BOOKER LITTLE(tp), WYNTON KELLY(p), TOMMY FLANAGAN(p), SCOT LA FARO(b),
ROY HAYNES(ds) 1960年録音
もう一発、ワンホーン・カルテットを紹介しよう。昔は、入手が困難で久しく「幻の名盤」といわれていた1枚。このレコードのリトルとラファロの2人が若くして世を去ってしまったことが余計に拍車をかけたのかも知れない。ピアノは名手、トミフラとケリーが分担。ケリーが3、4曲目で参加し、残り4曲がトミフラという構成だ。聞き比べてみるのも面白い。
いきなりストレート・アヘッドなミディアム・ファーストの曲から始まる。快いラファロのウォーキング・ベースの上をリトルのペットが気持ちよさそうにアドリブをとる。ラファロ、ヘインズ、トミフラのリズム陣は磐石のプレイを展開する。4ビートが実に心地よいのである。
次が "MINOR SWEET"。リトルのソロで始まり、急転直下アップテンポに転ずる。ここでもラファロのベースが躍動感溢れる4ビートを刻んでいく。
ラファロはとかく、
JAZZ批評 17.に紹介したビル・エバンスとの演奏ばかりが喧伝されるが、こうした見事な足跡も残している。
3曲目 "BEE TEE'S MINOR PLEA" はマイナー・ブルース。哀愁を帯びたメロディラインにケリーのピアノが「ケリー節」で絡む。独特の節回しと軽やかなピアノタッチはフラナガンのそれとは明らかに違う。「周りを乗せていく」プレイヤーなのだ。
続く4曲目もケリーのピアノ。リトルとラファロのデュエットでテーマを1コーラス、その後4者のプレイに入っていく。実は、この辺まで聴くと、リトルのトランペットに飽きてくる。リトルのペットは全編、一本調子の感を否めない。抑揚がないのだ。若手の一本気、力任せという感じで、正直いって、「もう分かったよ」という気分になってくる。
だから続けて全編を聴こうと思わないこと。むしろ、1曲だけチョイスして、別なCDに移るというのが正しい聴きかた(?)だ。
5曲目、ワルツの"THE GRAND VALSE" のフラナガンのピアノなんて本当に素晴らしいし、トリオ演奏として聴くと実に味わい深い。ここでもラファロのウォーキングが印象的。このベース・ラインだけを拾って聴いてみるのも一興。トランペットがない方が良いなんて不謹慎なことを言うのは僕だけだろうか?
6曲目のバラード "WHO CAN I TURN TO" も、せめて、ミュート演奏にでもすれば趣も変わったものを・・・・。
僕は5曲目のフラナガンと3曲目が好きだ。鍵盤の上を踊るケリーのピアノ、ラファロの逞しいウォーキング・ベース、センシティブなロイ・ヘインズのドラムス、そして、ブルース・フィーリングと躍動感に溢れた演奏が楽しめる。 (2002.02.23.)