クラス替え
5月15日(水)
アン:今日の授業ははこれでおしまい。では、また明日。
授業が終わりアンが教室を出て行った。
Pi-子:アン、アン!ちょっとお話が・・・
急いで教室を出てアンを呼びとめる。
アン:どうしたの、Pi-子?
Pi-子:あの・・・私、ペイントンに来て6週間がたったわけで・・・残りがあと2週間になったのですが
アン:そんなになるの。早いわねぇ。
Pi-子:それで・・・残りの2週間は一つ上のクラスへ行って自分の力を試したいんです。私の実力ではまだ・・・
アン:あら、それはいい考えだわ。
Pi-子:・・・まだ早いのかもしれませんが・・・えっ?・・・
アン:私もあなたに薦めてみるかと思ってたのよ、そろそろクラスをアップしてもいい頃だわ。
自信はあったが「Pi-子の実力ではまだダメよ」と言われる可能性がないこともなく、不安があったので、あっさり認めてもらえてよかった。
Pi-子:ありがとうございます。
アン:事務局の方にはもう言ってあるの?
Pi-子:いいえ、まだ。
アン:早めに言っておきなさい。遅くても金曜日までに。
Pi-子:はい。
最初の日に学校からもらったパンフレットを見ると、クラス替えは担任に言わず、事務局を通してもよいことになっています。(担任に不満がある、ということもあるからでしょうが)
自分から手を挙げて「クラスを替えてほしい」と自己主張するのは日本人にはなじみ難いかもしれませんが、不平・不満があったら口に出して言った方がいいのかもしれません。
翌日、私は事務局へ行った。
そして帰り道・・・
マーカス:やぁ、Pi-子!何かいいことあったの?
Pi-子:え・・・う〜ん・・・そっ、そうだね。
いいことがあったというわけではなく、言うべきことを言ってすっきりしただけなんだけど・・・「すっきりした」ってどう表現したらいいんだろう?
Pi-子:私、来週からクラスが替わることになったんだ。だから今のクラスメートのみんなとも明日でさよならだわ。
マーカス:えっ、上のクラスへ行くの?Congraturation!ボクはどっちにしても今週でさよならだけど。
Pi-子:帰国するの?
マーカス:そうそう。仕事もあるし。それに・・・
Pi-子:それに?
マーカス:帰ったら、彼女の両親に会う予定なんだ。
Pi-子:え・・・え〜!そうなんだ〜!がんばってね〜!
マーカス:うん。ありがとう。
今回の週末でマーカス、サンドラ、ナタリー、ユースケ、ヒロコ、ナンキウ・・・と親しくしていた面々がペイントンを去っていき、私もクラスが替わり環境ががらりと変わった。
5月20日(月)
Pi-子:おはよう!ノブコ、レティッツィア!今日から同じクラスだよ。
レティッツィア:このクラスになったんだ。
ノブコ:またクラスメートになれてよかったね。
このクラスは前にじクラスだったレティッツィアとノブコのいるクラスだったのです。
ジャニス:Good Morning, Everyone!あなたが今日からこのクラスになったPi-子ね。
このクラスの担任のジャニス。
前回の担任アンに比べるとちょっと大柄で、声も言葉・感情を表現する時もジェスチャーも大きかった。
クラスメートはレティッツィアとノブコのほか、スイス人が2人、ドイツ人が3人、ポーランド人が1人、それに私とノブコ以外に日本人のナオミがいた。
ジャニス:今日の授業は「願望」についてね。みんな、この学校に「こんな施設があったらいい」と思うモノを挙げて。
ナオミ:24時間無制限コンピュータールーム。なぜかというと今あるコンピュータールームは予約しなければいけないし、使用時間も限られているからです。
ドイツ在住のナオミは日本語の訛りがなく、きれいな英語で流暢に話していた。
レティッツィア:トレーニング・ジム。ペイントンの街にも大きなトレーニング・ジムはありますが、学校にあれば便利だと思います。
ジャニス:あったら私も行きたいわ。
レティッツィアも以前、同じクラスだった時に比べてずいぶんうまくなってる。
マーティン:カジノ!(笑)
スイス人のマーティン、あまり英語はうまくないが、明るく、授業を盛り上げてる。
ジャニス:Pi-子、何かアイディアは?
Pi-子:えっ!
いきなりふられたので驚く。
Pi-子:Well...え〜とっ・・・無料のビデオレンタル!
ナオミ:ハンターズ・ロッジ・ホテルやペイントン図書館にもあるじゃない?
Pi-子:でも本数少ないから・・・私は殆ど見ちゃったし・・・それに、その・・・ペイントン図書館でもビデオレンタルはありますが・・・
有料の上・・・ん〜と・・・その上、ペイントン滞在が1年以下の場合は貸してくれないことになっており・・・
ジャニス:つまり、ハンターズ・ロッジ・ホテルのビデオは本数が少ないし、ペイントン図書館ではペイントン滞在が1年以下の留学生には
貸し出しを許可していない・・・ということかしら?
Pi-子:・・・そう、それが言いたかったんです。
ナオミやレティッツィアのように言葉につまらず、上手に話そうと意識するほど、上手く話せなくなっていく。
ジャニス:Pi-子は少し、TVやラジオを聴くようにして、ボキャブラリーを増やした方がいいわね。
Pi-子:・・・そうします。
授業終了。
レティッツィア:どうだった、授業。難しかった?
Pi-子:ん〜、難しいというわけじゃないんだけど、緊張しちゃったみたい。
ノブコ:緊張しなくても大丈夫だよ。
文法がいきなり難しくなったわけでもないし、ジャニスの言うことが分からない訳じゃないんだけど・・・
Pi-子:2人とも昼食はどうするの?
ノブコ:今日は2時からクリームティーへ行く約束をしていて・・・先週まで同じクラスだった女の子たちとなんだけど、
Pi-子も一緒に行く?
Pi-子:・・・今日はいいや。
いつもだったらよろこんで行くクリームティーだけど、今日はめちゃめちゃテンションが低いので。
レティッツィア:じゃ、またね。
Pi-子:じゃあね。
ノブコとレティッツィアと別れ、1人でアダルトラウンジへ向かう。
ミア:Pi-子!どうしたの?元気ないみたい。
Pi-子:ミア・・・そうだ、ミアはホームステイだったよね。何かお薦めのTV番組ってある?私、ホテルであんまり見てなくて。
ミア:何?突然。
お昼を食べながらミアに今日の授業のことを話す。
ミア:それならTVよりラジオの方がいいんじゃない?映像に頼らないからヒアリングもよくなるし、聞き取れれば
ボキャブラリー増につながるよ。
Pi-子:ラジオかぁ・・・なるほどね。
ホテルでラジオの貸し出しやっていたはずだよな。
ミア:先生が勉強にはCMが一番いいって言ってたよ。
Pi-子:CM?
ミア:そう、言いたい部分を強調するし、聞き逃しても何回も放送するからそのうち聞き取れるようになるって。
なるほどね。
ミア:でも、Pi-子。何よりも語学に焦りは禁物だよ。
Pi-子:・・・そうだね。焦りは禁物だね。ありがとう。
ミアは年下でいつもは妹みたいだけど、今日はお姉さんみたいだ。
そうだよね。クラスをアップしてから1日目でうまく話せるわけがないんだから。
あと2週間・・・まだ2週間あるさ。
(Pi-子)