ブリクセン(Brixham)


港町ブリクセン

5月18日(土)
只今、午前8時半。
Pi-子はユースケの部屋の前にいた。
Pi-子:ユースケ、ユースケ。

ノックしても呼んでも返事なし。
もう行っちゃったのかな?

急いでホテルの入り口まで行くと、ちょうどユースケがチェックアウトしていた。

ユースケ:おはよう、Pi-子姉さん。本当に見送りに来てくれるんだ。
Pi-子:心優しきお姉さんとしては当然っスよ。

今日はユースケがペイントンを発つ日なのです。
正確に言えばユースケだけではなく・・・ま、その話は後で。

Pi-子:何時のバスだっけ?
ユースケ:9時半。時間はまだ早いけど、そろそろ行こうかな。
Pi-子:何か持とうか?
ユースケ:このボストンバック持ってもらっていい?ちょっと重いけど。
Pi-子:わ、本当に重い。何が入ってるの?
ユースケ:一番重いのはノートパソコン。持ってきたのはいいけど、使えなかったんだ。
Pi-子:何で?
ユースケ:電話の口が違ってさ・・・電気のコンセントはイギリス用の持って来たんだけど、電話まで違うと思わなかったよ。 かと言って捨てるのももったいないしね。
Pi-子:そうだね。

話をしながら、歩き出す。

見上げると空はど〜んより曇ってる。
Pi-子:う〜ん、Dangerous Cloud だねぇ。(「雲行きが怪しい」と言いたい)
ユースケ:そっ、その英語は絶対に通じないと思う。(笑)
Pi-子:冗談だよ。でも、まじで雨降りそうだよ。
ユースケ:それはしゃれになんねー。この大荷物で雨は勘弁してほしい。


ユースケの荷物はスーツケースと肩掛け、私が今持ってるボストンバック。
ボストンバックだってけっこうな重さがあるもんねぇ。
これでロンドンのヒースロー空港まで行って飛行機に乗るなら別にかまわないんだけど・・・
Pi-子:これから行くのはオックスフォードだっけ?ケンブリッジだっけ?
ユースケ:ケンブリッジ。あと3ヶ月ぐらい勉強してから帰国するよ。
Pi-子:8月はイギリスで過ごして9月に帰国した方いいんじゃん?イギリスの夏の方が快適に過ごせそうだもん。
ユースケ:それも考えてるんだけどね・・・。


やっとバス停に到着。あ〜、ノートパソコン重かった。
ふと前方を見るとミアが向こうからやって来た。

ミア:Pi-子、ユースケ。おはよう。
Pi-子:ミアはヒロコの見送り?
ミア:そう。まだ来てないみたい。
ユースケ:大丈夫だよ。まだ時間早いし。


話をしているうちにノブコ、ナンキウ、ケヴィンもやってきた。

ロンドン行きのバスも到着・・・しかし、ヒロコがまだ来ない。
ナンキウ:ヒロコ、遅いね。
ユースケ:そろそろ、来ないと・・・あ、来た。


ヒロコのホームステイ先のホストファーザーが車に乗ってやってきた。
ヒロコ:よかった、間に合った。

その後、握手したり抱擁したりで名残惜しんでいたが、ゆっくりしているヒマはそれほどなく、バスへ乗り込むとすぐに発車していった。
ミア:ヒロコが手を振ってる。
ミアもバスが見えなくなるまで手を振っていた。
ヒロコとミアは仲がよくて、いつも一緒にいたからな。

Pi-子:あれ、ナンキウ。ナンキウも今日でペイントンを発つんじゃなかったの?
ナンキウ:うん、今日の午後のバス。
Pi-子:帰国するの?
ナンキウ:ううん、来月のケンブリッジ試験受けてから帰る。

ひえ〜、あの難しいという噂のケンブリッジ試験受けるんだ。

ノブコ:あ〜、私もあと1週間だ。
Pi-子:帰国しないで別の学校行くんでしょ?
ノブコ:うん。プリマス。ペイントンからバスで1時間の所。
ケヴィン:来週ノブコ、再来週はPi-子がペイントンからいなくなるのか。だんだん寂しくなっちゃうね。
ミア:ケヴィンだって6月の初旬にケンブリッジ試験受けたら帰国でしょ。私だけあと半年ここにいるのよ。

そうか来月後半になると仲間の殆どが別の学校へ移るか、帰国しちゃうんだ。

Pi-子:あっ、一人だけあと半年ぐらいいるのがいたじゃん。
ミア:誰かいたっけ?
Pi-子:キウシック!


