ほんまかいな・・・・・?」。
 
 この稲荷様、来られた時は一体で来られましたが、その後の展開は察しがつきます。

 長年、白狐様(命婦専女神様)とお付き合い(失礼な表現ですが)させて頂いていますので、白狐様の慈悲の深さは良く解ります。

 私、「稲荷様、そんなことはないはずです。白狐様のされることですので分かります」、「もう二体の稲荷、お姿をお見せください」。

 妻、「丸い玉の中に、三体の稲荷さんが見えるわ」。

 私、「奥さんと子供の稲荷さんやろ」。

 妻、「真ん中の稲荷さん(この稲荷さんは昨日から姿が出ている稲荷様です)(男の稲荷様です、要するに、御主人です)が、両脇に大事そうに守っているわ」、と言います。

 今回稲荷勧請を受けた方は3人家族で、子供さんに少し事情があります。

 白狐様(命婦専女神様)が、この家の子供さんにも守り神をつけてくださいました。

 白狐様なら、こうされるだろうなと、解っていました。

 大変優しい神様です。

 私、「稲荷様、この家族を守ってやってな、頼むで」。

 今日は昨日と違い、稲荷様は大変落ち着いています。

 この時点では、後日私達が釜を焚きに其方に行く様になっていましたので、安心しているのでしょう。

 私、「そしたら稲荷さん、お帰りください」、と告げ、「稲荷祝詞」を上げました。

 妻、「奥さんと子供の稲荷さんは消えたけど、まだ主人の稲荷さんは此方を見て、帰らないわ」、と言います。

 私、「稲荷さん、帰り、な、またな」。

 妻、「この稲荷さん、竜巻みたいに、ものすごい勢いで回りながら上がって行ったわ」。

 私、「変わった消え方やな」、「これでこの家も良い方向に進んで行くやろ」。

 重複しますが、今回この家に来られた三体の神霊は、命婦専女神様が、この家族の為に寄こされた神霊です。普通一体から二体の神霊がつきますが、この家の子供さんを守護する為に、もう一体寄こされました。

 慈悲深い御神霊様です。

 尚、後日、私達は釜を焚きにこの方の所に行く予定をしていましたが、ある念を感じましたので、この家の三体の稲荷様をお呼びして、その旨を告げると、「自分達でこの家族を守る」、と言われましたので、祝いの釜焚きは中止しました。


                   (追記)

 「稲荷勧請」を受けてから1ヵ月が過ぎました。

 祀られている家の方から、伏見稲荷から来られた稲荷様はどの様な御機嫌で居られるのか、又何か不足が有るのなら教えて欲しいと言われます。

 此方の神霊に頼み、この家の稲荷様をお呼びしました。

 妻、「稲荷さんのお姿ははっきりと見えないけど、向こうの方で三体の白く光るものが見えて、その周りが金色に輝いてる」、と言います。

 妻、「金色に輝くものの前に、人の手が、親指と人差し指で鍵の様なものを持って、はっきりと見えてる」、「人の腕には数珠の様なものがぶら下がってる」、と言います。



 伏見稲荷の守護と、この家の御先祖様の加護が合わさって、守っていると取ります。

 心配は要りません。

 しかし、一般的にも、この家の方にも言える事ですが、神仏が守っているから心配は要りませんが、やはり生きてる人間の「やる気」も絶対に必要です。


















 

 
鳴釜神事の実際と考察
(末尾に追記有り)
先祖供養の大切さ