国語自主開発教材
詩「ミミコの独立」(山之口 貘)
あなたもこの詩の授業をやってみませんか
教師は、授業が勝負です。授業の力をつけることは、私たち教師の最も大切な研修だと思います。
授業は、子どもを豊かに変容させることができます。

教師と子どもが全身全霊をかけてひとつの教材と格闘して授業を行い、
新たな発見をしたり深い感動を味わったとき、教師もこどもも大きく成長していきます。
学級崩壊やいじめや不登校を解決するのに、
学校としてしなければならないことは、子どもを引きつけ満足させる授業の創造です。

私はそう思っています。
しかし、それはたいへん骨の折れる仕事です。教科書や指導書を見て物事を教えるのではなく、
教師の人間性も含め教材と関わり、こどもたちへの強い願いと深い教材研究に支えられた、
まさに勝負の授業をすると言うことです。
毎回そんな授業はできませんが、
私は教師のそういう姿勢から子どもは変わっていくと信じています。
「ミミコの独立」は、私の子供が産まれたとき、出合った詩です。
子どもの成長を願う父親の深い愛情がひしひしと伝わってくる作品です。
こうした詩を、教材として自分で作ることはたいへん難しく勇気のいることです。
しかし、何もないところlから、授業を創り出すことは、
授業者としての力量を高めるものだと私は思います。

「ミミコの独立」教材文 「ミミコの独立」指導案 教材研究のページ 国語のメインページ


5年国語科学習指導案
指導者 5年1組担任 松 井  直
1 教材名  詩 「ミミコの独立」(山之口 貘)
2 目 標
  ○ ささやかな娘の抵抗の言葉に、幼い娘がだんだん自分から離れて自立していくことを発見した、父の喜びと深い愛情を読みとる.
  ○ 詩の構成や言葉の使い方の巧みさを知り、自分の作品作りに生かそうとする.
 
3 指導観
 このクラスは、活発で明るい子供達が多いのだが、指示や助言がないと自分からはなかなか積極的に動いてくれない。授業中も集中力がなく、苦労して作品を読み深めたり、作品を完成したりする努力が見られなくて苦労しているクラスである。そんな子供達に何とか文学作品のすばらしさを味わわせたいと願ってきたのだが、長い物語文などは集中力を持続させられず、子供達の心を動かすまでには至らなかった。いつも私の指導の未熟さに対する腹立たしたと残念な思いだけが残り、子供達を叱ってしまうことが多かった。
 そこで2学期になってからは、あまり焦ることをせず、短い詩で子供たちとと深い読みとりをしてみようと試みてきた。詩を学習することで、文学のすばらしさや日本語の美しさ、文葦表現の巧みさに気づき、共に感動を味わうことができれば、物語や説明文への取り組みも変わってくるのではないかと考えたのである.
 これまで、中原中也め「また来ん春」、室生犀星の「靴下」をそれぞれ1時間扱いで取り組んでみた。子供達は思ったより深い読みとりをし、表現涜みもずいぶんうまくなってきた。今回は、持ち込みの詩の授業の3回目である。これらの詩に共通しているのは、「子供に対する父の愛情」である。
 「ミミコの独立」は、幼い娘のささやかな抵抗に娘の成長を感じ、その成長を暖かく見守ろうとする父親の深い愛情の感じられる詩である。しかもその表現は分かりやすく巧みであり、ユーモアきえ感じられ、読む者の心まで暖かく豊かな気持ちにさせられる。
 「独立」という言葉は、2、3才の子供にはややオーバーな表現に感じるが、それ故に父の娘に対する愛情の探さが強調きれている言葉である。作者は、その「独立」をミミコの「とうちゃんのかんこなんかはかないよ」という言葉に感じるのであるが、文章の中のどの言葉が「独立」を示しているかを考えることは重要である.私は「なんか」という言葉に注目したい。ミミコのかわいい抵抗はこの言葉に象徴されているようである。この抵抗が成長に感じられるところが、父たるところなのであろう。また、ミミコのこの言葉は、父の言葉と対比された表現になっており、ミミコの独立を強調していることも重要なことである。
 「小さなあんよ」で「まな板みたいな下駄」を引きずって行くミミコの後ろ姿を見ながら、作者は何を考えているのだろう。大きな下駄を引きずって歩いていくモモコの後ろ姿はかわいくもあり、まね力強くもある。暖かい笑みを浮かべながら、見守っている父の姿から、娘の健やかな成長を心から願う潔い愛情が読み取れる。
 そんなミミコを向こうのかますの上で持っているのは、「赤い鼻緒の赤いかんこ」であり、その横にあるのは大きなかほちゃである。赤い色はかわいさの象徴、モモコのかわいさの象徴と考えたい。「赤い、赤いかんこ」は、「かわいい、かわいいミミコ」ということである。「赤いかんこ」とは、あまりにも対象的なのは、かぼちゃである。こっけいな形をした、緑色の大きなかぼちゃは、まるでミミコの赤いかわいいかんこをひきたてているようである。よちよち歩いて、自分のかんこのところまで歩いていくミミコの姿を、かぼちゃが見ているというのは、いかにもこっけいで、ゆかいな気持ちにさせられるが、読む者もミミコの健やかな成長を願わずにいられなくなる。
 指導にあたっては、「作者は、ミミコの行動や首葉のどこに『独立』を感じたのか。」ということを中心にしていきたい。それがこの作品の命であると考えるからである。文章表現の上からは、対比きれている文や言葉に注意させながら、朗読で「ミミコの独立」を体で感じさせて行きたい。最後の「かんこ」が「待っている」という表現には父の深い愛情がこめられている。擬人法という技巧の中にこめた作者の思いを、「下駄」と「かぼちや」の実物を目の前にデンと置いて考えさせてみたい。
 さらに、この詩には「か」の音が多く用いられ、心地よい響きをしているが、これは、ミミコの歩く下駄の音のように聞こえる。これもできたら考えてみたい問題である。
 