その後、ミアに思いっきり突き飛ばされた。ヾ(-_- )/☆(((x_x)


ホテルに帰ってきたPi-子。
さて、今日は早起きしたから時間もあるし、何しようかな・・・

ふと机の上を見ると、前にペイントンのツーリスト・インフォメーションでもらってきた「トーベイ」の本が目に入った。
ペイントン、トーキー、およびブリクセン(Brixham)海岸線に位置している3つの町を総じてトーベイ(湾)と呼んでいますが、 これらの町の中でブリクセンへだけは行ったことがなかった。

そうだ、今日はブリクセンへ行こう!

と突然思いつき、早速出発!

ホテルから歩いて5分ぐらいでグッドリントン(Goodrington)ビーチに出る。
学校でもらった地図を見ると、ここからブリクセンまでの海岸線にFootpath(遊歩道)があるようだ。

・・・けっこう距離はありそうだけど、以前ズザナとカタリナも歩いてブリクセンまで行ったっていうから、歩けるだろう。
どうせヒマだし、徒歩でゴー!

ビーチを抜けるといきなり上り坂にさしかかった。
トーベイ → Torbay → Tor(岩山)+ bay(入り江)
という名前からして分かるように、海岸線といっても白い砂のなだらかなビーチが続いているわけではないだろうとは思ったが。(^_^;

しばらくは海というより丘の上を歩き続ける。
すれ違う人たちは犬の散歩や老夫婦の散歩(散歩以外の目的でここを歩く人はいないだろう。)絵に描いたような「うららかな日曜日」である。
道は思ったよりアップダウンがきついのだが・・・

ぽ〜〜〜〜〜〜〜!

いきなり蒸気機関車の汽笛の音が聞こえる。
Footopathに沿って線路があったが、これは蒸気機関車のだったんだ。

列車を見ると乗客の数人(特に子供)がこちらを見て手を振っていたので、サービスで(?)手を振ってあげる。
Pi-子も蒸気機関車に乗った時、カタリナとズザナを見かけたっけ。(Round Robin編参照)
ちょうどあの時に2人でブリクセンへ行ったのだろう。

Round Robin を見送ってからも、いくつもの丘を越え、ゴルフ場を越え、歩き続けていく。
「そろそろブリクセンかな」というところまで差し掛かったところで、前方の道がけっこう急な下り階段になった。

階段・・・下るのはいいんだけど、下った後はたいてい急な上りが待ってるんだよね・・・(-_-;

上りを覚悟して階段を下りていくと・・・下方にきれいな入り江を発見。
ボート遊びしている親子がいます。

ここでちょっと休憩した後、再出発。
思った通りここから少し行ったところでブリクセンへ到着した。

時間にして2時間ぐらい歩いたんだろうか・・・けっこう疲れた。
雨が降らなくてよかった。

時間はもうすぐ午後2時になろうとしていた。
う〜ん、お腹が空くわけだね。港町だしお魚でも食べましょうかね。
海が見えるレストランに入り、フィッシュ&チップスをオーダー。
古くから漁港で栄えた町なんだからここのフィッシュ&チップスはきっとおいしいに違いない。

料理を待つ間、持ってきた本の「ブリクセン」の説明書きを見ることにする。


    ブリクセンは古くからの港町で1000年に及ぶ歴史があります。
    古代から人々はここから舟に乗って漁をし、ローマ人はイギリス南西の海を見張るべく設置した監視塔がありました。

    中世にはイギリス南洋の最大の漁港となり、18世紀にはロンドンへも魚を供給することで有名になりました。
    1890年代には約300隻の多くは個人所有のトロール漁船がここにあり、今でも現存しているそれらの船が行きかうのを、あなたも旅行中に見ることができるかもしれません。

    港が栄えると密航者の問題も出てきました。
    彼らは捕まると絞首刑になりました。
    街を歩くと密航者たちが身を隠し、狭い石段を駆け抜けた通りを見ることができるでしょう。

    軍艦もヴァイキングの時代から1944年までここで見ることが出来ました。
    D-day(ノルマンディー上陸作戦)の時にも一部の船がブリクセン港から出航していきました。

    今日のブリクセン港には、サー・フランシス・ドレイク(元々は海賊であったが、後にイギリス軍の提督になった。1588年スペインの無敵艦隊を破った時に活躍した人) が世界を旅したというゴールデン・ハインド号(Golden Hin)の複製があります。船に乗り込み、当時の水夫だちがどのように過ごしたか体験してください。


