独断的JAZZ批評 369.






KEITH JARRETT
KEITHといえども人の子だった
"SOMEWHERE BEFORE"
KEITH JARRETT(p), CHARLIE HADEN(b), PAUL MOTIAN(ds),
1968年8月 ライヴ録音 (ATLANTIC MASTERS 8122765962)

僕は昔、このレコードをほとんど聴いたことがない
復刻盤で格安価格なので買ってみた
この次にKEITHの最新盤を掲載予定なので、ちょっと比較してみようと思った
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1968年というと今から38年も前になる。当時、僕は学生で、丁度、ジャズに興味が湧き出した頃だ。同じこの年にCHICK COREAの"NOW HE SINGS, NOW HE SOBS"(JAZZ批評 1.)が発売になった。僕はこのアルバムに度肝を抜かれた。もう、この時代はCOREAに心奪われていた時代であるから、KEITH JARRETTは歯牙にもかけることがなかった。だから、このアルバムを聴いたという記憶がほとんどない。あっても、記憶のかけらにも残っていない。こういう状況は1983年のJARRETTの"STANDARDS"まで続くのである。

今日、KEITHのカーネギー・ホールでのソロ・アルバムが届いた。このアルバムを聴く前に古き時代のKEITHを聴いてみようと思った。丁度、1250円という格安価格で店頭に並んでいたので購入する気になった。3枚買うと20%オフで一枚あたり1000円と謳っていたが、その誘惑には惑わされない。3000円出費するところを1250円で済んだわけだし、やはり、欲しい物だけを購入するというのが正解なようだ。その分は新譜の欲しいアルバムに投資した。次回以降、それらのアルバムを紹介して行きたいと思う。

翻って、このアルバムであるが、確かにこれでは記憶の片隅にも残らないなと感じた。あれやこれやのてんこ盛りで、正直言って、最後まで聴き通すのが辛い。KEITHにもこんな時代があったのだ!COREAが「早熟型」とすると、KEITHは「大器晩成型」だ。年を重ねるごとに、音楽に対する真摯な姿勢や円熟度を増してきたように思う。この点はCOREAとは対照的だ。

@"MY BACK PAGES" BOB DYLANの曲だという。そう言えば、どこかで聴いたことがあるような?
A"PRETTY BALLARD" 曲名通り。
B"MOVING SOON" フリーというべきか、アヴァンギャルドというべきか。
C"SOMEWHERE BEFORE" 一転して、のんきそうな演奏。何故か、ベースのHADENと噛み合わない。

D"NEW RAG" Gがオールドでこちらがニューのラグタイムらしい。
E"A MOMENT FOR TEARS" 美しいバラード。KEITHに一貫している美しさの原点がここにはある。
F"POUTS' OVER" どこにでもある8ビート。
G"DEDICATED TO YOU" 
H"OLD RAG" 賑やかなラグタイム。いやいや、色々やってくれます。

今でこそ、ジャズ界の第一人者と呼ばれるまでになったKEITHだが、38年前のこのアルバムは平凡なアルバムと言わざるを得ない。誰しもが通る道〜試行錯誤の道〜を経て、今日に至ったのだということを痛感させられる。KEITHといえども人の子だった。   (2006.10.01)



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