先月の 『2月の整体』 では
細胞の視点から整体を考えてみる として
今もっとも注目をあびている 細胞がテーマになったが
多くの閲覧者の方の反響は かんばしくなかった
細胞の新陳代謝と 整体の結びつきの具体的なリアリティが描けず
あいまいに終始した とのこと
その反省をふまえ 今月もひき続き 細胞と整体をテーマとし
別の角度から とらえてみたい
それは 細胞のなかにあるミトコンドリアである
下図は一つの細胞の図で
その中に ミトコンドリアは複数ただよっている
みなさんも
ミトコンドリア という名は耳にしたことは あるのではないだろうか
細胞の中にあるので 話しは細胞よりさらに微細なものになる
きわめて小さいながら ミトコンドリアは 大きな仕事をしている
つまり ミトコンドリアは
細胞の活動に必要なエネルギィの生産する中心である
ということは
ヒトの体のエネルギィの生産する中心といっていい
ヒトは活動のエネルギィを 代謝 たいしゃ によって産出する
口から食物として摂取した栄養素や呼吸で得た酸素を
変換してエネルギィをつくりだしている これを代謝とよぶ
この代謝の働きがあって 生物として生きていける
その代謝の現場こそ ミトコンドリア なのである
その現場の数は 圧倒的である
ミトコンドリアは
一つの細胞の中に かならず 複数存在するからである
ヒトは 60兆の細胞を保持しているので
ミトコンドリアは
一人の人体に気の遠くなるような数があり
その膨大なミトコンドリアが
一人のヒトの生命を維持させている根幹となる
食べて消化・分解した栄養と酸素を、血液中の赤血球に乗せて、
60兆個の細胞に運び
その中のミトコンドリアにうけわたす
そして エネルギィをATP という形でつくりだす
というシステムである
ミトコンドリアが順調に活発にはたらくことによって
体の不調を回復し 健康を維持し 若さを保持し 老化に対抗する
もって 細胞〜身体全体の新陳代謝をスムーズにおこなわせる
整体の目的の数ある中のひとつは まさしく
全身的な施術により
ひとつひとつの細胞にある
このミトコンドリアの活性化をはかることなのである
整体をうけた後に、
なんとなく 体が快適になる
なんとなく すっきりする
なんとなく やる気がでてきた
なんとなく 代謝がよくなっていく手ごたえ
なんとなく 体がかわっていく感じ
これらの てごたえは
ミトコンドリアの活性がはかられたからだと言っていい
言葉をかえ表現すると
食べた栄養と 呼吸による酸素が
効率よくミトコンドリアに到達し
ここでエネルギィに変換されてきている
ことなのである
もちろん 体の変化は これだけでは片手落ちとなり
ミトコンドリアでのエネルギィの効率的な産出の後は
エネルギィの効率的な分散配布を全身にゆきわたらせ
エネルギィ消費後の老廃物の効率的な排出
まで 一貫して改造していかなければならない
下図がミトコンドリアのイメージキャラである
では
どういう環境が ミトコンドリアは快適なのだろうか?
まず 1番目は
酸素をひじょうに欲しがるのが ミトコンドリアである
十分な酸素供給があって はじめてミトコンドリアは稼働する
したがって いかに新鮮な酸素を取り入れるか
つまり 呼吸が深くできるかが 最初のポイントである
整体にかぎらず
ヨガ アイユルベーダ 等
呼吸を重要視する意味は まさに ここにある
ミトコンドリアのこの酸素を必要とする性格を
好気性(酸素が好き)代謝の生命体と呼ぶ
整体は 施術のなかで しらぬまに深い呼吸へと誘導し
横隔膜を激しくうごかして 内臓をゆりうごかし
半睡眠半覚醒のような状態のなかで
腹式呼吸の極致にいたる
つまり
これが ミトコンドリアに酸素を送る整体施術なのである
その行程は 呼吸により酸素を吸い込むと
その酸素は血液に運ばれ
赤血球のヘモグロビンにのってミトコンドリアに到達する
ミトコンドリアへの酸素供給は血液によってなされるので
血行の不良や 血管の硬直や 血液の汚濁 があると
せっかく 腹式呼吸でたっぷり酸素を吸い込んでも
ミトコンドリアにたどり着く酸素が路頭に迷ってしまう
ご承知のように
筋肉が硬直しても 血行不良を引き起こし
血液の流失がとどこおり 酸素の供給に支障をきたす
筋肉の硬さが
いかに生体にダメージが大きく
ミトコンドリアが困惑してしまうかわかると思う
整体が 筋肉の弛緩と柔軟に力点をおくわけは ここにある
2番目に
ミトコンドリアが多く密集する筋肉群を刺激すること
整体が施術の中心のひとつに
筋肉の柔軟と弛緩を目標にしているが
その大きな根拠が
筋肉に多く宿るミトコンドリアの動きを活発にする事が含まれる
その筋肉の中でも 整体が狙うのは
遅筋・赤筋 と呼ばれる筋肉群である
ここで 筋肉について 説明する
筋肉には速筋繊維・遅筋繊維という種類がある。
速筋とは文字通り素早く収縮することの出来る筋肉であり、
一方遅筋というのは収縮が遅いものである。
遅筋繊維の方が
ミトコンドリア・ミオグロビンが多いので赤く見える。
一方、
速筋繊維はミトコンドリア・ミオグロビンが少なく、白く見える。
ミオグロビンとは代謝がおわるまで酸素を貯蔵しておく部位で
その色彩は赤い。
それで ミオグロビンが多いと赤く見えるのである。
つまり