ちょうどお店の前に「どう見ても観光客用だろ」というでっかい船が停まっているが、あれがレプリカ船か。食事が終わったら入ってみるか。

と思ったところで待望のフィッシュ&チップスがやってきた。
とても期待していたフィッシュ&チップスだったが・・・まずくはなかったが、おいしいというほどのこともなかった。p(-.-;)q

ここで素朴な疑問!
なぜ、イギリス人は魚に衣をつけたがるのか!?
魚なんて、ただ焼くだけで十分だと思うんだが。
醤油があるとなお Better!・・・と思うのはPi-子が日本人だからだろう。

胸焼けのするフィッシュ&チップスを食べた後、海賊船(レプリカ)に乗り込むが・・・今日は土曜日で子供連れが多数・・・いや、子供がたくさんいた。

レプリカと言えども、これはサー・フランシス・ドレイクが海賊だった時にスペイン船やスペインの植民地で略奪をしながら世界を周航し、 南アメリカ最南端のホーン岬を発見した船だなんてことは・・・関係ないんだろうな、この子供たちには。

イギリスの子供と犬はしつけが行き届いていると言われている通り、日本の子供よりは行儀がいいんだろうが、しょせん、子供は子供!
どの子もヴァイキングになったつもりで所狭しと船の中で遊びまわり、主要な所は彼らの遊び場として占拠されていた。

操舵席とか、船倉にあった当時の航海道具(だと思う)はよく出来ていたと思うけど、このレプリカが原寸大だとしたらかなり狭いです。
他の船を襲ったのなら、それなりの人数が乗っていたはずだし・・・よく生活ができたもんだな。

さて、騒がしい海賊船を降りて、お次はどこへ行こうかな。

せっかくここまで来たからもう一つぐらい見る所はないかな〜・・・とアイスなどを食らいつつ、ベンチに座って再び説明書きを読む。
・・・と、興味のある記事が目に入った。

Can you find the Old Coffin House ?

Coffin=棺だよなぁ。棺の家とは?


    Can you find the Old Coffin House ? (古い棺の家を見つけられますか?)

    Old Coffin House ... それは棺の形をした家。

    なぜこんな家が建てられたのか、というと・・・

    19世紀、あるお父さんが嫁入り前の娘に「棺の中までお父さんと一緒だよ」と言っておりました。
    それを聞いた娘の彼氏はお父さんの為に棺の形をした家を購入したところ、(なぜか)お父さん大喜び。
    2人の結婚を祝福し、娘の結婚後もお父さんは棺の(家の)中で娘と会うことができました、とさ。


めでたし、めでたし・・・なんだろうか?
娘はどう思っていたのかが一言も書いていないところが何とも。親バカなのか?変なオヤジ。(^_^;

どんな家だか興味はあるが、場所は「港の近く」しか書いてないんだよな。
けど、大丈夫だろう、見つかるかな〜・・・ま、小さな町だし。

ブリクセンってペイントンより小さな町なんですよ。トーベイの3つの町を比較すると、トーキー>ペイントン>ブリクセンという順番になると思う。
もっともトーキーだって、UK全土から見れば大都会というわけではありませんが。

地図を見ながら港の周りをうろついていたら、ポツリ、ポツリ・・・あ、とうとう降ってきちゃいました。雨が。
雨だからってのも関係があったのか分からないけれど、土曜日の午後だったので数件開いていたお土産屋さんが店じまいを始めてしまい、だんだん寂しくなっていく。

この辺で引き揚げようかどうか考えながら歩いていたら、見つかりました。棺の家(コフィン・ハウス)!
「棺」なんていうからもっとホラーチックなのかと思っていたら、とてもかわいい建物で今はアンティークの時計屋さんになっているようですね。
正面から見るとよく分からないけれど、真上から見ると棺の形をしているのだろう。

横の階段もいい感じで、説明が書きに書いてあった「密航者たちが身を隠し、駆け抜けた狭い石段〜」というのはここのことだったんじゃないか、 と思わせます。

コフィン・ハウスも見つかったことだし、これで帰るとしよう。
帰りも歩くつもりだったのだけど、雨降ってるし、バス乗っちゃおうっと。

今の時間は、3時半・・・か。ユースケとヒロコはちょうどロンドンに着いたころだ。
雨は大丈夫かな?

(Pi-子)