KALMAN OLAH
逆に言うと、お互いに少しずつ遠慮して、豪胆さや熱っぽさが殺がれたという印象かも知れない
"ALWAYS"
KALMAN OLAH(p), RON MCCLURE(b), JACK DEJOHNETTE(ds)
2004年1〜2月 スタジオ録音 (MEMPHIS INTERNATIONAL RECORDS : DOT 0218)

ハンガリーのピアニストKALMAN OLAHがアメリカのジャズメンとトリオを組んだアルバムということで話題になったが、面子を見て僕はびっくりした。何と、ベースにはRON MCCLUREが入っているではないか!
懐かしい名前だ。MCCLUREというと、僕の記憶の中ではWYNTON KELLYの"FULL VIEW"を思い起こさせる。LP盤を遠の昔に処分してしまっているので、今となっては記憶の中にしかないが、確かこのときはドラムスにJIMMY COBBを迎えていたのではなかったか・・・?
・・・調べてみると、的中。1967年、今から40年前の録音である。MCCLUREの名前を聞いたのも何十年ぶりかのことである。今も健在で活躍していたとは嬉しい限りだ。そのMCCLUREとJACK DEJOHNETTEの組み合わせにびっくりした・・・というのが素直な感想。この1967年当時、MCCLUREはDEJOHETTEと共にKEITH JARRETTのバンドにも参加しており、いくつかのアルバムが残されているようだ。その二人が40年ぶりにサポートを受け持ち、ハンガリーのピアニスト、OLAHとトリオを組んだということらしい。これは珍しい組み合わせだと思う。

@"ALWAYS" いかにもと言うべきか、ヨーロッパ的な陰影のあるテーマで始まる。DEJOHNETTEのセンシティブなシンバリングで幕を開ける。ヨーロッパ・スタイルで行くとこういう曲は大概、ブラッシュを使用するがDEJOHNETTEの場合はスティックを使用しながらもセンシティブなフィーリングを出している。5分53秒。
A"POLYMODAL BLUES" サブ・タイトルに"HOMAGE TO BELA BARTOK"とある。20世紀を代表するハンガリーの作曲家バルトークに対するオマージュということらしい。4ビートをミディアム・テンポで刻むブルースであるが、いかにも現代的なブルースに仕上がってはいるが、やっていることは極めてオーソドックス。ベース〜ドラムスのソロを経てテーマに戻る。7分4秒。
B"HUNGARIAN SKETCH NO.1" クラシカルなテーマ。8分34秒。
C"ALL OF YOU" スタンダード・ナンバーを10分と6秒にわたって演奏。ここで聞かれる演奏はアメリカ的フィーリングの方が強い。極めて、オーソドックスと言える。ベースは4ビートを刻み、更には、DEJOHNETTEほどのドラマーがサポート役に徹しているのだ。MCCLUREの長めのソロが用意されているが、良く歌っていて楽しめると思う。続いてDEJOHNETTEの控えめなドラム・ソロと小節交換を経てテーマに戻る。

D"HOW MY HEART SINGS" BILL EVANSも好んで演奏したワルツ。控えめなブラッシュ・ワークで始まり、途中からスティックに持ち替えるがDEJOHNETTEの持ち味が存分に発揮されたとは言い難い。8分と17秒。
E"INTRODUCTION" 2分と55秒のピアノ・ソロ。
F"STELLA BY STARLIGHT" お馴染みのスタンダード。ここではDEJOHONETTE
も最初からブラッシュでスタート。ここでは多彩なドラミングが楽しめる。10分と8秒。
G"ELEGY" ベースがテーマを執るには難しい音程を要求する曲だ。背中がムズムズするような印象が残ってしまう。9分と32秒。

全編を通して思うのは、ヨーロッパとアメリカが綱引きをして、若干、アメリカ的フィーリングが勝ったという感じ。その分、シンプルでオーソドックスな演奏になったという印象を持つ。逆に言うと、お互いに少しずつ遠慮して、豪胆さや熱っぽさが殺がれたという印象かも知れない。
8曲と曲数が比較的少ないので1曲あたりの演奏時間が長めだ。それと、ドラムスの録音レベルが相対的に少々低い。折角のDEJOHNETTEの繊細にして豪胆なドラミングを思う存分に堪能できないというのが残念。
このメンバーはレギュラー・トリオではないのだろうし、緊密感、一体感という点でも、もうひとつという印象を拭えない。   (2008.08.07)



独断的JAZZ批評 430.