11月30日火曜日。

2日目の予定は「王宮周辺の観光とムエタイ」。ところが、ムエタイはキャンセルに。旅は予定どおりには進まないものだね…恋愛と一緒で。

最初に目を覚ましたのは、私。Mに一応、声を掛ける。ま、起きないよね。時差はほとんど無いにしても、寝たのが遅かったから。私は諦めてシャワーを浴びた。
ノボテルには、バスタオル・シャンプーは当たり前、なんと綿棒まで置いてあった。

バスルームを出る頃、Mが起きて来る。こんなパターンが、滞在中は続いた。
 朝食はホテル内で。ビュッフェ式ではあるけれど、美味しい朝食。和・洋・タイとお好みの料理が選べ、私はしっかり食べた。Mはフルーツ中心。

ホテル内の売店で切手を買い、昨日の絵葉書に貼った。絵葉書は、売店のお姉さんが出してくれるそう。有難う。

いよいよMとホテルを出る。アンリ・デュナン通りからラマ1世通りに向かい、トゥクトゥクを拾う。Mに、料金の交渉の仕方を教えながら、慎重に選ぶ。それでもボラれそうになる。なんだかんだで「王宮」に辿り着く。

王宮、ワット・プラケオ
壁に囲まれた20万uの敷地内に、いくつもの宮殿と王室の守護寺ワット・プラケオが建つ。
ワット・プラケオは別名エメラルド寺院。タイで最も高い格式を誇る。
本堂のエメラルド仏陀は高さ66cm幅48cm。

王室・ワット・プラケオの入場券
 
北門から入ると、すでに観光客でごった返し。前庭で記念撮影。陽気なオージーと一緒に、はしゃぎまくる。
人を掻き分け、入場券を購入。1人125バーツ(375円ほど)。

ワット内は、一面金世界!日本のお寺では考えられないほどの派手派手しさ。
呆然としている私達を、日本語で呼ぶ声がして振り返る。と、プラモートさんが日本人を連れてガイド中。
一緒にガイドを聞きたかったのに、写真を1枚撮っただけで逃げられた(笑)。

さて、ここワット・プラケオの見所は、何と言ってもエメラルド仏陀。本堂の奥の祭壇に祭られている。いろいろな伝説があるが、ラマ1世がタイに持ち帰ったと言われている。実際目の当たりにすると、小さい印象を受ける。

が、本堂に入った瞬間の存在の大きさにいつもビックリするのだ。外は暑く騒がしいのに、中は凛とした静寂に包まれているのも凄い。
私はこの感覚をほかでも2度経験している。1つはパリのノートルダム寺院、そしてもう1つはミラノのドゥオモ。

そして毎回注目するのが、仏陀の黄金の衣装。3,7,11月の年3回、国王自らが衣替えの儀式を行って取り替えているそう。この時は冬服。背後の仏教の宇宙観を表す壁画と、妙にマッチしていた。

他に私が注目している物に、回路を彩る「ラーマキエン」の壁画がある。全部で178枚あるという壁画は、「ラーマキエン」の物語に題材をとったもの。「ラーマキエン」はインド叙事詩「ラーマーヤナ」のタイ版で大長編物語なのだ。機会があったら是非読んでみたいな。

ワット・プラケオのポストカード この鬼もラーマキエンの登場人物
 
王宮を出て、移動の為のトゥクトゥクを選ぶ。外には沢山のトゥクトゥクが待ち構えていて、交渉し放題。私達は最初に目的地を告げ、英語か日本語のわかるドライバーを選ばないといけない。

そんな時、声を掛けてきたのがスザス。彼曰く「ワット・ポーはお昼休みで、今行っても入れない。
それまでの間、40バーツでこの辺りを案内するよ。」確かに時計を見ると12時をまわっていて、「王宮に3時間もいたの?!」とびっくり。

Mに相談するとOKがでて、交渉成立。スザスのトゥクトゥクに乗った。彼は決して英語が上手では無かったが、その方が私達には好都合。

何ヶ所か回ったワットの中でもインパクト大だったのが、ワット・インドラヴィハーン。高さ40mの黄金大仏立像が立っていた。また、ずっと見たかったサオ・チン・チャ−(大ブランコ)も見ることができた。

余談かもしれないけど、神聖なワットの中にも観光客目当ての悪い人がいたりする。ひったくりとかではないけど、平気で嘘をつく人達。

「私はムエタイの先生です。」「私はタイ国際航空のパイロットです。」見るからに怪しいからだまされないけど、勝手にガイドをして来て報酬を要求したり、マージンの入る店に案内したり。

だけど、私は彼らを憎めないんだなぁ。嘘はつくけど、なんてセコイ詐欺師だろって(笑)。

試しにそのセコイ「なんちゃってパイロット」に紹介された、タイシルクの店に行ってみた。高級店なのか暇らしく、スタッフが総出で接客。
かなり粘って値段を下げ(それでも相場より高いと思った)、タイシルクのワンピースをオーダー。生地選びから、デザイン選び、採寸と、とにかくお姫様気分。

しかも日本人は訳もなくもてるからね。2言目には「彼氏はいるのか?」と聞いてくるし。どうやら日本人と友達になることが、タイ人のステイタスらしい。スザスもそう。すごい勢いで口説いてきた(笑)。

時間になってワット・ポーに着くと、スザスは「Snowはフリーだ。」と言って約束の40バーツは受け取らず、「お金の代わりに写真を送ってくれ。」と名刺をくれた。私の名刺と交換に。今ごろ私の名刺を日本の観光客に見せているのかな。変なコト言っていなきゃいいけど。

ちなみに、ワットがお昼休みに閉まってしまうことはまずありません(と後日聞いた)。
私達はスザスにしてやられたのだ!

