「ちいちゃんのかげおくり」は,3年生の教材です。
戦争の悲惨さ,愚かさが,ちいさな女の子の死を通して伝わってきます。
教科書から,物語文が消えていきますが,ぜひ残してほしい教材のひとつです。

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                 第三学年国語科学習指導案
                                    3年 担任 松 井 直
1 単元名 場面の様子に気をつけて 《童話》 「ちいちゃんのかげおくり」
2 目 標
◎ 戦争によって命を奪われながらも、なお家族を慕うちいちゃんの姿を通して、戦争の悲惨さとその戦争で  さえも奪えなかった家族のきずなの深さに迫ることができるようにする。
○ 作品のそれぞれの場面の様子を的確にとらえ、それらを比較したり深めたりしながら、情景や人物の気持  ちを深く読み取ることができるようにする。

○ 場面の情景や人物の気持ちを豊かに表現しながら、音読ができるようにする。

3 指導観
○父と別れ、母をなくし兄をなくしたちいちゃん。そのちいちゃんの命も、たった一人暗く冷たい防空壕の中で消えていく。
  戦争は、幸福な家族からまず出征という形で父を奪っていく。しかし父はちいちゃんに「かげおくり」という形見を残していってくれた。戦争は、次にその「かげおくり」という遊びをちいちゃんから奪っていくのである。さらに、空襲で母と兄を奪われ、たった一人、焼けの原になった町の中で呆然とするちいちゃん。しかし、彼女は泣かない。涙をこらえ、ひたすら母と兄の帰りを暗い防空壕の中で待つのである。どんなにつらくても、どんなに苦しくても、雑嚢の中の干し飯をかじりながら、母と兄の帰りをかたく信じて待つのである。その純粋に家族を思う心は、まったく揺らぐことはない。
 そして、衰弱しもうろうとした意識の中で、ちいちゃんは家族のまぼろしと「かげおくり」をする。空にくっきりと写った四つのかげを見ながら、ちいちゃんは、「お父さん、お母さん、お兄ちゃん」と呼ぶ。そして息絶えるのである。
 戦争も、そして死さえも、ちいちゃんと家族を結ぶきずなを断ち切ることはできなかった。ちいちゃんの死は暗くさびしいものとしてではなく、美しくやわらかくメルヘンの世界のように描かれている。しかし、天国が美しく幸せであればあるほど、暗く壊れかかった防空壕の中で、ひからびたように一人ぼっちで死んでいった幼い女の子のいじらしさが、私たちの胸を熱くする。
 天国できらきら笑っているちいちゃんは、やっと今幸せなのではないだろうか。こんな時代である以上、ちいちゃんは生きていてもけっして幸せになれなかったにちがいない。こんな形でしか、ちいちゃんに幸せをあげられなかったところに、作者の戦争に対する怒りと悲しみがあるような気がしてならない。
 指導にあたっても、戦争の悲惨さだけを強調する授業はさけたい。なぜなら、この作品の主題は、戦争によっても断ち切られることのなかった家族の強いきずなであり、ひたすら家族を慕うちいちゃんの姿を見つめていくことの方が大切だと考えるからである。また、ちいちゃんのその思いを読み取っていくことは、すなわち戦争の悲惨さと愚かしさを浮き彫りにしていくことにほかならないのである。
 特に本時では、どんな境遇の中でも母と兄を信じて揺らぐことのないちいちゃんの胸の内に迫らせたい。そのためには、「『すっかりかわった町』を見ているちいちゃんの姿」「『深くうなずく』ちいちゃんの姿」「防空壕の中で『お母ちゃんとお兄ちゃんは、きっと帰ってくるよ。』とつぶやくちいちゃんの姿」の意味するものを明らかにしていかなければならないであろう。この場面は大きく心の動く所もなければ、ちいちゃんに劇的な何かが起こるわけでもない。じっと静かに動かない場面である。「暗い」「こわれかかった」「くもった朝」といった情景を表す言葉や、「食べました」「かじりました」といったかすかな表現のちがいを足がかりにしながら、ちいちゃんの心の中に深く入って行けたらと思っているところである。子供たちは、「ちいちゃんがかわいそう。」という読みはすぐにできるに違いない。しかし、ここでは「かわいそう」から一歩深めて、ちいちゃんの姿に感動するような言葉が子供たちからでてきたときに、この授業が成功といえるのではないだろうか。
 また音読も随所に取り入れながら、この静かな場面を三年生なりに豊かに表現させることにも挑戦してみたい。
4 指導計画

