独断的JAZZ批評 796.

ELDAR DJANGIROV
いずれは、音楽性で勝負してほしいね
"BREAK THROUGH"
ELDAR DJANGIROV(p), ARMANDO GOLA(b), LUDWIG AFONSO(ds)
CHRIS POTTER(ts on B), JOE LOCKE(vib on I)
2012年9月 スタジオ録音 (MOTEMA : AGIP-3516)

最近はジャズの世界でも早熟化が進んでいるのだろうか?
後日、紹介予定のBEKA GOCHIASHVILIは何と16歳だし、このELDAR DJANGIROVは現在、26歳になるが、14歳から注目され18歳でファースト・アルバムをリリースしている。恐るべしと言えば恐るべしだけど、これが一生続くとは限らないのはどの世界でも同じだ。むしろ、早熟で大成したプレイヤーは少ないのでこれからが肝心だ。

@"POINT OF VIEW REDUX" 最初は「こけおどし」のつもりか知らないけど饒舌を極め、しかも、テクニックをひらけした演奏に終始する。このピアニスト、ジャズってものを分かっていないなあという感じ。もう口、アングリだ。ああ、それとベースがエレベだ。これにもガッカリ。
A"SOMEBODY LOVES ME"
 GERSHWINの曲だけど、これも音符過剰。テクニックは人一倍あるのだろうけど、ジャズに必要なのはテクニックだけじゃない。
B"BREAKTHROUGH" この曲のみCHRIS POTTERがテナー・サックスで参加している。ELDARのオリジナルというこの曲が詰まらない。まるで無機質なピアノの独演会。情緒というものがまるでない、そのうえ、10分とやたら長尺なのだ。
C"WHAT'LL I DO"
 GEORGE GERSHWINをして「アメリカのシューベルト」と言わしめたIRVING BERLINの書いた佳曲。そう、このくらいに音数を制御できるようになるといいね。やれば出来るんじゃない!。
D"MORNING BELL"
 テクニックがあることは素直に認めるけど、速弾きだけが能じゃない。「能ある鷹は爪を隠す」ってことも覚えていかないとね。
E"IN PURSUIT"
 ここでは、GOLAがエレキに替えてアコースティックベースを弾いている。
F"NO MOON AT ALL"
 例えば、この曲。BRAD MEHLDAUの"DAY IS DONE"(JAZZ批評 301.の中に入っている同名曲の演奏と聴き比べてみてほしい。超絶技巧の持ち主、MEHLDAUをもってしても、テクニックをひらけすことはない。これがいいのだ!
G"HOPE"
 クラシカルな演奏。音符の数を半分くらいに減らして、「間」を持てるようになるといいと思う。
H"TOKYO PULSE"
 ああ、喧しい!
I"BLINK" 
ここではヴィブラホーンが参加。音符過剰で聴き疲れする。
J"GOOD MORNING HEARTACHE"
 ピアノ・ソロ。

若さゆえなのだろうか?こういうジャズはテクニシャンが陥る罠だね。どうしてもテクニックが凄いということでチヤホヤされてしまうのだろう。で、これが自分の実力だと勘違いする。まあ、もう少し歳をとってくるとこれだけじゃ喰っていけないということが分かってくるだろう。それまでの授業料だと思えばいい。
いずれは、音楽性で勝負してほしいね。テクニックだけだったら、上を行くミュージシャンが出てくればすぐに忘れられてしまう。
だから、今回は辛口の星二つ。
将来、見返して欲しいね。   (2013.03.26)

試聴サイト : http://www.eldarmusic.com/



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