4 指導計画
 ・ 詩「ミミコの独立」を視写し、語句の意味やイメージをつかむ。1時間
 ・ 詩「ミミコの独立」を読み取り、感想を書く。1時間(本時)
 
5 本時の目標
 ◎ きさやかな娘の抵抗の言葉に、娘の成長を感じた父の喜びと、その愛情の深さを読み取る。
 
6 指導過程
  学習内容及び活動 主な発問指示と反応 指導上の留意点





 
1 全文を読む.
  ・一斉読み
  ・指名読み


 
◎いなかの農家の土間の所にいるミミコとお父さんの姿が浮かぶように、今読める最高の読みをしてください。

 
読みの視点のをはっきりして読ませ、いつでもイメージを持ちながら涜むようにする。また、前時の学習を生かしながら読むことで、前時とのつなぎとする。
 








 
2 ミミコの年令と「独立」の
意味をつかむ。






 
ミミコはいくつぐらいですか。それが分かる所に線を引きなさい。
・かんこ   ・あんよ
 
・ミミコがまだ幼い子どもであることを、文葦の言葉を基に考えさせていく。文章で考えていく事が国語の基本である.
 
ミミコは誰から独立して行くのですか。
・父
 
・「独立」はこの場合は一人立ちしていく事であることと、父から独立していくのだという事をおさえておく。
  ふ   か   め   る




























 
3 ミミコの言葉や行動のどこ
に「独立」があるのか読みとる。










 
ミミコの一人立ちは、ミミコのどんな言葉や行動にあらわれていますか。文章の中から探して、線を引いてください。
・とうちゃんのかんこなんか
 はかないよ
・ミミコのかんこはくんだ
・ひきずって行った
 
・ミミコの言葉や単行動から、言葉を絞りこんでいき、最終的には、「なんか」「よ」「だ」「ひきずって」に、作者の思いが込められていることに気づかせたい。


 
◎その中のどの言葉にあらわれていますか。なぜですか。
・なんか  ・だ
・よ    ・ひきずって
 




 
4 ミミコの姿を見守る父の暖
かい愛情を読みとる。

















 
◎お父さんは、そんなミミコをどこからみているでしょう。なぜですか。
・後ろ   ・行った
 
・父がミミコの後ろから見ていることを「行った」という言葉から気づかせたい。

 
◎図に書いてみましょう。

◎お父さんはそんなミミコをお父さんのいうことをきかないこまった子だと思っていますか。それとももっとちがう気持ちでしょうか。○か×で書きなさい。
理由も書きなさい。
・お父さんはミミコが理屈をいつたことがうれしい。
・よかつたと思っている。
・大きくなったなあ。
◎お父さんのそんな気持ちを込めながら読んでみてください。
 
・位置関係を図示して父と子、かんこのイメージをつかむ。
・ミミコを見守る父の気持ちをつかむために、子供にゆさぶりをかける。討論する中で父の娘を見守る暖かい気持ちがよりはっきりしていくだろう。





・読み取ったことを表現する朗読によって、読み取りをさらに深いものにしていきたい。
5「持っていた」に込められた父の深い愛情を読み取る。







 
「持っていた」はかんこにはおかしい表現ではないか。作者はなぜ「あった」とせずに、「待っていた」としたのだろうか。
・かんこが生きているみたい・人間みたい。
・ミミコにはやくおいでといつている。
・ミミコの大切なものだから・かわいい感じがする。
・下駄とかぼちゃの実物を提示して子供達に考えさせたい。擬人法の表現の中に込められた父親の深い愛情を読み取ってほしい。
・作者の詩を作った背景を補説してやり、子供達の感動をさらに深めていきたい。

 








 
6 読み取ったことを表現して朗読する。
 ・一斉読み
 ・指名読み

 
◎ミミコに対するお父さんの深い愛情を、心に思い浮かべながら自分の最高の読みをしてください。

 
・自分のできる最高の読みをさせることによって、読み取りの評価をする。


 
7 ミミコのお父さんの気持になって短い感想を書き、発表する。 ◎ミミコのお父さんになってミミコに語りかける作文を5分で書きなさい。 ・「ミミコよ。」という書き出しで書かせ、感じ取ったものを自分なりに表現させる。
  
7 前時の指導
@ 全文を視写する。
・読みながら板書し、いっしょに書いていく。書きながら詩を読んで行くことになり、初読をしたことになる。
A 読む。
・ わからない言葉などはとびぬかして読み、詩のイメージを全休の感じからつかませる。
B 難語句を調べる。
・ 古い農具や、なじみのうすい言葉があるので、語句の抵抗をなくしておく。また漢字の読みなどは、前後の意味から想像するなどして自分達の知恵でつかませたい。
C 読む。
・色々な形で読み込ませたい。読むことが読解の基本である。
D 詩の情景を描く。
・ 昔の農家の土間のイメージは、説明を要する。豊かにイメージを広げておきたい。
E 読む。
・この時間に学習したまとめの読みをさせる。