@ 全文を読み、初めの感想をかく。─────────── 1時間
A 新しい漢字とわからない言葉について調べる。───── 1時間
B 学習問題を設定する。─────────────── 2時間
C 場面ごとに内容を読み取っていく。────────── 6時間
 ・ ちいちゃんがお父さんにかげおくりを教えてもらう場面  (2)
 ・ ちいちゃんが空襲で一人ぼっちになってしまう場面  (1)
 ・ ちいちゃんがお母さんとお兄ちゃんの帰りを信じて待っている場面 (1)
   (本時)
 ・ ちいちゃんがたった一人でかげおくりをして死んでいく場面  (2)
D 作品の主題について考える。──────────── 2時間      
E 感想を「ちいちゃんへの手紙」として書く。─────── 2時間      
5 本時の目標
○ 暗い防空壕の中で、体力がおとろえ、命がつきはてていきながらも、ひたすら母と兄の帰りを信じて待っているちいちゃんの姿をありありと読み取る。

学習内容及び学習活動 主な発問と児童の反応 指導上の留意点
@学習問題を確認し、本文を読む
ちいちゃんは、こわれかかった暗いぼう空ごうの中でどんなことを考えながらお母さんとお兄ちゃんを待っていたのだろう。
         
・一斉読み ・指名読み







○今できる最高の読みで1回読んでください。
・課題の確認はすばやくし、音読によって課題を一人一人のものにしていく。




・初めから表現読みを要求する。 音読はいつでも内容を表現するものでありたい。
A「すっかり変わった」町の様子 を見て不安なちいちゃんの姿を 読み取る。
・ すっかりかわって
・ どこがうちなのか
○町はどんなふうに変わっていたのでしょう。

・焼けの原
・家がどこかもわからない。
・町の様子がすっかり変わって、どうしていいかわからないちいちゃんの姿をしっかりつかませておく。    
B家に帰れば必ず家族と会えると信じるちいちゃんの姿を読み取る。
・ なくのをやっとこらえて
・ 「おうちのとこ」
・ 深くうなずきました
・ また深くうなずきました



・ 音読
○ちいちゃんはなぜ「おうちのとこ」と言ったのでしょう。

・わからなかった。
・家に帰りたかった。
・「うち」しか考え付かなかった

○ちいちゃんはなぜおばちゃんについていかなかったのでしょう
・家にいたらきっと迎えにきてくれると思った。     
・お母さんが自分をおいて行くはずがないと思った。
・「家に帰れば」と願うちいちゃんの家族への思いをつかませたい。




・深くうなずくちいちゃんの「深
く」の意味を明らかにする。

・前半読み取ったものを表現する音読をさせる。
 
Cちいちゃんの心と体の変化について考える。         ・ お母ちゃんとお兄ちゃんは きっと帰ってくるよ
・ 暗く こわれかかった
・ くもった朝
・ 食べました
・ かじりました




◎ちいちゃんのその気持ちは、この後変わりますか、変わりませんか。

・変わった
・変わらない

○ちいちゃんの体はどう変わっていったでしょう

・おとろえていっている。
・力がなくなってきている。
・家族を信じる気持ちが揺るがなかったことをつかませたいが、意見が分かれないことも考えられるので、ちいちゃんの心の中を表面に引き出せるよう、発問を工夫していく。      






Dゆらぐことのないちいちゃんの心を支えている思いに気づく。



・ 音読
○それでもちいちゃんの心は変わらなかったのですか。

○そんなちいちゃんに何か声をかけてあげてください。

○ちいちゃんの心の中に入り込んで読んでみましょう。
・子供の意見にゆさぶりをかけていく。 

・自分なりの作文をすることにより、ちいちゃんのけなげな姿に感動させたい。
   


国語の学習では,音読がとても大切だと思います。1時間の授業の中で,最低でも3回,できたら
5回は声に出して読む時間がほしいですね。特に,心を込めて体を使って読むという活動を大事に
したいです。
3年生や4年生は,その気にさせると,力を発揮しますので「ほめながら」上手に読める力をつけて
いきましょう。6年生ぐらいになると,合唱の実践のページにある「かたくりの花」のような質の高い
表現ができるようになります。