独断的JAZZ批評 744.

TAKEHIRO HONDA
HONDAism
"I LOVE YOU"
本田 竹広(p), 鈴木良雄(b), 村上 寛(ds)
1971年4月 スタジオ録音 (CDSOL1481)

今や昔、LP時代に持っていたLPは全て処分してしまったけど、そういうアルバムが何十年後かにCDとして再発されるのは嬉しいことだ。昔、オーディオ・メーカーだったトリオ(後のケンウッド、更に後にはJVCケンウッド)が発売したアルバムだ。当時、録音のよさでも話題になったアルバムでもある。
そして、主役の本田竹広も今やこの世にいない。このアルバムは今から丁度40年前にあたる1972年録音の"THIS IS HONDA"(JAZZ批評 386.)と同様に良く聴いたアルバムだ。その本田竹広が亡くなったのは2006年1月のことだが、2005年の最後のリサイタルとなった"MY PIANO MY LIFE 05"(JAZZ批評 389.)は完全燃焼の記録として記憶に新しい。
解説とマスタリングに息子であるのと同時に、若手ドラマーとして頭角を現している本田珠也が携わっているのも嬉しい限りだ。

@"I LOVE YOU" C. POTERの書いた名曲。余分なものが一切ないストレートな演奏だ。最初から4ビートでズンズン進む。キラキラしたピアノの音色、前乗りのビートを刻む鈴木のベースがいいね。鈴木はもともとピアノを弾いていたくらいだからベース・ソロを執らせても良く歌っている。ドラムスとの8小節交換を挟んでテーマに戻る。
A"HERE'S THAT RAINY DAY" 
J. V. HEUSENの佳曲。ライナー・ノーツを書いている息子の珠也がこんなことを書いている。曰く、「西洋的でない日本的な叙情こそが竹広の真骨頂である。・・・郷愁に思いを馳せる涙こそが、竹広の本当の意味のブルースである」と。バラード〜ミディアム・テンポへと移行し、更に倍テンに進もうとする本田とサポート陣の丁々発止が面白い。
B"SUNNY" 
お馴染みのポップス・ナンバーだが、何と3拍子で演奏されているのだ。まったく違和感がないどころか十二分にグルーヴィである。
C"WILLOW WEEP FOR ME" 
本田がバラードを弾くと、美しさよりも魂の咆哮的なブルース・フィーリングが充満してくる。これぞHONDAism。
D"AUTUMN LEAVES" 
テーマの後はGmのワンコードで演奏されているらしい。少々荒々しさが見えるもののキラキラ・コロコロとしたピアノ・プレイはこれぞ本田の真骨頂というべきものだろう。続く鈴木のベース・ソロもいい音色で良く歌っている。

全曲、ジャズ・ファンなら誰もが知っているスタンダード・ナンバー。LP時代のA面、B面という表記のままにCD化されている。このアルバムは"HONDAism"満載であるが、少々粗い気もする。村上とのマッチングという点でしっくり感がないのだ。
本田には、このアルバムを録音した1年後にリリースした続編とも言える"THIS IS HONDA"(JAZZ批評 386.)という傑作アルバムがある。メンバーはドラムスが村上寛から渡辺文男に替わっている。こちらもスタンダードの名曲揃いだが、こちらの方が選曲も含めて僕の好みだ。併せて聴いてもらいたいアルバムである。   (2012.03.04)

参考サイト : http://www.youtube.com/watch?v=9L4J-lSxbs0



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