遅筋繊維というのは酸素を消費しながら運動をするのに対し、
速筋繊維というのは
酸素をほとんど使わない無酸素運動に向いていると言える。
例えば
前者ならダッシュやジャンプと行った瞬発力が必要なものに対し、
後者は水泳やマラソンなど持久力を必要とする物に重要である。
魚に例えるなら
マグロやカツオといった回遊魚は長距離を泳ぐので遅筋繊維が多く、
赤くなっているのに対し、
ヒラメやカレイなどの白身魚はあまり泳ぎ回らずに、
獲物を捕らえるときだけの瞬発力が必要な白筋が多くなっている。
人間は誰しもがこの二つの筋肉繊維を持つが、
その割合は遺伝によって決まっている
遅筋繊維は長時間運動には良いが力は強くない。
速筋繊維は力は強いが長時間運動には向いていない。
こういう特徴を持つので、
その人の遅筋と速筋の割合を調べることによって
長距離走者or短距離走者のどちらに向いているのか
適正を見ることが出来るのである。
たとえば
マラソンと短距離の選手の筋肉繊維は 下図の様になる
こうして
遅筋・赤筋にはミトコンドリア・ミオグロビンが多く存在し
遅筋・赤筋の筋肉群を刺激すると
ミトコンドリアが活発に動き出す
整体施術が 遅筋・赤筋を意識的に狙う理由がこれである。
では 遅筋・赤筋はどこに多いのか
ひとつは インナーマスル
いまひとつは 心臓
いまひとつは 脳
である
これこそ
整体が
インナーマスル・心臓・脳の筋肉群を重視する根拠の一つ。
さらに 3つ目は
体温を上昇させること
体温の上昇はミトコンドリアの動きを活発にする
整体施術は
人によっては 施術のとたん 数分後に体がポカポカしてくる
さらに 整体家の手は暖炉の火のように暖かいので
体温は知らぬまに上昇する
練達の施術にかかると 術後は運動を長時間した体になる
よく 整体の好転反応で
体がだるくなったり むしょうに眠くなったりするが
それは
身体の奥底にパワフルな運動量を与えているからである
4つ目は
空腹感を体得すること
ミトコンドリアは空腹感あるいは軽い飢餓感があると
栄養をとりこもうとする強い意志がはたらき
必死になって栄養が到来するのを待ち受ける
そのミトコンドリアが栄養を渇望する状態が
ミトコンドリアをさらに活性化させるのである
整体は たくまずして 内臓に働きかける施術をおこなうので
施術をおこない しばらくすると 空腹感を感じる人が多い
この空腹感がたいせつなのである
ヒトは 空腹感や飢餓感があると 危機と判断し
その人の持てる身体能力をすべてを使って
それを乗り切ろうとする防衛体制をとる
これは ヒトの生物としての反応であるが
こうした反応が 傷ついた身体を回復する手段となるのである
腹8分目の 生物学的な意義がここにあり
断食の科学的根拠が これである
飽食と無節制の弱点が これでよく腑に落ちるはずである
くりかえすが
ミトコンドリアに栄養の到来を
首を長くして待たせることをするのである
5つ目は
身体に快適と軽い痛み いわゆる イタキモチイイ 状態を
意識的に与えることである
この相互に矛盾する感覚を 同時にあるいは交互に体験することで
身体は緊張感と充足感と満足感がいりみだれ
感覚が覚醒され
その覚醒がミトコンドリアに刺激を与え 活性化させる
それをもっと 徹底すれば
いわゆる 行 ギョウ といい
徹底的に体を痛めつけ鍛錬する方法となる
いわゆる 修行 しゅぎょう である
たとえば
寒中水泳
滝に打たれる
火くぐり
百たたき
座禅
学校の廊下に立たされる
寒中水泳や 滝打たれ の後の爽快感は
みなさんも一度くらいは経験があると思うが
その激しさと爽快とが 交互にやってくることで
ミトコンドリアは大喜びとなる
整体では イタキモチイイ がこれにあたる
もちろん
強烈な痛みでないと
整体した気がしないという方も 時におられるが
そういう方には 思う存分強烈な痛みを味わってもらうのも
また 整体である
これ以外に 重要なことは
6つ目に
ミトコンドリアの代謝の元となる
栄養をかたよらずに摂取することであるが
これは 整体をうけるのが習慣になると
自然に 栄養のかたよりが少なくなり まんべんなく食べたくなり
食事の傾向が食品の多品種・少量のながれになってくる
なぜなら
ヒトは体が快適になり ホルモンバランスがととのってくると
食欲中枢もおだやかになり安定し
はげしい好き嫌いが減少し
なんでもうけいれることができるようになり
食のコントロールが無意識的にできてくる
すると なんでもたべたくなるのである
また
こだわらず ひとつのものをいたずらに多くひつようとしなくなる
ものなのである
整体をうけると こうした 食べ方がかわってくるのが ふつう
7つ目は
日光浴を紫外線の害をうけない範囲で 適度におこなうこと
ミトコンドリアの仕事のひとつに
カルシウム調整をおこなっていることがあるが
日光をあびることで
このカルシウム調整の活性化がはかられる
残念ながら これのみは 整体ではカバーできないので
みなさんが 日ざしの弱い時をえらんで
みずからやっていただくしかない
以上 整体と細胞とミトコンドリアの 深い関係をのべてみたが
みなさんは 納得がいったであろうか
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