DAVE PECK
まるで芳醇で馥郁たる香りのする極上の日本酒のようではないか!
"MODERN ROMANCE"
DAVE PECK(p), JEFF JOHNSON(b), JOE LA BARBERA(ds)
2007年9月 ライヴ録音 (LET'S PLAY STELLA RECORDS : LPS 2010-01)


DAVE PECKのCDは初めて聴く。今までに何回も手に入れようと検討したことはあったが、入手は今回が初めて。縁がなかったというしかない。このアルバムをゲットして、縁がなかったというよりは抜群のタイミングでよいアルバムに巡り合うことが出来たと思っている。
最近、アメリカのジャズもヨーロッパのピアノ・トリオもこれはと言えるほどの感動を与えてくれるアルバムに巡り合える確立が落ちてきているなあと感じていた。海外の掘り起こし的なアルバムもなかなか良いアルバムに巡り合えないし、そこに投資するなら日本のジャズのほうが琴線に触れるアルバムに出会う確立が高いと最近感じていた。
そんな矢先に出会ったアルバムがこれ。半端なくこれは良いと思った。ああ、良いジャズを聴いたなあという充足感がある。わずか6曲しか入っていないアルバムだ。ということは1曲あたりの演奏時間が長い。10分を超える曲が3曲。残る3曲も7分以上だ。ライヴならではの長尺演奏だが、いずれも長いどころか短いと感じてしまう充実振りだ。全曲、スタンダード・ナンバーが占めている。スタンダードというのは長い年月を掛けて多くのリスナーに認められてきた楽曲でもある。素晴らしいテーマを一流のミュージシャンが緊密感を持って演奏すると、かくも素晴らしい感動を与えてくれるものなのだ。

@"BYE BYE BLACKBIRD" 
ピアノ・ソロによるイントロが1分半ほど続き、優しい音色のテーマが始まる。イン・テンポになってベースとドラムスが絡んでくる。アンサンブルが素晴らしい。美しく、躍動感に溢れ、3者の緊密感も申し分ない。とても上質な音楽を聴いている気分になる12分と57秒。
A"EAST OF THE SUN" 
この曲もピアノの・イントロで始まり、イン・テンポになって心地よい4ビートを刻んでいく。途中に挟まれるピアノとベースのインタープレイが良いねえ。ジャズに欲しいのはこういう躍動感。心が浮き立ってくるもの。さあ、皆さん!指でも鳴らしながら大いに乗りまくってください。LA BARBERAもブラシからスティックに持ち替えて楽しさをさらに増幅させる10分と55秒。
B"LOVER MAN" 
長めのピアノのイントロに始まるバラード演奏から徐々に昂揚感が醸成されていく。ヘヴィーで良く歌うJOHNSONのベース・ソロを経てクライマックスへと進んでいく12分と57秒。
C"THEY SAY IT'S WONDERFUL" 
サウンド的にはKEITH JARRETTのSTANDARDSを彷彿とさせる8分と38秒。
D"IF I SHOULD LOSE YOU" 
途中にベースとドラムスの小節交換を挟んでいるが、これが結構味わい深い。なかなかの役者なのだ。その後、テーマに戻る7分と31秒。
E"I GOT IT BAD AND THAT AIN'T GOOD" 
この曲を除く全ての曲で、先ずはピアノがソロでイントロを執り、その後、ベースとドラムスが絡むという手法をとっている。この最後の曲はD.ELLINGTONの書いた曲で、3者の対話で始まる。しっとりとしたバラード演奏で最後を締める7分と45秒。

聴き終わった後に、とてもよい演奏だったとついつい拍手をしたくなるようなアルバムだ。
PECK、JOHNSON、LA BAERBERA(前々掲の"STUFFY TURKEY"(JAZZ批評 637.)でも叩いていた)という個々の力量の素晴らしさもさることながら、1+1+1が4にも5にもなる楽しさが凝縮されている。BILL EVANS TRIOというよりもKEITH JARRETT TRIOにも通ずるアンサンブルの素晴らしさを堪能頂けるだろう。ライヴ録音であるにも係わらずオーディエンスに媚びる風もなく、ひたすら自分達のスタイルを貫き通している。
まるで芳醇で馥郁たる香りのする極上の日本酒のようではないか!ということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。僕の中では、今年の五指に入るアルバムになることは間違いないだろう。蛇足だが、ライヴの雰囲気を上手に伝えながらバランスの良い録音は二重丸。
  (2010.07.26)

試聴サイト : http://www.emusic.com/album/Dave-Peck-Modern-Romance-MP3-Download/11973021.html



独断的JAZZ批評 639.