ワット・ポー
アユタヤ朝時代の創建と伝えられ、バンコクでは最も歴史のある寺院。
規模もバンコク最大。別名、涅槃仏寺とも呼ばれ、巨大な涅槃仏がある。この仏像は全長49m高さ12m。仏像は中に窮屈そうに納まっており、その全貌を一目で見ることは難しい。
注目したいのは、その足の裏。仏教の世界観を表した108の図が描かれている。

ワット・ポーの入場券 入場料20バーツ
 
私もこのワットは初めて。境内は独特の雰囲気で満ちていた。沢山のワットの中でも、ここは1番のお気に入り!横になっている仏様も素敵だけど私には本堂奥の仏塔が魅力的。

この4基の塔は、中国製タイルで彩られていてとっても鮮やか。ラマ1世からラマ4世を祭ったもので、緑が1世・黄色が2世・白が3世・青が4世を表しているそう。

「そろそろ疲れたね。」と、ここでもう1つの目的タイマッサージへ!!なんと境内にマッサージ場があるのです。なぜならこの寺院は、ラマ3世の時代には本格的な学問所。

現在はタイ式医学の流れを汲むマッサージ学校だけが残っていて、本場のマッサージを受けれるのだ。観光客が多いので、4時頃で20分待ち。
価格は、1時間180バーツだった。個室や仕切りは無く、座敷のマットの上で受ける。マッサージの技術は、学校と言うだけはあって高いと思う。でも基本に忠実って感じでちょっと寂しい。

マッサージがMよりはやく終わったので、彼女の姿を見に行く。残念ながらアクロバットは写真に収められず。Mは満足してくれた様で、「Snowちゃんのハマッた理由がわかった。」と言っていた。

ワット・ポーを出た所で拾ったトゥクトゥクは、かなり曲者だった(笑)。私達もかなり疲れていたのか、交渉したオヤジと違う、英語も超片言のオジサンのトゥクトゥクに乗ってしまった。おとなしくてやさしいオジサンだったから、安心してガイドまでお願いしてしまう羽目になる。

小高い丘の上に建つワット・サケットで、僧侶と出会った。ここは火葬場でもあり、人工の丘に建つ黄金の大仏塔が目を引く。かなりきつい螺旋階段を上ると360度のパノラマが開け、バンコクの街並みが見渡せる。

ここで修行僧たちはお祈りをしていた。オジサンが若い僧を呼び止め写真を撮ると、照れくさそうに笑ってくれた。女性は僧に触ることも出来ないから、とても気を使う。けど彼らは普通の男の子で、何だかかわいかった。

オジサンが撮ったもう一人の僧 訳ありの出家?

その夜、オジサンに食事に誘われた。Mに「ムエタイ諦めてもいいなら、」と念を押し、その誘いに乗った。

連れて行かれたのは、飲み屋。居酒屋とかではなく、スナックという部類。お客は私ら3人だけ。太ったママと若い女の子がいて、私達にビールをついでくれた。

今思うと不思議な空間だった。真っ暗な店で、何が入っているか分からない鍋を肴にビールを飲んでいたのだから。

タイ語と日本語と英語。私が適当に通訳をしつつ、コミュニケーションの中心はM。とっても楽しかった。安心して店で眠りそうだった。…Mがトイレに立つまでは!!

Mのトイレが長かった。どうやらタイ式のトイレに戸惑っていた様子。会話の中心がいなくなったので、手持ちぶたさを感じていたその時に、オジサンは言った。

「Mを俺にくれ。」
「??」
「Mは俺と泊まる。」
!!!!!!!!!

超・ビックリした。とりあえず「明日、アユタヤに行くから駄目!朝も早いし」と言うと、「明日の朝にはホテルに送る。Snowは一人で寝て。」
っておいおい…。

私が言葉に詰まると、Mが帰ってきた。「どうしたの?」という彼女に、とりあえず彼の言ったことを伝えると、やっぱりひきつって「ノー!!」を連発していた。

何とかホテルまで送ってもらった。相当しつこくて、私は切れる寸前。Mは落ち込んでいた。オジサンの優しさを分かっていたから。実際、オジサンは料金を受け取らずに帰っていった。

ホテルに帰ってからも気分は晴れず、ハードロックカフェで飲み直した。それでも私はオジサンのことを考えて、「悪い人じゃないのに冷たくし過ぎたな」と反省。1時間程でクーラーに耐えられず、店を出た。
長い1日だった。やっとベッドに入った。