中日新聞隔週金曜夕刊文化娯楽面:小林信彦のコラムを毎回切り取って愛読しているが、小林は7月27日の連載第289回にて「ひたすら面白い『千と千尋の神隠し』」と手放しでの誉めようである。
なにしろその文末において
「少年少女にとって、今は良い時代ではなく、湯婆婆や、その子供のわがままな<坊>や、カオナシが溢れているのだが、彼らの幸せは、この宮崎アニメを見られることだと思う。それが文化だったことに、彼らはやがて、気づくはずだ」
ううみゅう。そこまで誉めるか。
普段は辛口の小林があそこまで誉めていたのを読んでから見てるから多少その「誉め」のバイアスがかかったことは事実。
それはさておき、わしはこれを見ながら遠い昔のまんが映画(アニメというコトバがまだなかったのでね)のことを鮮明に思い出すのであった。
その「遠い昔のまんが映画」とは『安寿と厨子王』である。
これは『鉄腕アトム』より古い昭和30年代半ばの作品。
虫プロが出来る前じゃなかったかな?
そもそも声優という職業が確立しておらず、声の出演は、安寿=佐久間良子、厨子王=北大路欣也だ!
宮崎駿がいつも声優を使わずに俳優を使うのとは意味が違う。
ところで今回、菅原文太はすぐわかったが、内藤剛志、沢口靖子にいたっては全然わからず。内藤ファンなのに情けない!
生徒からかかってきた電話には向こうが名乗る前に「あんた、**だら?」ぴんぽ〜ん、だというのになあ。
さてその『安寿と厨子王』の中のいくつかのシーンはその後TVで何回か見たし絵本も買ってもらったので追体験補完されてはいるが、アタマにこびりついて離れない。
黒くて巨大な蜘蛛の化け物を厨子王が果敢に戦ってしとめる場面。
姉に手を振りながら、都に向かうため山椒太夫の屋敷を抜け出す場面。
もちろん前半最大の見せ場、波間に2艘の船が離れ離れになっていく泣かせの場面。
山椒太夫の屋敷で安寿がむちゃくちゃに酷使される場面。
まだまだいろいろ、いまだにはっきり覚えているのだ。
メッセージとかじゃなく、子どもの脳裏にこびりついて離れない映像の迫力。それは魔力でもあるな。
子どもを映画館に連れて行くのは、その脳内に、いつか芽を出すイメージの種を蒔いておきたいからかなあ。