憂鬱な月曜日と気晴らしのミュージカル
(Blue Monday & The Musical of a Pastime)



プリンセス・シアター

5月13日(月)
月曜日。今日は新入生が入って来る日です。
先週まで7人のクラスだったけど、金曜日に2人抜けてたので現在5人。
今回もまた2、3人の新入生が入ってきて、最終的に7、8人のクラスになるのではないか、と思ってるんだけど。

サンドラ:さっき、下のラウンジへ行ったらすごい人数だったわ。今までで一番新入生が多いんじゃないかしら。
最初ここに来た頃は「お母さんに連れてこられただけ」といって、殆どしゃべらず、笑わなかったサンドラだが、最近は少しうちとけるようになってきた。

Pi-子:そんなにいたの?・・・このクラスには何人ぐらい入ってくると思う?
サンドラ:3、4人・・・もっとかな?でも席がなくなっちゃうわね。

8人・・・ってのは今までにもあったけど、9人だと多いなぁ。

サンドラ:Pi-子はどう思う?
Pi-子:3人ぐらいかな。でもって全部で8人ぐらい。

私は6人ぐらいがベストだと思ってます。
あまり少ない人数だと英語で文章を考えるヒマがないし、多い人数だとしゃべるスキがないし。
ドイツ人(という欧米人というべきなんだろうか)はよくしゃべります。文法が間違っていようが、発音が間違っていようが、ボキャブラリーがなかろうが。
その点、日本人(というアジア人というべきなんだろうか)は文法なんかを考えすぎる傾向があるように思います。

サンドラ:あっ、アンだ。

担任の先生、アンが教室に入ってきた。
アン:アダルトランジを見た?今回は新入生が多いわよ。これから夏に向けてどんどん増えていくんじゃないかしら。
ペイントンは南の海沿いにある街なのでイギリスの「避寒地」になっていますが、東京と比べたらやっぱり寒い。
ここで海水浴もできるし、来るなら夏でしょう。
もっとも夏になれば授業料も上がるのですが。

キウシック:うちのクラスには何人、新入生が入ってくるんですか?
アン:すぐに分かるわ。


Knock,Knock (コンコン)
ドアをノックする音が聞こえた。
アン:ほら、ね。Come in !

新入生が入ってきた・・・1人、2人、3人
おばさんと若い女の子、それにおじさんが1人。みんなヨーロッパ人か。

・・・と思っていたら・・・
4人目・・・これまたヨーロッパ人のおじさん、それから5人目・・・最後は若い女の子、彼女もヨーロッパ人。
5人か・・・多いなぁ、今回は。

アン:国籍は・・・スイスとドイツ・・・ってことはみんなドイツ語を話すのね。
新入生、全員うなずく。
スイスの公用語はドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語(現地語)の4つだけど、この学校で会ったスイス人たちは全員 ドイツ語を話していた。(レティッツィアはドイツ語とイタリア語の両方を話していました。)

アン:教室の中は英語オンリーよ。じゃあ、教科書を開いて・・・30ページの課題のところを3人と4人の組に分かれて考えてみて。
アンが名前を呼んで3人と4人グループを決めていく。

私はマーカスと新入生のおばちゃんと3人のグループを組んだのですが・・・このおばちゃんマーカスとばかり話していて、私とは殆ど話さない。
ドイツ語を使っているので、私には理解できなくて当然なのですが。

なんていうかね、疎外感を感じるのよね・・・

キウシックの方を見ると、私と同様らしく、新入生の若い女の子2人とグループになっているというのにつまらなそうにしている。
(キウシックの場合、性格にも問題があると思うが)

なんか、つまんね〜 ( ̄へ ̄;


お昼になったので、アダルトラウンジ行くと、メイシーとジョアンナを発見。
Pi-子:あっ、メイシー!土曜日に「スピニング・ウィール」に来なかったでしょ!?
メイシー:うん。何か約束してたっけ?
ジョアンナ:やっぱりな〜
Pi-子:金曜日の夜に「明日も来よう!」って言ってたじゃんっ!
メイシー:うそ?そんなこと言ってないよ!

お・・・覚えてないんかいっ!
この酒乱クレイジー・メイシー!

メイシー:Pi-子のクラスは新入生何人だった?
話を変えたな、メイシー。
Pi-子:5人。
ジョアンナ:国籍は?
Pi-子:スイス人が1人。あとはドイツ人。
メイシー:うちのクラスも似たようなもんよ。私以外はみんなドイツ人。ドイツ語を話さない人、入ってこないかな〜

メイシーの口ぶりからすると、私と同じような環境なんだろうか・・・。

メイシー:授業中はまだいいんだけど、休み時間になっていっせいにドイツ語で話されると無視されているようで不快だわ。
ああ、やっぱり。
ジョアンナ:しょうがないよ。この学校はドイツ系の人が多いんだから。これが、韓国人が多い学校だったら、 みんな韓国語で話すと思うし、日本人が多い学校だったらまた同様、日本語で会話してしまうと思うの。
そうゆうもんかもしれないけどね・・・

メイシー:ところで、今夜の"Welcome Party"には出る?
ジョアンナ:たぶん行くと思う。Pi-子は?
Pi-子:う〜ん、どうしようかな〜・・・

即答しないのは、最近の"Welcome Party"・・・つまらないんだよね。
ドイツ系の人の割合が高くなるにつれ、盛り上がっていくとドイツ語で話始める。
10人中、ドイツ語スピーカーが5人、非ドイツ語スピーカーが5人だと英語で話す傾向にあるが、ドイツ語スピーカーが8人、非ドイツ語スピーカーが2人 なんて環境だといつの間にかドイツ語になってる、という感じで。

故意に無視してるわけではないし、英語で何と言ったらいいのか分からなくなってしまう、もどかしさも分からないではないのですが、 やはり非ドイツ語スピーカーとしては話しに入れないのでつまらないっ!

