魔弾の王と天誓の鷲矢   瀬尾つかさ(ダッシュエックス文庫)



異国の地で魔弾の王がかつてない敵との戦いに挑む、新たな魔弾の物語。
川口士先生の「魔弾の王と凍漣の雪姫」と同じく「魔弾の王と戦姫」のパラレルワールド作品ですね。
主人公と初めに出会ったヒロインが当作品でメインヒロインを務めるリムアリーシャであったら?
というIFを基盤にして世界観が構築されています。いきなり異国に連れ去れ孤立無援からのスタートということで
序盤から味方の地盤がしっかりしていた他二作とは違い、かなりのハードモード仕様となっています。
また、蘇った過去の英雄や精霊が登場したり、神器が追加されたりとファンタジー色が濃くなっている部分も。
ラストは降臨した神を退け、神話と幻想の時代が終わってヒトの手に世界が渡り
そして魔弾の王は愛する人と娘の親子三人で故郷へと帰還するのだったエンド。
ラブコメ面はメインヒロインのリムアリーシャと結ばれ、娘もできて終了

主人公は自身を見出したリムアリーシャとともにアスヴァール王国に迷いこんでしまった
ライトメリッツ公国の客将として戦いに参加していたブリューヌ王国の貴族ヴォルン伯爵家の嫡男。
純朴で素直、明け透けで気取らない性格をしており、いざ鉄火場となれば勇敢さを見せるが
狩りの獲物を気前よく仲間の手柄にしたり、迷子の猫探しの手伝いに一日を潰してしまったとかなりのお人よし。
故郷にいた頃、気ままに町へ繰り出していた経験からか、市井の人々の苦しみや辛さを見通す目を持っている。

ヒロインは生真面目な副官。現地サブヒロインに気丈な第一王女、聡明な公爵令嬢、やり手な商人娘。
一番のお気に入りはライトメリッツ公国の城主代理兼主人公の教育係、リムアリーシャ。
頭の後ろで束ねて左に流した金髪に碧眼、そしてスラリとした長身と豊乳が目を惹く美人。
感情をあまり表に出さない生真面目な性格で、兵の指揮や教練を得意とし、また事務仕事もそつなくこなす。
自他に厳しく、不愛想な顔つきが常だが、性根は優しく、意外にも可愛いもの(特に熊のぬいぐるみ)が好き。
自分に自信がなく、だからこそやれることは全てやって常に努力を怠らず、高みを目指そうとするタイプ。
客人として滞在していた主人公には厳しくも好意的に接し、その成長をひそかに喜びながら見守っている。

評価はC。
他二作同様、戦争と人外退治を並行していく方向性で進むも、敵国スタートで味方は少数。
敵は既に国を掌握している過去の英雄な上、主人公の唯一無二の武器である弓の力すら上回っている。
と、初期条件が悪すぎである。それだけに主人公たちの成長による真価が鍵になっているのが燃えました。
キャラに関しては、主人公は他二作同様成長過程と言った感じですが、相変わらずの弓無双っぷりは健在。
また、他二作と違い、他国が舞台ゆえに主人公が早い段階から味方から英雄視されているのがよかったです。
一方、メインヒロインに昇格したリムアリーシャは自身が最初に主人公に出会ったというIF設定ゆえに
ツンツンした態度だった「魔弾の王と戦姫」とは異なる、頼りになる年上のお姉さんが魅力的でグッド。
本筋は話自体は奇麗に纏まっていましたが、ラストバトルがあっさりと終わったのが拍子抜けでした。