このピアニストにはアイデンティティがある。
軟弱なピアニストと違って、自分のやりたい音楽はこういうものだという主張を感じるのだ。
NEWYORK TRIO
PETER BEETS(p), RODNEY WHITAKER(b), WILLIE JONESV(ds) 2001年録音


PETER BEETS、初めて聞くピアニストだ。1回目「フ〜ン」、2回目「まだまだ」、3回目「あれ?」、4回目「まだJAZZ批評を書けるほど感動していない」、5回目「ムムッ!」、6回目「結構、イケルかも」、7回目「JAZZ批評の1ページに加えよう!」。
あらまし、こんな経過を辿って今日に至る。聞き込むほどに良さが分かってくる。逆を言うと、素晴らしいと感じるまでに結構長い時間を要した。

CD全9曲のうち、BEETSのオリジナルが6曲、スタンダード3曲という構成になっている。オリジナルが多いので、慣れるまで時間がかかる。
決定的なのは5曲目の "THE NEARNESS OF YOU" の素晴らしさだ。とても若手とは思えない歌心。力量十分。ベースのアルコ弾きによるソロもなかなかイケル。アルコ弾きはこうしたしっとりとしたスローな曲にこそ相応しい。
6曲目 "THE BEST THING FOR YOU" と8曲目の "THE WAY YOU LOOK TONIGHT" はスタンダードを上手に歌っている。8曲目での急転直下の超速4ビートへの移行も虚を突いて面白い。

BEETS自身のオリジナルはどの曲もブルージーである。
このピアニストにはアイデンティティがある。軟弱なピアニストと違って、自分のやりたい音楽はこういうものだという主張を感じるのだ。その分、若干のクセがある。ここを理解するまでに時間がかかるというものだ。逆に、この部分が嫌いという人もいるかも知れない。

如何にも、若手のピアニストが自分のやりたいようにやり切ったというところが僕は好きだ。次に何をしてくれるのかという期待感を抱かせるピアニストである。  (2002.04.17)


PETER BEETS

独断的JAZZ批評 63.