レティッツィア:あ、いた。Pi-子、Pi-子!
Pi-子:どうしたの?レティッツィア
レティッツィア:今日の夜、予定がなかったら、ミュージカルへいかない?
Pi-子:いいけど、チケットあるの?
レティッツィア:スクール・アクティビティ(購買)で参加者を募ってるんだけど、今、聞いたら空いている席があと2つなんだって。それで急いであなたを探していたのよ。
Pi-子:今夜だよね・・・行く、行ってみたい。ミュージカル!


こうして憂鬱な月曜日をふっとばすようにミュージカルへ行くことにしたのです。


午後19:00ペイントンの街を出発して、隣町のトーキー(Torquay)のプリンセス・シアターへ。
トーキーにアガサ・クリスティの故郷として有名な町です。

プリンセス・シアター横の埠頭
若きアガサ・クリスティはここでローラー・スケートを楽しんだそうですました。
プリンセス・ガーデンの端(ペイントン寄り)の海沿いのに劇場は建っていました。
ここ、プリンセス・ガーデンはヴィクトリア女王の五女・ルイーズ女王が訪れたのを記念して作られたもので、アガサ・クリスティがよく訪れた場所です。

今日の演目は"Godspell"題名からして「宗教がらみだな」と分かりますが、聖書を知らない私でも理解できるんだろうか・・・

ヒロコ:Pi-子!
Pi-子:ヒロコも参加してたんだ・・・
(ここから日本語)私、話の内容、よく分かってないんだけどさ、 宗教っぽい話でしょ?分かるかな?
ヒロコ:ミュージカルだから大丈夫じゃない?私もよく分かってないんだけど、イギリスのミュージカル見ておきたくて・・・ 私、今週いっぱいで帰国だから。
Pi-子:えっ、そうなの!?
レティッツィア:あっ、日本語でしゃべってる!

ちょっとぐらいいいじゃないか・・・(^_^;

海外でミュージカルというと自慢するわけではないのですがNYのブロードウェーで「オペラ座の怪人」を観たことがありますが ・・・それは自慢じゃないのかって?・・・そうです。自慢したかったんです、すみません。

さて、海外ではNYのブロードウェー、日本でも東京のそれなりの規模の劇場で2、3回観たことがあるだけなので、今回も同様のイメージでいたので劇場に入って、ちょっとびっくり。

大きさは学校の体育館をちょっと横に広げたぐらい。
何年に建てられたのか分かりませんが、全体的に年季入ってますという感じ。
イスの背もたれは木製で、座席はかろうじて布だけど、すでにテカテカになってる。
長時間座ってるのは疲れそうです。

ま、大切なのは入れ物(劇場)じゃないさ、中身(ミュージカル)さ!

ブ〜 開幕を知らせるブザーの音が聞こえた。

キリストの半生を現代風にコミカルにアレンジしたもの、とは聞いてはいたんですが、女性がパソコンでメールを書いているシーンから始まり、 ジーザス(キリスト)とユダ他、弟子たち(だと思う)が歌う、踊る。

ラストは聖書の通り、ジーザスが十字架に磔になるし、ところどころで聖書の言葉(だと思う)が出てくるのですが、コメディ仕立てになっていてけっこう笑えました。
しかし「神様」の話をコメディにしていいんだろうか・・・?

ミュージカルそのものも面白かったのだけど、それ以上に面白かったのが、1幕終了直後、何人かの役者さんたちが客席に下りてきて、 紙コップに入ったワインをのせて観客たちに配っていました。(前列にいた人とか通路側に座っている人たちがもらっていて、中央にいた私はもらえませんでしたが。)

2幕開幕直前にはやはり何人かの役者さんたちが舞台に出てきて、ダンスを披露したり、ジャグル(お手玉の進化系みたいなやつ)したり、サインをあげたり (どさくさにまぎれて私ももらってしまった)。舞台と客席に一体感を出そうとしている演出だったのかもしれないけれど、大きな劇場では味わえないような 親近感のある舞台でした。

ヒロコ:英語が分かるかどうか不安だったけど、けっこう分かったからよかったね!
Pi-子:えっ・・・ええ・・・そっ、そうだね。

実はPi-子の理解度は50%以下・・・ヒアリングもっと頑張らないと・・・

レティッツィア:今、みんな(他の留学生たち)と劇場内のバーで一杯やらないか、って話してたんだけど Pi-子たちも行かない?
Pi-子:行く、行く!・・・でも、レティッツィア、ドイツ語は禁止だからね。
レティッツィア:Pi-子も日本語禁止だからね!

そう言って二人で笑った。

(Pi-子)