[HOME][BACK][NEXT]月刊『 本棚の溜息』87号 1997年9月号
【本とコンピュータ】
津野海太郎、荻野正昭、松田哲夫という別の会社に属する三人が (各、晶文社、ボイジャー、筑摩書房)同人で、大日本印刷ICC本部発行。
印刷会社 が自身で出版に乗り出したことや、同人が出版業界等で有名な編集者だったり、という ことで発売前から前評判が高かった。「新しいものには古いものを叩きつぶすだけでな く、それを思いがけないしかたで甦らせる力もある」という帯の文句にあるが、「しか た」がテーマとなろう。
内容は縦書きで、難解な専門用語は出てこず、読みやすい。平 野甲賀デザインで独特の雰囲気を漂わせている。定期購読雑誌が、また一冊増えてしま った。トランスアート刊、本体千三百円。【出版フォーラム東京オープン】
自費出版の新風舎(松崎義行社長)が、三田の慶応大 学隣に出版フォーラム東京をオープン(港区三田二の十四の九、電話〇三・五四二七・ 七一七七)。
ここでは、出版に関する相談を受け付けたり、新風舎の新刊、自主制作本 の販売を行ったり、ミニレクチャーを行ったりする。出版フォーラムという会員制度も 発足、情報発信者(著者)の立場から出版を考える。入会金一万五百円、年会費六千三 百円。
もともと「TILL」という自費出版から志を曲げずに頑張って、いまでは自費出版 大手にまで育て上げた彼が、販売する場を持ったということは、心情的にも良く分かる 。販売チャネルもまた「場」であるのだ。昔のよしみで「本屋さんか」のバックナンバ ーもこちらで扱ってもらうことにした。是非一度足を運んでみては如何が?【クラフト・エヴィング商会】
クラフト・エヴィング商会がとにかく良い。クラフト・ エヴィング商会の「どこかに◯いってしまった◯ものたち」(筑摩書房刊、本体二千四 百円)がすごく良い。
今は亡き「頓智」のイラストで、商会の名前が気になってたまら なかったが、彼女らの作品が一冊になって、内容はまさに、想像通りだった。造本、印 刷、写真撮影も良い。とにかくお薦めの一冊である。【三省堂八王子店】
東急スクエア七階(八王子駅北口)に三省堂書店八王子店がオープ ン。
ワンフロアを使っており、文具、印章、鳩居堂コーナーもある。多摩地区では最大 級の床面積だそうな。分野にあまり偏りはなく、可も不可もない品揃え。子供の本のコ ーナーは人工芝が敷いてあり、靴を脱いで座り読み出来る。(毛足の長いカーペットな らもっと良かったのにね)。CDーROMの品揃えもそこそこ。【SALON】
スタジオヴォイス九月号の特集が「サロンー癒しと創造の新空間」。
「場」にこだわる上で、サロンへの憧れは強い。ここでは喫茶店もギャラリーも本屋、コ ンビニ、ファーストフードもサロンとなる。そこがサロンと成りうるかは、本人の心の 持ちようで決まる。「どむか」の正式名称は「さろん・ど・むかむか」。目標はサロン なのだ。【木版画装丁展】
多田進・多田順木版画装丁展が八月二九日まで、渋谷のウイ リアムモリスで開催された。
ここは、喫茶店であるが壁面に作品が展示されるギャラリ ーでもある。多田順さんの版画と、多田進さんの装丁本が一つの額に上下に並ぶ。手刷 りというオリジナルと、印刷されたマスプロダクトの対比が面白い。【上海の本屋】
九月上旬の一週間、出張で上海へ。
モダンショップという、JAPAN SHOPみたいなものが、上海で開かれ、そこにプロモート出展を行うのが目的。同 時に中国の流通業の状況を探るのももう一つの目的。展示会場は虹橋地区という開発区 にあるINTEX上海。とにかく街中いたるところを作り直している、というのが第一 印象。
さすがにバンドという旧租界地区の建物は保存されてライトアップもされていて 、観光の目玉になっているが、ほかの昔ながらの建物は区画ごと壊され、その後に金ぴ かの高層ビルが出現する。そのビルの低層階は店舗が入る例が多い。
超市(スーパー) や便利店(コンビニ)、商城(ショッピングセンター)がブームで、そこで買い物する のがお洒落だったりするそうだ。営業時間は、あさ十時から夜十字まで。コンビには二 十四時間営業のところもある。書店は、六時から七時位で閉まる店が多い。
本屋や、文 房具店が多いのは福州路という道沿い。コンピューター関連の店もこの通りに多い。上 海古籍書店、外文書店、科技書店、新華書店という大手を一通り覗くことができる。
書皮状況は、ビニールのぺらぺらの袋が主流。一部では、帯のような細めの紙で数冊を束 ねるところもあった。店によってはバーコード(なぜか本屋にはPOSレジが普及して いて、スキャナーで読み取るところが多かった)のところにハンコを押して終わり、と いうところもあるから、何らかの戦勝品を得たい場合は、事前にキャッシャーの観察が 必要となる。包装紙は、唯一古籍書店でそれらしきものを発見。ここは、書道用品や古 美術も扱っておりどちらかといえばそちら用。
南京路や准海路は上海を代表する目抜き 通りであるが、そのようなところで地図を見ながら本屋を探すと、再開発の波に飲まれ て、なくなっていることが何度かあった。本屋が再開発の犠牲になるのはこの国でも同 様なのだろうか。【どむか】
九月二二日(月曜日)七時半頃より十一時頃まで、パブパルコ(パークスの あったビル)の一階『キングスベンチ』(渋谷区宇田川町十六の九の一、スペイン坂角 、電話三四七六-三〇〇七)にて例会。
だいたいの人数をお店に伝える必要があるので 、参加希望の方は、メールでご一報いただけると有難いです。(飛び入りでももちろん Kです)場所は変わったが、店長は不変の清水さんだ!年内はパブパルコで頑張る のだ! (十月は十八日、横浜で特別版を開催予定。今から予定をあけておいてください)
★どむか主宰・「本棚の溜息」編集発行人/帰山健一
★平成9年9月7日発行
★ E-mail:BXJ05656@nifty.ne.jp
★勤務先/100-8066日本経済新聞社総合事業部Tel5255-2847、fax 5255-2860
★E-mail kaeru@tokyo.nikkei.co.jp【どむかPATIO】GFA02534パスワードchoryu1#