独断的JAZZ批評 782.

KOICHI OSAMU / MASAHIKO HOSOKAWA
ジャズ・ハウスで聴きたい演奏かというとそうではない
文化会館とか学校の講堂が似合いそうだ
"LITTLE SONG BOOK 緑彩色"
細川正彦(p), 納浩一(b)
2012年8月 スタジオ録音 (CMS RECORDS : CMS-1007)

納(おさむ)浩一というベーシストは初めて聴く。京大卒業後、バークリー音楽大に留学したとある。アコースティック・ベースと同時にエレキもこなすらしい。また、ベースの教則用DVDを4枚ほど出しているということだ。
一方のピアニスト、細川正彦も初めて聴くが、九州を拠点に活動しつつ、自らこのCMSレーベルを起こしたという。曰く「利益優先ではない、弱小レーベルだからできる制作環境から、どれだけのものを造ることが出来るのか・・・、この課題を継続して追及して行きたい」と述べている。その心意気や良し。
ベーシスト、安ヵ川大樹(が主宰するD-MUSICA)と相通ずるものがある。このアルバムはCMSレーベル、7枚目に当たる。「ベースデュオ・シリーズ第1弾」とあるので、今後もベース・デュオが発売されていくのだろう。
ところで、僕はこのジャケットに心に惹きつけられるものを感じた。目を閉じている犬の横顔が印象的だ。(昔、飼っていたワンコもこんな顔して眠っていたなあ!)

A
がCARLA BLEYの曲で、それ以外は納がCFHを提供し、細川が残りの曲を提供している。

@"A TIME PAST" 哀愁や懐かしさを感じさせる細川のオリジナル。ちょっと唱歌みたいな清廉な雰囲気も持ち合わせている。納がベースでテーマを奏でる。この曲、最後にも挿入されている。
A"LAWNS" なかなかいい曲だ。ベースとピアノのおしゃべり。
B"W" 
日本的な味わいの曲だ。美しくて清々しい。
C"CLOUD IN SUMMER SKY" 納の提供するこの曲もタイトルが表すように清々しい曲だ。僕は何故か井上陽水の「少年時代」を連想してしまった。
D"SYOUSOU" 
「焦燥」ということらしいが、その割にゆったりとした美しい曲だ。
E"BUSINESS AS USUAL" 
初めてアップ・テンポの4ビートを刻む。
F"DREAMING" タイトルの如し。
G"VOYAGE" 
暗くて重いバラード。
H"THE ROAD TO NANJING" 
I"A TIME PAST" 


兎に角、清々しさとか優しさ、懐かしさに溢れた演奏で、ジャズっぽいグルーブ感やアーシーな雰囲気はない。1曲を除く9曲が二人のオリジナルで埋め尽くされている。そのオリジナルは皆、どこかで聞いたことがあるようなフレーズが散りばめられている。いっそのこと、最初からスタンダード・ナンバーを数曲入れた方が良かったのではないだろうか?
ジャズ・ハウスで聴きたい演奏かというとそうではない。文化会館とか学校の講堂が似合いそうだ。   (2012.12.12)

試聴サイト : http://www.catfish-records.jp/product/15389



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