独断的JAZZ批評 851.

PAT METHENY & LYLE MAYS
30年ぶりに聴き返した本アルバムは色褪せせずに、
今もって頬擦り盤だった
"AS FALLS WICHITA, SO FALLS WICHITA FALLS"
LYLE MAYS(piano, synthesizer, organ, autoharp),
PAT METHENY(electric and acoustic 6 & 12 string guitars, bass)
NANA VASCONCELOS(berimbau, percussion drums, vocals)
1980年9月 スタジオ録音 (ECM 1190 : 422 821 416-2)

本アルバムはLP時代に良く聴いたアルバムだ。
何故、今更ながらにゲットしたのかというと、一つ目はLPを全て処分していて手元にないこと、二つ目はYouTubeでも聴けるが音質が悪いこと、三つ目は次のレビューで予定しているMETHENYの最新作"KIN ↔"の前にもう一度聴いて確認したいことがあったから。
この頃のMETHENYはLYLE MAYSとよく共演しおり、当時も"PAT METHENY GROUP"という名称を使っていた。本アルバムではベースのSTEVE RODBYは参加していない。その代り、マルチ・パーカショニストのNANA VASCONCELOSが参加している。驚くべきことに、このアルバムはわずか3人で演奏されている。勿論、オーバーダビングという手法も取り入れてのことだろう。

①"AS FALLS WICHITA, SO FALLS WICHITA FALLS" 群衆のざわめきでスタートする。たった3人で奏でる重厚で壮大な音宇宙。このダイナミズムはMETHENYの得意とするところだ。あたかも「混沌と秩序」を提示したような演奏に聴こえる。20分を超える長尺だが、聴き飽きることはない。
②"OZARK" 
ここではMAYSのピアノが主役。この頃のPMGにはこのLYLE MAYSのピアノ(or シンセサイザー)は欠かせない。
③"SEPTEMBER FIFTEENTH (DEDICATED TO BILL EVANS" 
このタイトルの9月15日とはEVANSの命日にあたる。本アルバムの録音は1980年9月。丁度、EVANSが亡くなったのと同年同月録音である。EVANSに捧げた美しいバラード。アコースティック・ギターの音色が何とも切ない。
④"IT'S FOR YOU" 
シンセサイザーと多重録音、ヴォイスを駆使したトラックであるが、当時のMETHENY MUSICの象徴的なトラック。傑作デュオ・アルバム"BEYOND THE MISSOURI SKY"(JAZZ批評 686.)にも通ずる牧歌的な曲想がいいね。
⑤"ESTUPENDA GRACA" 
ここではヴォイスが効果的に挿入されている。何ともこのヴォイスに味があるんだなあ!この音作りは脈々と受け継がれて、次の"KIN ↔"にも登場することになる。そのことが気になって本アルバムをゲットした次第。

やはり、良いアルバムは35年の年月を重ねても色褪せない。今もって、新鮮に聴こえる。
METHENYのこのサウンド作りが現在までも息づいていて、最新作"KIN ↔"に繋がっているような気がして、確認のために本アルバムをゲットしてみた。
本アルバムが3人で作り上げた作品ならば、"KIN ↔"は5人で作り上げた音宇宙だ。しかも5人目はGIULIO CARMASSIというマルチ奏者だ。詳細は後掲のJAZZ批評で。
30年ぶりに聴き返した本アルバムは色褪せせずに、今もって頬擦り盤だったということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2014.02.14)

試聴サイト : http://www.youtube.com/watch?v=805e8PJe8D4
         http://www.youtube.com/watch?v=OB7bkhslIXw
         http://www.youtube.com/watch?v=Ccuv0Tx0c8s



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